珪酸質肥料の効果と施用方法の基本

珪酸質肥料は水稲栽培に欠かせない資材ですが、正しい施用方法をご存知ですか?効果的な使い方を知らないと、せっかくの投資が無駄になってしまうことも。施用量やタイミング、肥料の種類による違いまで、あなたの水田経営を守る情報をお届けします。収量と品質向上のカギを握る珪酸質肥料について、今すぐ確認しませんか?

珪酸質肥料の効果と施用の基本

稲わら還元だけでは年間140kg必要なケイ酸の半分も補給できません。


この記事の3つのポイント
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ケイ酸は水稲に必須の成分

水稲は年間140kg/10aものケイ酸を吸収し、窒素の約10倍もの量を必要とします。光合成の促進や倒伏防止、病害虫への抵抗力向上に効果的です。

施用時期が効果を左右する

出穂30~40日前の追肥が最も効果的で、この時期に全吸収量の60%以上が吸収されます。基肥では10a当たり40~60kg、追肥では30~40kgが目安です。

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肥料の種類で特性が異なる

ケイ酸加里、ケイカル、シリカゲルなど溶解性や用途が異なる肥料があります。土壌診断で可給態ケイ酸が15mg/100g未満なら積極的な施用が必要です。


珪酸質肥料が水稲に与える重要な効果



珪酸質肥料は水稲栽培において極めて重要な役割を果たす資材です。水稲はケイ酸を窒素の約10倍、リン酸の約20倍も吸収するケイ酸植物であり、収量500kg/10aを目標とする場合、年間で約120~140kg/10aものケイ酸を必要とします。


これは農作物の中でも特に多い吸収量です。


ケイ酸が水稲に吸収されると、葉や茎の表面にガラス質のケイ化細胞が形成されます。このケイ化細胞は植物組織を物理的に強化し、細胞壁を硬くする働きがあります。結果として茎の強度が向上し、台風や強風による倒伏被害のリスクが大幅に軽減されるのです。


光合成の促進効果も見逃せません。ケイ酸によって葉が直立するようになり、太陽光を受ける面積が増加します。葉同士の重なりも少なくなるため、下葉まで十分な光が届き、光合成効率が高まります。ケイ酸が葉の表面でレンズのような役割を果たし、光を効率的に取り込むという研究報告もあります。


害虫への抵抗力向上も重要な効果です。ケイ化細胞が物理的なバリアとなり、いもち病やごま葉枯病などの病原菌の侵入を防ぎます。害虫による食害も減少し、農薬使用量の削減にもつながります。


つまり倒伏防止が基本です。


食味の向上にも寄与します。十分にケイ酸を吸収した水稲は光合成が活発になり、籾にデンプンを効率的に蓄えられます。その結果、タンパク質含有率が低下し、炊飯時の粘りや甘みが増して食味が向上するのです。登熟期が高温になった年でも、ケイ酸が水分蒸散を適切に調整し、背白米や基白米の発生を抑制する効果も報告されています。


珪酸質肥料の種類と溶解性の違い

珪酸質肥料には溶解性や成分構成が異なる複数の種類があり、それぞれ用途や効果の表れ方が異なります。適切な肥料を選ぶことが、施用効果を最大化するカギとなります。


ケイ酸加里肥料は最も広く使われている珪酸質肥料の一つです。火力発電所の石炭灰に水酸化カリウムやマグネシウムを混ぜて焼成したもので、pH10前後のアルカリ性を示します。「く溶性」という特性を持ち、水には溶けにくいものの、根から分泌される根酸や土壌中の有機酸によって緩やかに溶け出します。基肥・追肥の両方に使用でき、水稲では10a当たり基肥40~60kg、追肥30~40kgが標準的な施用量です。


ケイ酸カルシウム、通称「ケイカル」は砂状または粒状で販売されています。ケイ酸含有率が約30%と高く、石灰・マグネシウム・マンガン・鉄・ホウ素などの微量要素も含んでいます。酸可溶性の性質を持ち、土壌pHをアルカリ性に矯正する効果もあります。価格が比較的安価なため、集団での機械散布を推進する営農団体も増えています。基肥として10a当たり120~200kgを施用するのが一般的です。


この量は土壌条件で変わります。


シリカゲル肥料は可溶性ケイ酸を90%以上含む水溶性の肥料で、pH4.0~6.0の弱酸性を示します。水への溶解度が非常に高いため、主に育苗期に使用されます。育苗箱1箱当たり150~500gを床土に混合することで、苗のケイ酸吸収量が高まり、定植後の活着がスムーズになります。過剰施用による濃度障害の心配が少ないのも特徴です。


ケイ酸マグネシウム(ケイ酸苦土)は葉緑素を構成するマグネシウムを豊富に含み、水溶性が高いため施肥効果が早く表れます。「マインマグ」シリーズなどの商品名で販売されており、水稲だけでなく果樹・野菜栽培にも幅広く使用されています。育苗段階から使用可能で、育苗箱1箱当たり50g、基肥30~45kg/10a、追肥15~30kg/10aが目安です。


ようりん(熔成リン肥)はく溶性のケイ酸・マグネシウム・リン酸を含み、40~50%のアルカリ分も含んでいます。稲わらや籾がらなどの有機物の分解を促進する効果があり、地力向上にも貢献します。土壌pHを穏やかに調整できるため、石灰資材よりも扱いやすいという利点があります。


もみ殻くん炭は籾がらを蒸し焼きにして炭化させた資材で、pH8~10のアルカリ性です。ケイ酸補給だけでなく、土壌の保水性・通気性を向上させる土壌改良効果も期待できます。マンガン・鉄・カリウムなども含まれており、連作障害の緩和にも役立ちます。


珪酸質肥料の効果的な施用時期とタイミング

珪酸質肥料の効果を最大限に引き出すには、施用時期とタイミングが極めて重要です。水稲のケイ酸吸収パターンを理解し、適切な時期に施用することで、少ない施用量でも高い効果が得られます。


水稲のケイ酸吸収は生育ステージによって大きく異なります。最も吸収が旺盛になるのは幼穂形成期以降で、全吸収量の約60%以上がこの時期に集中します。そのため、基肥だけでなく追肥での施用が非常に効果的なのです。特に出穂30~40日前の追肥は、登熟向上や千粒重の増加に直結します。


基肥として施用する場合は、田植えの2~3週間前、耕起前に全面散布します。作土深を15cm以上確保することで、根域が拡大し、天候変動の影響を受けにくくなります。春施用と秋施用で耐倒伏性や千粒重にはほとんど差がありませんが、秋施用の場合は収穫後に稲わらと一緒にすき込むと、有機物の分解促進とケイ酸補給の両方の効果が得られます。


出穂40日前頃が最適です。


追肥施用のベストタイミングは中干し前から中干し開始頃です。この時期になると地表面に沿ってうわ根が張り出しており、根から分泌される根酸によってケイ酸が効率的に吸収されます。最高分げつ期から幼穂形成期までの間に施用することで、穎花の退化を防ぎ、一穂籾数を増やす効果も期待できます。


施用後の水管理については、特別な配慮は必要ありません。ケイ酸加里肥料やケイカルは水に溶けにくく、根酸や土壌中の酸に溶ける性質を持つため、通常の水管理を続けて問題ありません。ただし、中干しによって根の活性が高まると、ケイ酸の吸収効率もさらに向上します。


高温登熟年への対応も重要です。登熟期が高温になると予想される年には、出穂30日前のケイ酸追肥が特に効果的です。この時期にケイ酸を施用すると、葉からの過剰な水分蒸散が抑えられ、籾へのデンプン転流がスムーズになります。その結果、背白米や基白米の発生が抑制され、品質低下を防げるのです。


育苗期の施用も忘れてはいけません。シリカゲル肥料を育苗箱に施用すると、苗のケイ酸含有率が高まり、定植後の初期生育が旺盛になります。病害虫への抵抗力も向上し、健全な苗を育てることができます。


珪酸質肥料の施用量と土壌診断の重要性

珪酸質肥料の適切な施用量を決定するには、土壌診断による可給態ケイ酸の測定が不可欠です。土壌中のケイ酸含有量は地域や圃場によって大きく異なり、闇雲に施用しても効果が得られないばかりか、コストの無駄になることもあります。


土壌中の可給態ケイ酸の基準値は、酢酸緩衝液法で15~30mg/100gとされています。この範囲を下回る圃場では、ケイ酸質肥料の積極的な施用が必要です。特に可給態ケイ酸が15mg/100g未満の圃場では、水稲の生育不良や倒伏、病害虫被害のリスクが高まります。


全国的に見ると、水田の可給態ケイ酸は年々減少傾向にあります。山形県の調査では、1956年に平均19.7ppmだった農業用水のケイ酸濃度が、1996年には平均9.8ppmまで低下したと報告されています。


これは約50%の減少です。


土壌診断の結果で判断します。


水稲が必要とするケイ酸量は年間約140kg/10aですが、灌漑水と稲わら還元だけでは必要量の半分程度しか補給できません。稲わらに含まれるケイ酸は約50~70kg/10aですが、そのすべてがすぐに可給化するわけではなく、過去に還元した分から少しずつ放出される仕組みです。そのため、ケイ酸質肥料による定期的な補給が欠かせないのです。


基肥の標準施用量は、ケイ酸加里肥料で10a当たり40~60kg、ケイカルで120~200kgです。ただし、砂質土壌や浅耕土、秋落ち田、いもち病常発田などでは、標準量よりも多めの施用が推奨されます。これらの圃場では土壌からのケイ酸供給能力が低く、肥料による補給がより重要になるためです。


追肥の施用量は10a当たり30~40kgが目安ですが、基肥を十分に施用した圃場では追肥量を減らすことも可能です。逆に基肥を施用していない圃場や、土壌診断で可給態ケイ酸が極端に少ない圃場では、追肥量を増やす必要があります。


施用量の調整には、前年の作柄も参考になります。倒伏が発生した圃場や、いもち病が多発した圃場では、ケイ酸不足が原因の一つと考えられます。翌年はケイ酸質肥料の施用量を増やすことで、同様の被害を防げる可能性が高まります。


過剰施用による濃度障害はほとんど報告されていませんが、土壌pHの上昇には注意が必要です。ケイカルなどアルカリ性の強い肥料を大量に施用すると、土壌がアルカリ性に傾きすぎて、微量要素の吸収が阻害される可能性があります。特にpHが7.0を超える圃場では、施用量を控えめにするか、酸性の肥料との併用を検討すべきです。


珪酸質肥料と他の肥料成分との関係

珪酸質肥料は単独で効果を発揮するだけでなく、他の肥料成分との相互作用によって、さらに大きな効果をもたらします。窒素・リン酸・カリウムなどの主要肥料成分との適切なバランスが、収量と品質の向上につながるのです。


ケイ酸と窒素の関係は特に重要です。窒素肥料を多く施用すると水稲は軟弱徒長しやすくなり、倒伏のリスクが高まります。しかし、ケイ酸を十分に施用すると茎葉が硬くなり、窒素を増量しても倒伏しにくい強稈な水稲が育ちます。つまり、ケイ酸施用によって窒素肥料の効果を最大限に活かせるのです。


リン酸の肥効向上にも寄与します。ケイカルなどに含まれる石灰・苦土成分は、土壌中のリン酸が鉄やアルミニウムと結合して不溶化するのを防ぎます。結果として、施用したリン酸肥料が効率的に作物に吸収され、リン酸の利用率が向上します。


ケイ酸とリン酸は相性良好です。


カリウムとの組み合わせも効果的です。ケイ酸加里肥料は両方の成分を同時に供給できるため、省力化と効率化が図れます。カリウムは登熟期の光合成産物の転流を促進し、ケイ酸は茎葉を強化して光合成効率を高めるため、両者の相乗効果で千粒重や登熟歩合が向上します。


マグネシウム(苦土)を含むケイ酸質肥料もあります。マグネシウムは葉緑素の中心元素であり、光合成に不可欠です。ケイ酸による葉の直立効果と、マグネシウムによる光合成能力の向上が組み合わさることで、より高い増収効果が得られます。


微量要素の補給効果も見逃せません。ケイカルにはマンガン・鉄・ホウ素などの微量要素が含まれており、これらは水稲の生理機能を正常に保つために必要です。特にマンガンは光合成や窒素代謝に関与し、鉄は葉緑素の合成に必要です。これらの微量要素とケイ酸を同時に補給することで、より健全な生育が実現します。


有機物との併用も重要です。稲わらや堆肥をすき込む際にケイ酸質肥料を施用すると、有機物の分解が促進され、土壌中の微生物活性が高まります。特にようりんは有機物分解促進効果が高く、地力向上に貢献します。分解された有機物は腐植として土壌に蓄積され、保水力や保肥力が向上するという副次的効果も得られます。


珪酸質肥料の施用上の注意点と失敗しないコツ

珪酸質肥料は適切に使用すれば大きな効果をもたらしますが、使い方を誤ると期待した効果が得られなかったり、思わぬトラブルを招いたりすることがあります。失敗を避けるための注意点を理解しておくことが重要です。


土壌pHの変化には十分な注意が必要です。ケイカルやケイ酸加里肥料はアルカリ性を示すため、連用すると土壌pHが上昇します。pHが7.5を超えるとマンガンや鉄などの微量要素の吸収が阻害され、葉が黄化したり生育不良を起こしたりする可能性があります。定期的な土壌診断でpHを確認し、7.0を超える場合は施用量を減らすか、酸性の肥料との併用を検討すべきです。


土が硬くなるリスクもあります。


特定作物への施用制限も把握しておく必要があります。ケイ酸加里肥料はジャガイモ(馬鈴薯)への施用が禁忌です。ジャガイモはカリウムを多く必要としますが、ケイ酸加里に含まれるく溶性カリは塊茎の品質を低下させる可能性があります。ジャガイモ栽培では水溶性カリを含む肥料を使用すべきです。


他の肥料との混合にも注意が必要です。ケイ酸質肥料は強アルカリ性のため、アンモニア性窒素を含む肥料(硫安、塩安など)と混合すると、アンモニアがガス化して揮散してしまいます。混合散布する場合は、窒素肥料を先に施用してから時間を置いてケイ酸質肥料を散布するか、別々に施用することが推奨されます。


施用ムラも効果を減少させる原因になります。ケイ酸質肥料は水に溶けにくく、施用した場所でしか効果が表れません。そのため、できるだけ均一に散布することが重要です。ブロードキャスターなどの散布機を使用し、往復散布や交差散布によって施用ムラを防ぎましょう。


効果が表れるまでの時間も考慮すべきです。ケイ酸加里肥料やケイカルはく溶性・酸可溶性のため、効果が表れるまでに一定の時間がかかります。即効性を期待する場合は、水溶性のケイ酸マグネシウムやシリカゲル肥料を使用するとよいでしょう。


コストパフォーマンスの検証も大切です。ケイ酸質肥料は種類によって価格が大きく異なります。高価なシリカゲル肥料は育苗期など効果が高い時期に集中的に使用し、基肥や追肥には比較的安価なケイカルやケイ酸加里を使用するなど、使い分けることでコストを抑えられます。


散布作業の安全性にも配慮しましょう。粉状のケイ酸質肥料は風によって飛散しやすく、目や呼吸器に入ると刺激を与えることがあります。散布時はマスクやゴーグルを着用し、風の弱い日を選んで作業することが推奨されます。粒状タイプを選ぶことで飛散リスクを減らすこともできます。


保管方法にも注意が必要です。ケイ酸質肥料は吸湿性があり、湿気の多い場所に保管すると固結してしまいます。直射日光を避け、乾燥した場所で保管しましょう。開封後は密閉容器に移し替えるか、袋の口をしっかり閉じて保管することで品質を保てます。


JA全農「けい酸加里肥料」施用方法と効果の詳細


新潟県農業総合研究センター「出穂前のケイ酸追肥による登熟期高温年の品質低下軽減」研究成果




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