ブドウ栽培では、萌芽前の休眠期から落葉・越冬までのサイクルを理解しておくことで、剪定や施肥、防除のタイミングを外さずに済みます。
一般的な温暖地の露地栽培では、冬期の剪定と主枝整理、春先のベト病・黒とう病を意識した予防散布、開花前後の摘心・房づくり、幼果期の摘房・摘粒、袋掛け、成熟期の仕上げ管理、収穫後の樹勢回復管理という流れで年間作業が組まれます。
生育ステージごとに重要な作業は明確で、休眠期は樹形を整える剪定と防除薬剤の石灰硫黄合剤散布、萌芽~開花期は新梢管理と病害の予防が中心になります。
参考)https://www.sandonoyaku.com/?mode=f78
落花~果粒肥大期は、ブドウ栽培の収量と品質を左右する摘房・摘粒と、ジベレリン処理(大粒種・種なし栽培)、適切な水分管理が重なり、もっとも忙しくミスが品質に直結しやすい時期です。
参考)https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/hukyu/h_zirei/brand/attach/pdf/201023_4-5.pdf
ブドウ栽培では、一見地上部の枝葉や房に目が行きがちですが、安定した収量には深く広い根系を持たせる土づくりが不可欠です。
日本の多くの園地では雨が多く表層が過湿になりやすいため、表層だけを柔らかくしても根は浅く広がるだけで、干ばつや多収時の水分・養分の供給が不安定になります。
有機栽培の指針では、完熟堆肥の投入と石灰・苦土によるpH矯正を行い、排水性と保水性を両立させた団粒構造を作ることが推奨されています。
参考)https://www.japan-soil.net/report/h24tebiki_03_V_VI_VII.pdf
特に、急傾斜地のブドウ園では、耕起方向や暗渠排水、草生管理を組み合わせて表土流亡を防ぎながら、根が深く入りやすい環境を作る事例が報告されており、中山間地の農家にとって参考になります。
ブドウ栽培で意外と見落とされるのが、堆肥とあわせて微量要素の補給を意識する点で、ホウ素や亜鉛の欠乏は花ぶるいや着粒不良につながることがあります。
参考)https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/shinemuscat_new-saibai.pdf
樹勢が不安定な園では、土壌分析の結果に基づいた全面施肥と、必要に応じた葉面散布を組み合わせることで、樹勢と房づくりのバランスを整えられる可能性があります。
ブドウ「シャインマスカット」栽培の手引き(土づくり・施肥の指針に関する詳細)
ブドウ「シャインマスカット」栽培の手引き PDF
日本の生食用ブドウ栽培では、棚仕立てがもっとも一般的で、降雨が多く日射角度の変化が大きい条件下で、房を雨から守り日照を確保しやすい点が評価されています。
棚仕立ては、ナシやキウイなど他の高木性・つる性果樹でも利用される整枝法で、剪定時に枝を支柱と架線で作られた水平棚に誘引・固定する平棚栽培が標準です。
一方、近年は農家の高齢化や労働力不足を背景に、低樹高の一文字整枝や省力樹形が果樹全般で検討されており、脚立を使わずに作業できる樹形が注目されています。
参考)https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/648825.pdf
モモで検討された棚仕立て・一文字形整枝は、立木仕立てと比較して作業姿勢が楽であり、同様の考え方をブドウ栽培に応用すれば、剪定・摘房・摘粒・防除の労力を長期的に軽減できる可能性があります。
参考)https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/nifts_jukeijushubetsusaibaijirei202407.pdf
ブドウの仕立てについては、垣根仕立てや株仕立てなど、ワイン用ブドウで採用されてきた方式もあり、機械化や収量よりも風味や伝統を重視して株仕立てを復活させる動きも報告されています。
参考)ブドウの生育サイクルと栽培作業のなぜ ブドウ樹の「仕立て」メ…
生食用ブドウ栽培でも、圃場条件や販路に応じて棚仕立てと垣根仕立てを組み合わせたり、部分的に低樹高化を進めることで、整枝・誘引の負担と安定収量の両立が模索されています。
省力樹形 樹種別栽培事例集(樹形設計と省力化の考え方の参考資料)
省力樹形 樹種別栽培事例集 PDF
ブドウ栽培の剪定では、結果母枝と新梢の更新リズムを把握し、1新梢に残す果房数と葉数のバランスを取ることが基本で、弱い新梢は花穂をすべて落とし空枝として光合成専用に回す作業体系が紹介されています。
特に大粒種・種なし栽培では、開花前の花穂整理と房づくり、ジベレリン処理、ジベレリン処理後の摘房・摘粒が連続した工程となり、どこか一つのタイミングを外すと房型や着色に影響が出ます。
摘房は、樹勢に見合った房数に調整する作業で、シャインマスカットの栽培指針では主枝1m当たり約9房を目安とし、ジベレリン2回目処理後5日程度から房を整理していく方法が示されています。
摘粒は、まず第1回ジベレリン処理後に予備摘粒を行い、その後果粒肥大を見ながら仕上げ摘粒を行う二段階方式が紹介されており、早めの摘粒ほど果粒の細胞数を増やし肥大効果が高いとされています。
参考)https://www.nosai-yamanashi.or.jp/grape
一般的な家庭向けの記事では「房が混み合ったら間引く」といった説明に留まることが多いですが、専門的な資料では、果粒軸の長さを揃えたうえで房先の一部を切り詰め、内向き粒や小粒、傷ついた粒を優先して除くなど、房型をイメージしながらハサミを入れる具体的な手順が紹介されています。
参考)【ぶどうの育て方】甘い実を育てるコツと肥料の使い方
また、摘房や摘粒を行う際に、日射量の少ない園ではあえてやや小さめの房型に仕上げて着色と糖度を優先するなど、販売戦略や気候条件に応じて目標房重を変える工夫も行われています。
参考)坂上ぶどう園
ブドウ栽培の作業体系のポイント(剪定・房づくり・摘房の考え方の参考)
ブドウ栽培の作業体系のポイント
ブドウ栽培で問題となる主な病害には、ベト病、黒とう病、うどんこ病、灰色かび病、晩腐病などがあり、多くが雨滴によって伝染するため、降雨時期と薬剤散布のタイミング管理が重要です。
とくにシャインマスカットは黒とう病に弱いとされ、露地栽培では萌芽期から落花後までの連続した予防散布と、雨後の発病状況の観察が欠かせません。
防除暦では、3月下旬の催芽期から黒とう病・晩腐病に対するベンレート水和剤、石灰硫黄合剤などの散布を開始し、発芽直後~新梢伸長期にはベト病も加えた広範囲の病害に対応する薬剤を使用するスケジュールが詳細に示されています。
開花期から果実小豆大期、袋掛け前後にかけては、ベト病・晩腐病・灰色かび病・さび病、チャノキイロアザミウマやカメムシ類などにも対応しながら、収穫前日数や使用回数の制限を守る必要があります。
参考)https://www.ic-net.or.jp/home/jasagae/eino/pdf/2025/2025_207.pdf
意外に見落とされがちなのが散布の「当て方」で、県の防除基準では、棚下から葉裏や果房だけを狙って散布しても十分な効果が得られず、葉表や枝にも均一に薬液が付着するよう、ノズルの角度や散布速度を調整する必要性が強調されています。
参考)https://www.pref.saga.lg.jp/kiji003101845/3_101845_up_opcmm2xo.pdf
また、ハウス栽培では高湿度条件で灰色かび病が発生しやすいため、換気を徹底しつつ、花かす落としや房周りの風通しを意識した摘葉・誘引を組み合わせることで、薬剤防除に頼り過ぎない管理が推奨されています。
参考)https://www.pref.nagano.lg.jp/bojo/nouyaku/bojokijun/documents/5-4.pdf
ブドウ(大粒種)病害虫防除基準(防除暦・病害虫対策の詳細)
令和7年用ぶどう(大粒種)病害虫防除基準 PDF