エアレーションの芝生の時期は春と秋?更新作業と根切りの効果

芝生のエアレーションを行う最適な時期はいつかご存知ですか?高麗芝や西洋芝で異なるタイミングや、コアリングとスパイキングの道具の使い分け、サッチ分解の効果まで徹底解説します。美しい芝生を育てませんか?

エアレーションの芝生の時期

芝生のエアレーション完全ガイド
📅
最適な時期

高麗芝は春と秋、西洋芝は春と秋の涼しい時期に実施

🛠️
道具の選び方

土壌改良には中空刃(コアリング)、手軽な通気には中実刃(スパイキング)

🌱
期待できる効果

根切りによる発根促進、サッチ分解、水はけと通気性の劇的改善

エアレーションの芝生の時期は高麗芝と西洋芝で違う?

 

芝生を美しく保つための「更新作業」の中でも、特に重要度が高いのがエアレーションです。しかし、多くの人が「なんとなく春にやればいい」と考えてしまいがちですが、実は芝生の品種によって明確に最適な時期が異なります。ここを間違えると、逆に芝生を弱らせてしまう原因になりかねません。

 

一般的に日本の家庭でよく植えられている「高麗芝(コウライシバ)」などの暖地型芝生と、寒さに強い「西洋芝(ベントグラスやブルーグラス)」などの寒地型芝生では、成長のサイクルが正反対だからです。

 

暖地型芝生(高麗芝・野芝・ティフトンなど)の場合、エアレーションのベストシーズンは、芝生が最も活発に成長を始める「春」と、夏の暑さが落ち着いた「初秋」です。具体的には、地温が確実に15℃を超えてくる3月下旬から6月上旬、そして9月頃が適期となります。

 

一方で、寒地型芝生(西洋芝)は、日本の高温多湿な夏が非常に苦手です。そのため、体力が落ちている夏前や夏場に根を傷つけるようなハードな作業は厳禁です。寒地型の場合は、春の3月中旬〜5月、または秋の9月下旬〜11月が推奨されます。

 

以下の表に、それぞれの芝生タイプ別の適期をまとめました。お庭の芝生がどのタイプか確認してから計画を立てましょう。

 

芝生の種類 最適な時期(春) 最適な時期(秋) 避けるべき時期
暖地型(高麗芝など) 3月下旬 〜 6月上旬 9月上旬 〜 9月下旬 7月〜8月の猛暑期、11月以降の休眠
寒地型(西洋芝) 3月下旬 〜 5月下旬 9月下旬 〜 11月上旬 6月〜9月上旬の高温期、厳冬期

なぜこの時期なのか、その理由は「回復力」にあります。エアレーションは地面に穴をあけ、根を切断する「外科手術」のような作業です。成長が旺盛な時期に行えば、切られた根の修復とともに新しい根が爆発的に伸びますが、成長が止まっている時期に行うと、傷口がふさがらずに乾燥害や病気のリスクが高まるだけなのです。

 

特に注意が必要なのが、近年のような「猛暑の夏」です。暖地型芝生であっても、気温が35℃を超えるような過酷な環境下では、芝生は生命維持で手一杯です。そのような時期にあえて根を切るストレスを与える必要はありません。無理をせず、涼しくなるのを待つのが正解です。

 

気温15℃以上の時期に暖地型芝生のエアレーションを行うと良い理由について、専門的な知見が記載されています。

 

くらしのマーケットマガジン:芝生のエアレーションに適した時期とは?種類別のおすすめ時期を解説

エアレーションの芝生の時期に使う道具とコアリングの手順

エアレーションと一口に言っても、実はその手法には大きく分けて2種類あります。「コアリング」と「スパイキング」です。この違いを理解し、目的に合わせた道具を選ぶことが成功の鍵です。

 

1. コアリング(タインエアレーターなど)
中空(ちゅうくう)の刃(タイン)を地面に突き刺し、円筒状に土を抜き取る方法です。古い土を物理的に排出するため、土壌の入れ替え効果が最も高く、固まった土をほぐす効果が絶大です。本格的な土壌改良を目指すならこちらがおすすめです。

 

2. スパイキング(ローンスパイクなど)
中実(ちゅうじつ)の刃、つまり単なる鉄の棒やナイフ状の刃を突き刺して、穴を開けるだけの方法です。土を抜かないため手軽ですが、穴の周りの土を押し広げることになるため、やりすぎると逆に穴の周辺の土が圧縮されて硬くなる可能性があります。簡易的な水はけ改善や、根切りを主目的とする場合に適しています。

 

ここでは、より効果が高い「コアリング」の具体的な手順を解説します。

 

  • ステップ1:事前の芝刈りと水やり

    作業の前日または当日に芝刈りを行い、芝を短くしておきます。また、地面がカチカチに乾いていると刃が入っていきません。前日にたっぷりと散水して、土を適度に湿らせておくのがコツです。逆に、雨上がり直後のドロドロの状態では作業しにくいので避けましょう。

     

  • ステップ2:穴あけ(パンチング)

    ローンパンチなどの道具を使い、垂直に刃を刺して土を抜き取ります。間隔は10cm〜15cmピッチが理想的です。深さは7cm〜10cmを目指しましょう。足で体重をかけてしっかりと踏み込みます。この時、体重移動をうまく使うと疲れにくいです。

     

  • ステップ3:抜いた土(コア)の処理

    地面に散らばった円筒状の土の塊(コア)は、放置せずにトンボや熊手で回収して廃棄します。この土には古い根や病原菌が含まれている可能性があるため、基本的には捨ててください。もし土壌が良い状態であれば、崩して再利用することもありますが、初心者は捨てるのが無難です。

     

  • ステップ4:コアの回収後の穴の状態確認

    穴がしっかり開いているか確認します。この穴が、新鮮な空気の通り道となり、新しい根が伸びるスペースとなります。

     

道具選びで迷ったら、まずは足踏み式の「ローンパンチ(中空刃)」を一本用意しましょう。電動の機械もありますが、家庭の庭(10坪〜20坪程度)であれば、手動の道具で十分に対応可能です。むしろ、手作業で行うことで、地面の硬い場所や根が張っている場所を足の裏で感じ取ることができ、芝生の健康状態を把握する良い機会になります。

 

スパイキングの場合は、ローンスパイクという道具を使います。こちらは土を抜かないので、作業後の掃除が楽です。頻繁にメンテナンスしたい場合は、春と秋の本格シーズンにコアリングを行い、その間の梅雨時期などに軽くスパイキングを行う、といった使い分けも有効です。

 

芝生専用のローンパンチの使い方や、具体的な製品の選び方については以下のサイトが参考になります。

 

バロネスダイレクト:芝生のエアレーションをする時期っていつ?

エアレーションの芝生の時期に行う目土と肥料のポイント

エアレーションで穴を開けて終わり、ではありません。むしろ、その後の「アフターケア」こそが、芝生の品質を左右します。穴だらけになった芝生は、一時的に乾燥しやすい無防備な状態です。ここで必ず行いたいのが「目土(めつち)入れ」施肥(せひ)」です。

 

目土(または目砂)の重要性
開けた穴をそのままにしておくと、せっかく露出した根が乾燥してダメージを受けてしまいます。穴を埋めるように目土を入れ込むことで、以下の3つのメリットが生まれます。

 

  1. 根の乾燥防止: 露出した根を保護し、保湿します。
  2. 発根の促進: 新しい土が穴に入ることで、根が伸びやすいふかふかの環境を提供します。
  3. 不陸(ふりく)の修正: 地面の凸凹を平らにし、芝刈り機の入りをスムーズにします。

使う土の種類ですが、水はけを重視するなら「川砂(洗い砂)」がベストです。特に西洋芝や、粘土質で水はけが悪い庭の場合は、必ず「砂」を選んでください。ホームセンターで「芝生の目土」として売られているものの中には、黒土や肥料が配合されたものもありますが、これらは保水性が高すぎる場合があるため、土壌環境に合わせて選びましょう。基本的には、サラサラとした砂が最も扱いやすく、失敗が少ないです。

 

目土を入れる際は、デッキブラシやトンボを使って、開けた穴の中に砂を落とし込むように擦り込みます。芝生の葉の上に砂が乗ったままだと光合成の妨げになるので、しっかりと根元まで落とすのがコツです。

 

肥料のタイミング
エアレーション直後は、肥料を与える絶好のチャンスです。穴が開いているため、肥料成分が土壌の深層まで届きやすくなっています。また、根切りによって刺激を受けた根は、修復のために多くの栄養を必要としています。

 

この時期に与える肥料は、即効性のある化成肥料と、土壌改良効果のある有機肥料を組み合わせると効果的です。特に、根の成長を助ける「カリ(カリウム)」成分が含まれている肥料や、微量要素を含んだ活力剤を併用すると、回復スピードが格段に上がります。

 

最後はたっぷり水やり
目土を入れ、肥料を撒いた後は、必ずたっぷりと水をあげてください。水やりによって目土が穴の奥まで落ち着き、肥料が溶け出して土に馴染みます。この一連の流れ(穴あけ→土回収→目土→施肥→水やり)をワンセットとして行うことが、エアレーションの正しい手順です。

 

目土の種類によるメリット・デメリットや、川砂と山砂の違いについて詳しく解説されています。

 

LOVEGREEN:芝生の目土(めつち)の種類と役割について

エアレーションの芝生の時期に期待できるサッチ分解と根切り効果

エアレーションを行う最大の目的は「土壌の通気性改善」ですが、それと同じくらい重要なのが「サッチの分解促進」「根切り効果」です。これらは芝生の若返りに直結する要素です。

 

サッチ分解のメカニズム
サッチとは、刈り取った芝のカスや枯れた葉、古い根などが分解されずに地表や土の中に堆積した層のことです。このサッチ層が厚くなると、通気性や透水性が悪化し、病原菌の温床になります。

 

エアレーションで土壌に酸素を送り込むと、土の中にいる「好気性微生物(こうきせいびせいぶつ)」が活性化します。好気性微生物は酸素をエネルギー源として活動するため、酸素が豊富な環境では有機物(サッチ)を猛烈な勢いで分解し始めます。つまり、エアレーションは物理的に穴を開けるだけでなく、微生物の力を借りてサッチを自然に減らすスイッチを入れる作業でもあるのです。

 

根切りによる「若返り」効果
「根を切る」というと植物に悪いことのように思えますが、芝生においては逆です。植物には、体の一部が傷つくと、その修復のために植物ホルモンサイトカイニンなど)を分泌し、細胞分裂を活発にする性質があります。

 

古い根を切断することで、その切断面から白くて太い「新しい根」が数本分岐して伸びてきます。これを「発根促進(はっこんそくしん)」と呼びます。

 

何年も植えっぱなしの芝生は、根が老化して養分の吸収効率が落ちています。これを「根詰まり」状態といいます。エアレーションで強制的に根を切ることで、芝生は「命の危険」を感じ、防衛本能で若々しい根を再生させるのです。これが、エアレーションが「更新作業」と呼ばれる所以です。

 

この効果を最大化するためには、やはり「時期」が重要になります。芝生自身の体力が落ちている時期に根を切ってしまうと、再生する力が残っておらず、そのまま弱って枯れてしまうリスクがあります。だからこそ、成長ホルモンが活発に出ている春や初秋に行う必要があるのです。

 

また、サッチ分解をさらに加速させたい場合は、エアレーション後に「サッチ分解剤(イデコンポなど)」を散布するのもプロの裏技です。エアレーションで酸素供給された土壌に分解剤を撒くことで、相乗効果が生まれ、驚くほどサッチが減少し、ふかふかの土壌に生まれ変わります。

 

古い根を切ることによる新陳代謝の促進や、サッチ分解の重要性について解説があります。

 

芝生の手入れ.com:芝生のエアレーションは土壌改良や発根を促す大切な作業です

エアレーションの芝生の時期に見落としがちな土壌微生物の活性化

エアレーションの解説記事では、物理的な「水はけ」や「根切り」ばかりが注目されがちですが、実は最も重要な隠れた主役は「土壌微生物(ソイルマイクロバイオーム)」です。ここは他の多くのサイトではあまり深く語られない、しかし芝生管理の核心に迫る部分です。

 

芝生の土壌中には、無数のバクテリアや糸状菌(カビの仲間)が生息しています。これらの中には、芝生に害をなす病原菌もいれば、芝生の生育を助ける有用菌もいます。健康な芝生環境とは、特定の病原菌が増えすぎず、多様な微生物がバランスよく共存している状態(拮抗作用が働いている状態)を指します。

 

土が踏み固められ、酸素が不足した「嫌気(けんき)」状態になると、酸素を嫌う悪玉菌や、硫化水素などの有害ガスを発生させる菌が増殖しやすくなります。これが、夏場に発生する原因不明の不調や、根腐れの正体であることも少なくありません。

 

エアレーションによって新鮮な酸素を土壌深くまで送り込むことは、土壌環境を「嫌気性」から「好気性」へと大転換させるトリガーになります。

 

  • 有用菌(バチルス菌など)の活性化:

    多くの有用な土壌バクテリアは酸素を好みます。彼らが活発になることで、有機物の分解が進み、窒素などの栄養分が植物が吸収しやすい形(無機化)に変換されます。つまり、肥料の効きが良くなるのです。

     

  • 団粒構造(だんりゅうこうぞう)の形成:

    微生物が活動する際に分泌する粘着物質が、土の粒子同士をくっつけて小さな塊(団粒)を作ります。この団粒構造ができると、土の中に適度な隙間が生まれ、水持ちが良いのに水はけも良い、という理想的な「ふかふかの土」になります。これは人間が耕すだけでは作れない、微生物だけが作れる構造です。

     

「最近、肥料をあげても芝生の色が良くならない」「病気がちな気がする」と感じている場合、それは肥料不足ではなく、土壌の酸欠による微生物バランスの崩壊が原因かもしれません。

 

エアレーションを行う時期に、あえて「有機入り肥料」や「堆肥」を少量混ぜた目土を使うのも、この微生物多様性を高めるための高度なテクニックの一つです。無機質な砂だけでなく、微生物のエサとなる有機物を供給し、さらに酸素を送る。この「生物学的アプローチ」を意識することで、あなたの芝生管理は一段上のレベルに到達するでしょう。単なる穴あけ作業ではなく、「土の中の生態系をリセットし、活性化させる儀式」としてエアレーションを捉えてみてください。

 

春と秋、微生物たちが最も活発に働ける温度帯に合わせて酸素を届けてあげること。これこそが、エアレーションの真の目的と言えるかもしれません。

 

微生物と土壌の団粒構造の関係や、好気性バクテリアの役割については、農業的な視点からも重要視されています。

 

永田有機:【芝生管理】芝生のエアレーションとは

 

 


FEDOUR 2つ吐出口の静かな水槽エアーポンプ 4W可調節 水槽に酸素提供 アクセサリー付きエアポンプ (黒色)