白マルチを夏に張っても、黒マルチと同じ感覚で使うと収量が3割近く落ちることがあります。
白マルチ(正確には白黒マルチ)の最大の特長は、表面の白色が太陽光を強く反射することによる「地温抑制効果」です。農研機構 西日本農業研究センターの資料によれば、白黒マルチシートの白色面は太陽光を30%以上反射する能力を持っており、これは市販の既製品反射シートと同等の反射率です。
夏場、何も被覆しない裸地では地温が40℃を超えることも珍しくありません。黒マルチを使用した場合、気温より5℃以上高くなることが確認されています(シェア畑栽培研究室の実証試験より)。一方、白マルチを使用すると平均地温が「マルチなし」よりもさらに低く抑えられるというデータもあります。
地温が高すぎると、根が傷み生育不良や収量低下を引き起こします。これが正に「高温障害」です。野菜の根は一般的に30℃を超えると機能が低下し始め、40℃近くになるとダメージが出始めると言われています。黒マルチより地温が約5℃低いということは、猛暑日には根の環境がまるで違うということですね。
みかど化工株式会社の「チョーハンシヤ」のような高機能な白黒マルチでは、独自配合により通常の白黒マルチより最大2℃の地温抑制効果向上が確認されています。また、全面微細孔加工を施した「サマーマルチ」タイプでは蒸散効果でさらに1〜2℃の抑制が可能で、猛暑の夏に実績を上げています。
白マルチが特に効果を発揮する野菜は、キャベツ・レタス・白菜などの葉物野菜です。これらは20〜25℃程度の比較的涼しい環境を好み、高温になると「とう立ち(花が咲いて収穫終了)」が早まります。地温を1〜2℃抑えるだけで、収穫できる期間が数日〜1週間以上伸びることもあります。これは使えそうです。
夏まきの葉物野菜を播種する際には、発芽に地温の影響を直接受けます。白マルチで発芽に適した地温を維持することで、発芽率の安定にもつながるため、播種直後から白マルチを使うことが基本です。
参考:農研機構西日本農業研究センター「白黒マルチシート」パンフレット(地温調整・光反射率の実証データを掲載)
農研機構 白黒マルチシートパンフレット(PDF)
白マルチの雑草抑制効果は、裏面の黒色が担っています。白黒マルチは表が白・裏が黒の2層(または3層)構造になっており、白面を上にして張ると、地面に届く光を黒面がほぼ完全に遮断します。光のない環境では雑草は光合成ができないため、発芽しても育つことができません。つまり雑草対策と地温抑制を同時に実現できるということです。
農研機構の実証試験では、黒色面を上に向けて1年間敷設したシートで、主にイネ科雑草の草生量が大幅に抑制されることが確認されています。白マルチを正しく張れば、夏の草取り作業を大幅に減らせるわけです。実際、除草作業は収穫・摘果と並んで農業現場の労力の大きな割合を占めており、高齢化が進む生産現場での省力化に直結します。
雑草抑制以外にも、マルチを畝に張ることで得られる土壌保護の効果があります。雨が直接土に当たらなくなるため、泥はねによる病原菌の付着を防げます。また、雨水による肥料の流出も抑えられ、施肥した養分が無駄になりにくくなります。水分の蒸散を抑える保水効果もあるため、灌水の頻度を減らせる点も農業経営上のメリットです。
白マルチを使う際は、張り方が肝心です。マルチがたるんでいると風でめくれやすく、隙間から光が入って雑草が生えてしまいます。裾をしっかり土に埋めてピンと張ること、そして畝の表面と側面を均一になめらかにしてからマルチを張ることが、雑草抑制効果を最大限に引き出す条件です。
| マルチの色 | 地温 | 雑草抑制 | 害虫忌避 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 透明 | 最も高い | ×(光を通す) | なし | 春先の地温上昇・土壌消毒 |
| 黒 | 高い | ◎ | なし | 春〜初夏の万能タイプ |
| シルバー(銀黒) | 抑制 | ◎ | ◎◎(最強) | 害虫が多い時期の夏野菜 |
| 白(白黒) | 最も低い | ◎ | ○ | 夏の葉物・高温対策全般 |
雑草が特に繁茂しやすい圃場では、白黒マルチと防草シートの組み合わせも検討に値します。ただし白マルチ一枚でも、適切に張れば1シーズンを通じた雑草管理がかなり楽になります。農閑期の前に圃場全体の除草を済ませてから張るのが原則です。
白マルチには害虫忌避効果もあります。アブラムシやアザミウマ(スリップス)などの害虫は、光を反射するキラキラした面を嫌う性質を持っています。白マルチの白色面が太陽光を反射することで、これらの害虫が圃場に近づきにくくなります。
ただし、この点で白マルチとシルバー(銀黒)マルチを比べると、防虫効果はシルバーのほうが高いとされています。サカタのタネのFAQでも「アブラムシなどの害虫飛来を軽減する効果がありますが、シルバー・銀黒マルチほどではありません」と明記されています。つまり白マルチの害虫忌避効果は補助的なものと位置づけるのが適切です。
害虫が多い環境や時期に重点的に防虫したい場合は、銀黒マルチを選ぶほうが効果は大きいですね。一方、高温対策が最優先で、ある程度の防虫効果もほしいという場合には白マルチ(白黒マルチ)が適した選択肢となります。地温抑制効果は白黒マルチのほうがシルバーマルチより高いため、猛暑対策を優先するなら白マルチが有利です。
アブラムシが媒介するモザイク病などのウイルス病は、一度発症すると有効な治療手段がほとんどなく、圃場ごと廃棄せざるを得ないケースもあります。農薬コストや廃棄ロスを減らす意味でも、マルチによる物理的な害虫忌避は積極的に取り入れたい対策です。
防虫効果をさらに高めたい場合は、白マルチに加えて防虫ネットを併用する方法があります。マルチで土面からの飛来を抑え、ネットで空中からの侵入を防ぐ2段構えで、農薬使用量を抑えながら作物を守ることができます。病害虫の種類や発生状況を確認した上で、白マルチ単独か、銀黒マルチ+ネットかを選ぶのが賢明です。
参考:サカタのタネ「マルチ色の違いと効果について」
サカタのタネ よくある質問:マルチ色の違いと害虫忌避効果
白マルチのあまり知られていない活用法として、果樹の「着色促進・品質向上」への応用があります。農研機構 西日本農業研究センターが開発した白黒マルチシートは、白色面を上にして果樹園の地表に敷設すると、太陽光を30%以上反射し、通常は光が届きにくい葉や枝の内部にまで光を届けることができます。
これにより、樹全体の光合成量が増え、桃・カンキツ類などで着色増進と高糖度化が期待できることが実証されています。特に傘のように枝が広がった樹では、下側の果実や内部の果実が着色不足になりがちですが、白マルチの反射光が果実全体にまんべんなく当たることで、色ムラの改善につながります。
JA中野市(長野県)のりんご・もも部会では、着色促進用の反射マルチの色を「シルバー」から「白系」に変更した事例が報告されています。シルバーよりも白のほうが、特定の条件下では着色改善に適していると評価された例です。果樹農家がマルチを「地温調整」だけのものと考えていると、この着色促進効果を見逃してしまいます。これが大きな機会損失になることもあります。
果実の外観品質(色)は市場価格に直結します。着色不足の果実は等級が下がり、同じ作業量でも販売単価が大きく変わります。例えばりんごや桃では、着色の良し悪しで1kgあたり数十円〜数百円の単価差が生まれることも珍しくありません。白マルチ1枚の投資(1反あたりマルチ資材費は数千円程度)で品質等級が1段階上がれば、その差は十分に回収できます。着色改善が目的なら問題ありません。
果樹への活用で注意したいのは、敷設するタイミングです。着色を促進させたい場合は、果実が膨らみ始めて着色が始まる「袋外し」の時期に白面を上にして敷設するのが効果的です。それ以外の時期には黒面を上にして防草目的で使うという、リバーシブルの使い分けができるのも白黒マルチの強みです。
参考:農研機構西日本農業研究センター 白黒マルチシートによる光環境改善と果実品質向上の実証データ
農研機構:白黒マルチシート(果樹着色促進・品質向上の根拠資料)
白マルチが本領を発揮するのは「夏の高温期」と「夏〜秋まきの葉物野菜」です。具体的には以下のような野菜・場面で積極的に選ぶ価値があります。
一方で「白マルチを使えばすべて解決」ではないという点も押さえておく必要があります。白マルチは地温を下げる一方で、春先の低温期には地温が上がりにくく、冷え込みが続く時期には根の生育が遅れる原因になります。春の植え付け直後に白マルチを選ぶと、活着が遅れることがある点は注意が必要です。春植えの夏野菜(トマト・ナス・キュウリなど)では、活着期は黒マルチで地温を確保し、真夏になってから白マルチに切り替えるか、最初から白黒マルチを使うという方法が現実的です。
ここで、白マルチと銀黒マルチのどちらを選ぶかという視点も重要です。シェア畑栽培研究室が実施した実証試験(東京都西東京市)では、地温抑制効果の順位として「白マルチ<マルチなし<銀マルチ<黒マルチ」となり、白マルチが最も地温を低く抑えられることが確認されています。一般的なイメージでは「シルバーが涼しそう」と思われがちですが、実は白マルチのほうが地温抑制効果が上のケースも多いという意外な事実があります。
農業資材費の観点からも整理しておきましょう。黒マルチより少し高価な白黒マルチですが、10アールあたりの差額は「数千円」程度です(note:agri_strategyの記事より)。高温障害による品質低下・収量ロスのリスクと比べれば、白マルチへの切り替えコストは十分に元が取れる投資と言えます。どちらを選ぶかで迷ったときは、「高温対策が優先なら白黒マルチ」「防虫が優先なら銀黒マルチ」と覚えておくだけでOKです。
参考:シェア畑栽培研究室による白・黒・銀マルチの地温比較実験(リーフレタスを使用した実証データ)
シェア畑:何色のマルチが適している?マルチ種類別の地温実験記録