シソ科の植物は世界中に広く分布しており、その多くが独特の四角い茎と対生する葉、そして芳香を持つことが特徴です。ガーデニングや家庭菜園において、シソ科の多年草は「植えっぱなしでも育つ丈夫さ」と「実用性の高さ」から非常に人気があります。一度植えれば毎年花や香りを楽しめるコストパフォーマンスの良さも魅力ですが、その繁殖力の強さゆえに管理にはコツが必要です。
参考)シソ科の花
ここでは、目的別に厳選したシソ科多年草の品種とその特徴、具体的な活用法について深掘りしていきます。
シソ科の植物といえば、まず思い浮かぶのが「ハーブ」です。多くのシソ科ハーブは多年草であり、一度定着すればキッチンの強い味方となります。ここでは特に育てやすく、利用価値の高い種類を紹介します。
オレガノは地中海沿岸が原産の多年草で、トマト料理や肉料理に欠かせないスパイスです。高温多湿な日本の夏でも比較的元気に育つ強健さを持ちます。観賞用の「花オレガノ」と呼ばれる品種群もあり、苞(ほう)がピンクやグリーンに色づき、ドライフラワーとしても人気があります。
参考)次の年まで楽しめる! 寒さに強い宿根草のハーブ7選
タイムには「コモンタイム」のように立ち上がるタイプと、「クリーピングタイム」のように這うタイプがあります。殺菌作用が強く、風邪の引き始めにハーブティーとして飲まれることもあります。葉が細かく、常緑で冬でも収穫できる点が大きなメリットです。
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「長生きしたければ5月にセージを食べよ」という格言があるほど、薬効が高いとされるハーブです。コモンセージが一般的ですが、紫色の葉を持つ「パープルセージ」や、黄色い斑が入る「ゴールデンセージ」など、カラーリーフとしても優秀な品種が揃っています。木質化(茎が木のように硬くなること)しやすく、低木のように扱えます。
葉をこするとレモンのような爽やかな香りが広がる、耐寒性のある多年草です。ハーブティーの中でも特に飲みやすく、リラックス効果が高いとされています。ただし、繁殖力が極めて旺盛で、こぼれ種で庭中に広がることもあるため注意が必要です。
参考リンク:初心者も簡単に育てやすい人気のハーブ42選|おすすめの活用法も紹介
(上記リンクでは、チェリーセージやタイムなど、初心者でも失敗しにくいハーブの特徴が詳しく解説されています)
庭の管理で最も頭を悩ませるのは雑草対策です。シソ科の多年草には、地面を這うように広がり、緻密なマットを形成して雑草の発生を抑える「グランドカバー」に最適な品種が多く存在します。特に日陰(シェードガーデン)でも育つ種類は貴重です。
アジュガは、日陰や湿り気のある場所でも元気に育つ最強のシェードガーデン向けグランドカバーです。春には青紫やピンクの塔のような花を咲かせ、見応えも抜群です。ランナー(匍匐茎)を伸ばして地面を覆い尽くすため、土壌の流出防止にも役立ちます。
参考)初心者でも扱いやすい「アジュガ」! 育て方や注意点を徹底解説…
葉に銀白色や黄色の斑が入る美しい品種が多く、暗い日陰を明るく演出してくれます。アジュガと同様に日陰を好みますが、より繊細な雰囲気を持っています。春から初夏にかけて、ピンクや白、黄色の可愛らしい花を咲かせます。
日当たりの良い場所のグランドカバーなら、クリーピングタイムが最適です。踏圧(踏まれること)にもある程度耐性があり、歩くと爽やかな香りが立ち上ります。開花期にはピンク色の花の絨毯となり、圧巻の景色を作り出します。
丸いコインのような葉に斑が入る品種が流通しており、非常に生育旺盛です。茎が長く伸びて地面を這い、節々から根を下ろして広がります。
| 植物名 | 適した場所 | 花期 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| アジュガ | 半日陰~日陰 | 4~5月 | 湿潤に強い、葉色が美しい |
| ラミウム | 半日陰~日陰 | 5~6月 | 銀葉が明るい印象を与える |
| クリーピングタイム | 日向 | 4~6月 | 香りが良い、乾燥に強い |
| グレコマ | 日向~半日陰 | 4~5月 | 成長が非常に早い、ハンギングにも向く |
参考リンク:初心者でも扱いやすい「アジュガ」! 育て方や注意点を徹底解説
(アジュガの品種ごとの特徴や、シェードガーデンでの具体的な活用事例が写真付きで紹介されています)
シソ科の植物は「花」の美しさでも評価が高く、イングリッシュガーデンやナチュラルガーデンには欠かせない存在です。特に青や紫系統の花色が豊富で、庭に深みと落ち着きを与えてくれます。開花期が長い品種が多いのも特徴です。
濃い青紫色の唇形花(しんけいか)が特徴で、黒いガクとのコントラストが非常に美しい品種です。夏から秋にかけて長期間咲き続け、草丈は1m以上に成長します。地下茎で増えるため、群生させると見事な景観を作ります。
参考)メドーセージ(サルビア・ガラニチカ)の育て方・栽培方法
葉を揉むと甘いフルーツのような香りがします。赤と白のツートンカラー(ホットリップスが有名)や、ピンク、赤など花色が豊富です。春から秋遅くまで、休みなく咲き続ける驚異的な花期の長さが魅力です。
穂状の花をたくさん立ち上げる姿が美しく、アニスのような甘い香りがします。耐寒性・耐暑性ともに優れた品種(特にハイブリッド種)が増えており、夏の暑い時期でも元気に咲き誇ります。蜂や蝶を呼ぶ蜜源植物としても優秀です。
参考)アガスターシェの育て方・栽培方法
ラベンダーに似た優しいブルーの花を咲かせます。本家のラベンダーよりも高温多湿に強く、日本の気候でも育てやすいのが特徴です。葉はシルバーがかっており、花のない時期もカラーリーフとして楽しめます。
参考)カラミンサ・ネペタ【地植え】の育て方|KINCHO園芸
松明(たいまつ)の炎のようなユニークな形の花を咲かせます。赤、ピンク、紫、白など色鮮やかで、夏の花壇の主役になります。うどんこ病に弱い品種もありますが、最近は耐病性のある改良品種が多く流通しています。
参考リンク:ダンギクとは|育て方がわかる植物図鑑
(シソ科の多年草の中でも、秋に美しい花を咲かせるダンギクの育て方や特徴が詳しく載っています)
シソ科の多年草を育てる上で避けて通れないのが「繁殖力の制御」です。ネット上では「ミントテロ」という言葉があるほど、一部のシソ科植物は爆発的に増え、他の植物を駆逐してしまう恐れがあります。美しい庭を維持するためには、植える前からの対策と適切な管理が不可欠です。
参考)https://www.shuminoengei.jp/?m=pcamp;a=page_qa_detailamp;target_c_qa_id=45737
ミント類、ドクダミ(シソ科ではないが同様の増え方)、一部のサルビアなどは、地下茎を伸ばして予期せぬ場所から芽を出します。
シソ(大葉)、レモンバーム、アガスターシェなどは、種を飛ばして増えます。シソは一年草ですが、こぼれ種で毎年同じ場所から生えてくるため、実質的に多年草のような感覚で付き合うことになります。
参考)大葉(シソ)は植えてはいけないの?失敗しない育て方と収穫方法…
特にミント類は、異なる品種を近くに植えると容易に交雑し、香りが変質したり、質の悪い雑種が生まれたりします。
多年草とはいえ、数年経つと株元が木質化してスカスカになったり、勢いが衰えたりします。
参考リンク:【26種】雑草の種類がひと目でわかる!再び生えるのを防ぐ方法
(意図せず増えてしまった植物を雑草として処理する際の判断基準や、根絶するための具体的な方法が解説されています)
シソ科の植物は、単に観賞用や食用としてだけでなく、他の植物の成長を助けたり、病害虫を防いだりする「コンパニオンプランツ(共栄作物)」としても非常に優秀です。この視点は、検索上位の記事ではあまり深く触れられていない、農業的なメリットの大きい活用法です。
シソ科特有の強い香りの成分(メントール、チモール、リナロールなど)は、多くのアブラムシや青虫、ハダニなどの害虫が嫌う傾向にあります。
シソ科の花は、ミツバチやマルハナバチなどの送粉昆虫(ポリネーター)を強く引き寄せます。
参考)スーパーサルビア ロックンロールの育て方
科学的なメカニズムが完全に解明されているわけではありませんが、経験則として特定のハーブが野菜の風味を増すとされています。
これは最も有名な組み合わせです。バジル(多くは一年草扱いですが、アフリカンブルーバジルなどの多年草品種もあります)はトマトの水分調整を助け、風味を良くすると言われています。
根から分泌される成分が、土壌微生物のバランスを整え、トマトの生育を助けるという説があります。
シソ科多年草を単なる「植栽」としてだけでなく、「畑のガードマン」や「サポーター」として配置することで、農薬の使用を減らした環境に優しいガーデニングが可能になります。ただし、前述の通り繁殖力が強いため、野菜の根域を侵食しないよう、根止めをするかポット植えのまま土に埋めるなどの工夫をして共生させることが重要です。

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