耕土(作土層)の深さが10cmしかないほ場では、同じ施肥をしても収量が15cmのほ場の約3分の2にしか届かないことが研究で示されています。
農地の土は上から下へ、いくつかの異なる層に分かれています。その中でも、農業生産に直結する最も重要な二つの層が「耕土(作土層)」と「心土層」です。
耕土(作土層)とは、農地の最上部に位置し、耕うんや施肥、かんがいといった人為的な管理が加わっている土層のことです。根が自由に伸びられる、いわば作物の「生活圏」です。腐植や有機物を多く含み、養分も豊富で、土壌生物が活発に活動しています。
一方、心土層とは耕土のさらに下に位置する土層の総称です。農林水産省の資料によれば、心土層は一般に耕土より緻密で腐植や有機物が少なく、養分も乏しいとされています。固く茶褐色をしており、耕作の影響を直接受けていない元の土です。
分かりやすく言えば、耕土は「毎年手を入れている柔らかい表層」で、心土は「その下に眠る手つかずの硬い層」です。
農業上の名称では、最上部のA層が「作土・耕土」に、その下のB層(溶脱物質の集積層)が「心土・下層土」に相当します。さらに下のC層は「基層」で、岩盤(R層)がその下に続きます。
これが土壌断面の基本構造です。
農林水産省による土壌断面・各土層の定義と概要はこちらで確認できます。
「作土深は深いほどいい」という認識を持つ農業従事者は多いですが、実際にどの程度の深さが必要かを数字で把握している方は意外と少ないものです。
水稲の場合、理想的な作土深は15cm以上とされています。ヤンマーの農業資料によれば、作土深15cm以上が目標の目安です。山口県の農業指導資料によると、作土から得られる窒素の無機化量は、作土深が15cmで10cmの約1.5倍、20cmになると約2倍になるというデータが示されています。つまり作土深が薄いと、同じ施肥量でも肥効が土壌から補われず、肥料代が無駄になる可能性があるということです。
さらに深刻なのが、作土深10cm程度の浅い圃場が実際に多く存在することです。これは「ほがき大(A4サイズ)の短辺ほどの深さしかない」状態です。福岡県の施肥基準では、作土深15cm未満のほ場に対して「急激な薄化を防ぐため2〜3年かけて徐々に耕深を深くすること」と注意書きがあるほど、浅い作土は広くある問題です。
野菜の場合、露地栽培では作土の厚さ15cm以上、施設栽培では25cm以上が目標とされています。大根は表土から30cmまでの土壌硬度が硬度計で18mm以下になるよう深耕することが収量・品質に大きく影響します。
作土の深さが足りていれば問題ありません。まずは自分のほ場の作土深を計測することが、土づくりの第一歩になります。
作土深と収量の関係を詳しく解説した研究資料はこちらです。
農研機構「水稲作における気候変動への土壌肥料的適応技術」(PDF)
心土は「ただの固くて使えない土」と思われがちです。確かに多くの場合は緻密で腐植が少なく、養分も乏しい状態です。しかし、それが常に当てはまるわけではありません。
農林水産省の資料には、「作土層から溶脱した養分が集積し得る場合は、肥沃化した心土となることがある」と明記されています。長年の降雨と施肥によって、窒素やリン酸などが表層から溶け落ち、心土に集まるケースが実際に存在するのです。
これは意外ですね。
こうした肥沃化した心土が存在する場合、天地返しによって心土を表層に出すことで、眠っていた養分を作物に届けられるようになります。天地返しとは、表層から30cm程度の上層土と、その下60cm程度の下層土を入れ替える作業です。
ただし、心土の質は圃場によって大きく異なります。栄養が乏しい心土を天地返しで上に出してしまうと、逆に土壌の質が下がる場合もあります。JA酪農総合研究所の事例では、「表層の有効利用を目指す観点から、プラウ耕による天地返しは慎重に判断すべき場面もある」とされています。天地返しをおこなう前には必ず土壌診断で心土の養分状態を確認することが条件です。
つまり心土は、場合によっては「隠れた資産」にも「リスクの源」にもなります。一律に「使えない層」として無視するのは損です。
多くの農業従事者が知らない間に圃場内に作り出しているのが、耕盤層(すき床層)です。
耕盤層とは、作土層の直下に発達する硬い緻密層のことです。土壌硬度計のち密度が29mm以上で厚さ10cm以上の層を耕盤と呼びます。根の伸長を著しく阻害し、透水性を大きく低下させます。
形成の主な原因は、農業機械の踏圧です。トラクターによる耕うんが3年以上継続すると安定した耕盤層が形成されるという研究データがあります。毎年同じ深さでロータリー耕をくり返すと、刃の届く深さのすぐ下が常に踏み固められ続けるからです。大型トラクターほど踏圧が大きく、耕盤の形成が早まります。
耕盤層があるほ場では次のような問題が起きます。大雨の際に表層に水が溜まりやすく、湿害が発生する。干ばつ時には深い土層から水が上がってこず、旱害リスクが増す。根が下に伸びられず、根域が作土層内に制限される。これら全てが収量低下・品質低下に直結します。
問題は、耕盤層は地表からは見えないことです。「毎年ちゃんと耕しているのに収量が伸びない」と悩む場合、その原因が耕盤層にある可能性があります。棒を差し込む簡易な硬度計測や、スコップで断面を確認する方法で、自分のほ場の耕盤状況を定期的にチェックすることが大切です。
耕盤層の形成メカニズムと農業機械の影響を詳しく解説したヤンマーの土づくり資料はこちらです。
耕盤層を打破し、心土の排水性・通気性を改善する主要な手法が「心土破砕」です。ただし、一口に心土破砕といっても種類があり、それぞれ効果の持続期間が大きく異なります。
これは使えそうな情報です。
まず「無材心土破砕」は、サブソイラなどの器具で土中に切り込みを入れるだけの方法です。資材は不要で低コストですが、農家からの評価では「2〜3年以内に効果が失われる」とされています。粘土質土壌では特に、時間とともに亀裂が塞がってしまうためです。
一方、「有材心土破砕」は切り込みを作りながら、バーク堆肥・もみ殻・チップ・貝殻などの疎水材を土中に投入する方法です。農研機構の研究によると、バーク堆肥を用いた有材心土破砕では施工後5年まで収量向上効果が持続することが確認されています。無機質資材(砂など)を使用した場合はさらに長期間持続します。
注目すべきは、この5年持続という効果が「農業生産5年分の増益で土層改良の費用を返済できる」水準であるという農研機構の試算です。
つまりコスト面でも合理性があります。
畑作では作業幅75cmを目安に施工し、水田では作業幅150cm程度で毎年実施するのが一般的です。また、サブソイラに弾丸形状の「モールドレーナ」を取り付けることで、地下水路(弾丸暗渠)を同時に施工でき、排水改善効果をさらに高められます。
有材心土破砕の効果と持続期間についての詳細事例はこちらです。
農畜産業振興機構「有材心土改良耕のてん菜及びばれいしょ栽培への効果」
耕土の良し悪しは深さだけでは語れません。土の内部構造である「三相分布」も、作物の生育を大きく左右します。
土壌は、固体(土粒子・有機物)の「固相」、水の「液相」、空気の「気相」の三つから成ります。この三相の容積割合のバランスが、農業では非常に重要です。農林水産省や各農業試験場の資料では、理想的な三相分布は「固相:液相:気相=5:2:3または5:3:2」とされています。固相がおよそ50%、液相と気相が残り50%を分け合う状態です。
根の視点から考えると、固相は根を支え養分のもとになります。液相は根が水や養分を吸収するための媒体です。気相は根に酸素を供給し、土壌生物が活動するための空間でもあります。気相が極端に少ないと根は窒息し、逆に液相が少ないと乾燥害が起きます。
耕土が踏み固められると気相率が下がります。有機物が少ないと固相が増えて孔隙が減ります。堆肥などの有機物施用は、三相のバランスを保つうえで不可欠です。有機物は土壌粒子を団粒構造に結び付け、大小の孔隙を同時に作ることで液相と気相の両方を確保します。
団粒構造が発達した耕土とは、大きな孔隙(気相)と小さな孔隙(液相)が共存しており、水はけが良いのに保水力もある理想的な状態です。これが農家の皆さんが「ふかふかの土」と表現する状態の正体です。
耕土と心土の扱い方は、水田と畑とで大きく異なります。これを混同すると、かえって土壌を傷める結果になりかねません。
水田の耕土(作土)は、稲作に適した「湛水できる状態」を前提としています。水田の耕盤層は、水を溜めるためにあえて意図的に維持されているものでもあります。水田では耕盤があることで漏水を防ぎ、田面の水持ちが保たれます。そのため水田における耕盤は「悪者」ではなく、水稲栽培には必要な構造です。
一方、水田転換畑では話が変わります。もともと排水性が低い水田土壌を畑として使う場合、耕盤層が残ったままだと野菜や果樹が湿害を受けやすくなります。転換畑での心土破砕は収量確保のための必須作業です。
畑の耕土は、排水性と通気性を高く保つことが求められます。根が深く伸びられるよう、耕盤を持たない有効土層が深いほど有利です。農林水産省の等級基準では、水田・草地は有効土層50cm以上、樹園地では1m以上あればⅠ等級耕地とされています。
つまり用途によって「理想の土層構造」が変わるということですね。水田として使うか、畑として使うか、樹園地として使うかで、必要な心土破砕の要否も変わります。
自分の用途を確認するのが基本です。
耕土の品質を長期的に保つうえで、有機物管理は切り離せません。特に腐植(フミン物質)は、土壌の物理・化学・生物的な性質全てに影響する、土づくりの中心的な要素です。
腐植含量が高い耕土は、保水力と保肥力(陽イオン交換容量=CEC)が高くなります。例えば黒ボク土はCECが20〜30と高く、保水性・透水性・通気性に優れることで知られています。一方で、腐植含量が低い砂土や劣化した耕土ではCECが低く、施肥した肥料分が雨で流れやすくなります。
農研機構などのデータによると、堆肥の継続施用は耕土の孔隙率を高め、三相分布を改善します。有機物が団粒構造を促進し、大小の孔隙が増えることで排水性と保水性の両方が向上するからです。
堆肥施用が重要なのはこのためです。堆肥は「肥料」というよりも「土壌の構造を作る資材」として機能します。耕土に施用した堆肥は、微生物によって分解され腐植となり、数年をかけて土壌構造を改善していきます。単年の効果だけで評価せず、5年・10年スパンで継続することが大切なポイントです。
心土には有機物が乏しいため、天地返しで心土を上に出した直後は一時的に土壌の有機物含量が下がります。そのため天地返し後は必ず堆肥・有機質資材を増量施用して耕土の有機物水準を維持することが前提となります。
耕土や心土の状態を「感覚」だけで判断している農業従事者の方は少なくありません。しかし、正確な改善につなげるためには、まず客観的なデータを得ることが必要です。
最初のステップは土壌断面の確認です。スコップで50〜60cmほど掘り、断面を観察します。作土層の色(暗色で有機物が多い)、耕盤の有無(固くて白っぽい層)、心土の色と硬さを確認します。棒を指で押し込んで硬度を大まかに測る方法もあります。
次のステップが土壌診断です。JA(農業協同組合)や各都道府県の農業試験場では、土壌診断サービスを提供しています。pH・EC・有機物含量・三相分布などを数値で把握することで、どの改善策を優先すべきか明確になります。
改善の優先順位は、以下のような流れが基本です。
| 問題 | 主な対策 | 目安の頻度 |
|---|---|---|
| 耕盤層あり・排水不良 | 心土破砕(サブソイラ) | 畑:数年ごと、水田転換畑:毎年 |
| 作土深が15cm未満 | 深耕プラウ・深耕ロータリー | 2〜3年かけて段階的に深化 |
| 有機物不足・固結 | 堆肥施用・有機物すき込み | 毎年継続 |
| 心土が肥沃・養分集積 | 天地返し(土壌診断後に判断) | 必要に応じて |
土壌診断の結果次第では、石灰質資材や鉱物性改良材の施用が必要な場合もあります。
改善は一度やれば終わりではありません。
毎年の記録を積み重ね、土の変化を追いかける習慣が、長期的な収量安定につながります。
心土破砕の効果と実施方法の詳細は、以下の資料が参考になります。
BASF minorasu「心土破砕の効果とは?畑の排水性を効率的に改善する方法」
耕土と心土の管理を効果的に進めるためには、目的に応じた農業機械・作業機の選択が重要です。機械によって到達できる深さや効果が大きく異なるからです。
主要な作業機を目的別に整理すると、次のようになります。
選択のポイントは「今のほ場に何が必要か」です。耕盤層があり排水不良なら心土破砕系(サブソイラ・プラソイラ)、有機物不足・作土が浅いなら深耕系(プラウ・深耕ロータリー)が適切です。
農機具の購入にはコストがかかります。経営所得安定対策などの交付金では、心土破砕・弾丸暗渠・深耕が対象取組として認定されているケースがあります。各市区町村の農業再生協議会や農政局の最新情報を確認し、補助を活用することも選択肢に入れてみてください。
多くの農業従事者が取り組む土づくりですが、「継続的な記録管理」という視点は、意外とおろそかになりがちです。これは土づくりの効果を最大化するうえで、実は非常にもったいないことです。
耕土と心土の状態は毎年少しずつ変化します。一度深耕した耕土も、機械踏圧を受け続ければ3〜5年で再び耕盤が形成される場合があります。逆に、堆肥を10年以上継続施用した圃場では、作土の腐植含量が目に見えて上がります。しかしこれらの変化は年単位では気づきにくく、5年・10年で振り返ることで初めて見えてくるものです。
記録すべき最低限の項目は「作土深・土壌pH・有機物含量・実施した作業(耕深・使用機械・施用資材)・収量」です。近年では、スマートフォンのアプリやクラウド型の営農管理ツールを活用することで、圃場ごとの土壌データを蓄積・比較できるようになっています。
記録があると、例えば「3年前に心土破砕したほ場Aは収量が安定しているが、未施工のほ場Bはこの2年で収量が下がっている」という比較ができます。これは、次の投資判断(どのほ場に先に機械を入れるか)に直結します。
データとして積み重なった記録は、補助金申請時の根拠資料にもなります。「記録する土づくり」は、収量を安定させながら無駄なコストを省く、現代農業のベースになる考え方です。
実際に耕土管理と心土破砕を実践した農家・試験場での事例を見ると、数字として現れる改善効果が確認できます。
島根県の水稲栽培試験では、乳白粒の発生が多いほ場ほど作土が浅い傾向が認められたと報告されています。作土には水稲の根の大部分が分布しており、養水分の吸収力に直結するためです。作土を15cm以上に保つことで、高温障害時の品質低下リスクを軽減できることが示されています。
北海道の有材心土破砕試験では、バーク堆肥を投入した有材心土破砕を施したほ場で、てん菜・ばれいしょともに5年後まで増収効果が維持されました。農研機構の試算によれば、5年分の増益で施工コストを回収できる水準とされています。
水田転換畑での大豆栽培では、心土破砕未実施ほ場と比較して、湿害回避による品質安定と収量向上が確認されています。転換直後に心土破砕を行ったほ場は大豆2作後も地下水みちの機能が維持されており、持続的な排水改善効果が認められています。
こうした事例を見ると、耕土・心土の管理は「やればすぐ結果が出るかもしれないが、やらなければ確実に損をし続ける」性質の投資だとわかります。数年単位の視点で計画的に取り組むことが大切です。
有材心土破砕の効果持続性に関する研究論文はこちらから確認できます。
日本土壌物理学会「畑土壌に対する排水改良技術の動向」(PDF)

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