吸肥力強い作物の選び方と施肥管理

吸肥力が強い作物を理解すると施肥設計が楽になり、コスト削減につながります。トウモロコシやキャベツなど代表的な作物の特性と、タマネギとの違いを知っていますか?

吸肥力強い作物と養分吸収

キャベツ施肥量の3倍も吸収します


この記事の3つのポイント
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吸肥力の強さは根の形状で決まる

ダイコンは深く広い根で土壌養分を吸収し、タマネギの3倍の施肥効率を実現します

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緑肥作物は10aあたり窒素30kg吸収

ソルガムやトウモロコシは短期間で過剰養分を除去するクリーニングクロップとして活用できます

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適切な作物選定で施肥コスト削減

キャベツやスイカは過剰施肥に強く、肥培管理の手間とコストを抑えられます


吸肥力強い作物の代表例と特徴


作物によって土壌から養分を吸い上げる能力には大きな差があります。吸肥力が強い作物の代表格として知られているのが、トウモロコシ、ソルガム、キャベツ、ダイコン、スイカなどです。これらの作物は、施肥量が少ない圃場でも旺盛に生育し、痩せ地でも栽培が可能という共通点を持っています。


特にトウモロコシとソルガムはイネ科作物として窒素とカリウムの吸収能力が極めて高く、緑肥として栽培した場合、10aあたり10~30kgもの窒素を吸収します。草丈が250cm程度まで成長し、根は深さ約95cmまで張り、土壌深層80cmからも窒素を吸収できる能力を持っているのです。つまり東京タワーの高さ333mの約4分の3程度の深さまで根が届くイメージですね。


キャベツは多くの作物の中でも特に吸肥力が強いことで知られています。仮に過剰施肥をしたとしても過剰生育や濃度障害などを起こしにくく、肥培管理が比較的楽な作物です。結球を成功させるためには一定の養分が必要ですが、新開墾地でも良く生育する適応力を持っています。


ダイコンもまた強力な吸肥力を持つ野菜です。長い主根と側根により縦にも横にも根が広く分布し、広い範囲から養分や水を吸収できる構造になっています。吸肥力が強いため、前作に堆肥が施してあれば特に堆肥を与える必要がないほどです。


スイカは果菜類の中で吸肥力が強い代表格です。ただしこの強い吸肥力が裏目に出ることもあり、窒素肥料が効きすぎるとつるボケ(茎葉ばかりが茂って着果しない現象)となって着果不良になるリスクがあります。スイカ栽培では窒素の効かせ方が最も難しいポイントになります。


雪印種苗のグリーンソルゴー製品情報では、緑肥作物の窒素・カリ吸収力の詳細データが確認できます。


吸肥力弱い作物との違いと施肥設計

吸肥力が強い作物と弱い作物では、同じ収量を得るために必要な施肥量が大きく異なります。この違いを理解していないと、無駄な肥料コストが発生したり、逆に養分不足で減収したりする原因になるのです。


具体的な数字で比較してみましょう。タマネギとダイコンで同程度の収量を目標とした場合、タマネギはダイコンの施肥窒素の3倍、リン酸と加里は約2倍も多く施用しなくてはなりません。10aあたりで換算すると、この差額は数万円の肥料費に相当します。


では施肥量が少ないダイコンは養分吸収量も少ないのでしょうか。


実は逆です。


収量を揃えて比較すると、ダイコンの方がタマネギよりも養分吸収量が同等ないし多いことがわかっています。つまりダイコンは施肥以外の土壌中に蓄積された養分を効率よく利用しているということです。


この違いの最大の要因は根の形状にあります。タマネギはひげ根という細かい根をたくさん生やすタイプで、特に下方向に伸ばすことが苦手な浅根性です。根が土壌の浅い部分にしか分布しないため、施肥した肥料に頼らざるを得ません。土壌深層に残存する養分を利用できないのです。


一方ダイコンは「大根」という名前の通り、可食部にあたる根が非常に大きく長い直根性です。深く広く分布した根により、土壌のあらゆる層から養分を吸収できます。だからこそ施肥量が少なくても、土壌養分を積極的に利用して十分な収量を確保できるわけです。


施肥設計を行う際には、作物の吸肥力の強弱を考慮することが肥料コスト削減の鍵になります。吸肥力が強い作物を選定すれば施肥量を抑えられますし、連作による土壌養分の蓄積がある圃場では、吸肥力の強い作物を活用して過剰養分を減らす戦略も有効です。


住商アグリビジネスの営農コラムには、作物による養分吸収能力の違いが詳しく解説されています。


吸肥力強い作物の施肥量削減効果

吸肥力が強い作物を上手に活用すると、施肥量を大幅に削減しながら収量を維持できます。これは肥料コストの削減だけでなく、環境負荷の軽減にもつながる重要なポイントです。


キャベツの施肥設計を例に見てみましょう。キャベツは10aあたり窒素20~25kg、リン酸10~20kg、カリ15~20kgが標準施肥量の目安とされています。しかし養分吸収量を調べると、通常の生育をした場合に窒素20~30kg/10aを吸収していることがわかります。


施肥量と吸収量がほぼ同じということです。


この数字が意味するのは、キャベツが施肥した養分をほぼ完全に利用しているということ。さらにキャベツは過剰施肥をしても濃度障害を起こしにくい性質があるため、前作の残存養分が多い圃場では元肥を減らしても問題ありません。実際に前作に堆肥や肥料を十分施用した圃場では、キャベツの元肥を標準の半分程度に減らしても収量に影響しないケースが多く報告されています。


ダイコンの場合はさらに顕著です。吸肥力が強い方なので、前作に堆肥が施してあれば特に堆肥を与える必要がないと言われています。痩せ地で有機物不足が心配な場合でも、完熟堆肥有機配合肥料を控えめに施用すれば十分です。未熟な堆肥を施すと根に変形が生じやすいので注意が必要ですが、適切に管理すれば肥料コストを大きく抑えられます。


施肥量削減の具体的な手順としては、まず土壌分析を実施して現在の養分状態を把握します。リン酸や加里が過剰に蓄積している圃場では、これらの施肥を大幅に減らすか省略できます。特にタマネギの連作圃場などではリン酸がかなり高くなる傾向があり、吸肥力の強い作物に切り替えることで土壌改善とコスト削減を同時に達成できます。


北海道のタマネギ圃場の事例では、土壌中の有効態リン酸が数年で2倍以上に増加し、過剰蓄積が問題になっていました。このような圃場で吸肥力の強いダイコンやキャベツを輪作に組み込むことで、土壌養分バランスの改善が期待できるのです。


吸肥力とクリーニングクロップ活用法

吸肥力が強い作物の中でも、特に緑肥として活用される作物は「クリーニングクロップ」と呼ばれ、土壌の肥料分を抜いてきれいにする目的で栽培されます。ハウス栽培など集約的な施肥を繰り返す圃場で、過剰に蓄積した養分を除去する効果的な方法です。


クリーニングクロップとして最も活用されているのがソルガム(ソルゴー)です。ソルガムは窒素、カリの吸肥力が極めて強く、過剰な肥料成分の除去に役立ちます。10aあたり窒素で10~30kg、カリで30kg以上を吸収する能力があり、わずか40~50日の短期栽培で生収量3~5t/10aを確保できます。この数値は、一般的な家庭用冷蔵庫約10~17台分の重量に相当します。


トウモロコシも優れたクリーニングクロップです。生育旺盛で土壌を覆うように伸びるため、土の風化や流出を抑える効果もあります。日光があれば場所を選ばず生育が可能で、すき込んだ後の肥料としての高い効果があるとされています。窒素吸収量は品種や栽培期間によって異なりますが、10aあたり10~20kg程度が標準的です。


クリーニングクロップの活用で重要なのは、吸収させた養分をどう処理するかです。土壌から過剰養分を除去したいのであれば、収穫してハウスの外に持ち出す必要があります。一方で圃場内に有機物として還元したい場合は、緑肥としてすき込みます。ただしすき込む場合、吸収した窒素は体内でタンパク質に変わっているため、有機物の補給としては利用できますが、即効性の窒素補給にはなりません。


塩類集積が進んだハウス土壌では、クリーニングクロップに塩類を吸収させ、圃場外に搬出する方法が有効です。比較的耐塩性の強いソルガムは、このような目的に特に適しています。夏季の休耕期間に短期栽培し、集積した肥料分を吸収させて搬出することで、土壌環境を改善できます。


緑肥作物の選定にあたっては、どのような効果を期待するかによって作物を選びます。窒素やカリの除去が目的ならソルガムやトウモロコシ、窒素固定ならマメ科の緑肥、土壌構造の改善なら根の発達が良いダイコンなどを選定するのです。


農研機構の緑肥利用マニュアルには、クリーニングクロップの詳細な活用方法が記載されています。


吸肥力強い作物の栽培管理ポイント

吸肥力が強い作物は施肥量を抑えられる反面、その強い吸肥力ゆえの注意点もあります。適切な栽培管理を行わないと、かえって品質や収量を落とすリスクがあるのです。


スイカの場合、吸肥力が強いので茎葉展開期に窒素が多すぎると、つるボケとなって着果不良の原因となります。窒素過多は着果不良や変形果、空洞果発生の原因にもなるため、つるの状態から施肥を判断する必要があります。追肥主体の施肥が安全であり、元肥のやりすぎに注意することが収量確保のポイントです。具体的には、施肥量の3分の2を元肥とし、残りを追肥として早めに施し、収穫間際には肥効が落ち着くようにします。


キャベツは吸肥力が強い割に過剰生育や濃度障害も起こしにくく肥培管理は比較的楽ですが、それでも窒素過多の状態が続くと結球が遅れたり病害が発生しやすくなったりします。土壌中に窒素成分がたくさんあると、キャベツは窒素をよく吸収し葉を繁らせますが、吸収する割には収量に結びつかないのです。施肥量の60~70%とリン酸の全量を基肥とし、追肥は残りの量を2回に分施するのが基本です。


ダイコンは吸肥力が強く比較的少ない肥料分でもよく育つ性質を持っていますが、育ちが急速に進む時期の肥料の吸収は旺盛です。本葉5~6枚までの生育初期を適湿に管理し、順調に肥効を進めることで、生育が促進され根の長さが決まります。この時期の管理が最終的な品質と収量を左右するため、初期の水分と養分管理には特に注意が必要です。


トウモロコシやソルガムを緑肥として栽培する場合、すき込み時期と分解期間の確保が重要になります。一般に分解期間は夏場で土壌水分が十分であれば3~4週間で足りますが、低温期には分解に時間がかかるため、十分な期間をとってください。すき込みが遅すぎると次作の播種定植が遅れ、早すぎると養分吸収が不十分になります。草丈150cm前後、播種後40~50日を目安にすき込むのが標準的です。


肥培管理で最も重要なのは、土壌診断を定期的に行い、常に土壌の健康状態を把握することです。過剰に肥料を与えることは病害虫雑草の発生につながるだけでなく、養分が浸透して地下水汚染にもつながります。吸肥力が強い作物を活用しながら、適正施肥を心がけることが健全な農業経営につながるのです。


吸肥力を活かした輪作体系の設計

吸肥力が強い作物と弱い作物を組み合わせた輪作体系を設計すると、土壌養分バランスを適正に保ちながら、長期的に安定した収量を確保できます。これは持続可能な農業経営の基本となる考え方です。


輪作体系の基本的な考え方は、吸肥力の異なる作物を交互に栽培することで、土壌養分の過不足を調整することにあります。例えば、タマネギのように多肥を必要とし土壌に養分が残りやすい作物の後作に、ダイコンやキャベツなど吸肥力の強い作物を配置します。これにより前作の残存養分を有効活用でき、後作の施肥量を減らせるのです。


具体的な輪作例を見てみましょう。春にタマネギを栽培し、夏にソルガムを緑肥として栽培、秋冬にダイコンまたはキャベツを栽培する体系です。タマネギ栽培で土壌に残存した窒素やカリをソルガムが吸収し、その後すき込むことで有機物として土壌に還元します。秋冬のダイコンやキャベツは、この有機物の分解で供給される養分と土壌残存養分を利用して生育するため、施肥量を大幅に削減できます。


別のパターンとして、施設栽培での輪作も効果的です。トマトキュウリなど多肥栽培を行った後の休閑期に、クリーニングクロップとしてソルガムやトウモロコシを短期栽培します。これらを収穫して施設外に搬出することで、過剰蓄積した養分を物理的に除去できます。その後に再びトマトやキュウリを栽培する際には、塩類集積が改善されているため、より健全な生育が期待できます。


輪作体系で注意すべきは、同じ科の作物を連続して栽培しない連作障害対策です。キャベツとダイコンはどちらもアブラナ科のため、連続栽培は避けるべきです。吸肥力の強弱だけでなく、科の違いも考慮して作物を選定する必要があります。イネ科の緑肥を挟むことで、アブラナ科作物の連作を回避しながら、吸肥力を活用した養分管理が可能になります。


マメ科緑肥を組み込む方法も有効です。マメ科は根粒菌による窒素固定能力があるため、土壌への窒素供給源となります。ただしマメ科緑肥は窒素以外の養分吸収は少ないため、カリなどが過剰蓄積している圃場では、イネ科緑肥との組み合わせが推奨されます。例えば、春にヘアリーベッチ(マメ科)、夏にソルガム(イネ科)、秋冬に本作物という体系を組むと、窒素供給とカリ吸収の両方を実現できます。


輪作体系の効果を最大化するには、各作物の施肥量と養分吸収量を記録し、年間の養分収支を把握することが重要です。収支が大きくプラス(投入過多)になっている場合は、吸肥力の強い作物の割合を増やすか、クリーニングクロップを導入して養分を搬出します。逆にマイナス(養分不足)の場合は、堆肥施用やマメ科緑肥の導入で養分補給を強化するのです。


ミノラスの施肥設計記事では、キャベツを中心とした輪作体系の具体例が紹介されています。






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