養液土耕栽培(ようえきどこうさいばい)は、土壌栽培の良さと水耕栽培(養液栽培)の精密な管理技術を融合させた、現代農業において非常に注目されている栽培システムです。このシステムでは、作物の生育ステージや天候、土壌の状態に合わせて、必要な水分と養分(肥料)を点滴チューブ(ドリップチューブ)を通じて株元に直接供給します。これを「潅水同時施肥(ファーティゲーション)」と呼びます。この章では、養液土耕における「肥料」の役割と重要性、そして基本的な考え方について深掘りしていきます。
養液土耕における肥料は、従来の土耕栽培で行われていた「元肥(もとごえ)」主体の施肥体系とは全く異なるアプローチをとります。慣行栽培では、栽培期間中に必要となる肥料の大部分を最初に土壌に投入し、不足分を追肥で補うのが一般的です。しかし、この方法では初期に肥料濃度が高くなりすぎて根を傷めたり(肥料焼け)、逆に後半に肥切れを起こしたりするリスクがありました。また、過剰な施肥は土壌への塩類集積や地下水汚染などの環境問題を引き起こす原因ともなっています。
これに対し、養液土耕では元肥を極力減らすか、あるいはゼロにします。その代わり、作物が「今、この瞬間に必要としている」養分を、水に溶かした「液肥」として毎日、あるいは数日おきに少量ずつ与え続けます。人間で言えば、一度に大量の食事を摂るのではなく、バランスの取れた食事を毎日適量ずつ摂取するようなものです。これにより、作物は常に最適な栄養状態でストレスなく育つことができ、収量の増加や品質の向上が期待できるのです。
このシステムで最も重要なのが「肥料の選択」と「濃度の管理」です。使用する肥料は、水に完全に溶ける性質(完全溶解性)を持っていなければなりません。溶け残りのある肥料を使用すると、点滴チューブの微細な穴(エミッター)が詰まり、システム全体が機能しなくなる致命的なトラブルを招きます。また、土壌に蓄積しやすい成分(硫酸根や塩素など)を極力含まない肥料を選ぶことも、長期的な連作障害を防ぐために不可欠です。
一般的に、養液土耕で使用される肥料には、大きく分けてメーカーが開発した「養液土耕専用の配合肥料(複合肥料)」と、生産者が自ら原料を混ぜ合わせて作る「単肥配合(自家配合肥料)」の2種類があります。専用肥料は成分バランスが調整されており、微量要素なども含まれているため非常に使い勝手が良いですが、コストが割高になる傾向があります。一方、単肥配合は、硝酸カリウムや第一リン酸アンモニウムなどの化学肥料原料を自分で計算して混ぜ合わせる必要があり、専門的な知識と手間が必要ですが、肥料コストを大幅に削減できるという大きなメリットがあります。
さらに、近年では単なる化学肥料の施用にとどまらず、土壌微生物の働きを活性化させるための「有機入り液肥」や「微生物資材」を養液土耕システムに組み込む試みも進んでいます。これは、培地がロックウールやヤシ殻などの無機物である通常の養液栽培とは異なり、「土」を使用する養液土耕ならではの強みです。土壌中の微生物相(フローラ)を豊かにすることで、病害への抵抗性を高めたり、根の張りを良くしたりする効果が報告されています。
このように、養液土耕における肥料の世界は非常に奥が深く、単に「何を与えるか」だけでなく、「いつ」「どのくらい」「どのようなバランスで」与えるかが収益を左右する鍵となります。次項からは、具体的な肥料の選び方や種類、コストダウンのための配合テクニック、そして意外と見落とされがちな水質管理のポイントまで、現場で役立つ実践的な情報を詳しく解説していきます。これから養液土耕を導入しようと考えている方や、既に導入しているが肥料コストや管理方法に悩んでいる方にとって、有益な情報となるはずです。
OATアグリオ株式会社 養液土耕栽培特設サイト - 養液土耕の基礎知識や導入事例が詳しく紹介されています。
養液土耕を成功させるための第一歩は、適切な肥料を選ぶことです。市場には多種多様な肥料が出回っていますが、養液土耕システムで使用できる肥料は限られています。ここでは、初心者がまず押さえておくべき肥料の選び方の基準と、主な肥料の種類について、専門的な視点を交えて解説します。
まず大前提として、「完全溶解性」であることが絶対条件です。一般的な畑作で使われる化成肥料の多くは、土壌中でゆっくり溶け出すようにコーティングされていたり、水に溶けにくい成分を含んでいたりします。これらを養液土耕のタンクに入れると、フィルターやチューブの目詰まりを即座に引き起こします。したがって、「養液土耕用」または「水耕栽培用」と明記された肥料、あるいは水に溶けやすい高純度の単肥(化学肥料原料)を選ぶ必要があります。
次に注目すべきは「肥料の成分組成」です。養液土耕では、窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)の三大要素に加え、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、そして鉄(Fe)やマンガン(Mn)、ホウ素(B)などの微量要素をバランスよく供給する必要があります。特に重要なのがカルシウムの補給です。カルシウムは植物体内で移動しにくい要素であり、欠乏するとトマトの尻腐れ病やイチゴのチップバーンなどの生理障害を引き起こします。しかし、カルシウムはリン酸や硫酸と反応して不溶性の沈殿物(リン酸カルシウムや硫酸カルシウム)を作りやすいため、配合には注意が必要です。
肥料の種類としては、大きく以下の3つのパターンに分類できます。
これが最も手軽で導入しやすい選択肢です。メーカーが作物の生育に合わせてN-P-Kや微量要素を最適なバランスで配合しており、水に溶かすだけで使用できます。商品によっては、カルシウムやマグネシウムまで含んでいながら沈殿しにくい特殊な処方がされているものもあります(OATアグリオの「養液土耕肥料シリーズ」など)。初心者や、調合の手間を省きたい生産者に最適です。ただし、成分比率が固定されているため、特定の成分だけを増やしたいといった微調整は難しい側面があります。
本格的な水耕栽培で使われる肥料(大塚ハウス肥料など)を流用するパターンです。通常、「A処方(硝酸カルシウム主体のタンク)」と「B処方(リン酸・カリウム・微量要素主体のタンク)」の2つの濃厚原液タンクを用意し、潅水時にこれらを希釈混合して送ります。これにより、高濃度での沈殿反応を防ぐことができます。作物の種類や生育ステージに応じて、A処方とB処方の比率を変えることで、幅広い成分調整が可能です。
硝酸カリウム、硝酸カルシウム、第一リン酸アンモニウム、硫酸マグネシウムなどの原料単肥を購入し、自分で計量・混合して液肥を作る方法です。これは「コスト」の面で最強の選択肢ですが、化学的な知識と精密な計算が求められます(詳しくは次項のコスト比較で解説します)。
選び方のポイントとして、もう一つ重要なのが「土壌分析の結果」に基づいた選定です。養液土耕は土を使うため、土壌中に既に含まれている養分(残肥)を無視することはできません。例えば、土壌診断でリン酸が過剰にあることがわかっている場合は、リン酸を含まない、あるいは少ない肥料を選ぶことで、コストを抑えつつバランスを整えることができます。逆に、日本の土壌で不足しがちな石灰(カルシウム)や苦土(マグネシウム)は、液肥として積極的に補給する必要があります。
また、「アンモニア態窒素」と「硝酸態窒素」のバランスも重要です。養液土耕では、速効性があり、かつ低温時でも吸収されやすい硝酸態窒素を主体とした肥料が好まれます。アンモニア態窒素が多すぎると、ガス害のリスクや、カルシウム・カリウムの吸収阻害(拮抗作用)が起きる可能性があります。専用肥料の多くは、この窒素形態のバランスも考慮して設計されています。
養液土耕栽培における液肥の選び方~複合肥料と単肥配合~ | ゼロアグリ
養液土耕を導入する多くの生産者にとって、最大の関心事の一つが「肥料コスト」の削減でしょう。高品質な専用液肥は便利ですが、長期間にわたって広い面積で栽培する場合、その費用は経営を圧迫しかねません。ここでは、専用の複合肥料と、自分で原料を混ぜる「単肥配合」のコストを具体的に比較し、単肥活用のメリットとその実際について解説します。
結論から申し上げますと、単肥配合を行うことで、肥料コストは専用複合肥料の約2分の1から3分の1程度まで削減することが可能です。
これは非常に大きな差です。
例えば、ある試算(Web検索結果に基づく一般的なデータ)によると、10アールあたりのトマト栽培における年間肥料代が、専用複合肥料を使用した場合は15万円〜20万円程度かかるのに対し、単肥配合に切り替えると5万円〜8万円程度に収まるケースが多く報告されています。規模が大きくなればなるほど、このコストメリットは莫大なものとなります。
なぜこれほどの価格差が生まれるのでしょうか。専用肥料は、原料の調達、製造、配合、パッキング、流通、そしてメーカーの利益や技術料が含まれた価格設定になっています。一方、単肥配合では、肥料の「原料そのもの」を購入することになるため、中間マージンや加工費がカットされます。硝酸カルシウムや硝酸カリウムといった単肥は、農業資材として大量に流通しており、比較的安価に入手可能です。
主な単肥の種類と役割:
単肥活用のメリットは、単に安いだけではありません。
「自在な成分調整(オーダーメイド施肥)」が可能になる点も重要です。
例えば、「最近、日照不足で徒長気味だから、窒素を少し抑えてカリウムを増やし、茎を太くしたい」と考えたとします。専用の複合肥料では、窒素を減らすと連動してカリウムも減ってしまうため、こうした微調整ができません。しかし単肥配合なら、硝酸カルシウムの量を減らし、その分を硝酸カリウムや硫酸カリウムで補うといった処方変更が即座に可能です。作物の顔色を見ながら、その日の天候や生育状況に合わせて最適な「メニュー」を作ってあげられることこそ、プロの農家が単肥を選ぶ真の理由です。
もちろん、デメリットもあります。
第一に「手間」です。複数の20kg入りの袋から、それぞれ数kgずつを正確に計量し、タンクで溶かす作業は、忙しい農繁期には負担になります。
第二に「知識とリスク」です。配合計算を間違えれば、濃度障害や成分バランスの崩壊を招きます。また、前述したように「カルシウム」と「リン酸・硫酸」を高濃度で混ぜると沈殿してドロドロになり、配管を詰まらせるという化学反応のリスクがあります。これを防ぐためには、原液タンクを2つ(Aタンク・Bタンク)に分ける「2液式」の設備投資が必要になる場合がほとんどです(ただし、養液土耕の場合は、非常に薄い濃度でその都度溶かして使い切る方式なら、1タンクでも運用可能なテクニックもありますが、管理はシビアになります)。
コスト削減を狙うなら、まずは「硝酸カルシウム」だけを単肥で使い、ベース部分は安価な汎用液肥を使う「ハイブリッド方式」から始めるのも一つの手です。徐々に知識をつけ、最終的に完全な単肥配合へと移行することで、無理なくコストダウンと技術向上を図ることができるでしょう。
島根県 肥料コスト低減マニュアル - 養液土耕栽培による肥料費削減効果のデータが掲載されています。
「単肥配合に挑戦したいが、具体的なレシピがわからない」という方のために、ここでは養液土耕でよく使われる基本的な配合の考え方と、計算のステップをわかりやすく解説します。なお、ここで紹介するのはあくまで一般的な例であり、実際の施用量は土壌分析や作物の種類によって調整が必要です。
養液土耕の配合設計には、大きく分けて「処方(レシピ)に基づく方法」と「成分量から逆算する方法」があります。初心者には、既存の有名な処方(大塚処方や園試処方など)を参考にするのが安全です。
【トマトやイチゴでよく使われる基本の2液配合イメージ】
(※濃厚原液を100倍〜200倍に希釈して使用する前提)
なぜAとBに分けるのか? 繰り返しになりますが、Aタンクの「カルシウム」と、Bタンクの「リン酸」「硫酸」が濃厚な状態で出会うと、石膏(硫酸カルシウム)やリン酸カルシウムの不溶性沈殿物ができるからです。これらが混ざり合うのは、潅水チューブの中で水で数百倍に薄められた瞬間である必要があります。
【計算のステップ:me(ミリ等量)を理解する】
単肥配合のハードルを高くしているのが、肥料の単位「me/L(ミリ等量パーリットル)」です。これは化学的な反応単位で、植物が根から吸収するイオンのバランスを考える際(カチオンとアニオンのバランスなど)に非常に便利です。
しかし、現場レベルでは「水1トンあたり、各肥料を何グラム入れればいいか」がわかれば十分です。
簡易的な計算方法として、「目標とする窒素・リン酸・カリリウムの成分濃度(ppm)」から計算する方法があります。
例えば、トマトの養液土耕で、給液の窒素濃度を「100ppm(=mg/L)」にしたいとします。
硝酸カリウム(N成分約13%)を使う場合、
100 (目標N量) ÷ 0.13 (含有率) ≒ 769 mg/L
つまり、水1リットルあたり約0.77gの硝酸カリウムを溶かせば、窒素100ppmの養液ができます。これを1トン(1000L)作るなら770gです。
ただし、硝酸カリウムにはカリウムも含まれているため、これでカリウムが何ppm入るかを計算し、不足分を他の肥料で補う……というパズルを解いていくことになります。
【おすすめの配合ツールとリソース】
手計算は間違いのもとなので、各農業試験場や肥料メーカーが公開している「施肥設計ソフト(エクセルシート)」を利用することを強くおすすめします。
【1タンク(1液)で済ませる裏技的配合】
設備コストを抑えるため、どうしてもタンク1つで運用したい場合、「成分的に沈殿しない組み合わせ」に限定するか、「その都度使い切る」方法をとります。
計算や配合は最初は難しく感じるかもしれませんが、一度自分の農場の「基本レシピ」が決まってしまえば、あとはそれを微調整するだけです。日々のルーチンワークに落とし込めば、驚くほど低コストでプロフェッショナルな施肥管理が可能になります。
養液栽培の計算方法(鐘山グリーンテック) - 単肥設計の具体的な計算式や換算表がPDFで確認できます。
養液土耕栽培における肥料管理には、慣行農法と比較して明確なメリットと、導入前に知っておくべきデメリットが存在します。これらを正しく理解することで、導入後のミスマッチを防ぐことができます。
【メリット:精密管理による「質」と「量」の向上】
必要な時に必要な分だけを株元に届けるため、肥料の無駄がほとんどありません。慣行栽培では、雨による流亡や土壌への固定化を見込んで多めに施肥しますが、養液土耕では利用効率が高いため、総施肥量を30〜50%削減できるケースも珍しくありません。これは肥料代の節約だけでなく、環境負荷の低減(SDGs)にもつながります。
常に最適な土壌水分と養分濃度を維持できるため、作物への水分ストレスや塩類ストレスが最小限に抑えられます。これにより、光合成能力が維持され、収量の増加(2〜3割増など)や、果実の肥大、糖度アップといった品質向上が実現します。
タイマー制御や日射比例制御の液肥混入機を使えば、毎日の水やりと追肥作業が全自動になります。重い肥料袋を背負って畑に入る重労働から解放され、空いた時間を管理作業や規模拡大に充てることができます。
土壌全体に水と肥料を撒くのではなく、根域(根が張っている部分)だけに集中して環境を作るため、通路部分の雑草が減り、畝間の乾燥が保たれます。これによりハウス内の湿度が下がり、病気の発生が抑制される副次効果があります。また、土壌への塩類集積も起こりにくいため、連作障害のリスクを下げることができます。
【デメリット:初期投資と管理の複雑さ】
液肥混入機、タンク、配管、フィルター、点滴チューブなど、システム一式の導入には10アールあたり数十万〜百万円単位の投資が必要です。特に、高性能な制御盤や2液式システムを導入するとコストは上がります。
点滴チューブのエミッターは非常に微細な構造をしているため、水質の悪さや肥料の溶け残りによる「目詰まり」が最大のリスクです。井戸水を使う場合は、鉄分やマンガンの除去装置が必要になることもあり、定期的なフィルター掃除やフラッシング(配管洗浄)が欠かせません。
「土が乾いたら水をやる」といった勘に頼る栽培ではなく、数値(EC値、pH値、給液量)に基づいた管理が求められます。土壌中の肥料濃度(EC)が高くなりすぎていないか、定期的に測定機器でチェックする必要があります。また、停電やポンプ故障などのトラブルが起きると、即座に水切れ・肥料切れとなり、ダメージが直結するというシステム依存の脆弱性もあります。
厳密には養液土耕は「閉鎖系」ではなく、土壌に浸透させるため廃液処理の問題は少ないですが、過剰な給液は地下浸透を引き起こします。また、ロックウール耕などの完全養液栽培と比較すると、土壌の緩衝能力(バッファ)がある分、コントロールのレスポンス(反応速度)はやや遅くなります。「今すぐ肥料を切りたい」と思っても、土に残った分が効き続けるため、先読みの管理が必要です。
養液土耕栽培のメリット・デメリット(施設園芸.com) - 現場視点での具体的な利点と課題がまとめられています。
最後に、多くの解説記事ではあまり深く触れられていない、しかし現場では極めて重要な「水質管理」と、そこに関連する「独自視点のアプローチ」について解説します。養液土耕の成否は、実は肥料そのものよりも、それを溶かす「水」と、土壌環境を整える「微生物」にかかっていると言っても過言ではありません。
1. 原水の「鉄分」と「重炭酸」を侮るな
日本の井戸水は、地域によっては鉄分(Fe)やマンガンを多く含んでいます。これらは空気に触れて酸化すると、赤茶色の沈殿物(水酸化鉄など)に変わり、点滴チューブを一瞬で詰まらせます。メーカー推奨基準では、鉄分は「1ppm以下(理想は0.5ppm以下)」とされています。
もし井戸水が金気臭い場合、高価な除鉄装置を入れる前にできる「裏技」として、「簡易ばっ気沈殿槽の自作」があります。農業用タンクに井戸水を汲み上げ、金魚用のエアレーションや水中ポンプで激しく空気を送り込み(ばっ気)、一晩放置します。すると鉄分が酸化して底に沈殿します。その上澄み液だけをポンプで吸い上げて養液土耕の原水として使うのです。これだけで、チューブの寿命が劇的に延びます。
また、地下水に含まれる「重炭酸イオン(HCO3-)」も曲者です。これが高いとpHが上昇しやすく、ロックウール栽培などでは致命的ですが、土耕でも微量要素の欠乏(特に鉄欠乏クロロシス)を招きます。この場合、液肥タンクに少量の「酸(リン酸や硝酸)」を添加してpHを中和する調整技術が有効です。
2. 微生物資材と液肥の「カクテル施用」
養液土耕は化学肥料主体の技術と思われがちですが、実は「微生物資材(バイオ肥料)」との相性が抜群です。点滴チューブを通じて、有用微生物(乳酸菌、酵母、納豆菌、光合成細菌など)を定期的に土壌深層へ送り込むことができます。
通常、微生物資材は表面散布しても乾燥や紫外線で死滅しやすいですが、養液土耕なら根域の適度な水分がある場所に直接届けられます。
ここでの裏技は、「糖蜜」の同時添加です。液肥混入ラインに、微生物のエサとなる糖蜜や少量の糖分を混ぜる(あるいは微生物資材に含まれているものを使う)ことで、根圏での微生物爆発(パンデミック的な増殖)を誘発します。これにより、団粒構造が促進され、液肥の吸収効率がさらに高まるという相乗効果が生まれます。
ただし、注意点があります。有機物をチューブに流すと、チューブ内で微生物が増殖して「バイオフィルム(ヌメリ)」が発生し、これまた詰まりの原因になります。
対策として、「微生物・有機資材を流した後は、必ず最後に真水だけで十分な時間フラッシング(洗浄)を行う」、または「定期的に次亜塩素酸ナトリウム(キッチンハイター等の成分)の希薄液や専用の洗浄剤を流してラインを殺菌洗浄する」というメンテナンスをセットで行うことが、プロの運用テクニックです。
このように、単にNPK(窒素・リン酸・カリ)を与えるだけでなく、「水質というインフラ」を整え、「土壌微生物というパートナー」を点滴システムで操ることこそが、養液土耕の真髄であり、他と差をつける秘訣なのです。
点滴チューブの目詰まりを防ぐには(ゼロアグリ) - 鉄分除去や具体的なメンテナンス方法について詳述されています。

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