芝生の手入れと雑草の対策と除草剤の種類と予防の時期

芝生の手入れで最も頭を悩ませる雑草。その対策と予防、除草剤の種類や時期について、土壌環境の改善という意外な視点も交えて徹底解説します。あなたの芝生、本当に正しい管理ができていますか?

芝生の手入れと雑草

芝生と雑草の戦いに勝つための要点
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敵を知る

雑草の種類(イネ科・広葉)を見極めることが勝利への第一歩です。

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武器を選ぶ

除草剤は「土壌処理剤」と「茎葉処理剤」を時期によって使い分けます。

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先手を打つ

雑草が生える前の「予防」こそが、最も効率的な手入れ方法です。

芝生の雑草の種類と見分け方

 

芝生の手入れにおいて、敵である「雑草」の正体を正確に把握することは、無駄な労力を省くための最初の一歩です。多くの人が「ただの草」として一括りにしがちですが、植物学的な分類に基づいた対処を行わなければ、除草剤の効果が出ないばかりか、大切な芝生まで枯らしてしまうリスクがあります。

 

最も重要な分類は、雑草が「イネ科」か「広葉雑草(イネ科以外)」かという点です。日本の家庭で一般的に採用されている高麗芝(コウライシバ)や野芝(ノシバ)はイネ科の植物です。そのため、同じイネ科の雑草(メヒシバ、スズメノカタビラなど)を枯らそうとすると、芝生自体にもダメージを与えてしまう可能性が高くなります。これを見分けるには、葉の形状を観察します。葉が細長く、葉脈が平行に走っているのがイネ科、葉が丸みを帯びていたり、網目状の葉脈を持っていたりするのが広葉雑草です。

 

また、ライフサイクルによる「一年生雑草」と「多年生雑草」の違いも理解しておく必要があります。

 

一年生雑草(メヒシバ、スズメノカタビラなど)は、種から発芽し、花を咲かせ、種を残して一年以内に枯れます。これらは種を落とさせないことが対策の鍵となります。一方、多年生雑草(スギナ、ドクダミ、カタバミなど)は、地上部が枯れても地下茎や根が生き残り、翌年も再生します。特に地下茎で増えるタイプは、手で抜こうとしても根が千切れて地中に残り、そこからさらに増殖するという厄介な性質を持っています。

 

  • イネ科雑草の特徴: 芝生と似た形状で、除草剤の選択が難しい。成長点が低く、芝刈りでも生き残りやすい。(例:メヒシバ、オヒシバ)
  • 広葉雑草の特徴: 葉の形が特徴的で見つけやすい。選択性除草剤で比較的容易に駆除可能。(例:シロツメクサ、カタバミ)
  • 地下茎植物の脅威: スギナなどは地中深く張り巡らされた根茎に栄養を蓄えており、地上部を刈り取ってもすぐに再生する。

レインボー薬品:雑草検索くん(写真から雑草の種類を特定できる便利な図鑑)
バロネスダイレクト:芝生の雑草図鑑と駆除方法(専門的な視点で種類ごとの対処法を解説)

芝生の雑草の除草剤の種類と選び方

ホームセンターの園芸コーナーに行くと、無数の除草剤が並んでおり、どれを選べばよいか途方に暮れることがあります。しかし、芝生管理において覚えるべき除草剤のカテゴリーは大きく分けて「土壌処理剤」と「茎葉処理剤」の2種類だけです。この2つのメカニズムを理解し、適切に使い分けることで、プロのような美しい芝生を維持することが可能になります。

 

1. 土壌処理剤(発芽抑制剤)
これは、雑草が生えてくる「前」に使用する薬剤です。粒剤タイプが一般的で、土の表面に薬剤の層(処理層)を作ります。雑草の種が発芽しようとするとき、この層に触れることで成長を阻害され、枯死します。

 

重要なのは、今生えている大きな雑草にはほとんど効果がないという点です。しかし、効果の持続期間が3〜6ヶ月と長く、春先や秋口に散布することで、そのシーズンの雑草発生を劇的に抑えることができます。「芝生の手入れは予防が9割」と言われる所以は、この土壌処理剤の活用にあります。

 

2. 茎葉処理剤
これは、すでに生えてしまった雑草の葉や茎に直接かけて枯らす薬剤です。液剤タイプが多く、即効性があります。植物のホルモンバランスを撹乱したり、光合成を阻害したりすることで枯死させます。

 

ここで注意が必要なのが「選択性」です。芝生用として販売されている茎葉処理剤は、芝生(イネ科)には作用せず、特定の雑草(広葉など)だけに作用する「選択性除草剤」です。間違って「非農耕地用」などの全ての植物を枯らす「非選択性除草剤(グリホサート系など)」を散布してしまうと、芝生もろとも全滅してしまいます。これは初心者が最もやりがちな失敗の一つです。

 

以下の表は、代表的な成分と対象雑草の目安です。

 

薬剤タイプ 主な有効成分 特徴と注意点
土壌処理剤 DBN、プロジアミンなど 発芽前に散布。長期間効果が持続するが、効き目が現れるまで時間がかかる。根が定着していない張りたての芝には薬害が出る場合がある。
茎葉処理剤(広葉用) MCPP、2,4-Dなど クローバーやカタバミによく効く。イネ科雑草には効果が薄い場合が多い。気温が高い時期の散布は芝への負担が大きい。
茎葉処理剤(イネ科用) アシュラムなど メヒシバなどに効くが、日本芝への安全性が高い成分を選ぶ必要がある。西洋芝には使えないことが多いので要注意。

住友化学園芸:芝生の雑草対策(薬剤のメカニズムと選び方が動画付きで解説されています)

芝生の雑草の対策と予防の時期

芝生の管理はカレンダーとの戦いです。漫然と手入れをするのではなく、雑草のライフサイクルに合わせた「適期」に介入することで、最小限の労力で最大限の効果を得ることができます。年間の管理スケジュールを頭に入れ、常に「次の季節の準備」をすることが鉄則です。

 

【春(3月〜4月):最大の予防シーズン】
春は多くの雑草が一斉に発芽する時期です。このタイミングを逃すと、夏場の草むしり地獄が確定します。桜が咲く頃までに「土壌処理剤」を散布しましょう。これにより、メヒシバなどの夏雑草の発芽を未然に防ぎます。また、冬の間に生えたスズメノカタビラなどの冬雑草が残っている場合は、種を落とす前に手作業で抜くか、茎葉処理剤で処理しておくことが重要です。

 

【夏(5月〜8月):成長期の対症療法】
芝生も雑草も最も成長する時期です。この時期に土壌処理剤を撒いても手遅れの場合が多いので、発見次第「小さいうちに抜く(テデトール)」か、部分的に「茎葉処理剤」を使用します。ただし、真夏の高温期(30℃以上)に除草剤を散布すると、芝生自体が弱っているため薬害(変色や枯れ)が出やすくなります。散布する場合は、早朝や夕方の涼しい時間帯を選び、規定の希釈倍率を厳守してください。

 

【秋(9月〜10月):翌年のための重要局面】
秋は、冬雑草(スズメノカタビラなど)が発芽を始める時期であり、同時に夏雑草が最後の力を振り絞って種を残そうとする時期でもあります。ここで再び「土壌処理剤」の出番です。秋に薬剤の層を作っておくことで、冬から春にかけての雑草発生を大幅に抑制できます。多くの人が春の対策だけで満足してしまいますが、実はこの「秋の土壌処理」こそが、翌春の美しい芝生を作るためのプロの秘訣です。

 

【冬(11月〜2月):休眠期のメンテナンス】
日本芝は休眠して茶色くなりますが、冬雑草はこの時期も緑色で目立ちます。芝生が休眠しているため、ある程度強い除草剤(非選択性のグリホサート系など)を、芝生に直接かからないように雑草だけに塗布する(筆や軍手を使う)という裏技も使えますが、リスクが高いため推奨はできません。基本的には秋の処理が効いていれば、目立つ草を手で抜く程度で済みます。

 

農家web:芝生の除草剤を撒くのにベストな時期は?(月別の詳細な工程表があります)

芝生の雑草の発生と土壌の環境

ここまでは一般的な対処法について述べましたが、実は雑草の発生には「土壌環境」が深く関わっています。「なぜその場所に、その雑草が生えたのか?」という原因を突き止めると、除草剤を使わない根本的な対策が見えてきます。これを「指標植物(bio-indicator)」としての雑草の活用と言います。

 

特定の雑草が繁茂するということは、その場所の土壌がその雑草にとって好都合な環境(そして多くの場合、芝生にとっては不都合な環境)になっていることを示唆しています。

 

  • スギナが生える場所:酸性土壌・養分不足
    スギナは酸性土壌を好み、地下深くからミネラルを吸い上げる力があります。スギナが大量発生する場合は、土壌が酸性に傾きすぎている可能性があります。この場合、苦土石灰(くどせっかい)を散布してpH(ペーハー)を調整(アルカリ分を供給)することで、スギナが育ちにくい環境を作り、同時に芝生の生育を助けることができます。

  • オオバコ・クローバーが生える場所:土壌の踏み固め(コンパクション)
    これらの雑草は、人がよく歩く場所や土がカチカチに固まった場所を好みます。逆に芝生は根が呼吸できずに弱ってしまいます。対策として「エアレーション(穴あけ作業)」を行いましょう。ローンスパイクなどで地面に穴を開け、新鮮な空気と水を供給し、固結を解消することで、芝生の勢いが増し、結果としてこれらの雑草を駆逐することができます。

  • コケ・藻類が生える場所:水はけの悪さ・日照不足
    厳密には雑草ではありませんが、コケが生えるのは過湿状態のサインです。排水性を高めるために「目砂(めずな)」を入れたり、土壌改良材を使用したりする必要があります。


このように、雑草を単なる邪魔者として排除するだけでなく、「土壌からのメッセージ」として捉え、土壌環境そのものを改善することが、長期的には最もコストパフォーマンスの良い対策となります。土壌が健全で芝生が密集して生え揃っていれば、日光が地面に届かなくなり、新たな雑草の種は発芽することさえできなくなります。

トヨタ自動車(TM9):土壌の役割と改良方法(科学的な視点で土壌改良の重要性が語られています)

芝生の雑草の手入れと芝刈りの効果


最後に、物理的かつ最も基本的な手入れである「芝刈り」と雑草の関係について触れます。「芝刈りは芝を短くするためだけに行う」と考えていませんか?実は、適切な頻度での芝刈りは、最強の雑草対策になります。

植物には「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」という性質があります。茎の先端にある芽の成長が優先され、脇芽の成長が抑えられる性質です。芝刈りによってこの頂芽を切り落とすと、芝生は失った部分を補おうとして、盛んに脇芽(ランナー)を伸ばし、横へ横へと広がろうとします。これにより芝の密度(ターフ密度)が劇的に高まります。

高密度なターフが形成されると、地面は芝の葉で完全に覆われ、土壌表面に日光が届かなくなります。多くの雑草の種は「好光性種子」といって、発芽に光を必要とします。つまり、緻密な芝生そのものが「天然の遮光シート」となり、雑草の発芽を物理的にブロックするのです。

逆に、芝刈りをサボって芝生がスカスカの状態だと、隙間から日光が入り込み、雑草が自由に発芽してしまいます。また、雑草が大きくなってから芝刈りをすると、雑草の成長点(また伸びてくるポイント)を残して刈ってしまうことになり、雑草はすぐに再生してしまいます。

特に夏場は、週に1回以上の頻度で芝刈りを行うことが理想です。「雑草が生えてきたから刈る」のではなく、「雑草を生えさせないために刈る」。この意識の転換が、美しい芝生への近道です。


  • 高刈りの推奨: 夏場などは20mm〜25mm程度の少し高めの刈り高を維持することで、地面への遮光性を高め、乾燥も防ぐことができます。
  • 切れ味の確認: 切れ味の悪い芝刈り機を使うと、葉の断面が潰れて白くなり、病気のリスクが高まるため、定期的な刃の研磨や交換が必要です。

Honda:芝刈り機の選び方と芝生のメンテナンス(機械メーカーならではのメンテナンス論が参考になります)
ニワチエ:芝生の年間お手入れスケジュール(季節ごとの刈り込み頻度が分かります)

 

 


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