プロシミドン農薬の効果と使用方法

プロシミドン農薬は灰色かび病や菌核病に高い効果を発揮する殺菌剤ですが、使用方法を誤ると作物の残留基準値超過や耐性菌発生のリスクがあります。適切な希釈倍率、散布時期、使用回数を守ることで安全かつ効果的な防除が可能ですが、あなたは正しい使用基準を把握していますか?

プロシミドン農薬の効果と使用方法

同じ系統の農薬を続けて使うと耐性菌が半年で広がります


📋 この記事の要点まとめ
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プロシミドンの基本特性

ジカルボキシイミド系殺菌剤で灰色かび病・菌核病に高い効果。 植物体への浸透移行性があり耐雨性に優れる。 RACコード2番に分類される

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使用時の重要注意点

希釈倍率1000~3000倍を厳守。使用回数は作物ごとに3~6回以内と定められ、総使用回数の超過は法的違反となる。耐性菌発生リスクが高い

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効果的な防除戦略

異なる系統の殺菌剤とローテーション散布を実施。 発病前の予防散布が最も効果的。 強アルカリ性薬剤との混用は避ける


プロシミドンの基本特性と作用機構


プロシミドンは1981年に日本で初めて登録されたジカルボキシイミド系の殺菌剤です。有効成分プロシミドンを50.0%含有する水和剤として、主にスミレックス水和剤やダラーキックなどの商品名で流通しています。


この農薬の最大の特徴は、植物病原菌の菌糸伸張を阻害する作用機構にあります。特にボトリチス属菌(灰色かび病)やスクレロチニア属菌(菌核病)に対して卓効を示します。細胞膜の合成を阻害することで病原菌の生育を抑制し、予防効果だけでなく病斑進展阻止効果も併せ持っているのが大きな利点です。


植物体への浸透移行性を有するため、散布後に降雨があっても薬剤が流れ落ちにくく、安定した防除効果を発揮します。


耐雨性に優れているということですね。


この性質により、天候に左右されにくい安定した病害防除が可能となります。


FRACコード(殺菌剤の作用機構分類)では「2」に分類され、これは農薬のローテーション散布を計画する際の重要な指標となります。同じコード番号の薬剤を連続使用すると耐性菌が発生しやすくなるため、異なるコード番号の薬剤と交互に使用することが推奨されます。


プロシミドンが効果を発揮する病害は多岐にわたります。りんごのモニリア病、ももやおうとうの灰星病、いちご・きゅうり・トマトの灰色かび病と菌核病、豆類の菌核病、花き類の各種病害など、果樹・野菜・花き・芝生まで幅広い適用作物があります。特に施設栽培での灰色かび病防除において重要な位置づけとなっています。


日本農薬株式会社の公式サイトでは、プロシミドン水和剤の詳細な適用表と使用方法が確認できます。


プロシミドン農薬の適切な希釈倍率と散布方法

プロシミドン水和剤の希釈倍率は、対象作物と病害によって1000倍から3000倍まで細かく設定されています。この希釈倍率を正確に守ることが、効果的な防除と安全性確保の両立に不可欠です。


いちごの灰色かび病・菌核病に対しては2000倍希釈で、使用液量は100~300リットル/10aが標準です。収穫前日まで使用可能で、本剤の使用回数は3回以内と定められています。きゅうりやトマトでは1000~2000倍希釈、レタスでは2000~3000倍希釈と、作物ごとに最適な濃度が設定されているのです。


希釈液の調製時には、まず所定量の薬剤を少量の水でよく練り混ぜてペースト状にします。その後、散布に必要な水量まで徐々に薄めていくのが基本です。例えば10aあたり200リットルの散布液を2000倍で調製する場合、プロシミドン水和剤100グラムを200リットルの水に溶かすことになります。


使用液量は作物の生育ステージによって調整が必要です。初期の小さな株では少なめに、生育が進んで茎葉が茂った段階では多めに散布します。ただし、過剰な散布は薬液の無駄遣いになるだけでなく、残留リスクも高まります。


作物表面が均一に濡れる程度が目安ですね。


散布時期については、発病前の予防的使用が最も効果的です。病斑が見え始めた初発期でも一定の効果がありますが、蔓延してからでは期待した効果が得られません。灰色かび病の場合、花弁が散り始める時期や果実肥大期など、感染リスクが高まるタイミングでの散布が重要になります。


散布方法は、葉の表裏に均一に付着するよう丁寧に行います。特に灰色かび病は花や果実から侵入するため、これらの部位への付着を意識した散布が求められます。散布後は十分に乾燥させることで、薬剤の効果が最大限に発揮されます。


使用後の散布器具は、次回使用時の薬害や基準値超過を防ぐため、十分に洗浄することが必須です。わずかな残留でも、登録のない作物に使用すると一律基準(0.01ppm)超過につながる可能性があるためです。


プロシミドンの使用回数制限と残留基準値

プロシミドンの使用回数は、農薬取締法により作物ごとに厳格に定められています。この使用回数を超えると法令違反となり、3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。


いちごでは本剤の使用回数が3回以内、プロシミドンを含む農薬の総使用回数も3回以内です。レタスでは本剤2回以内、総使用回数2回以内。きゅうりは本剤6回以内(常温煙霧は2回以内)、総使用回数6回以内となっています。この「総使用回数」の概念が重要で、プロシミドンを含む他の製剤を使用した場合も合算してカウントする必要があります。


2012年に農林水産省が実施した国内産農産物の調査では、レタスからプロシミドンの残留基準値5mg/kgを超過する7mg/kgが検出された事例が報告されています。これは使用回数の超過や収穫前日数の不遵守が原因と考えられ、基準値超過は出荷停止や法的トラブルに直結する深刻な問題です。


食品衛生法に基づく残留基準値は作物ごとに設定されています。いちごは10ppm、レタスは5ppm、きゅうりは5ppm、トマトは5ppmです。これらの基準値は、一日許容摂取量(ADI)である体重1kgあたり0.035mg/日を超えないよう、長期毒性試験の結果から安全係数100を設けて設定されたものです。


2025年12月には、中国産ブルーベリーからプロシミドンが検出されたことを受け、厚生労働省が検査命令を実施しました。輸入食品に対する監視も強化されており、国内生産者も同様の基準遵守が求められています。つまり残留基準値の超過は、国内外を問わず厳しく取り締まられているということですね。


使用回数を正確に管理するため、農薬使用記録簿への記帳が義務付けられています。散布日、使用農薬名、希釈倍率、散布面積、使用者名を必ず記録し、収穫時に総使用回数を確認する習慣をつけることが重要です。


収穫前使用日数も厳守すべき基準です。いちごは「収穫前日まで」使用可能ですが、りんごのモニリア病防除では「収穫90日前まで」と長期間の制限があります。この日数を誤ると、たとえ使用回数内でも残留基準値超過のリスクが高まります。


プロシミドンの耐性菌問題と対策

プロシミドンを含むジカルボキシイミド系殺菌剤は、耐性菌が発生しやすい薬剤グループに分類されます。各都道府県の病害虫防除所が実施している耐性菌検定では、イチゴやきゅうりの灰色かび病菌において高度耐性菌や中度耐性菌の検出が報告されています。


栃木県の2025年調査では、イチゴ灰色かび病菌に対するプロシミドン水和剤の高度耐性菌率が11%、中度耐性菌率が46%に達しました。つまり半数以上の菌株でプロシミドンへの感受性が低下しているということです。このような状況では、従来通りの散布では十分な防除効果が得られません。


耐性菌の発生メカニズムは、同一系統の薬剤を連続使用することで、もともと抵抗性を持つ個体が選抜され増殖していく現象です。世代交代の早い病原菌では、わずか1シーズンで耐性菌が優占化することもあります。特に施設栽培のように閉鎖環境で高頻度散布を繰り返す場合、リスクが高まります。


耐性菌対策の基本は、異なる作用機構を持つ殺菌剤のローテーション散布です。プロシミドン(FRACコード2)の後には、例えばアゾキシストロビン(FRACコード11)やボスカリド(FRACコード7)など、異なるコードの薬剤を使用します。最低でも2~3系統の薬剤を組み合わせることが推奨されています。


混合剤の利用も有効な手段です。スミブレンド水和剤は、プロシミドンとジエトフェンカルブ(FRACコード1)の混合剤で、負相関交差耐性を利用した製品です。一方の成分に耐性を持つ菌がもう一方の成分には感受性が高いという性質を活用し、耐性菌の発達を抑制します。


耕種的防除との組み合わせも重要です。罹病残渣の適切な処理、施設内の換気による湿度管理、密植回避による通風確保などで、病原菌の増殖を抑えることができます。化学的防除に頼りすぎず、総合的な病害管理(IPM)の視点が必要ですね。


すでに耐性菌が発生している圃場では、プロシミドンの使用を一時的に中止し、別系統の薬剤のみで防除を行う「休薬」も検討すべきです。数シーズン使用を控えることで、感受性菌の比率が回復する場合があります。


地域の病害虫防除所や農業改良普及センターでは、定期的に耐性菌検定を実施しています。防除効果が低下したと感じた場合は、サンプルを持ち込んで検定を依頼し、適切な薬剤選択の判断材料とすることができます。


プロシミドンの安全性と環境影響

プロシミドンは「普通物」に分類され、毒物及び劇物には該当しませんが、使用時には適切な保護具の着用が必要です。散布作業時は農薬用マスク、保護メガネ、ゴム手袋、長袖長ズボンの作業衣を着用し、皮膚や粘膜への接触、吸入を避けます。


この薬剤には環境ホルモン(内分泌かく乱物質)作用が指摘されています。動物実験では、妊娠中のラットにプロシミドンを投与すると、胎仔に尿道下裂、肛門生殖突起間距離の短縮、精巣重量増加、前立腺重量減少などの生殖器異常が認められました。これはアンドロゲン受容体への拮抗作用によるものと考えられています。


EUでは2012年に環境ホルモン作用を理由にプロシミドンの登録が失効しました。オーストラリアでも2022年に再検討の結果、使用制限が強化されています。日本では現在も登録が維持されていますが、食品安全委員会は各種毒性試験の結果を評価し、ADI(体重1kgあたり0.035mg/日)を設定しています。


残留農薬としてのリスクについては、イチゴでの残留が特に注目されています。ハウス栽培での最大残留値では、Lサイズのイチゴ2個以上を食べるとEUの摂取許容量を超える可能性があるという指摘もあります。


妊娠中の方は特に注意が必要ですね。


水産動植物への影響も確認されています。プロシミドンは藻類(緑藻)の生長阻害作用があるため、浸漬後の薬液を河川等に流すことは禁止されています。散布後の洗浄水や残液の処理には十分な配慮が求められます。


使用済み容器は適切に処理し、河川や用水路に流入しないよう注意します。空容器は3回以上水洗いし、洗浄水は圃場内で散布するなど、環境への負荷を最小限に抑える工夫が重要です。


プロシミドンは化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)の第1種指定化学物質に指定されています。年間取扱量が一定量を超える事業者は、環境への排出量・移動量を届け出る義務があります。大規模農業経営体では、この点も意識する必要があります。


プロシミドン使用時の混用と相性問題

プロシミドン水和剤を他の農薬と混用する際は、薬剤間の相性を事前に確認することが不可欠です。混用によって薬害が発生したり、効果が減少したり、物理的に分離・沈殿が生じる組み合わせがあるためです。


強アルカリ性薬剤との混用は絶対に避けるべき組み合わせです。石灰硫黄合剤やボルドー液などの銅剤と混ぜると、化学反応により有効成分が分解したり、激しい薬害が発生する危険性があります。散布液のpHが大きく変化する組み合わせは、基本的に不適合と考えるべきですね。


あぶらな科作物(特に白菜、だいこん、ストック)への使用時には、他剤との混用を慎重に判断します。これらの作物はもともと薬害が出やすく、混用によってリスクがさらに高まるためです。


単剤使用が原則となります。


適合性が確認されている混用の例として、殺虫剤との組み合わせがあります。アブラムシ類防除のためのネオニコチノイド系殺虫剤(アセタミプリドなど)との混用は、多くの試験事例で問題ないことが確認されています。ただし、必ず最新の混用事例集で確認することが前提です。


混用の順序も重要なポイントです。一般的には「水→水和剤→フロアブル剤→乳剤→展着剤」の順で散布液を調製します。プロシミドン水和剤を先に水に溶かし、十分に分散させてから他剤を加えることで、沈殿や分離のトラブルを防げます。


展着剤の使用については、プロシミドン水和剤自体に界面活性剤が含まれているため、基本的には不要です。ただし、葉面のワックス層が厚い作物や撥水性の強い病害部位への散布では、展着剤の添加で付着性が向上する場合があります。過剰な展着剤は薬害リスクを高めるので注意が必要です。


混用による耐性菌対策の効果については、過信は禁物です。異なる系統の薬剤を混用しても、それぞれの成分に対する耐性菌は独立して発達します。混用すれば耐性菌が出ないわけではなく、あくまでローテーション散布の一環として位置づけるべきなのです。


各農薬メーカーが発行している混用事例集は、実際の試験結果に基づいた貴重な情報源です。住友化学の「i-農力」サイトや各メーカーの公式サイトで、最新の混用情報を確認できます。不明な組み合わせは、必ずメーカーに問い合わせてから使用する慎重さが求められます。


住友化学i-農力サイトでは、スミレックス水和剤の詳細情報と混用事例が確認できます。