登熟歩合求め方と計算式基準値

登熟歩合の正しい求め方と計算式、測定で失敗しないための基準値を徹底解説。比重の違いや収量構成要素との関係を理解していますか?

登熟歩合求め方と計算方法

酒米の登熟歩合は比重1.06で測るのに、うるち米と同じ1.08で測ると数値が10%以上低く出ます。


この記事で分かる3つのポイント
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登熟歩合の正確な求め方

塩水選と粒厚選別の2つの計算方法、品種別の比重基準(うるち1.08、酒米1.06)を詳しく解説します

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収量構成要素との関係

穂数・一穂籾数・千粒重と登熟歩合の相互作用、目標収量達成のための適正値を紹介します

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測定ミスを防ぐポイント

品種ごとの比重設定の違い、水分換算の必要性、代表株の選び方など実践的な注意点をまとめました


登熟歩合の基本的な計算式と定義

登熟歩合は、水稲栽培において収量を左右する重要な指標の一つです。全籾数に対して正常に成熟した籾の割合を示し、収量構成要素の中でも栽培管理の成否を直接的に反映します。計算式は非常にシンプルで、「登熟歩合(%)=登熟した籾数÷全籾数×100」となります。


この指標が重要な理由は、穂数や一穂籾数が十分でも、登熟歩合が低ければ最終的な収量は大きく減少するためです。例えば、籾数が3万粒/㎡あっても登熟歩合が70%なら実質的には2万1千粒しか収穫できません。一方、籾数が2万8千粒でも登熟歩合が90%なら2万5千粒以上を確保できることになります。


登熟歩合を低下させる主な要因は、不稔籾と未熟粒の2つです。不稔籾は受粉や受精がうまくいかずに実が入らなかったもので、開花期の低温(20℃以下)や日照不足が原因となります。未熟粒は登熟期の高温(出穂後20日間の平均気温27℃以上)や日照不足によって、デンプンの蓄積が不十分なまま成熟期を迎えたものです。


つまり登熟歩合は気象条件の影響を受けやすいということですね。


国際農林業協働協会「お米のはなし」第48話では、登熟歩合に影響を及ぼす要因について詳しく解説されています。


目標とする登熟歩合は、地域や品種によって異なりますが、一般的には85~90%が適正範囲とされています。秋田県の研究では、「あきたこまち」で目標収量を達成するには登熟歩合85~90%、玄米千粒重21~21.5gが必要とされました。また福島県の乾田直播栽培では、収量50~55kg/aを得るために登熟歩合80~90%を目標値としています。


登熟歩合の塩水選による測定方法

塩水選は、登熟歩合を測定する最も一般的な方法の一つです。この方法では、一定の比重の塩水に籾を入れて、沈んだ籾を正常に登熟したものとみなします。比重の重い籾は中身がしっかり詰まっており、軽い籾は未熟や不稔であるという原理を利用した測定法です。


比重の基準は品種によって異なります。うるち米ともち米は比重1.08、酒米は比重1.06が標準です。この違いは品種特性によるもので、酒米は心白があるため比重が軽くなる傾向があります。もし酒米を1.08の塩水で測定すると、本来は正常な籾まで浮いてしまい、登熟歩合が実際よりも10%以上低く算出される可能性があります。


これは使えそうです。


塩水選の具体的な手順は以下の通りです。


まず全籾数をカウンターで数えて記録します。


次に比重計を使って正確に比重1.08(または1.06)の塩水を作ります。比重計がない場合は、水10リットルに対して食塩1.2kg(または硫安1.4kg)を溶かすことで近似値が得られます。


準備した塩水にすべての籾を入れてよく混ぜ、浮いた籾を茶こしなどですくい取ります。浮き籾の数をカウンターで測定し、「登熟歩合(%)=(全籾数-浮き籾数)÷全籾数×100」の式で計算します。例えば全籾数が1000粒で浮き籾が120粒なら、登熟歩合は88%となります。


兵庫県農林水産技術総合センター「生育・収量調査法」には、塩水選の詳しい手順と注意点が記載されています。


塩水選のメリットは、登熟の良否を物理的に判定できる点です。目視だけでは判断が難しい微妙な未熟粒も、比重選によって客観的に区別できます。ただし、塩水を作る手間がかかることや、比重を正確に調整する必要があることがデメリットです。大量のサンプルを処理する場合は、塩水の比重が籾の水分で変化するため、こまめに確認する必要があります。


登熟歩合の粒厚選別による算出

粒厚選別は、塩水選に代わる実用的な登熟歩合の測定方法です。この方法では、籾を脱穀して玄米にした後、一定の粒厚のふるいにかけて、ふるいに残った玄米を正常に登熟した粒とみなします。塩水を準備する手間が不要で、収量調査と同時に実施できるため、現場での利用が増えています。


ふるい目の大きさは品種や用途によって異なります。うるち米は1.80mm、もち米も1.80mm、酒米の中小粒種(五百万石など)は1.85mm、兵庫北錦や兵庫夢錦は1.90mm、山田錦などの大粒種は2.05mmが基準です。山田錦の場合はさらに細かく選別し、2.05mm以上を精玄米、1.85~2.05mm未満を中米、1.85mm未満を屑米として区分します。


粒厚選別による登熟歩合の計算式は「登熟歩合(%)=(全籾数-屑米数)÷全籾数×100」となります。例えば代表株の全籾数が800粒、脱穀後に1.80mmのふるいで選別して屑米が96粒出た場合、登熟歩合は88%と算出されます。


結論は粒厚選別が効率的ということです。


粒厚選別のメリットは、収量調査の精玄米重測定と同じプロセスで登熟歩合も算出できる点です。代表株を脱穀し、籾摺りして玄米にし、ふるいにかける一連の作業で、登熟歩合・精玄米重・屑米重・千粒重のすべてが測定できます。


作業効率が良く、調査誤差も小さくなります。


ただし注意点として、粒厚選別では未熟の程度が軽い籾も「登熟した」と判定される可能性があります。完熟に近い未熟粒は粒厚が基準を超えることがあり、塩水選よりもやや高めの数値が出る傾向があります。このため、登熟歩合の絶対値を他の方法や他年と比較する際は、測定方法を統一することが重要です。


登熟歩合と収量構成要素の関係

水稲の収量は、穂数・一穂籾数・登熟歩合・千粒重の4つの要素の積で決まります。計算式は「玄米収量(kg/㎡)=穂数(本/㎡)×一穂籾数×登熟歩合×千粒重(g)÷1000」です。この4要素は互いに影響し合いながら逐次決定され、最終的な収量を左右します。


登熟歩合と他の要素の関係で最も重要なのが、㎡当たり籾数との負の相関です。籾数が増えすぎると一粒あたりに供給される養分が不足し、登熟歩合が低下します。京都府の研究では、コシヒカリで84%以上の登熟歩合を得るには、籾数を33,000粒/㎡以下に抑制する必要があることが示されました。


これは3万3千粒を超えると、東京ドーム約1個分の面積(4万6千㎡)で換算すると約1億5千万粒もの籾を養分で満たす必要があり、イネの供給能力を超えてしまうということです。適正な籾数管理が登熟歩合向上の鍵となります。


いいことですね。


穂数と登熟歩合の関係も重要です。穂数が多すぎると個々の穂への養分供給が不足し、登熟歩合が低下します。逆に穂数が少なすぎると一穂籾数が増加し、やはり登熟不良を招きます。例えば、目標収量480kg/10aを目指す場合、㎡当たり穂数310本、1穂籾数81粒、登熟歩合88%、千粒重21.7gというバランスが推奨されています。


千粒重と登熟歩合の関係では、登熟期の気象条件が両方に同時に影響します。出穂後の高温や日照不足は、登熟歩合を低下させると同時に千粒重も軽くします。秋田県雄勝地域の調査では、登熟歩合と千粒重の良否が作柄に大きく影響することが報告されています。登熟期の適切な水管理と温度管理により、両要素を同時に改善できます。


ルーラル電子図書館「収量構成要素」では、収量構成要素の相互関係について農業技術事典で詳しく解説されています。


目標収量を達成するためには、各要素の目標値を設定し、生育ステージごとに診断・調整することが有効です。幼穂形成期までに適正な穂数を確保し、減数分裂期に過剰な籾数にならないよう調整し、登熟期に養分供給を最適化することで、登熟歩合85~90%を維持できます。


登熟歩合測定で失敗しないための代表株選び方

登熟歩合の測定精度は、代表株の選び方で大きく変わります。圃場全体を正確に代表していない株を選ぶと、実際の登熟状況とかけ離れた数値が出てしまい、栽培改善の判断を誤る原因となります。代表株選定の基本は、生育が中庸で欠株がない連続した株を選ぶことです。


具体的な選定手順として、まず成熟期調査で測定した20株(10株×2か所)の平均穂数を算出します。その平均値に近い穂数を持つ株を2株採取します。この時、生育が極端に良い株や悪い株は避け、圃場の平均的な状態を反映する株を選びます。直播栽培の場合は、条2m×2か所で代表的な2株を採取します。


分解しないように根をある程度付けて採取することが重要です。採取後は坪刈りと同様に十分に乾燥させておきます。乾燥が不十分だと水分が高いままで籾が重くなり、塩水選では正常な籾まで沈みにくくなります。また粒厚選別でも水分が高いと玄米が膨らみ、本来は屑米になる粒までふるいに残ってしまいます。


意外ですね。


代表株の測定では、まず穂数を数えて記録し、穂首で穂を切り取ります。各穂に番号を付けて封筒に入れ、後でカウンターで全籾数を測定します。脱穀後は規定の粒厚のふるいで選別し、落ちた屑米の粒数を測定します。「一穂籾数=全籾数÷全穂数」「登熟歩合(%)=(全籾数-屑米数)÷全籾数×100」で算出します。


測定時の注意点として、遅れ穂は除外します。遅れ穂の目安は、稈長が平均の50%以下で着生籾の80%以上が不稔、または完全粒が10粒以下のものです。遅れ穂を含めると登熟歩合が実態よりも低く算出され、正確な評価ができません。


また、水分換算も忘れてはいけません。登熟歩合の測定結果は精玄米重や千粒重と組み合わせて収量を推定しますが、その際は水分14.5%に統一する必要があります。換算式は「水分14.5%換算値=測定値×(100-測定水分%)÷(100-14.5)」です。例えば測定水分が16%で精玄米重が500gなら、14.5%換算では492gとなります。


登熟歩合向上のための栽培管理ポイント

登熟歩合を高めるには、生育ステージごとの適切な管理が不可欠です。不稔籾を減らすためには開花期の管理、未熟粒を減らすためには登熟期の管理がそれぞれ重要となります。両方の対策を総合的に実施することで、目標の85~90%を安定的に達成できます。


開花期の低温対策として、深水管理が効果的です。出穂前後の水深を7~10cm程度に保つことで、水温の保温効果により穂の温度低下を防ぎます。特に標高が高い地域や冷涼な気候の地域では、深水管理により不稔籾の発生を大幅に減らせます。ただし深水は倒伏リスクを高めるため、稈の強度が十分な品種や栽培法を選ぶ必要があります。


登熟期の高温対策では、適切な水管理が最も重要です。出穂後は間断灌水を基本とし、土壌が乾きすぎないように管理します。完全に落水するのは収穫の7~10日前が目安です。登熟期に水不足になると根の活力が低下し、養分供給が滞って白未熟粒が増加します。特に出穂後20~30日間は白未熟粒発生の危険期なので、土壌水分の観察と週間気象予報を参考にしながら、きめ細かな水管理を実施します。


白未熟粒は収量減だけではなく、整粒歩合を低下させて検査等級も下げるため、販売価格にも影響します。


過剰な窒素施肥も登熟歩合低下の原因となります。高窒素施肥で籾数が増えすぎると、一粒あたりの養分供給が不足して登熟歩合が下がる現象は古くから知られており、松島省三氏のV字理論(出穂1か月前に一旦窒素肥料を切る)につながっています。穂肥は適量を適期に施用し、過剰にならないよう注意します。


日照不足への対応として、栽培密度の適正化があります。密植しすぎると株間の日照が悪くなり、下位節の籾が登熟不良になります。適正な栽植密度(坪60株程度)を守り、風通しと日当たりを確保します。また、倒伏すると穂層部の日照が極端に悪化するため、倒伏防止対策(ケイ酸資材施用、適正な茎数管理)も間接的に登熟歩合向上に寄与します。


害虫対策も重要です。特にトビイロウンカの吸汁害は登熟不良や坪枯れの原因となります。雨時期に飛来し、世代交代を経て莫大な数まで増殖するため、初期防除が重要です。いもち病も葉や穂を侵して光合成能力を低下させ、登熟歩合を下げます。適期の薬剤防除と予防的な栽培管理(過剰施肥の回避、適正な水管理)により、病害虫による登熟阻害を最小限に抑えます。


これらの管理を総合的に実施することで、気象変動の影響を受けにくい安定した登熟歩合を実現できます。登熟歩合は収量構成要素の中で最も環境変動の影響を受けやすい要素ですが、逆に言えば適切な管理により改善の余地が大きい要素でもあります。毎年の測定結果を記録し、気象条件や管理方法との関係を分析することで、自分の圃場に最適な栽培体系を確立できます。