疎水材 暗渠の種類と選び方!もみ殻や砂利の比較と効果

暗渠排水の疎水材選びに迷っていませんか?もみ殻、砂利、竹チップなど、それぞれの材質には明確なメリットとデメリットがあります。この記事では、土壌に合った選び方や耐用年数の違い、意外なDIYのコツまで徹底解説します。あなたの畑に最適なのは?

疎水材と暗渠

疎水材と暗渠のポイント
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もみ殻と砂利の使い分け

コスト重視ならもみ殻、耐久性重視なら砂利。土壌との相性も重要です。

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竹チップの意外な注意点

環境に優しい竹材ですが、初期の有機物流出には対策が必要です。

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DIY施工の成功の鍵

深さと勾配が命。適切な深さを確保しないと排水効果が半減します。

暗渠の疎水材の種類とそれぞれの特徴

 

暗渠排水を成功させるためには、その心臓部とも言える「疎水材(そすいざい)」の選定が極めて重要です。疎水材とは、暗渠管の周りや溝の中に充填する透水性の高い材料のことで、水はけを良くし、土壌中の余分な水を速やかに排水路へと導く役割を果たします。一般的に利用される疎水材にはいくつかの主要な種類があり、それぞれに入手しやすさや機能性が異なります。

 

     

  • もみ殻(籾殻): 日本の農業において最もポピュラーな疎水材です。米農家であれば自家調達が可能で、コストがほとんどかからないのが最大の魅力です。透水性は良好ですが、有機物であるため時間の経過とともに腐植し、土に還っていきます。
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  • 砂利・砕石: 耐久性が非常に高く、一度施工すれば半永久的に透水機能を維持できる可能性があります。重量があるため運搬や投入作業には労力を要しますが、沈下しにくく、安定した排水効果が期待できます。
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  • 木質チップ・竹チップ: 近年注目されている環境配慮型の資材です。間伐材や放置竹林の竹を粉砕して利用します。もみ殻よりも粒が大きく、腐食までの期間が比較的長いのが特徴です。
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  • ホタテ貝殻・カキ殻: 北海道や沿岸部で利用が進んでいる資材です。単なる排水材としてだけでなく、酸性土壌の矯正や、土壌中の鉄分を吸着するフィルターとしての機能も持ち合わせています。
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  • 合成樹脂・発泡スチロール: 軽量で扱いやすく、腐食しないため安定していますが、資材コストは高くなります。

これらの疎水材は、単独で使うこともあれば、組み合わせて使うこともあります。例えば、管の周りには耐久性のある砂利を使い、その上層にもみ殻を入れるといった「ハイブリッド施工」も効果的です。選定にあたっては、その土地で「安価に手に入るもの」を優先しつつ、土壌の粘土質具合に合わせて透水性能を調整することが求められます。

 

北海道立総合研究機構の資料では、各種チップやモミ殻の耐用年数についての詳細な調査が行われています。

 

木質系低コスト暗渠疎水材の可能性について(耐用年数や排水性の比較データ)

暗渠の疎水材におけるもみ殻と砂利の比較

多くの農家が頭を悩ませるのが、「もみ殻」にするか「砂利」にするかという二択です。この二つは特性が対照的であり、経営スタイルや圃場の条件によって正解が異なります。ここでは、コスト、耐久性、施工性の観点から詳しく比較していきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

比較項目 もみ殻(有機系) 砂利・砕石(無機系)
コスト 非常に安い(無料の場合も) 高い(購入費+運搬費)
耐久性 低い(約5〜10年で腐食) 非常に高い(半永久的)
施工性 軽量で撒きやすい 重機が必要なほど重い
土壌への影響 腐食して土壌改良材になる 土壌に混ざると石が残る
排水性 初期は高いが徐々に低下 長期的に安定

もみ殻の最大のメリットは、やはり「コスト」と「土壌改良効果」です。
暗渠としての機能が低下した後も、腐植して土の団粒構造化を助ける有機肥料のような役割を果たします。水田のように定期的に耕起し、暗渠の再施工(サブソイラなどによる弾丸暗渠の引き直しも含め)を前提としている場合は、もみ殻が圧倒的に有利です。一方で、畑作や果樹園など、一度埋設したら掘り返すことが難しい場所では、数年で機能が落ちてしまうもみ殻はリスクがあります。

 

砂利の強みは「確実性」です。
粘土質が強く、どうしても水が抜けない湿田や、高収益作物を作る施設園芸では、初期投資をしてでも砂利を選ぶケースが多いです。砂利は腐らないため、パイプが潰れない限り排水路としての空間を確保し続けます。ただし、将来的にその土地を更地に戻したり、用途変更したりする場合、大量の石が地中に残ることになるため、その点は留意しておく必要があります。

 

農林水産省の資料でも、疎水材の選定基準としてコストだけでなく、長期的な維持管理の視点が重要視されています。

 

暗渠疎水材選定のための参考資料(モミガラやチップの耐用年数目安)

暗渠の疎水材のDIY施工方法と深さ

近年、コスト削減のために暗渠排水をDIY(自作)で行う農家が増えています。重機をレンタルしたり、トラクターのアタッチメントを活用したりすることで、業者に依頼するよりも大幅に安く施工することが可能です。しかし、施工方法を誤ると、「苦労して掘ったのに水が流れない」という悲劇を招きます。特に重要なのが「深さ」と「疎水材の充填量」です。

 

DIY施工の基本的な手順は以下の通りです。

 

     

  1. 測量と設計: 排水口(吐き口)の高さから逆算し、圃場に十分な勾配(1/300〜1/600程度)が取れるか確認します。
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  3. 掘削(トレンチ): バックホーやトレンチャーを使って溝を掘ります。深さは一般的に60cm〜100cmが目安です。浅すぎるとトラクターの重みで暗渠管が破損したり、耕盤層の影響を受けやすくなります。逆に深すぎると排水効果が出るまでに時間がかかります。
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  5. 管の設置: 有孔管(コルゲート管など)を溝の底に敷設します。この時、管の周りにフィルター(寒冷紗など)を巻くかどうかは土質によりますが、目詰まり防止には効果的です。
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  7. 疎水材の投入: ここがポイントです。疎水材は管の上だけでなく、作土層(耕す深さ)の直下までたっぷりと入れるのが理想です。「疎水材をケチらない」ことが成功の秘訣です。水は作土層から疎水材を伝って管に落ちるため、ここが途切れていると排水されません。
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  9. 埋め戻し: 最後に土を被せますが、疎水材の上端が耕起した際に少し引っかかる程度の高さまで来ていると、表面水がダイレクトに暗渠に落ちるようになり、劇的に水はけが良くなります。これを「本暗渠と補助暗渠の直結」と呼ぶこともあります。

特に「深さ」については、DIYだとつい浅く掘ってしまいがちですが、最低でも60cmは確保したいところです。冬場の凍結深度が深い寒冷地では、さらに深く掘る必要があります。また、重機がない場合は「簡易暗渠」として、管を入れずに疎水材(もみ殻や竹)だけを溝に埋める方法もあります。これは耐用年数は短いですが、非常に低コストで実施できるため、まずはこの方法から試すのも良いでしょう。

 

以下のDIY事例記事では、深さの重要性や、実際の掘削作業のコツについて詳しく解説されています。

 

暗渠排水DIYで庭の水たまりを解消するためのポイント(深さや勾配の基本)

暗渠の疎水材に竹やチップを活用する独自視点

ここで、あまり語られることのない「竹チップ」や「木材チップ」などの有機系疎水材に関する意外な注意点と、独自の活用メリットについて深掘りします。SDGsの観点から放置竹林の活用として竹チップを暗渠に使う動きが活発ですが、実は「施工直後の水質」に注意が必要なことは意外と知られていません。

 

研究によると、生の竹チップを疎水材として使用した場合、施工から約1ヶ月間は、高濃度の有機成分(TOC:全有機炭素)や窒素分が排水に含まれて流出するというデータがあります。これは、竹に含まれる糖分やデンプン質が水に溶け出すためです。

 

これがなぜ問題かというと、排水先の河川や用水路の富栄養化を招く恐れがあるだけでなく、溶け出した有機物が暗渠管の穴周辺でバクテリアの餌となり、スライム状の汚れ(バイオフィルム)を形成して、早期の「目詰まり」の原因になる可能性があるからです。

 

しかし、これを逆手に取った対策もあります。

 

     

  • 枯らし期間を設ける: チップにしてからすぐに埋めるのではなく、数ヶ月間野積みして雨風にさらし、初期の溶出成分を洗い流してから使用する。
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  • 肥料効果として計算する: 流出する成分は逆に言えば栄養分です。完全に排水路に流すのではなく、地下灌漑(暗渠を使って水を逆流させ、地下から給水するシステム)と組み合わせることで、初期の溶出液を液肥のように作物の根に届けるという高度な技術も研究されています。

また、もう一つの独自視点として「ホタテ貝殻」の驚異的な能力があります。泥炭地のような特殊な土壌では、鉄分が暗渠管に付着して詰まらせる「酸化鉄閉塞」が深刻な問題となります。しかし、疎水材としてホタテ貝殻を厚さ15cm以上で使用した場合、鉄分を吸着・除去する効果が非常に長く続き、理論上の計算では200年以上も効果が持続するという驚くべき試算もあります。これは単なる「水はけ」を超えた、化学的な土壌改良機能と言えます。

 

このように、疎水材は単に「水をを通す石」ではなく、材質そのものが持つ化学的特性や生物学的反応まで考慮して選ぶと、農業経営にプラスアルファの価値をもたらします。

 

竹チップの成分溶出に関する詳しい実験結果は、以下の論文で確認できます。

 

竹を土壌改良材として用いた際の水質への影響と溶出特性

暗渠の疎水材の耐用年数と効果を持続させるコツ

最後に、選んだ疎水材の性能を最大限に引き出し、少しでも長く効果を持続させるためのポイントを解説します。どんなに良い疎水材を使っても、メンテナンスを怠れば数年で機能不全に陥ります。

 

1. 排水口(吐き口)の管理
暗渠の出口が泥や雑草で埋まっていては、疎水材が何であれ水は抜けません。特に大雨の後は出口を確認し、逆流防止弁がついている場合は動作チェックを行いましょう。出口が水没していると、管内の流速が落ち、管内に土砂が堆積しやすくなります。

 

2. 定期的な「管洗浄」
プロの農家は、高圧洗浄機(パイプクリーナー)を使って数年に一度、暗渠管の中を洗浄します。これにより、管の内側に付着した泥や鉄バクテリアの汚れを除去できます。疎水材が砂利の場合は洗浄に耐えられますが、もみ殻のみの簡易暗渠の場合は洗浄できない(崩れてしまう)ため、やはり有孔管を入れるメリットはメンテナンス性にあると言えます。

 

3. 補助暗渠(サブソイラ)の施工
本暗渠(管が入っているライン)に対して直角に、サブソイラや弾丸暗渠機を使って浅い亀裂を入れる作業です。これにより、固まった土壌にひび割れを作り、本暗渠の疎水材まで水を導くルートを再構築します。疎水材自体の透水性が落ちてきても、この補助暗渠を1〜2年おきに行うことで、排水機能をリフレッシュさせることができます。特に有機系疎水材(もみ殻など)が腐食して土と一体化してきた時期に、この作業は効果絶大です。

 

4. 疎水材の「継ぎ足し」
もみ殻などの有機系疎水材は、年々分解されて体積が減り、地盤が沈下することがあります。この場合、暗渠ラインの上を部分的に掘り起こし、新しいもみ殻を追加投入することで機能を回復させることが可能です。手間はかかりますが、全改修するよりは低コストで済みます。

 

疎水材選びは、施工時だけでなく「10年後のメンテナンス」をどうするかまで想像して決定することが大切です。「入れっぱなしで終わり」ではなく、土中の環境を常にケアし続ける姿勢が、豊作への近道となるでしょう。

 

北海道開発局による泥炭地での疎水材厚さと耐用年数のシミュレーション資料は非常に参考になります。

 

泥炭地域における環境に配慮した暗渠排水疎水材厚さの選定(ホタテ貝殻の効果持続期間など)

 

 


失われた川を読む・紡ぐ・愉しむ 東京暗渠学 改訂版