灰星病に効く薬剤の選び方と散布タイミング完全ガイド

灰星病の防除に使う薬剤、正しく選べていますか?有効成分・耐性菌リスク・散布時期のズレが収量に直結します。あなたの防除体系、本当に万全でしょうか?

灰星病を防ぐ薬剤の選び方と使い方

同じ薬剤を3年以上使い続けると、防除効果が半分以下に落ちることがあります。


🍑 この記事の3ポイント要約
💊
薬剤は「系統ローテーション」が必須

同一系統の薬剤を連用すると耐性菌が発生し、防除効果が激減します。DMI剤・QOI剤・SDHI剤など異なる系統を組み合わせることが基本です。

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散布タイミングは「開花期」が最重要

灰星病の感染は開花期に集中します。この時期を逃した防除は、果実腐敗を招くリスクが大幅に上がります。

⚠️
登録のない薬剤の使用は農薬取締法違反

作物ごとに農薬登録が必要です。「他の果樹に使えたから」という判断は違法になる場合があり、出荷停止リスクがあります。

灰星病の原因菌と感染が広がる仕組み


灰星病の原因は、Monilinia属菌(モニリニア菌)というカビの一種です。桃・サクランボ・ウメ・スモモなどの核果類を中心に被害を与え、果実が腐敗して表面に灰褐色の胞子の塊を形成するのが特徴です。


感染経路は主に「花」から始まります。開花期に雨や露で濡れた花びらに胞子が付着し、そこから菌が侵入します。そのまま果実や枝へと広がり、収穫直前まで被害を拡大し続けます。


感染しやすい条件は以下の通りです。


  • 🌧️ 開花期〜幼果期の降雨・高湿度(湿度80%以上で急速に進展)
  • 🌡️ 気温15〜25℃の範囲(特に20℃前後で爆発的に増殖)
  • 💨 風通しの悪い園地・密植栽培
  • 🍂 前年の罹病果や枝が園地に残っている場合

被害を受けた果実は商品価値がゼロになります。収穫前に急速に進行することが多く、気づいたときには手遅れというケースも少なくありません。つまり「見てから対処」では間に合わないのが灰星病の怖さです。


菌は越冬し、翌年の感染源になります。落果・罹病枝の園外への持ち出しと処分が、薬剤散布と同じくらい重要な防除対策です。


灰星病に登録のある主な薬剤と有効成分の種類

灰星病に使える薬剤は、有効成分の「作用機構」によっていくつかの系統に分類されます。系統が違えば耐性菌が発生しても別の薬剤は効果を維持できるため、系統を把握して使い分けることが防除の基本です。


代表的な薬剤系統と製品例を以下にまとめます。


系統分類 主な有効成分 製品例(参考) 耐性菌リスク
DMI剤(EBI剤) テブコナゾール、ミクロブタニル オンリーワンフロアブル、インダーフロアブル 中〜高(連用注意)
QOI剤(ストロビルリン系) アゾキシストロビン、クレソキシムメチル アミスター10フロアブル、ストロビードライフロアブル 高(単独連用は厳禁)
SDHI剤 ボスカリド、フルキサピロキサド カンタスドライフロアブル 中(ローテーション推奨)
多作用点接触型(保護殺菌剤 キャプタン、チウラム オーソサイド水和剤、ホーマイ水和剤 低(耐性菌発生しにくい)
その他(生物農薬含む) バチルス菌製剤など エコホープドライフロアブル 極めて低い

農薬は作物と病害ごとに登録が必要です。「他の果樹に効いたから」という理由で転用すると、農薬取締法違反になります。


登録内容の確認は農林水産省の「農薬登録情報提供システム(FAMIC)」で無料で行えます。


散布前に必ず確認する習慣をつけてください。


農林水産省 農薬登録情報提供システム(FAMIC)|登録農薬の最新情報を作物名・病害名で検索できます

灰星病薬剤の散布タイミングと防除体系の組み方

灰星病の防除で最も重要な散布時期は「開花期」です。ここを逃すと、その後の薬剤散布だけでは感染を止めきれない場合があります。


防除スケジュールの目安は以下の通りです。


  1. 開花始め〜満開期:DMI剤または保護殺菌剤を散布(最重要ステージ)
  2. 落花直後〜幼果期:SDHI剤またはQOI剤混合剤を散布(前回と系統を変える)
  3. 果実肥大期〜収穫3週間前:保護殺菌剤で仕上げ散布(収穫前日数に注意)
  4. 収穫後:罹病果・罹病枝の除去・処分で翌年の感染源を断つ

散布間隔は降雨頻度によって変わります。特に開花期〜幼果期に雨が多い年は、7〜10日間隔での防除が求められる場合もあります。


これは大変ですね。


散布時には「展着剤」の添加が防除効果を高めます。果皮や花びらは水をはじきやすく、薬液が流れ落ちやすいためです。展着剤を添加することで薬液の付着性が向上し、同じ薬剤でも防除効果の持続時間が延びることが確認されています。


収穫前日数(PHI)は製品ごとに異なります。たとえば同じ殺菌剤でも「収穫14日前まで」「収穫7日前まで」と異なるため、ラベルの確認が必須です。この確認を怠ると、残留農薬基準を超えて出荷停止になるリスクがあります。


耐性菌発生を防ぐローテーション散布の実践方法

耐性菌が一度発生した園地では、その系統の薬剤がほぼ完全に無効化されます。地域によっては、DMI剤の効果が著しく低下しているケースが農業試験場の調査で報告されています。


これは深刻な問題です。


ローテーション散布の基本ルールを整理します。


  • ✅ 同一シーズン中に同一系統の薬剤を連続2回以上使わない
  • ✅ DMI剤・QOI剤は単独連用を避け、保護殺菌剤との混用または交互使用を行う
  • ✅ QOI剤(ストロビルリン系)は特に耐性菌リスクが高いため、シーズン1〜2回に制限する
  • ✅ 保護殺菌剤(キャプタン系など)は耐性菌リスクが低く、ローテーションの「つなぎ」として有効
  • ✅ 地域の防除暦・農業改良普及センターの指導に従った体系を使う

JAや農業改良普及センターが発行する「防除暦」には、その地域の耐性菌発生状況に基づいたローテーション設計が反映されています。個人で考えるより防除暦に従う方が、耐性菌リスクを大幅に下げられます。


防除暦は地域ごとに最適化されているのです。


農薬の購入前に系統(FRAC分類コード)を確認する習慣をつけると、意図せず同じ系統を連用してしまうミスを防げます。製品ラベルか農薬登録情報システムでFRACコードを調べる方法が最も確実です。


さくらんぼ灰星病の発生状況と防除対策について(青森県農業情報)|地域ごとの薬剤防除の実例と耐性菌対策が参考になります

灰星病の薬剤防除だけに頼らない「耕種的防除」との組み合わせ

薬剤防除だけで灰星病を完全に抑えることは難しいのが実情です。農薬コストの削減と耐性菌リスクの低減を同時に実現するには、耕種的防除(栽培管理による防除)を薬剤と組み合わせることが重要です。


主な耕種的防除の方法は以下の通りです。


  • 🌿 罹病果・罹病枝の早期除去と園外処分:越冬感染源を断つ最も基本的な対策
  • ✂️ 適切な剪定による風通し確保:湿度を下げ、胞子の飛散・付着を抑制
  • 🚿 頭上かん水の回避:果実や花に直接水がかかると感染リスクが急増する
  • 🪣 落果の速やかな回収:地面に残った罹病果は2次感染源になる
  • 📦 収穫後の果実の速やかな冷蔵管理:灰星病菌は収穫後も進行するため、20℃以上の環境に置かない

特見落とされがちなのが「収穫後の果実管理」です。農園での防除が完璧でも、収穫後に常温で放置すると、果実内の潜伏感染菌が急速に増殖し、出荷前に腐敗するケースがあります。収穫→速やかな予冷(10℃以下)→冷蔵保管の流れが損失防止につながります。


薬剤+耕種的防除の組み合わせが原則です。どちらか一方に偏ると、防除コストが増大するか、耐性菌リスクが上がるかのどちらかになります。


農業試験場や都道府県の病害虫防除所が発行している「防除指針」は、最新の登録農薬情報と地域の耐性菌データを反映した実践的な内容です。年に1度は最新版を入手して防除体系を見直すことをおすすめします。


防除ハンドブック「灰星病」(防除.net)|灰星病の被害・発生・防除・薬剤についての基本情報が確認できます
灰星病|KINCHO園芸|灰星病の症状写真と家庭園芸向け防除製品の解説が掲載されています




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