水酸化カリウムの化学式はKOHで表され、カリウムイオン(K⁺)と水酸化物イオン(OH⁻)から構成されるイオン結晶です。分子量は56.11であり、CAS登録番号は1310-58-3として管理されています。この化合物は別名「苛性カリ(かせいカリ)」とも呼ばれ、英語ではpotassium hydroxideまたはcaustic potashと表記されます。
参考)水酸化カリウム - Wikipedia
水酸化カリウムは白色の結晶、小球状、薄片状、棒状など様々な形態で存在し、硬くてもろい性質を持っています。強い潮解性(空気中の水分を吸収する性質)があり、無臭で水に非常によく溶ける特徴があります。市販品のKOH含有量は通常85%程度で、水分を完全に除去することが製造上困難なため、無水物と一水和物(KOH·H₂O)の混合物として流通しています。
参考)医療用医薬品 : 水酸化カリウム (水酸化カリウム「コザカイ…
水に溶解すると強いアルカリ性を示し、次の反応式で表されます。
KOH(s) ⇌ K⁺(aq) + OH⁻(aq)
この溶解反応は発熱反応であり、溶解熱は-57.61 kJ/molです。また、空気中の二酸化炭素を吸収して炭酸カリウムを生成する性質も持っています。
参考)1310-58-3・水酸化カリウム・Potassium Hy…
水酸化カリウムの工業的製造は、塩化カリウム(KCl)の水溶液を電気分解する方法が主流です。製造プロセスでは、原料の塩化カリウム水溶液を電解槽に供給し、電気エネルギーを利用して次の反応を進行させます。
参考)https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/tsusho_boeki/tokushu_boeki/pdf/023_02_01.pdf
塩化カリウム(KCl) + 水(H₂O) → 電気分解 → 水酸化カリウム(KOH) + 塩素(Cl₂) + 水素(H₂)
工業用として標準的に製造されるのは濃度48%の水酸化カリウム水溶液です。原料となる塩化カリウムには、通常ナトリウムが300〜5000ppm含まれており、高純度製品を得るためには不純物の除去工程が必要となります。製造過程では、カルシウムやマグネシウムなどの2価陽イオンをイオン交換樹脂で除去し、さらに冷却して固体塩化カリウムを析出させる精製方法が採用されています。
参考)https://patents.google.com/patent/JP2002317286A/ja
水酸化ナトリウムと比較すると、水酸化カリウムは脱水が困難であるため、市販品の最高純度は85〜86%程度に留まります。この特性は、水酸化カリウムが水和物を形成しやすいことに起因しています。
参考)水酸化カリウム(スイサンカカリウム)とは? 意味や使い方 -…
経済産業省の水酸化カリウム産業に関する資料では、製造プロセスの詳細と産業動向が確認できます
水酸化カリウムは強アルカリ性物質として知られ、pH値が非常に高い水溶液を形成します。その主な物理化学的性質は以下の通りです。
参考)https://ryunonegai.com/blogs/ingredient_guide/080
物理的性質
化学的性質
水酸化カリウムは強塩基として様々な化学反応に関与します。特に重要なのは、空気中の二酸化炭素と反応して炭酸カリウムを生成する性質です。
2KOH + CO₂ → K₂CO₃ + H₂O
水溶液は強い腐食性を持ち、固体および濃水溶液は皮膚や粘膜に対して極めて強い腐食作用を示します。この性質は劇物に指定される理由となっており、取り扱いには十分な注意が必要です。
参考)水酸化カリウムについて ■防護服.COM■
水酸化カリウムは非