キュウリ褐斑病農薬で耐性菌発生を防ぐ効果的防除法

キュウリ褐斑病防除では、薬剤耐性菌の発生が大きな問題になっています。効果的な農薬選択とローテーション防除、耐性菌リスクへの対応策など、収量を守るための正しい防除法をご存知ですか?

キュウリ褐斑病農薬による防除

同じ農薬を使い続けると翌年防除失敗します


この記事で分かる3つのポイント
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耐性菌発生の実態

茨城県調査では9農家中7農家で耐性菌が発生。同系統の薬剤連用が最大のリスク要因です

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効果的な農薬の選び方

QoI剤・SDHI剤は耐性菌発生リスクが高く使用制限が必要。マンゼブ水和剤など保護殺菌剤が基本です

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ローテーション防除の組み方

異なる系統(FRAC Code)の薬剤を組み合わせ、年間使用回数を守る防除体系が重要です


キュウリ褐斑病に効く農薬の種類と特徴



キュウリ褐斑病防除に使える農薬は、作用機作の違いによって大きく分類されます。適切な農薬選択には、各薬剤の特性と耐性菌リスクを理解することが欠かせません。


和歌山県農業試験場の試験結果によると、セイビアーフロアブル20、ジマンダイセン水和剤、ダコニール1000、ダイパワー水和剤、オーソサイド水和剤80が高い効果を示しました。これらの薬剤は接種5日後の総病斑数がゼロまたは極めて少なく、発病度の防除価が85.7~100.0と優れた成績でした。特に21日間の残効を示す薬剤として、セイビアーフロアブル20、ジマンダイセン水和剤、ベルクート水和剤、オーソサイド水和剤が確認されています。


保護殺菌剤は効果が基本です。


マンゼブを主成分とするジマンダイセン水和剤やペンコゼブ水和剤は、多剤耐性菌に対しても安定した防除効果があります。これらの薬剤は葉面に保護膜を形成して病原菌の侵入を防ぐ作用機作のため、耐性菌が発生しにくい特性があります。ただし予防効果が中心なので、発病前からの定期散布が必須となります。


一方で注意が必要な薬剤もあります。QoI剤(ストロビルリン系)に分類されるアミスター20フロアブルやストロビーフロアブルは、和歌山県の調査で採集した106菌株すべてがアゾキシストロビン耐性であることが判明しました。つまり多くの産地ですでに耐性菌が優占している状況です。


同様にSDHI剤のボスカリド水和剤(カンタスドライフロアブル)についても、茨城県や北海道の調査で耐性菌の発生が報告されています。これらの薬剤は作用点が単一であるため、使用を繰り返すことで短期間に耐性菌が選抜されやすい特徴があります。


和歌山県農業試験場のキュウリ褐斑病菌の薬剤感受性試験結果(各薬剤の効果比較データ)


キュウリ褐斑病の薬剤耐性菌発生状況

薬剤耐性菌の発生は、キュウリ褐斑病防除において最も深刻な問題となっています。全国各地の産地で耐性菌が確認されており、従来効果があった農薬が効かなくなる事例が増加しています。


茨城県農業総合センターの調査では、県内のキュウリ栽培農家から任意に選んだ9農家のうち、7農家でチオファネートメチル水和剤(トップジンM水和剤)に対する耐性菌が検出されました。さらに3農家でジエトフェンカルブ・チオファネートメチル水和剤(ゲッター水和剤)に対する耐性菌、1農家でジエトフェンカルブ・プロシミドン水和剤(スミブレンド水和剤)に対する耐性菌の発生が確認されています。検定した113菌株のうち、69菌株がチオファネートメチル耐性、10菌株がゲッター水和剤耐性、12菌株がスミブレンド水和剤耐性でした。


これは重大なリスクです。


山梨県の施設キュウリにおける調査でも、主要薬剤6剤ですでに耐性が発達していることが明らかになっています。特にチオファネートメチルとアゾキシストロビンで高い耐性発達が認められました。福島県の調査では、アゾキシストロビンに対する耐性菌が74.0%、ボスカリドに対する耐性菌が39.5%という高い割合で検出されています。


耐性菌が発生すると圃場での薬剤の防除効果が著しく低下します。北海道の現地試験では、2009年には効果が高かったボスカリド水和剤が、2010年には耐性菌が検出されて効果が著しく低下した事例が報告されています。つまりわずか1年で防除体系が機能しなくなる可能性があるのです。


耐性菌は越冬後も耐性を保持し続けることが確認されています。北海道の調査では、チオファネートメチル、アゾキシストロビン、ボスカリドに対する褐斑病の耐性菌が広く分布し、これらは越冬後も耐性を喪失しませんでした。一度発生した耐性菌は簡単には消えないため、発生前の予防的な対策が極めて重要になります。


薬剤の連用等耐性菌が選抜されやすい条件下だけではなく、薬剤の使用回数を遵守しながら他系統の薬剤とのローテーション散布を行った環境下でも耐性菌の発生は起こりうることが指摘されています。これは適正な使用を心がけていても、リスクの高い薬剤系統では耐性菌発生を完全には防げないことを意味します。


茨城県における薬剤耐性キュウリ褐斑病菌の発生実態調査結果(具体的な発生農家数と菌株数のデータ)


キュウリ褐斑病予防の薬剤ローテーション

薬剤耐性菌の発生を防ぐには、異なる系統の農薬を組み合わせたローテーション防除が不可欠です。同一薬剤や同系統薬剤の連用は、短期間で耐性菌を選抜してしまう最大のリスク要因となります。


ローテーション防除では、FRAC Code(作用機作分類コード)の異なる薬剤を交互に使用します。例えば、M3系統のマンゼブ水和剤、M5系統のTPN水和剤(ダコニール1000)、12系統のフルジオキソニル水和剤(セイビアーフロアブル20)を組み合わせることで、同一系統の連用を避けられます。


具体的な散布体系例を示します。


茨城県の資料では、悪い例として「スミレックス水和剤(プロシミドン)→スミブレンド水和剤(ジエトフェンカルブ・プロシミドン)→ゲッター水和剤(ジエトフェンカルブ・チオファネートメチル)」という連用パターンが挙げられています。これは同一成分や関連成分を連続使用しており、耐性菌発生リスクが極めて高い組み合わせです。


良い例では「スミレックス水和剤(プロシミドン)→ジマンダイセン水和剤(マンゼブ)→ダコニール1000(TPN)」と、毎回異なる系統の薬剤を使用しています。


この方式なら耐性菌の選抜圧を分散できます。


QoI剤とSDHI剤は年2回以内です。


宮城県や岩手県の技術資料では、QoI剤(ストロビルリン系)とSDHI剤は耐性菌発生リスクが高いため、年間使用回数を2回以内に制限し、連用や止め散布(栽培終了間際の散布)には使用しないことが推奨されています。これらの薬剤は効果が高い反面、耐性菌が発達しやすいため、使用場面を厳選する必要があります。


定植2週間後からの定期散布が予防の基本です。発生してから慌てて薬剤散布しても、すでに菌が蔓延している状態では十分な効果が得られません。促成・半促成栽培では4月以降、抑制栽培では収穫初期から11月頃までが発病時期となるため、この期間中は予防散布を継続します。


散布間隔は薬剤の残効性によって調整します。21日間の残効がある薬剤(セイビアーフロアブル20、ジマンダイセン水和剤など)なら2~3週間間隔、残効が短い薬剤なら7~10日間隔での散布が目安となります。ただし降雨が続く場合や発病が見られた場合は、間隔を短縮して対応することが重要です。


農薬散布時は、使用前にラベルを必ず確認し、登録内容(適用作物、使用時期、使用回数、希釈倍数)を守ることが法令上も必須です。また周辺作物に農薬がかからないよう、風向きや散布圧力にも十分注意しましょう。


キュウリ褐斑病発生時の栽培環境管理

薬剤防除だけに頼らず、栽培環境を整えることで病原菌の活動を抑制できます。褐斑病菌の発病好適条件は気温25~28℃、高湿度環境です。この条件を避ける管理が予防の第一歩となります。


ハウス栽培では換気管理が最重要です。施設内は外気に比べて湿度が高くなりやすく、夜間から早朝にかけての結露が葉を濡らす原因になります。夜明け前にタイマーで換気窓を自動的に開ける設定にすると、結露による葉濡れ時間を短縮できます。日中は気温30℃以下を目安に、積極的な換気を行いましょう。循環扇を併用すると、ハウス内の空気が滞留せず、葉面の湿度も下がります。


密植を避け風通しを確保します。


株間を適正に保ち、下葉の摘葉や整枝を行うことで、株元への通風が改善されます。密植過繁茂状態では葉面が常に湿った状態になりやすく、病原菌の胞子が発芽しやすい環境を作ってしまいます。特に雨時期や秋雨の時期は、積極的に摘葉して風通しを良くすることが効果的です。


窒素肥料の過多も発病を助長する要因です。窒素過多は耐病性を低下させ、過繁茂状態となることで病原菌の蔓延を助長します。窒素肥料の過多を防ぐとともに、リン酸、カリが不足しないよう適正に肥培管理することが重要です。土壌分析を行い、バランスの取れた施肥設計を心がけましょう。


灌水方法にも注意が必要です。水滴の跳ね返りがないように丁寧に灌水し、葉に泥はねがかからないようにします。雨などで泥はねがかかる場合は、下葉の除去が有効です。点滴灌水やチューブ灌水を利用すると、葉を濡らさずに水やりができるため、発病リスクを下げられます。


排水対策も見落とせません。水はけが悪く湿度が高い状態が続くと、土壌中の病原菌が活性化しやすくなります。畝を高くする、暗渠排水を設置する、透水性の良い土壌改良材を投入するなどの対策で、圃場の排水性を改善しましょう。


キュウリ褐斑病の耐病性品種選択

薬剤防除や環境管理に加えて、耐病性品種の導入は総合的な防除戦略の重要な柱となります。近年、各種苗会社が褐斑病に対する耐病性を持つ品種を積極的に開発しており、有望な品種が増えてきています。


和歌山県農業試験場の試験では、褐斑病に対して「常翔661」および「ニーナ」で発生が少なく、耐病性が高いことが確認されました。これらの品種を導入することで、薬剤散布回数の削減が期待できます。天草地域で主流となっている「ニーナZ」や「まりん」(埼玉原種育成会)は、うどんこ病・褐斑病・べと病の複合耐病性を有しており、多様な病害に対応できる品種です。


耐病性品種なら初発が遅れます。


北海道の試験では、耐病性品種を栽培することにより、褐斑病の初発が遅くなり、その後の発病も少なく推移し、防除回数の削減が期待できることが実証されました。初発が遅れることで、病原菌の圃場内での増殖期間が短縮され、結果的に被害を軽減できるのです。


タキイ種苗の「Vシュート」は、耐暑性と抜群のつるもちで多収が期待でき、褐斑病、黒星病モザイク病にも強い複合耐病性を持つ品種として注目されています。安定した草勢で長期間栽培可能で、葉が立性のため収穫作業も容易になるという利点があります。


ただし品種だけに頼った管理はリスクがあります。耐病性品種でも、環境条件が悪化すれば発病する可能性はあります。特に厳寒期は高湿度管理になりやすく、耐病性品種でも発病リスクが高まります。耐病性品種を選択した上で、適切な環境管理と予防的な薬剤散布を組み合わせる総合防除が最も効果的です。


自然農法センターでは、市販の褐斑病耐病性品種「ステータス夏Ⅲ」よりも強い褐斑病耐病性を示す「自農C-20」を育成しており、自然農法栽培条件下での選択肢も広がっています。栽培条件や作型に合わせて、適切な耐病性品種を選択することが重要です。


品種選択の際は、褐斑病だけでなく、その地域で問題となっている他の病害(べと病、うどんこ病、黒星病など)に対する複合耐病性も考慮しましょう。複数の病害に対応できる品種を選ぶことで、総合的な防除コストを削減できる可能性があります。


和歌山県によるキュウリうどんこ病および褐斑病に対する品種別耐病性試験結果(品種ごとの発病度比較データ)




タキイ種苗 キュウリ Vアーチのタネ