いちご液肥のおすすめ種類とタイミング頻度選び方

いちご栽培で収量と品質を左右する液肥。プロが実践する有機・化成の使い分け、糖度を上げるアミノ酸の効果、そして病害に強くなる葉面散布の裏技まで徹底解説します。あなたの施肥設計は最適ですか?

いちご液肥のおすすめと使い方

記事の要約
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種類の使い分け

即効性の「化成」で樹勢を管理し、「有機」やアミノ酸で食味とコクを引き出すのがプロの常識。

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タイミングと頻度

週1回の漫然とした施肥はNG。生育ステージごとのN-P-K比率変更と、天候に合わせた濃度調整がカギ。

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葉面散布の裏技

根から吸収しにくいカルシウムや、細胞を硬くするケイ酸資材の活用で、病気に強いガッチリした株を作る。

いちご液肥の種類と有機化成肥料の使い分け

 

いちご栽培において、液肥の選定は単に「肥料を与える」という行為以上の意味を持ちます。植物の生理状態をコントロールするための「操縦桿」のような役割を果たすからです。市場には数え切れないほどの液肥が存在しますが、大きく分けて「化成(無機)液肥」「有機入り液肥」の2つに分類され、それぞれ明確な役割分担があります。これらを混同して使用すると、意図しない徒長(とちょう)や根傷みを引き起こす原因となります。

 

  • 化成液肥(無機肥料)の特徴と役割
    • 即効性が極めて高い: 施用後すぐに根から吸収されるため、樹勢が低下している時や、急激な寒暖差で根の動きが鈍っている時のリカバリーに最適です。
    • 成分コントロールが容易: 窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)の成分バランスが保証されており、計算通りの施肥設計が可能です。特に、厳寒期において地温が低く、微生物による有機物の分解が期待できない時期には、硝酸態窒素を主体とした化成液肥が不可欠となります 。

      参考)https://www.mdpi.com/2310-2861/10/7/434

    • クリーンで詰まりにくい: 点滴灌水(ドリップチューブ)を使用している場合、不純物が少ないため詰まりのリスクが低く、管理が容易です。
  • 有機入り液肥の特徴と役割
    • 食味・品質の向上: 魚エキス(フィッシュソリュブル)やコーンスティープリカー、糖蜜などを原料としており、これらに含まれるアミノ酸や核酸が、いちごの「コク」や「香り」に直結します 。

      参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9956311/

    • 土壌微生物の活性化: 有機成分は土壌中の有用微生物のエサとなり、根圏(こんけん)の環境を豊かにします。これにより、根張りが良くなり、なり疲れしにくい株を作ることができます 。

      参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9769518/

    • 緩やかな肥効: 化成肥料に比べて肥効が穏やかで持続性があるため、成り込み期(収穫最盛期)のスタミナ切れ防止に役立ちます。

    プロの生産現場では、これらを「どちらか一方」ではなく、「ハイブリッド」で使用するのが主流です。例えば、ベースの樹勢維持にはコストパフォーマンスに優れ計算しやすい化成液肥を使用し、食味を乗せたい収穫期の1週間前や、天候不順で光合成能力が落ちている時の補助として有機入り液肥を投入するといった使い分けです。

     

    参考リンク:いちご専用有機入り肥料の成分バランスと特長(朝日アグリア)
    また、肥料成分の中でも特に「窒素」の形態に注目する必要があります。いちごは低温下では「アンモニア態窒素」の吸収阻害が起きやすいため、冬場の液肥は吸収効率の良い「硝酸態窒素」の割合が高いものを選ぶのが鉄則です。逆に、春先で気温が上がってきた際に硝酸態窒素を与えすぎると、一気に徒長して「軟弱な株」になり、うどんこ病灰色かび病のリスクが高まるため、春以降はアンモニア態や尿素態を含んだバランスの良い液肥に切り替えるといった、高度な調整が求められます 。

     

    参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10333222/

    いちご液肥の追肥タイミングと効果的な頻度

    「週に1回、500倍で与える」というのは、あくまで家庭菜園レベルの目安に過ぎません。農業従事者やハイレベルな栽培を目指す場合、追肥のタイミングと頻度は「植物の要求量」「環境要因」によってダイナミックに変化させる必要があります。漫然とした施肥は、肥料焼け(濃度障害)やチップバーン(カルシウム欠乏による葉先枯れ)を引き起こすだけです 。

     

    参考)家庭菜園でいちご栽培!おすすめ肥料と追肥タイミングを徹底解説…

    具体的な判断基準として、以下の要素を常にモニタリングします。

     

    1. 生育ステージによる要求量の変化

      いちごは、その一生の中で肥料を欲しがる時期と、そうでない時期がはっきりしています。

       

      生育ステージ 施肥の狙い N-P-K バランスの目安 注意点
      育苗 ガッチリしたクラウン(株元)の形成 窒素=カリ > リン酸 窒素過多は炭疽病誘引になるため、切れる時はしっかり切る(窒素中断)。
      定植〜活着 発根促進 リン酸主体 根が動くまでは薄い濃度で回数を多く。
      開花〜肥大期 果実への転流促進 リン酸・カリ高め カリウムは果実の肥大と糖度輸送に必須。不足すると果実が太らない。
      収穫最盛期 草勢維持(なり疲れ防止) 窒素・カリバランス型 果実に養分を奪われるため、窒素も補給しないと次の花が来ない。
    2. 天候と蒸散量に合わせた濃度管理(EC管理)

      液肥の効果は「濃度(EC)」と「量」の掛け合わせで決まります。

       

      • 晴天時: いちごは盛んに蒸散を行い、水を大量に吸います。この時、濃い液肥を与えると根の浸透圧調整ができず、逆に根の水分が奪われる「肥料当たり」を起こします。晴天時は「濃度は薄く(EC低め)、液量は多め」にするのが鉄則です。
      • 曇天・雨天時: 蒸散が少なく、水もあまり吸いません。しかし養分は必要です。この時は「濃度を少し濃く(EC高め)、液量は絞る」ことで、余分な水分を与えずに必要な肥料成分だけを吸わせるテクニックを使います。
    3. 効果的な頻度と灌水方法
      • 土耕栽培の場合:

        従来の「週1回のドカやり」は、土壌中の肥料濃度が急激に上がり下がりするため、根にストレスがかかります。理想は、毎回または2回に1回の灌水時に薄い液肥を混入させる「連続施肥」です。これにより、土壌中の肥料濃度を一定に保ち、いちごが常に安定して養分を吸収できる環境を作ります。

         

      • 高設栽培(養液土耕)の場合:

        1日に数回〜数十回に分けて給液する場合、全ての回で肥料を入れるのではなく、「水のみの時間帯」と「液肥の時間帯」を使い分ける方法もあります。例えば、朝一番は水のみで目覚めさせ、光合成が活発になる午前中に液肥を集中的に与え、午後はまた水に戻して培地内の余分な塩類を洗い流す、といった制御が品質向上につながります 。

         

        参考)Q&A(肥料):検索結果(フリーワードで探す:住友液肥)

    参考リンク:生育ステージごとの追肥タイミングと濃度の考え方(ファームナビ)

    いちご液肥で糖度を高めるアミノ酸の活用

    「甘いいちごを作りたい」というのは全生産者の願いですが、単に甘くするだけでなく、酸味とのバランスやコク深さを出すために、近年注目されているのが「アミノ酸入り液肥」の活用です。

     

    通常、植物は根から吸収した無機質の窒素(硝酸態窒素など)を、体内で光合成によって得たエネルギー(炭水化物)を使って「アミノ酸」に合成し、さらにタンパク質へと作り変えます。この工程には多くのエネルギーが必要です。

     

    しかし、アミノ酸そのものを液肥として直接根や葉から吸収させることができれば、植物は「窒素からアミノ酸へ合成するエネルギー」を節約(ショートカット)することができます 。

     

    参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11278703/

    • アミノ酸施用のメリット
      • 余剰エネルギーの糖分への転換: アミノ酸合成に使われるはずだった炭水化物(光合成産物)が余るため、それが果実の「糖分」として蓄積されやすくなります。これがアミノ酸肥料で糖度が上がると言われる科学的なメカニズムの一つです。
      • 曇天時の生育維持: 日照不足で光合成が十分にできない時でも、アミノ酸を直接供給することで、体内の代謝を維持し、生育停滞を防ぐことができます。
    • 効果的な成分
      • グルタミン酸: いちごの旨味成分に関与し、食味を向上させます。
      • グリシン: 光合成を促進し、葉の緑色を濃くする効果や、キレート作用(ミネラルの吸収を助ける働き)があります。
      • メチオニン: 果実のエチレン生成に関わり、成熟を促進します(使いすぎには注意)。
    • 使い方のポイント

      アミノ酸液肥は、単独で与えるよりも、リン酸やカリウム、微量要素(ミネラル)とセットで与えることで相乗効果を発揮します。特に「マグネシウム(苦土)」は光合成の中心物質であるため、アミノ酸と一緒に施用することで、光合成能力そのものを高め、さらなる糖度アップが期待できます。

       

      注意点として、有機質を含むアミノ酸液肥は、点滴チューブ内でのバイオフィルム(汚れ)の発生原因になりやすいため、使用後は必ず水だけでフラッシング(洗浄)を行うか、資材によっては葉面散布をメインに据える戦略も有効です 。

       

      参考)【公式】いちごの栽培ガイド:効果的な肥料と農業資材の選定方法

    いちご液肥の葉面散布とケイ酸資材の裏技

    検索上位の一般的な記事ではあまり触れられませんが、プロの生産者が品質と耐病性を高めるために密かに、しかし積極的に行っているのが「ケイ酸(シリカ)」「カルシウム」の葉面散布です。これらは土壌施用だけでは吸収効率が悪い、あるいは特定の部位に届きにくいという特性があるため、液肥による葉面散布が劇的な効果を生みます 。

     

    参考)Si22(500ml)【即効性ケイ酸カリ液肥】ケイ酸22% …

    • カルシウムの移動特性とチップバーン対策

      カルシウムは植物体内で「ペクチン」と結合し、細胞壁を強固にするセメントのような役割を果たします。しかし、カルシウムは植物体内で非常に移動しにくい(水と一緒に蒸散流に乗ってしか動かない)という欠点があります。

       

      特に、新芽や果実の先端など、蒸散が少ない部位にはカルシウムが届きにくく、これが細胞壁の形成不全、すなわち「チップバーン(葉先枯れ)」や「果実の軟化」の原因となります。

       

      これを防ぐには、根からの吸収を待つのではなく、「キレートカルシウム」などの吸収されやすい形態の液肥を、新芽や幼果に直接スプレーする(葉面散布)のが最も即効性があり効果的です。これにより、果皮が強くなり、日持ちが向上し、輸送中の傷みも軽減されます 。

       

      参考)イチゴ栽培で葉面散布をするべき理由とは?|効果と対策を徹底解…

    • ケイ酸(シリカ)による「物理的防御壁」の構築

      いちごは本来、ケイ酸をあまり吸収しない植物とされてきましたが、近年の研究や現場の実践で、可溶性ケイ酸の葉面散布が非常に有効であることが分かってきました。

       

      ケイ酸を葉面から吸収させると、葉の表皮細胞の直下に「シリカ層(クチクラ・シリカ二重層)」を形成します。

       

      • うどんこ病対策: 葉の表面がガラス質のように硬くなるため、うどんこ病の菌糸が細胞内に侵入するのを物理的にブロックします。殺菌剤に頼らない予防策として非常に有効です。
      • ハダニ対策: 葉が硬くなることで、ハダニが針を刺しにくくなり、食害密度を下げることができます。
      • 受光態勢の改善: 茎葉がシャキッと立ち上がるため、株元の風通しが良くなり、下葉まで光が届きやすくなります。これにより光合成効率が上がり、果実の肥大が促進されます。
    • 具体的な活用レシピ(裏技)

      葉面散布を行う際は、気孔が開いている早朝(日が昇ってから数時間以内)に行うのがベストです。また、展着剤を必ず使用し、葉の裏面にもしっかりとかかるように散布します。

       

      【プロの散布ローテーション例】

      • 週1回: アミノ酸入り微量要素液肥(光合成促進・樹勢維持)
      • 週1回(交互): 亜リン酸液肥 + ケイ酸資材(病害抵抗性誘導・細胞強化)

      特に「亜リン酸(ありんさん)」は、通常のリン酸よりも植物内での移動が速く、一時的に植物の防御システム(全身獲得抵抗性)をスイッチオンにする効果があると言われており、ケイ酸と組み合わせることで、農薬の使用量を減らしながら健全な株を維持することが可能になります。

       

    参考リンク:いちご栽培におけるケイ酸・葉面散布剤の具体的効果と選び方(いちごテック)
    このように、液肥はいちごの「食事」であると同時に、病気を防ぐ「サプリメント」であり、体を鍛える「プロテイン」でもあります。漫然と与えるのではなく、一つ一つの成分の意味を理解し、生育ステージと天候に合わせて使い分けることで、収量と品質は劇的に向上します。

     

     


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