家庭菜園や小規模農業で絶大な人気を誇るヤンマーのミニ耕運機「ポチ」(MRTシリーズなど)。コンパクトで扱いやすいこの機械も、長く使い続けるためには定期的なメンテナンスが欠かせません。特にエンジンオイルの交換は、機械の寿命を左右する最も重要な作業の一つです。
「農機具屋さんに頼むと費用がかかる」「自分でやるのは難しそう」と感じている方も多いかもしれませんが、実は耕運機のオイル交換は、手順さえ覚えれば誰でも簡単に行うことができます 。必要な道具もホームセンターで揃うものばかりです。
参考)耕うん機のオイルを10年ぶりに交換してみた
この記事では、ヤンマー「ポチ」のオイル交換について、メーカー推奨の交換時期や適切なオイルの量、種類、そして実際の作業手順を初心者にもわかりやすく解説します。さらに、多くの人が見落としがちな「ギアオイル」や「エアクリーナー」のメンテナンスについても深掘りしていきます。
まずは、オイル交換を始める前に知っておくべき基礎知識、すなわち「いつ」「何を」「どれくらい」使うのかを明確にしましょう。間違った種類のオイルを入れたり、交換時期を逃したりすると、エンジンの焼き付きや故障の原因になります。
ヤンマーの取扱説明書によると、エンジンオイルの交換時期は以下のように推奨されています 。
特に新品の機械を下ろした直後は、部品同士が馴染む過程で金属粉が出やすいため、早めの交換が必須です。また、使用頻度が少なくても、オイルは酸化して劣化するため、最低でも年に1回は交換しましょう。
機種によって多少異なりますが、ポチ(MRTシリーズ)の一般的な規定量は以下の通りです。入れすぎには十分注意が必要です。
参考)https://www.yanmar.com/jp/construction/service_support/oil/cycle.html
※正確な量は必ずお手持ちの取扱説明書、または本体に貼られたラベル(コーションプレート)を確認してください。
ヤンマー農機 取扱説明書ダウンロードページ(型式から正確な油量を確認できます)
それでは、実際に自分でエンジンオイルを交換する手順を見ていきましょう。作業にかかる時間は、慣れれば15分〜20分程度です。
準備するもの
作業ステップ
冷えた状態だとオイルが硬く、抜けにくいため、作業前に2〜3分ほどエンジンをかけて温めます 。温めることでオイルの粘度が下がり、汚れと一緒に排出しやすくなります。
ここがポイントです。ポチなどの小型耕運機は、ドレンボルト(排出口)の位置が低く、そのままでは廃油受けを下に置きにくいことがあります。
そこで、片側のタイヤの下に厚さ5cm程度の木の板やブロックを敷きます 。こうすることで車体が傾き、ドレンボルトの下にスペースができるだけでなく、排出口が一番低い位置に来るように調整すれば、古いオイルを最後の一滴までスムーズに抜くことができます。
ドレンボルト(エンジンの下部側面にあります)の下に廃油処理箱をセットし、レンチを使ってボルトを緩めます。ボルトを外すと勢いよく黒いオイルが出てくるので、手にかからないように注意してください。
同時に、上部の給油キャップ(検油ゲージ)も外しておくと、空気が入って抜けが良くなります 。
オイルがポタポタと落ちなくなったら、ドレンボルトを元通りに締めます。この時、ボルトについているパッキン(ワッシャー)が潰れていたり傷んでいたりする場合は、新品に交換することをお勧めします(オイル漏れ防止のため)。締め付けトルクは強すぎないように注意してください。アルミのエンジンケースは強く締めすぎるとネジ山が破損します。
給油口から新しいオイルを規定量入れます。オイルジョッキを使うとこぼさずに済みます。
注意: 一気に規定量全量を入れるのではなく、少し少なめに入れてから微調整するのがコツです。
最後に検油ゲージで量を確認します。ここも間違いやすいポイントですが、ヤンマーの多くの機種では、検油ゲージはねじ込まずに、給油口に差し込んだだけでレベルを確認します 。
参考)https://www.yanmar.com/jp/agri/agrilife/kitchen_garden/use/maintenance.html
ゲージの先端をウエスで拭き、差し込んで抜き取り、上限ラインと下限ラインの間にオイルが付着していればOKです。
エンジンオイルは交換しても、ギアオイル(ミッションオイル)は「買った時から一度も変えていない」という方が意外と多いのではないでしょうか?しかし、ギアオイルも劣化します。特にロータリー(耕うん爪)を回すための重要な駆動部分を守るオイルなので、定期的なケアが必要です。
ギアオイルは、内部のギア(歯車)同士の摩耗を防ぎ、冷却する役割を持っています。長期間交換しないと、結露による水分混入で乳化(白く濁る)したり、金属粉が溜まってギアやベアリングを傷つけたりします。また、オイルシール(油漏れを防ぐゴム部品)の保護という観点からも重要です 。
基本的にはエンジンオイルと同様ですが、場所が異なります。
ギアオイルはエンジンオイルよりも粘度が高く(ドロっとしている)、抜けるのに時間がかかります。気長に待ちましょう。また、入れる際もなかなか入っていかないため、ゆっくりと注ぐ必要があります。
検索上位の記事ではエンジンオイル交換ばかり注目されがちですが、農機具特有のメンテナンスポイントとして「エアクリーナー(エアフィルター)」があります。実は、ヤンマーのポチを含む多くの管理機では、「湿式(オイルバス式)」と呼ばれるエアクリーナーが採用されていることがあります。
埃の多い畑で使用する耕運機は、空気中の砂埃をエンジンに吸い込まないように強力なフィルターが必要です。オイルバス式は、ケースの底にオイルを溜めておき、吸い込んだ空気を一度オイルに当ててゴミを吸着させる仕組みです。
ここでもオイルが使われていることを忘れてはいけません。
この作業を怠ると、汚れた空気がそのままエンジンに入り込み、シリンダーやピストンリングを摩耗させ、エンジンの寿命を劇的に縮めてしまいます。「オイル交換したのに調子が悪い」という場合、ここが原因のことが多いのです。
最後に、作業後の処理と、よくある失敗を防ぐための注意点をまとめます。
抜いた廃油は、絶対に庭の土に埋めたり、下水道に流したりしてはいけません。環境汚染になるだけでなく、法律で禁止されています。
ホームセンターで売られている「廃油処理箱(オイルパック)」を使用するのが最も簡単です。中にある綿や木屑にオイルを吸わせ、燃えるゴミとして捨てることができます(※自治体の区分に従ってください)。
「たくさん入れたほうが安心」は大間違いです。規定量を超えてオイルを入れると、以下のようなトラブルが発生します 。
参考)https://www.yanmar.com/media/jp/2016/agri/yk300qt_manual.pdf
参考)ヤンマー耕運機ポチのオイルシール交換したら、忘れずにギアオイ…
必ず検油ゲージで確認し、少しずつ足していくのが鉄則です。
ガソリンエンジンの近くで作業するため、タバコを吸いながらの作業は厳禁です。また、マフラーが熱い状態でオイルがかかると発火の恐れがあります。エンジンを少し冷ましてから(火傷しない程度に温かい状態で)作業するか、こぼれたオイルはパーツクリーナーできれいに拭き取ってください。
定期的なオイル交換は、愛機「ポチ」への愛情表現です。シーズン初めの準備として、ぜひ次の週末にチャレンジしてみてください。スムーズなエンジン音と共に、快適な耕うん作業が待っています。