オイルシール規格JISの寸法と種類一覧!型式や材質の選び方は?

オイルシールのJIS規格について、寸法や種類の見方、材質の選び方を解説します。農機具のメンテナンスにも役立つ、交換時期や軸摩耗時の補修方法についても詳しく知りたいですか?

オイルシールの規格JISと農機具での選び方

オイルシール規格JISの基礎知識
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寸法の測り方

軸径・外径・幅の3点を正確に計測。刻印を確認するのが確実。

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材質の選定

NBRは一般的、フッ素ゴムは耐熱・耐薬品性。農薬付着部は要注意。

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交換のサイン

リップの硬化や軸の摩耗溝を確認。漏れ=即交換が基本。

オイルシールは、機械の内部から潤滑油(オイルやグリース)が漏れ出すのを防ぎ、同時に外部から水やダスト(ほこり・土砂)が侵入するのを防ぐ重要な部品です。特にトラクターやコンバインなどの農機具においては、過酷な環境下で使用されるため、適切な規格選定が機械の寿命を左右します。

 

日本ではJIS B 2402という規格に基づいて寸法や種類が定められており、NOKや武蔵オイルシールといった主要メーカーもこの規格に準拠した製品を製造しています 。しかし、単にサイズが合えば良いというわけではありません。ここでは、JIS規格に基づく正しい選び方と、現場で役立つ知識を深掘りしていきます。

 

参考)繧ェ繧、繝ォ繧キ繝シ繝ォ笶朗OK譬ェ蠑丈シ夂、セ

JIS B 2402-1:2013 オイルシール-第1部:寸法及び公差(Kikakurui.com)
※JIS規格の原文を確認でき、詳細な寸法公差表が掲載されています。

 

オイルシール 基礎知識(NOK株式会社)
※国内最大手メーカーによる型式記号や構造の図解があり、初心者にも分かりやすいです。

 

オイルシールJIS規格の寸法と軸径公差の確認

 

オイルシールを交換する際、最も重要なのが「寸法」の正確な把握です。JIS規格(JIS B 2402-1)では、以下の3つの主要寸法が規定されています 。

 

参考)JISB2402-1:2013 オイルシール−第1部:寸法及…

  • 軸径 ($d$):シールが接触するシャフトの直径
  • 外径 ($D$):シールをはめ込むハウジング穴の直径
  • 幅 ($b$):シールの厚み

これらは通常、オイルシール本体のゴム部分に「UE 30 45 8」のように刻印されています。この例では、軸径30mm、外径45mm、幅8mm、型式がUE型であることを示しています。刻印が読み取れない場合は、ノギスを使って実測する必要がありますが、ここで注意が必要です。

 

  • 摩耗した軸を測らない:

    古いシールが接触していた部分は摩耗して細くなっている可能性があります。必ず摩耗していない健全な軸部分を計測してください。

     

  • ハウジング(穴)の公差:

    JIS規格では、オイルシールの外径はハウジング穴に対して「はめあい公差(締め代)」を持つように少し大きく作られています 。外した古いシールは変形していることが多いため、シール自体ではなく、機械側の「軸径」と「ハウジング穴径」を測るのが正解です。

     

    参考)オイルシール規格の寸法公差と材質選定

意外と知られていない「軸の表面粗さ」の重要性
実は、軸の表面は「ツルツルであればあるほど良い」というわけではありません。JIS規格やメーカー推奨値では、軸の表面粗さは Ra 0.2~0.63μm (Rz 0.8~2.5μm) 程度が適切とされています 。

 

参考)技術計算製作所:シールの設計 ==機械設計に必要な情報とWe…

  • 粗すぎる場合: ヤスリのようになってゴムリップを削り、早期摩耗や漏れの原因になります。
  • 滑らかすぎる場合: 鏡面のようにツルツルすぎると、潤滑油を保持する微細なポケットがなくなり、油膜切れを起こしてリップが焼き付きます。

サンドペーパーで軸を磨く際は、細かすぎる番手(2000番以上など)で鏡面に仕上げてしまうと、逆に寿命を縮める可能性があるという点は覚えておいてください。

 

オイルシールJISの種類と型式記号の材質一覧

寸法が決まったら、次は「種類(型式)」と「材質」の選定です。JIS規格に基づく記号と、メーカー独自の記号が混在していることが多いため、互換性表を確認することが重要です 。

主な型式と特徴
農機具でよく使われるのは、以下のタイプです。特に「ダスト」対策が重要になります。

 

JIS記号 NOK記号 武蔵記号 特徴・用途
TYPE 4 SC UE 【基本形】 ゴムのみの外周。シングルリップ。ダストの少ない油用。
TYPE 4 D TC UE (ダスト付) 【農機具推奨】 ゴム外周。ダブルリップ(オイル用主リップ+ダスト用副リップ)。
- SB AD 金属環が露出しているタイプ。強度は高いが、ハウジング内面の傷に弱い。
- TB AD (ダスト付) 金属環露出のダブルリップタイプ。

農機具の車軸やロータリー軸など、泥水や土埃がかかる場所には、必ずダストリップ付き(ダブルリップ)を選んでください 。ダストリップがないシングルリップを使用すると、すぐに砂を噛み込み、主リップを傷つけて油漏れが発生します。

 

参考)オイルシールの種類と特徴 - 武蔵オイルシール工業株式会社

材質の選び方:NBRかフッ素か?
材質選定を間違えると、数時間で漏れ出すこともあります。

 

  • ニトリルゴム (NBR):
  • フッ素ゴム (FKM):
    • 特徴: 耐熱性、耐薬品性が非常に高いが、高価。
    • 温度範囲: -20℃ ~ 220℃。
    • 用途: 高温になるエンジン周りや、特定の添加剤を含むギアオイル、農薬がかかる散布機のポンプ軸など。
  • アクリルゴム (ACM):
    • 特徴: 耐熱性はNBRより高いが、耐寒性が劣る。一部の自動車エンジン用。

    「とりあえず高いフッ素ゴムにしておけば安心」と思いがちですが、フッ素ゴムは低温(寒冷地での始動時など)での追従性がNBRより劣る場合があります 。使用環境(北海道の冬の朝など)によっては、NBRの方が適しているケースもあるため、純正指定の材質を確認するのが無難です。

     

    参考)オイルシール(その2) ~オイルシールの「選び方」~

    農機具のオイルシール交換とダスト対策の注意点

    農機具におけるオイルシール交換は、産業機械とは異なる「泥」との戦いです。JIS規格品を正しく選んでも、取り付け方にミスがあるとすぐにダメになります。

     

    1. 泥と草の「巻き付き」対策
    トラクターのロータリーや草刈り機のギアボックス軸では、草やツルが軸に巻き付き、それがオイルシールを物理的に破壊することがあります 。

     

    参考)https://journal.unpar.ac.id/index.php/jrsi/article/download/4023/3137

    • プロテクターの確認: 純正には「シールプロテクター」や「草除けカラー」が付いていることが多いです。修理時にこれを捨てたり、付け忘れたりしないようにしてください。
    • カセットシールの採用: 最近の農機具(KubotaやYanmarなど)では、JIS標準のオイルシールではなく、金属のスリーブとシールが一体化した「カセットシール(パックシール)」が採用されていることがあります 。これは泥水に非常に強いため、普通のJIS汎用品(TC型など)で代用すると、すぐに漏れてしまう可能性があります。純正部品の形状が複雑な場合は、必ず純正を取り寄せてください。

      参考)軸付きオイルシール

    2. 装着時の「リップめくれ」防止テクニック
    軸にスプライン(溝)や段差がある場合、そのままシールを押し込むとリップが傷ついたり、めくれたりします 。

     

    参考)クランクシャフトオイルシールとは?構造や故障時の症状・交換費…

    • ペットボトル活用: 専用の挿入治具がない場合、炭酸飲料などのツルツルしたペットボトルを切り取り、軸に巻き付けてスロープを作ります 。その上からオイルシールを滑らせて挿入し、最後にペットボトルを引き抜くことで、リップを無傷で通過させることができます。

      参考)JA12,JA22,JB32

    • ビニールテープ: 軸の段差やキー溝にビニールテープを巻いて保護するのも有効です。

    3. グリース充填の重要性
    新品のオイルシールを組む際、リップ部分(主リップとダストリップの間)に必ずリチウムグリースを塗布してください 。

     

    参考)オイルシール(その1) ~オイルシールの「構造・機能」と「形…

    • 初期潤滑: 組み付け直後のドライスタート(油が回ってくる前の回転)による「リップ焼き付き」を防ぎます。
    • ダストバリア: グリース自体が土埃の侵入を防ぐフィルターの役割を果たします。

    オイルシール寿命の目安と摩耗による漏れトラブル

    オイルシールは消耗品ですが、その寿命は環境によって数千時間から数万時間と大きく異なります 。

    交換が必要なサイン

    1. リップの硬化(へたり): ゴムがプラスチックのようにカチカチになり、弾力性がなくなっている。爪で押しても戻らない状態。
    2. リップ先端の摩耗: 軸と接触する鋭利な先端が削れて平らになっている 。摩耗幅が広がると、油膜を保持できず漏れが発生します。

      参考)オイルシールの摩耗メカニズムと寿命延長のための設計ポイント

    3. スプリングの脱落: リップを締め付ける金属バネ(ガータースプリング)が外れている、または錆びて折れている。

    意外な漏れ原因:「軸の振れ」と「偏心」
    規格通りのシールを使っていても漏れる場合、軸受(ベアリング)がガタついている可能性があります。

     

    JIS B 2402では、軸の偏心(中心がズレて回ること)の許容値が厳しく定められています。ベアリングが摩耗して軸がガタガタ動く状態では、ゴムのリップが追従できず、隙間からオイルが漏れ出します 。

    オイルシール交換時は、必ずシャフトを手で揺すってガタがないか確認してください。ガタがある場合は、ベアリング交換も同時に行わないと、新しいシールもすぐにダメになります。

     

    軸摩耗の救世主!スリーブ補修とJIS規格外の対応

    これが今回最もお伝えしたい、検索上位にはあまり出てこない「現場の裏技」です。

     

    長く使った農機具は、オイルシールのリップが当たる部分のシャフトが削れて「溝」ができていることがよくあります 。

     

    参考)https://www.fukudaco.co.jp/products/types/maintenance/sleeve/sleeve01.html

    この状態で新しいJIS規格のシールを入れても、同じ溝にはまってしまい、隙間が埋まらずに漏れが止まりません。かといって、シャフトごと交換すると数万円~十数万円の修理費がかかります。

     

    解決策:補修用スリーブ(Speedi-Sleeveなど)の活用
    SKF社の「スピーディ・スリーブ」や、類似の補修用薄肉ステンレススリーブを使用する方法があります 。

     

    参考)https://www.monotaro.com/k/store/%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%96%20%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%AB/

    • 仕組み: 摩耗した軸の上に、厚さ約0.25mm~0.28mmの超薄型ステンレススリーブを打ち込みます。
    • メリット:
      • サイズ変更不要: スリーブが極薄なので、今までと同じ型番(JIS規格)のオイルシールがそのまま使えます
      • 耐久性向上: スリーブの表面は適切な粗さと硬度に加工されているため、元のシャフトよりも耐摩耗性が向上することがあります。
      • コスト削減: シャフト交換や溶接肉盛り・再研磨に比べて、圧倒的に安く、短時間で修理できます。

      JIS規格外(インチサイズ)への対応
      Ford、Massey Ferguson、John Deereなどの輸入トラクターや、古い国産機の一部では、JIS規格(ミリサイズ)ではなく「インチサイズ」のオイルシールが使われていることがあります。

       

      • 無理やりミリを使わない: 例として、軸径 1インチ(25.4mm)の場所に、JISの25mm用シールを無理に入れると、締め付けがきつすぎてすぐに焼き付きます。逆に26mm用だと漏れます。
      • 入手方法: モノタロウなどの通販サイトや、ベアリング専門店で「インチサイズ」を指定して検索してください。NOKや武蔵オイルシールも、JIS外のインチサイズを多数ラインナップしています。型番が分からない場合は、現物をノギスで「インチ換算(1/1000インチ単位)」で測る必要があります。

      SKFスピーディ・スリーブ(株式会社フクダ)
      ※軸が摩耗して漏れが止まらない場合の「補修スリーブ」の詳細解説です。

       

      オイルシールの種類と特徴(武蔵オイルシール工業)
      ※農機具用や特殊型式(カセットシール等)の構造が詳しく載っています。

       

       


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