直播栽培 水稲 乾田湛水方式比較と省力高収益化

直播栽培 水稲の乾田・湛水それぞれの方式と省力化や雑草・鳥害対策の実際を整理しつつ、どこまで移植栽培に迫る安定多収が狙えるのでしょうか?

直播栽培 水稲 乾田湛水の基本

直播栽培 水稲のポイント概要
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直播と移植の違い

苗づくり・田植えを省くことで省力・低コスト化が可能になる一方、苗立ち・雑草・鳥害など新たな管理ポイントが生じることを整理します。

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乾田直播と湛水直播

畑状態で播種する乾田直播と、水を張った状態で播種する湛水直播の違いと、それぞれに向く地域・経営条件を俯瞰します。

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最新技術と実証事例

鉄コーティング種子やかん湛!、ドローン播種など、近年の直播関連技術と実証結果から、現場で使えるヒントを拾います。

直播栽培 水稲 乾田直播の特徴と基本作業


直播栽培のうち、田んぼを畑状態にしてから種籾を播く方式が乾田直播で、育苗代かき・田植えを省略できるのが大きな特徴です。
通常は春に耕起や鎮圧を行い、播種後おおむね2~3週間前後で出芽がそろうタイミングを目安に入水し、その後はほぼ移植栽培と同じ水管理に移行します。
乾田直播で重要になるのが「均平」と「鎮圧」で、表面が凸凹だと出芽ムラ・乾きムラが生じ、除草剤の効きも不安定になります。


参考)https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/dry-seeding_rice_v3.1.pdf

近年は、耕起・播種・鎮圧をタインローラー+ドリルシーダーやケンブリッジローラーなどのコンビネーション体系で一気にこなす機械化が進み、大規模経営でも導入しやすくなっています。


参考)https://www.pref.iwate.jp/agri/_res/projects/project_agri/_page_/002/004/373/04_suitou_kanchoku.pdf

乾田直播は、苗箱管理や田植機作業が要らないため、規模拡大時の労働ピークを大きく平準化できる点が評価されています。


参考)乾田直播とは?水稲直播の違いやメリット・デメリットを紹介!失…

一方で、播種後しばらくは地表が乾きやすく、出芽までの土壌水分管理がシビアになりやすいため、圃場ごとの土性・排水性を踏まえた体系づくりが欠かせません。


参考)https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/nourin/ni-nosui/files/Kanden_M.pdf

直播栽培 水稲 湛水直播と湛水土壌中直播の実際

湛水直播は、水を張った田んぼに直接種籾を播く方式で、田植機に直播ユニットを装着して移植・直播を共用できるため、水稲中心の経営では導入しやすい技術です。
播種時にほ場を乾かす必要がないため、春先の降雨が多い地域や用水事情が不安定な地域でも作業タイミングを確保しやすいという利点があります。
近年主流になりつつあるのが「湛水土壌中直播」で、代かきと同時に浅い土中に無コーティング種子を埋め込む「かん湛!」などの新技術も開発されています。


参考)広報誌「NARO」

湛水土壌中直播は、表面播種に比べて鳥害や流亡リスクを抑えつつ、省力な作業体系を実現できる点から、寒冷地や中山間地域でも実証が進んでいます。


参考)https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/life/825247_2389052_misc.pdf

湛水直播では、播種直後から水があることで保温効果が期待でき、特に春先の気温変動が大きい地域では初期生育を安定させやすいという報告があります。

一方で、水深や水持ちが不安定な圃場では苗立ち不良や雑草発生につながりやすく、畦畔や用水路も含めた「水田としての基礎体力」が問われる方式とも言えます。


参考)https://www.maff.go.jp/tohoku/seisan/gurisapo/attach/pdf/gurisapo-82.pdf

直播栽培 水稲 苗立ち・雑草・鳥害 対策の実務

直播栽培で特に重視されるのが「苗立ち確保」「鳥害対策」「雑草対策」「浮き苗・倒伏対策」のいわゆる“直播4要素”であり、これらを外すと収量と品質のバラツキが大きくなります。
播種~出芽期にかけては落水管理で土壌に酸素を供給しつつ、乾きすぎれば走り水を入れるなど、きめ細かな水管理が苗立ち安定のカギになります。
雑草対策では、乾田・湛水を問わず初中期一発剤など直播専用に登録のある除草剤の選定が重要で、表面播種か土中播きかによって薬害リスクと有効成分の選び方も変わります。


参考)https://isi-mfg.com/wp-content/uploads/2022/03/a8aa518e9c2f6f8b222c1bd8df858fff.pdf

ノビエや多年生雑草が多い圃場では、直播栽培に入る前の数年からロータリーハローや水管理を組み合わせた“土壌シードバンク対策”を先行させておく事例も紹介されています。


鳥害については、鉄コーティング種子の活用や土中播種により食害リスクを減らせるほか、播種後数日間だけネット・テープ・爆音機などを集中的に使う「短期集中防御」が有効とされています。


参考)https://www.tohoku-hightech.jp/file/seminar/r4_220613_2.pdf

意外な工夫として、地域一帯で直播面積をそろえ、同じ時期に播種・入水・防除を合わせることで、鳥の集中加害を分散する“地域防御”の取り組みも報告されており、単独農家での対策限界を超える発想として注目されています。

直播栽培 水稲 経営メリットとリスク分散の考え方

直播栽培は、移植栽培に比べて育苗・田植えにかかる労働時間と資材コストを削減でき、大規模経営や高齢化の進む地域では労力不足解消の切り札として位置づけられています。
農研機構等の資料では、直播と密苗移植を組み合わせることで、移植専用・直播専用に偏らない「省力化とリスク分散を両立した体系」が提案されており、地域やほ場条件に応じた組み合わせが推奨されています。
一方で、直播水稲は移植稲に比べて生育期間がやや短く、全乾物生産量が小さくなりやすいことから、過繁茂や倒伏リスクを抑えつつ有効茎数を確保する施肥・倒伏管理が重要とされています。

収量性については、乾田・湛水ともに栽培マニュアルに沿った管理ができれば移植栽培に近い水準を確保できる事例が増えており、青森県のV溝乾田直播では10aあたり595kg・整粒歩合88%といった安定成績も報告されています。


参考)https://www.aomori-itc.or.jp/_files/00211727/R6V_matome.pdf

経営的な視点では、直播面積を一気に増やすよりも、まずは一部の圃場を対象に乾田・湛水それぞれを試験導入し、自分の地域の気象・土壌・水利条件でどちらに分があるかを見極めるステップが安全です。


参考)面積拡大にお悩みのあなた、直播にトライ! |営農情報|農業機…

さらに、直播圃場と移植圃場で収量・品質・倒伏リスク・雑草発生の違いを数年単位で記録し、播種量や施肥量、除草剤体系を圃場別に最適化していくことで、単年度では見えない「自分の経営に合った直播像」が具体化していきます。

直播栽培 水稲 ドローン播種と新技術の可能性

最近は、ドローンを用いた水稲直播が各地で実証されており、特に中山間地域や大型機械の入りにくい圃場で省力・省人効果が期待されています。
福島県のドローン直播栽培マニュアルでは、播種後~出芽期の水管理パターンや苗立ち数の目標、除草剤散布との組み合わせが具体的に整理されており、現場での標準作業手順の土台となっています。
ドローン播種は、従来のブロードキャスターや専用播種機に比べて機体の初期投資や操縦者の育成が必要な一方、1人で短時間に広い面積をカバーできるため、作業受託や共同利用の形で地域の新しい仕事を生み出す可能性も指摘されています。


また、ドローンの飛行ログや播種量データを蓄積し、圃場内の高低差や苗立ちムラと突き合わせることで、来シーズンの飛行ルート・播種量調整・均平作業の優先エリア決めなど、「データに基づく圃場改善」に活かす試みも始まっています。

意外な視点として、直播+ドローン播種をきっかけに、地域の若手や異業種人材が農業に関わる入口になっている事例があります。


機械操作やデジタルデータの扱いに強い人材が、圃場の水管理・雑草観察・収量調査など従来の「目と足の仕事」と組み合わさることで、単なる省力化に留まらない“二刀流チーム”が生まれつつある点は、直播栽培の社会的な副産物とも言えます。


参考)https://www.yanmar.com/jp/agri/agri_plus/suitou/kanden/

水稲直播栽培全般の体系や、乾田・湛水・新技術の位置づけを俯瞰するのに有用な公的マニュアル・解説です(各セクションの詳細検討の参考になります)。


水稲湛水直播栽培の手引き|農林水産省
省力化体系や乾田直播・湛水直播の実践例、畝立て直播・ノビエ防除など、直播技術の最新動向を平易に紹介した解説。


直播栽培最前線|農研機構 広報誌「NARO」




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