大根の無農薬栽培では、まずどの害虫を相手にするのかを具体的に押さえておくと対策が組み立てやすくなります。
代表的なのは、葉を吸汁するアブラムシ、葉を食害するアオムシ・ヨトウムシ、葉と根の両方をかじるキスジノミハムシ、株元をかじって倒してしまうネキリムシです。
アブラムシは、春から秋にかけて温暖で乾燥した条件で爆発的に増えやすく、大根では葉裏に群がって汁を吸い、生育不良だけでなくウイルス病の媒介源にもなります。
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アオムシはモンシロチョウなどの幼虫で、アブラナ科野菜を集中的に食べ、特にキャベツ・大根・白菜などで多発し、葉脈だけを残すほど葉を食い尽くすことがあります。
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ヨトウムシ類は夜行性で、日中は土中や株元に潜み、夜間に葉を集中的にかじるため、気づいたときには相当な被害が出ているケースが少なくありません。
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キスジノミハムシは、0.5〜3mm程度の小さな甲虫で、成虫は葉に小さな穴を多数あけ、幼虫は土中で根を食害し、生育不良や枯死を引き起こす厄介な害虫です。
ネキリムシは蛾の幼虫などの総称で、主に夜間に地際部を食いちぎるようにかじるため、せっかく出た芽が一晩で根元から倒伏することも多く、被害圃場では再播種が必要になる場合もあります。
大根の無農薬害虫対策の柱となるのが、防虫ネットや不織布を用いた物理防除です。
防虫ネットは、アオムシの原因となるチョウや、ヨトウムシの成虫が畑に飛来して産卵するのを物理的に遮断できるため、卵を産ませないという発想で被害を大幅に減らせます。
大根栽培では、播種直後からネットや不織布で畝全体をトンネル状に覆い、裾は必ず土でしっかり押さえることがポイントです。
目合いは、コナガやキスジノミハムシなど微小害虫まで意識するなら0.4mm前後、家庭菜園でヨトウムシやチョウの侵入を防ぐ程度なら0.8mm以下が一つの目安とされています。
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不織布を使う場合は、光と水を通しつつ風をある程度遮るため、発芽後しばらくまでは保温・保湿の効果も得られます。
ただし、二重がけにすると中が蒸れやすく、病気や徒長の原因になるため、基本は一枚がけにし、強風時や台風前だけ一時的に補強する運用が現場でも行われています。
不織布やネットは、株が大きくなり葉がトンネル天井に触れ始めたら、害虫の発生状況を見ながら一部を開けるか、もっと高さのあるトンネルに張り替えるといった対応が必要です。
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また、キスジノミハムシ対策では、播種後のトンネル被覆に加え、近紫外線カットフィルムと併用することで被害がさらに軽減した例も報告されており、光環境の工夫も無農薬防除の一手になります。
参考)キスジノミハムシを無農薬で防除する 太陽熱を利用した土壌消毒…
防虫ネットの効果や選び方、防除できる害虫の目安が整理されている家庭菜園向けの解説です。
アブラムシは増殖スピードが速く、一度付くと見た目の悪さだけでなくウイルス病の媒介源にもなるため、無農薬栽培では「つけない」「増やさない」の二段構えが重要です。
防虫ネットで成虫の飛来を抑えるのに加え、テントウムシや寄生バチなどの天敵を活かすことで、薬剤に頼らずに個体数を抑える生物的防除が有効とされています。
家庭菜園レベルでは、牛乳スプレーや石けん水、でんぷん(片栗粉)を使った散布でアブラムシの体表を覆い窒息させる方法が古くから知られており、葉物以外の作物で高い殺虫率を確認した例もあります。
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ただし、これらはあくまで「虫に直接かけること」が前提で、葉の裏にびっしり付いたコロニーすべてに行き渡らないと効果が出にくく、散布後はカビの発生を防ぐために乾きやすい環境にしておく配慮も求められます。
アオムシやヨトウムシに対しては、日中に株元の土を軽く掘って幼虫を探し、見つけ次第捕殺するというベーシックな方法が最も確実で、無農薬栽培でもよく行われています。
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一方で、ストチュー(酢・唐辛子などを漬け込んだ自家製エキス)や木酢液、ハーブエキスなどを薄めて散布する方法も、においや刺激成分による忌避効果を狙ったものとして紹介されており、発生初期の補助的な対策として位置づけられます。
参考)アブラムシの発生原因と駆除方法、予防方法を解説【無農薬でも対…
アブラムシの発生条件や、無農薬も含めた駆除・予防法を体系的に説明した記事です。
キスジノミハムシやネキリムシのように、土の中や地表付近で活動する害虫に対しては、「畑全体の環境と土作り」からアプローチする無農薬対策が重要になります。
キスジノミハムシはアブラナ科雑草や作物残渣を発生源にすることが多く、圃場周辺のナズナやキレハイヌガラシなどアブラナ科雑草を徹底的に除草することで、発生をかなり抑えられることが実証されています。
夏の高温期を利用した太陽熱土壌消毒は、透明フィルムや透明マルチで畝を密着被覆し、数週間強い日射にさらすことで、キスジノミハムシの幼虫だけでなく、線虫やネキリムシ、土壌病原菌、雑草種子までまとめて抑え込める方法です。
特に、秋まき大根の前作として太陽熱消毒を行うと、無農薬でもキスジノミハムシの被害が出にくくなり、センチュウ被害の軽減も期待できるため、有機栽培圃場で採用されるケースが増えつつあります。
参考)無農薬栽培コマツナの害虫に対する防草用シートと天敵バンカー法…
ネキリムシに対しては、被害株の近くを数センチ掘るだけで幼虫が見つかることが多く、まずは発見次第捕殺することが基本です。
加えて、卵の殻を砕いて株元にばらまき、鋭い殻で幼虫の移動を物理的に阻む方法や、ストローやトイレットペーパー芯を輪切りにして苗の周囲に立て、胚軸部分を筒状に保護するという現場発の工夫も報告されています。
参考)https://ameblo.jp/kabusecya/entry-12753214352.html
意外なところでは、圃場周辺に雑草を残しすぎない一方で、エンバクなどの緑肥作物をすき込んだり、マリーゴールドを混植することで、特定の害虫やセンチュウ類の密度を下げる効果が観察されています。
参考)キスジノミハムシを農薬を使わずに駆除できる方法を教えてくださ…
これらは即効性こそ化学農薬に劣りますが、土壌生物相を豊かに保ちつつ、数年スパンで見たときに害虫のベースラインを下げる「環境改善型」の害虫対策として位置づけられます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11316259/
キスジノミハムシの生態と、無農薬も含めた防除法、太陽熱土壌消毒の具体的手順を紹介した記事です。
現場の負担を減らしながら大根の無農薬害虫対策を安定させるには、「全部を一律に守る」のではなく、発生リスクの高い場所とタイミングだけに集中的に手をかける発想も有効です。
最近では、畑に簡易なセンサーやカメラ、温湿度ロガーなどを設置して、チョウの飛来数や夜間の葉の食害状況を自動で記録し、発生ピーク前後だけ見回りや補強対策を強化するIoT型のモニタリングが研究されています。
例えば、春先から初夏にかけて、モンシロチョウの飛来がセンサーや簡易カメラで増えたタイミングだけ、防虫ネットの裾を再チェックしたり、不織布を一時的に二重にすることで、年間を通しての作業時間を圧縮できます。
参考)https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpls.2024.1323074/pdf?isPublishedV2=False
また、黄色粘着板などのトラップを畝ごとに数枚設置し、アブラムシやコナジラミの飛来状況を視覚的に把握することで、被害が出る前の段階で物理防除や天敵保護策を重点的に行うことも可能です。
参考)アブラムシを簡単に駆除する方法7選!家庭でできる対策と予防法…
もう一つの独自視点として、圃場内でも「害虫の集まりやすい周縁部」だけを別管理にする方法があります。
参考)https://www.mdpi.com/2075-4450/14/2/111/pdf?version=1674284661
畑の風上側や周囲の雑草帯に近い列を「バンカーゾーン」と位置づけ、大根ではなく、害虫を引きつけつつ天敵のエサにもなる植物(例えば一部のアブラナ科雑草をあえて残す、蜜源植物を植えるなど)を帯状に配置し、そこで天敵が増える仕組みを作っておく手法です。
こうした局所的な管理は、全圃場に均一に防虫資材を投入するよりコストを抑えられ、作業も集中させやすくなります。
センサーやカメラを既存のスマートフォンや安価なデバイスで代用するなど、スモールスタートで導入してデータを貯めれば、その圃場特有の害虫発生パターンが見え、翌年以降の大根の作付計画や無農薬害虫対策の精度向上にもつながります。