踏圧とは土壌への影響と原因、機械での対策と生育改善

農作業で避けられない土壌の踏圧は、作物の生育に深刻な影響を与えます。この記事では、踏圧が土壌や作物に与える具体的な影響、その原因、そして大型機械を使った効果的な対策から土壌構造の改善方法までを解説します。あなたの圃場の収量低下、もしかしたら踏圧が原因ではありませんか?

踏圧とは

この記事でわかること
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踏圧の原因

なぜ土は固くなる?トラクターだけじゃない、踏圧を引き起こす様々な原因を解説します。

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作物への影響

根の伸長阻害から収量低下まで、踏圧が作物に与える深刻なダメージを具体的に見ていきます。

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踏圧への対策

土壌改良から最新の機械技術まで、固くなった土を蘇らせるための実践的な対策を紹介します。

踏圧による土壌構造の悪化とその原因



農業における「踏圧(とうあつ)」とは、トラクターやコンバインといった農業機械の重さや、作業者の歩行によって土壌が物理的に押し固められる現象を指します 。この踏圧が、目に見えない土の中で深刻な問題を引き起こすのです。
踏圧の最も大きな原因は、農業機械の大型化と重量化です 。効率を求めて導入される大型機械は、その重みで土壌に強い圧力をかけ、土の粒子間の隙間(孔隙)を押しつぶしてしまいます。特に、雨上がりなどで土壌が水分を多く含んでいる状態での作業は、土の粒子が滑りやすくなっているため、より一層土壌を固結させやすくなります。
踏圧によって引き起こされる主な問題は以下の通りです。


  • 土壌硬度の増加:土がカチカチに硬くなり、作物の根が伸びるのを物理的に妨げます。

  • 通気性の悪化:土の中の空気の通り道がなくなり、根の呼吸が困難になります。また、酸素を必要とする有用な微生物の活動も抑制されます 。

  • 透水性・排水性の低下:水の通り道も塞がれるため、水はけが悪くなります 。大雨が降ると圃場に水が溜まりやすくなり、根腐れの原因にもなります。

  • 耕盤層(こうばんそう)の形成:トラクターのプラウ(鋤)の底など、特定の深さが繰り返し押し固められることで、硬い層ができてしまいます。この層は作物の根の伸長を阻害し、下層からの水分や養分の吸収を妨げる大きな要因となります。

土壌が固結しているかどうかは、「山中式土壌硬度計」などの専門的な機器で測定できます 。この器具を使うと、土壌の硬さを数値で客観的に評価し、踏圧の影響度合いを正確に把握することができます。

土壌の健康状態を測るための指標については、農研機構のウェブサイトが有用な情報を提供しています。


農研機構:土壌の健全性指標とその活用

踏圧が引き起こす作物の生育不良と収量低下への影響


踏圧による土壌環境の悪化は、作物の生育に直接的なダメージを与え、最終的には収量や品質の低下に繋がります 。土が固くなると、作物の根は自由に伸長することができません 。特に、細い根の先端部分は非常にデリケートであり、硬い土壌に進むことができず、養分や水分を求めて土中深くにネットワークを広げることが困難になります。
具体的な影響としては、以下のような点が挙げられます。

1. 根系の発達不良 🌱

踏圧された硬い土壌では、根が物理的な抵抗に遭い、浅い範囲にしか張ることができません。これにより、乾燥時に下層の水分を利用できなかったり、土壌中の養分を効率的に吸収できなくなったりします。結果として、地上部の生育も悪くなり、ひ弱な株になってしまいます。

2. 水分・養分吸収の阻害 💧

土壌の孔隙が失われると、通気性や保水性が低下します。根は酸素呼吸を行っており、酸素不足は根の活力を著しく低下させます 。また、水はけが悪いと土壌が過湿状態になり、根腐れを引き起こす原因となります。さらに、窒素などの一部の養分は、酸素が不足する環境(嫌気的条件)では微生物の働きによってガス化し、土壌から失われてしまう「脱窒」という現象も起こりやすくなります。
3. 生育初期の遅れと収量の低下 🚜

特に発芽直後や移植後のデリケートな時期に根の伸長が妨げられると、初期生育が大幅に遅れます。この初期のつまずきは、その後の生育にも大きく影響し、最終的な収穫物の量や大きさ、品質の低下に直結します 。例えば、トウモロコシを用いた実験では、トラクターの走行回数が増えるほど土壌の密度が高まり、作物の成長が阻害されることが報告されています 。

aption>踏圧が作物に与える影響のまとめ

















影響項目 具体的な内容
物理的影響 根の伸長が物理的に困難になる。土壌が硬いため、根が深く、広く張れない。
化学的影響 通気性悪化による酸素不足で、根の呼吸が阻害される。脱窒により肥料成分(窒素)が失われる。
生物的影響 有用微生物の活動が低下し、土壌病害のリスクが高まる。根と共生する菌根菌の活動も阻害される。

踏圧対策の基本となる土壌物理性の改善方法


踏圧によって硬化してしまった土壌を改善し、作物が健全に育つ環境を取り戻すためには、土壌の物理性、つまり土の構造そのものを改良することが不可欠です 。対策は大きく分けて「物理的な破砕」と「生物的な改良」の2つのアプローチがあります。
1. 物理的な硬盤破砕

最も直接的で即効性のある対策が、硬くなった土層(特に耕盤層)を物理的に破壊することです。これには専用の農業機械が用いられます。


  • サブソイラ:爪のような作業機を地中深くに突き刺し、硬盤層を文字通り「破砕」します。土壌を大きく反転させることなく、亀裂を入れることで通気性や排水性を改善します 。

  • プラウ(鋤)耕:土を深く掘り起こし、反転させることで土壌を膨軟にし、通気性を確保します。ただし、毎年同じ深さで耕起を続けると、その下に新たな耕盤層を形成してしまうリスクもあります。

これらの作業は、土壌が適度に乾燥している時に行うのが効果的です。土が湿っていると、機械の重みで逆に土を練り固めてしまう可能性があるため、タイミングの見極めが重要です。

2. 有機物の投入による団粒構造の促進

長期的な視点で土壌を根本から改善するためには、有機物の投入が欠かせません。堆肥緑肥(りょくひ)などの有機物が土壌中の微生物によって分解される過程で、土の粒子同士を結びつける「のり」のような物質が生成されます。これにより、土が小さな塊(団粒)になる「団粒構造」が発達します 。
団粒構造が発達した土壌は、


  • 大小さまざまな隙間ができ、水や空気の通り道が確保される(ふかふかの土になる)。

  • 保水性と排水性という、相反する性質を両立できる。

  • 根が容易に伸長できる。

  • クッション性が高く、機械の重みによる圧密化に強くなる。

緑肥としては、根が深く土中を穿孔するソルガムや、多くの有機物量を確保できるエンバクなどがよく利用されます。これらの作物を栽培し、収穫せずにそのまま土にすき込むことで、土壌に豊富な有機物を供給することができます。

サブソイラなどの心土破砕機に関する詳しい情報は、農機メーカーのウェブサイトで確認できます。


小橋工業株式会社:土壌改良

踏圧を軽減する農業機械の選び方と走行方法の工夫


踏圧問題を根本的に解決するためには、土壌改良と並行して、踏圧の原因となる農業機械の利用方法を見直すことが極めて重要です。日々の作業の中で少し工夫するだけで、土壌への負荷を大幅に軽減することが可能です。

1. タイヤの選択と空気圧の管理

トラクターの重量を支えるタイヤは、踏圧に最も直接的な影響を与える部分です。


  • 幅広タイヤ・ラグタイヤの採用:接地面積を広げることで、単位面積あたりにかかる圧力(接地圧)を分散させることができます。

  • タイヤ空気圧の適正化:作業内容や圃場の条件に合わせてタイヤの空気圧を調整することが非常に効果的です。特に、圃場内では空気圧を低めに設定することで、タイヤがたわんで接地面積が広がり、踏圧を低減できます 。逆に、公道を走行する際は、燃費や安全性のために空気圧を高めに設定する必要があります。最近では、走行中でも運転席から空気圧を調整できるシステムを搭載したトラクターも登場しています。

  • クローラー(履帯)トラクターの利用:タイヤではなくキャタピラ(クローラー)で走行するタイプのトラクターは、接地面積が非常に大きいため、接地圧を劇的に低減できます。重量のある作業を行う場合や、特に湿潤な圃場で効果を発揮します。

2. 走行方法の工夫

圃場内での機械の動かし方一つで、踏圧の影響範囲を最小限に抑えることができます。


  • 同一経路の走行(トラムラインの設定):毎回同じ場所を走行するようにルートを決める「トラムライン(制御走行)」という考え方があります。これにより、踏圧されるエリアを圃場全体の一部に限定し、作付けを行う大部分の土壌を踏圧から守ることができます。

  • 湿潤状態での入圃を避ける:土壌が水分を多く含んでいるときは、圧密に対して最も脆弱な状態です。可能な限り、土壌が乾いているタイミングで作業を行うように計画することが、踏圧を防ぐ上で最も基本的な対策です。

  • 作業の同時化:複数の作業工程を一度に行える複合作業機を利用することで、圃場への機械の進入回数そのものを減らすことも有効な対策です。

非空気圧タイヤ(エアレスタイヤ)など、踏圧軽減のための新しい技術開発も進められています 。将来的に、より土壌に優しい農業機械が登場することが期待されます。

踏圧と微生物相の変化、土壌生物への意外な影響


踏圧の影響は、土の物理性や化学性だけでなく、土壌に生息する多種多様な生物、特に目に見えない微生物の世界にも及んでいます。この「土壌生物性」の変化は、しばしば見過ごされがちですが、作物の健康や病害の発生に深く関わっています。

1. 酸素不足が引き起こす微生物相の変化 🐛

踏圧によって土壌が固結し、通気性が悪化すると、土壌中は酸素が不足した「嫌気状態」に陥ります 。この環境の変化は、そこに住む微生物の種類を大きく変えてしまいます。


  • 有用菌の減少:堆肥などの有機物を分解して土を豊かにしてくれる放線菌など、多くの有用な微生物は酸素を必要とする「好気性菌」です。酸素が不足すると、これらの菌の活動が鈍化・減少し、土壌の健全性が損なわれます 。

  • 病原菌の優勢化:一方で、フザリウム菌に代表される一部の土壌病原菌は、酸素が少ない環境を好む「嫌気性菌」または「通性嫌気性菌」です。踏圧によって土壌が嫌気状態になると、これらの病原菌が優勢になりやすく、根腐れや立枯病などの土壌病害が発生するリスクが高まります 。

2. 土壌生物の住処を奪う物理的圧迫

踏圧は、微生物だけでなく、ミミズやトビムシといった、より大きな土壌動物にも深刻な影響を与えます。


  • ミミズの減少:ミミズは土を食べ、糞をすることで土壌の団粒構造を形成する「耕作者」とも言える重要な存在です。しかし、土壌が硬く締め固められると、ミミズは土中を移動することが困難になり、生息数が減少してしまいます。ミミズが減ると、彼らが作る水の通り道や団粒構造も失われ、土壌環境がさらに悪化するという悪循環に陥ります。

  • 生物多様性の低下:健全な土壌には、多種多様な生物が生息し、複雑な生態系(食物網)を形成しています。踏圧は、これらの生物の生息空間を物理的に破壊し、エサとなる有機物の循環を滞らせることで、土壌全体の生物多様性を低下させます 。生物多様性が低下した単純な生態系は、環境の変化に弱く、病害虫の異常発生などを招きやすくなります。

このように、踏圧は単に土を硬くするだけでなく、土壌生態系全体のバランスを崩し、作物が育ちにくい環境を作り出してしまうのです。化学肥料農薬に頼るだけでなく、土壌生物の力を活かした土づくりという視点からも、踏圧対策の重要性を再認識する必要があります。

森林における踏圧が土壌生物に与える影響に関する研究報告は、土壌呼吸(微生物の活動指標)が踏圧によって低下することを示唆しており、農地においても同様の現象が起こっていると考えられます。


関東森林研究:森林管理による踏圧の変化が土壌呼吸に及ぼす影響




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