原水 浄水 違い 農業と水質基準と処理技術

原水と浄水の違いが農業の水質管理や収量・品質にどう影響するのか、水耕栽培や再生水利用もふまえて整理してみませんか?

原水 浄水 違い 農業の水質と管理

原水と浄水の違いが農業に与える影響ポイント
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原水と浄水の基本的な違い

水道水や地下水などの原水と、ろ過・消毒された浄水では含まれる成分や微生物リスクが異なり、作物の生育や設備のトラブル発生率に差が出ます。

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農業用水質基準と作物への影響

pHやEC、CODなど農業用水の指標値を把握することで、塩類集積や根傷みを防ぎ、品質と収量を安定させることができます。

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浄水処理技術と再生水の活用

ろ過膜や紫外線、塩素消毒などの浄水技術を組み合わせることで、農業集落排水や水耕栽培の循環水を安全な灌漑水として再利用する取り組みが進んでいます。

原水 浄水 違い 農業で押さえたい基本


原水は、河川水・湖沼水・地下水・雨水など処理前の水全般を指し、飲用・農業用・工業用に適した水をつくる出発点となる水です。
浄水は、この原水から濁質・微生物・有機物などをろ過や消毒で取り除き、用途に応じた水質基準を満たすよう処理された水で、水道水や一部の農業用水、RO水などが含まれます。
農業の現場では、井戸水などの比較的きれいな原水を「ほぼそのまま」使うケースもあれば、集落排水処理水や施設栽培の循環水を高度処理した浄水を使うケースもあり、「原水=そのまま」「浄水=飲み水用」だけでは割り切れないのが実情です。
原水の利点は、ミネラル(カルシウム、マグネシウム、カリウムなど)がそのまま残っているため、作物の栄養源として一定の役割を果たす点です。


参考)液肥無しで水耕栽培が可能なのはなぜか

一方で、濁度・病原微生物・農薬由来の微量物質・過剰な鉄やマンガンといった成分が含まれることも多く、ハウス内の散水ノズル詰まりや根腐れ、葉面へのシミ・障害の原因にもなり得ます。


参考)検査項目紹介|一般財団法人 茨城県薬剤師会検査センター

浄水は、濁質や微生物リスクが下がるため管理しやすく、水耕栽培などの設備型農業ではトラブル低減につながりますが、極端に純度の高い水(RO水や精製水)の場合はミネラルが乏しく、そのままでは作物栄養として不十分な点に注意が必要です。


参考)水耕栽培用水:成長に最適な水を選ぶ - Miilkiia

原水 浄水 違い 農業用水質基準とチェックポイント

日本では、農業用水(特に水稲)について、pH 6.0~7.5、COD 6 mg/L以下、SS 100 mg/L以下、溶存酸素 5 mg/L以上、全窒素 1 mg/L以下、電気伝導率EC 0.3 mS/cm以下などの要望水質が示されています。
これらの指標は、原水・浄水を問わず「農業に使うならこの範囲をめざすべき」という目安であり、特にECが高すぎると塩類集積や生育遅延、葉先の枯れ上がりといった問題につながります。
実際には、用水路・ため池・地下水など原水の水質は季節や降雨で大きく変動するため、最低限年1回、可能なら作期前後での水質検査を行い、自営の簡易ECメーターとラボ検査を組み合わせて把握しておくと、安全な範囲で「どこまで原水を活かせるか」の判断がしやすくなります。
水田では多少の濁りや有機物はむしろプラスに働くことがありますが、施設園芸や水耕栽培では細かなSSや鉄分が微細スプリンクラーやドリッパーを詰まらせる原因となるため、同じ原水でも「作型ごとの許容範囲」を意識することが重要です。


参考)https://www.nilim.go.jp/lab/eag/bdash/pdf/bdash19.pdf

また、農業集落排水や下水処理水をかんがい利用する場合には、大腸菌群数や残留塩素などの衛生項目もチェック対象となり、単に農業用水基準を満たすだけでなく、「人の手や可食部にかかる水」という視点でリスクを評価した運用基準が求められています。

農業用水(水稲)の要望水質や診断指標の詳しい数値
農業用水の水質検査と基準(食環境衛生研究所コラム)

原水 浄水 違い 農業における処理方法と設備トラブル対策

一般的な浄水処理では、原水の濁度・細菌数などに応じて「消毒のみ」「緩速ろ過」「急速ろ過」「膜ろ過(UF・ROなど)」を組み合わせ、必要に応じて高度浄水処理(活性炭、オゾンなど)が加えられます。
農業用途向けにも、原水の濁質を取り除く砂ろ過・炭ろ過、細菌やウイルスを抑える塩素・紫外線処理、さらに水耕栽培では養液中の細かな懸濁物や病原体を除去するUF膜(限外ろ過)などが導入されており、設備の目詰まりを防ぎつつ病害リスク低減に役立っています。
一方で、処理が進むほど設置費やランニングコスト、定期洗浄・メンテナンスの負担も増えるため、「どのレベルの水質まで上げれば作物と設備の両方にとって合理的か」を見極めることが、農家にとって重要な経営判断になります。
施設栽培でよく起こるのは、井戸水の鉄・マンガンや、ため池水の微生物由来スライムによる配管・ドリッパー詰まりです。


参考)Desktop Farmer: 水耕栽培は「水…

この対策として、原水の前処理段階に目の細かいフィルターやスクリーン、砂ろ過装置を入れ、その後に紫外線や最小限の塩素を組み合わせる「二段構え」が取られることが多く、UF膜+UV消毒で再生水を農業に利用する公的な実証事業も進められています。

UF膜ろ過と紫外線消毒を用いた高度再生水システムの概要
UF膜+UVによる再生水の農業利用(国総研 技術資料)

原水 浄水 違い 農業と水耕栽培・RO水の使い方

水耕栽培では、大規模施設ほど「原水+浄水」の組み合わせが一般的で、近くの川・池・井戸などの原水をろ過・消毒し、循環する培養液を定期的に殺菌・更新しながら使い続ける方式が多く採用されています。
一部では、RO膜によってほぼすべての溶解性成分を取り除いたRO水(ピュアウォーター)を原水として利用し、その上に必要な肥料成分を完全に人工的に加える「ゼロベース設計」の養液管理を行う事例もあり、特に高付加価値野菜や苗生産で、安定した品質をねらって導入されています。
ただし、RO水は硬度やミネラルが極めて低く、pHの変動も大きくなりやすいため、肥料設計やpH調整、電気伝導度の管理がシビアになり、「水質のばらつきが減る代わりに、管理負荷が増す」という側面があります。
一方、家庭菜園や小規模水耕では、水道水(=浄水)が「扱いやすくてコスパが良い原水」として機能する場合が多いです。


参考)水道水で水やりって大丈夫?種類や季節で水やり方法は変わってく…

日本の水道水は、原水を浄水場でろ過・塩素消毒しており、一般に作物栽培には問題ない範囲のミネラルや塩素濃度に保たれていますが、塩素感受性の高い一部作物や、根や葉に直接かかる噴霧方式では、散水前に数時間汲み置きして塩素を飛ばす、もしくは簡易炭フィルターを通すなど、わずかな工夫で根のストレスを軽減できます。

水耕栽培における水の種類とろ過・精製方法の整理
水耕栽培の水選びとろ過・精製方法(Miilkii Agrrow)

原水 浄水 違い 農業と再生水・微量汚染物質という新しい視点

近年、農業分野で注目されているのが、農業集落排水や都市下水処理水を高度処理して、農業用水として再利用する取り組みです。
従来は「処理水=河川に放流するもの」という位置づけでしたが、UF膜ろ過や紫外線消毒により濁質とウイルスを大幅に低減した再生水は、散水装置の目詰まりリスクが小さく、残留塩素もほとんどないため、施設園芸や街中の都市型農業で使える水源として期待が高まっています。
さらに、海外では光電気化学を活用した新型浄水装置が水耕栽培向けに開発されており、従来のろ過や塩素では除去しにくかった水溶性の微量汚染物質(医薬品残渣や農薬由来成分など)を効率的に除去する試みも進んでいます。
こうした流れの中で、「原水・浄水・再生水」という区分だけではなく、「どの種類の汚染物質・微生物までをどの程度除くか」という“ターゲット別の水設計”が、今後の農業における水利用のテーマになりつつあります。


参考)水耕栽培に革命を起こす新しい浄水装置

水質基準をギリギリ満たすレベルから一歩踏み込み、特定の作物や栽培方式にとって致命的なリスク(たとえば葉菜の食中毒リスク、ハウス内での病原菌まん延、長期的な塩類蓄積など)を見据えた水処理を行うことで、「水のコスト」を単なる支出から、収量・品質・ブランド価値を下支えする投資へと変えていくことができます。

農業集落排水処理水のかんがい利用に関する詳細な解説
農業集落排水施設の処理水のかんがい利用に関する手引き(案)




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