抵抗性雑草と除草剤の正しい防除体系と対策

抵抗性雑草が除草剤を効かなくしている原因はあなたの「連用」にあるかもしれません。SU抵抗性雑草の種類・見分け方・防除体系・おすすめ除草剤まで徹底解説。今すぐ対策を見直しませんか?

抵抗性雑草と除草剤の関係を正しく理解して防除体系を見直す

同じ除草剤を10年使い続けると、あなたの水田は抵抗性雑草に「完全支配」され、追加防除コストが毎年かさみ続けます。


この記事でわかること
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抵抗性雑草とは何か

SU抵抗性雑草の仕組みと、日本の水田で現在確認されている主な草種を解説します。

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見分け方と判別のポイント

除草後も残る雑草が「抵抗性」なのか「防除失敗」なのか、現場で確認できるチェック方法を紹介します。

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有効な防除体系と除草剤の選び方

SU系に頼らないローテーション体系や、抵抗性雑草に効く成分・除草剤の具体例を紹介します。


抵抗性雑草とは何か:除草剤が「効かない雑草」が生まれる仕組み


除草剤を正しく使ったはずなのに、特定の雑草だけが水田に残り続ける。


そんな経験はないでしょうか。


これは除草剤の品質問題や散布ミスではなく、雑草が「除草剤を無効化する能力」を遺伝子レベルで獲得してしまった結果です。これが「除草剤抵抗性雑草」、特に日本の水田で深刻化している「SU抵抗性雑草(スルホニルウレア系除草剤抵抗性雑草)」です。


SU剤(スルホニルウレア系除草剤)は、水稲栽培用の一発処理除草剤として1980年代以降に急速に普及しました。少ない薬量で広範囲の雑草に効き、残効期間も長く、稲への安全性も高いことから、多くの農家が長年にわたって使い続けてきた成分です。ところがこのSU剤は、植物のアセト乳酸合成酵素(ALS)に作用して雑草の成長を止める仕組みになっています。連用することで、ALSの1か所のアミノ酸が置き換わるだけで抵抗性を獲得してしまう雑草個体が自然淘汰によって増殖します。


つまり、SU剤が効く環境下では感受性個体だけが枯れ、もともと少数いた抵抗性個体が生き残り、毎年繁殖を繰り返すことで最終的に圃場全体を占拠します。これは特定成分に対する「進化」とも言えます。重要なのは「SU抵抗性は顕性(優性)遺伝であり、一度獲得した雑草はその子孫も永続的に抵抗性を持ち続ける」という点です。除草剤を変えずに気づかずにいると、水田は数年のうちに抵抗性雑草に覆われてしまいます。


つまり連用の積み重ねが最大のリスクです。


日本では1995年に北海道でミズアオイのSU抵抗性獲得が初めて確認されました。以来、2023年時点では20草種以上に抵抗性が報告されています。また世界的にもALS阻害剤(SU剤を含む)に対する抵抗性は最も多く報告されているカテゴリであり、問題はけっして局地的ではありません。


日本雑草学会の除草剤抵抗性雑草研究会では、国内における除草剤抵抗性雑草の確認情報を最新の状態で公開しています。自分の圃場に近い地域でどんな抵抗性雑草が確認されているかを調べることができます。


除草剤抵抗性雑草研究会(日本雑草学会)|日本の除草剤抵抗性雑草の最新情報を確認できます


抵抗性雑草の種類一覧:水田で特に注意すべき4つの草種

SU抵抗性が確認されている雑草は年々増加していますが、水稲農家が特に警戒すべき主な4草種を整理しました。


まず「アゼナ類(アゼナ・アメリカアゼナ・タケトアゼナ)」は1997年〜2000年にSU抵抗性が報告されたアゼナ科の広葉一年生雑草です。それぞれ葉の形で見分けられ、アゼナは鋸歯なしの卵状楕円型、アメリカアゼナは明瞭な鋸歯あり、タケトアゼナは基部が丸みを帯びて粗い鋸歯があります。水稲収量への直接被害は比較的少ないものの、トラクターや農具に付着して圃場全域へ広がりやすく、中干し後に大発生するケースもあります。


次に「イヌホタルイ」は1998〜1999年にSU抵抗性が確認された雑草で、全国に広く分布します。直接の収量被害はないものの、イヌホタルイの小穂が実るとカメムシを誘引するため、斑点米の増加リスクがあります。種子は土中で10〜20年生存し、3cmの深さの土中からも出芽できるため、農薬の効果が出にくい場合があります。斑点米は検査等級の低下に直結するため、見逃すと損失が大きくなります。


3番目の「コナギ」は2000〜2002年に抵抗性が報告されたミズアオイ科の雑草です。窒素吸収が非常に旺盛なため、多発すると水稲の生育に大きな影響を及ぼします。種子は湿田条件では10年以上、乾田条件ではそれ以上生存し、好適条件下では50〜60日間にわたって発生し続ける厄介な草種です。


4番目の「オモダカ」は矢じり型の成葉が特徴で、2002年と2014年にSU抵抗性が報告されています。地表から25cmもの深さからでも萌芽でき、地中に球根(塊茎)を作って越冬する多年生の難防除雑草です。株によって個体差が大きく、休眠性の有無も異なるため一斉防除が難しい草種です。SU剤に対する抵抗性に加えて難防除性も持ち合わせており、二重の意味で対策が求められます。


草種名 抵抗性確認年 主なリスク 特徴
アゼナ類 1997〜2000年 圃場への拡散 3種が共存、中干し後に大発生
イヌホタルイ 1998〜1999年 斑点米・等級低下 種子が土中20年生存
コナギ 2000〜2002年 水稲の生育障害 60日連続発生の可能性あり
オモダカ 2002・2014年 難防除+抵抗性の二重問題 地中25cmから萌芽、球根越冬


草種ごとにリスクの中身が違います。


その他、アゼトウガラシ、ミゾハコベ、キクモ、キカシグサ、ミズアオイなどにもSU抵抗性が報告されており、問題は一部の草種に限りません。自分の圃場で発生している雑草の種類と、その草種の抵抗性確認状況を照合することが重要です。


SU抵抗性雑草とは?判別・対策方法と、使える除草剤例一覧(minorasu)|主要4草種の詳細と対策除草剤リスト


抵抗性雑草の見分け方:自分でできる圃場でのチェック方法

除草剤を使ったあとに雑草が残っていても、それが「SU抵抗性の獲得」によるものなのか「防除の失敗」によるものなのかは、見た目だけでは区別がつきません。しかし、現場での観察でいくつかのポイントを確認することで、抵抗性の疑いがあるかどうかをある程度判断できます。


  • 特定の草種だけが多く残っている:複数種が混在せず、1〜2種類の雑草だけが集中して残っている場合は抵抗性の疑いが高いです。
  • 残った雑草の生育が進んでいる:除草剤が効いていれば雑草は出芽後すぐに白化・枯死するはずです。生育が進んだ大きな雑草が残っているのは「最初から効いていない」サインです。
  • 本来は農薬が効きやすい一年生雑草が残っている:オモダカやクログワイなど難防除品種でないのに残っている場合は抵抗性の可能性が高いです。
  • ここ数年で特定草種が急増している:以前は問題なく効いていた除草剤の効果が明らかに落ちてきた場合は要注意です。


逆に「多様な草種がまんべんなく残っている」「除草剤散布後すぐに新しい雑草が生えてきた」という場合は、防除の失敗や水管理の問題による効果切れが疑われます。抵抗性雑草が問題というより、散布時期・水深管理・漏水防止などの見直しが先決です。


これは覚えておけばOKです。


簡易検定としては、ペットボトルやプラスチックポットにSU剤を含む水稲用除草剤を溶かした水溶液を作り、その中に雑草の実生を浸けて発根の様子を観察する「発根法」が普及しています。感受性個体なら発根が抑制され、抵抗性個体は正常に発根します。この方法であれば現場でも簡易的に判断できます。


農研機構|水田雑草のスルホニルウレア抵抗性簡易検定キットの開発|発根法による検定の技術的背景を確認できます


抵抗性雑草が発生するメカニズム:ALS遺伝子変異と連用の関係

SU抵抗性雑草がどのように生まれるのかを知っておくことで、なぜ「連用を避けること」が最も重要な対策なのかが理解できます。


SU剤の作用点は、植物のアセト乳酸合成酵素(ALS)です。SU剤はALSに結合してその機能を阻害し、分岐鎖アミノ酸の合成を止めることで植物を枯死させます。ところが、ALS遺伝子のわずか1か所のアミノ酸が置換する変異が起きると、SU剤が結合できなくなります。この変異はもともと自然突然変異として確率的に発生しており、特定の圃場に感受性個体の中にごく少数の変異個体が混在している状態が初期状態です。


SU剤を毎年連用すると、感受性個体だけが除草されて抵抗性変異個体が生き残り続けます。生き残った個体は種子を残し、世代を重ねるたびに圃場内の抵抗性個体の割合が増加します。変異は顕性(優性)遺伝であるため、抵抗性個体の子孫も全員が抵抗性を持ちます。こうして数年〜十数年のうちに圃場全体が抵抗性個体に置き換わっていきます。


実際に、ある地域の湛水直播栽培では平成初期から同一の初中期除草剤を10年近く連用した結果、SU抵抗性コナギが初発確認されたとの報告があります(植調Vol.58, 2024)。これは「気がついたときにはもう遅い」状態に陥った典型例です。


抵抗性獲得後に連用を続けると損失は増え続けます。


また、抵抗性はSU剤だけに限りません。最近では水田のノビエ類でシハロホップブチル(ACCase阻害剤)への抵抗性も確認されており、複数の除草剤成分に抵抗性を持つ「複合抵抗性」の事例も出始めています。除草剤の有効な選択肢が一つずつ失われていくことを意味するため、ローテーション管理の徹底が急務です。


京都大学|雑草が獲得した最強の除草剤抵抗性メカニズムの解明(2023年)|ALS変異と抵抗性進化の科学的背景


抵抗性雑草の防除体系:SU剤に頼らないローテーション除草の基本

抵抗性雑草の防除で最も重要な原則は「同一作用機構の除草剤を連用しないこと」です。これは抵抗性が発生していない圃場でも、予防として徹底すべきことです。


SU抵抗性がまだ確認されていない圃場では、毎年同じ一発処理剤を使い続けることをやめ、SU剤を含まない除草剤も加えたローテーション体系に切り替えることが基本となります。たとえば「SU含有一発剤→SU不含初期剤+中期剤→SU含有一発剤」というように年ごとに成分を変えることで、抵抗性個体が蓄積する速度を大幅に下げることができます。


すでにSU抵抗性雑草が発生した圃場では、まず現シーズンの被害拡大を防ぐために中期剤・後期剤を追加散布して残草を防除することが優先されます。翌年以降はSU剤を含まない除草剤に切り替え、初期剤と中期剤・後期剤を組み合わせた体系防除を徹底します。隣の圃場への種子拡散を防ぐため、残草がある状態で収穫を迎えないように注意することも重要です。


体系防除が原則です。


一発剤を継続使用する場合でも、対象雑草に効く有効成分が2つ以上含まれているものを選ぶことが推奨されています。成分が1つしか入っていない一発剤では、その1成分に抵抗性が生じると効果がゼロになりますが、2成分以上あれば1成分への抵抗性が生じても別成分で防除できます。


また、水管理との連携も防除効果を左右します。除草剤散布後は最低7日間は落水・かけ流しをせず、田面を露出させないようにすることが基本ルールです。漏水すると薬剤が流れ出し、有効濃度が保てなくなるため、畦畔の穴の補修や水口・水尻の管理も散布前に必ず確認してください。


シンジェンタジャパン|難防除雑草の決め手は上手な水管理|除草剤効果を最大化する水管理の実践的解説


抵抗性雑草に効く除草剤の成分と製品例:草種別の選び方

SU抵抗性雑草を防除するには、SU系以外の作用機構を持つ成分を含む除草剤を選ぶことが基本です。主要4草種それぞれに有効な成分と代表的な製品を以下に整理します。


🌿 SU抵抗性アゼナ類への有効成分と製品例


アゼナ類への対策では、プレチラクロール、クロメプロップ、ペントキサゾン、カフェンストロール、ベンタゾンなどが有効です。これらの成分を含む除草剤の例としては、エリジャン乳剤、ミスターホームランLジャンボ、トップガンLジャンボ、イッテツフロアブル、バサグラン粒剤などがあります。散布時期は基本的に初期散布が有効ですが、イッテツフロアブルやバサグラン粒剤などは中期剤として使えます。


🌿 SU抵抗性イヌホタルイへの有効成分と製品例


ブロモブチド、プレチラクロール、ブタクロール、ダイムロン、ベンタゾンなどが有効です。トップガンフロアブル、マーシェット乳剤、バトル粒剤、BASFバサグラン粒剤などが該当製品です。ベンタゾンを含む製品は中期〜後期の追加防除にも使えるため、残草対応に便利です。


🌿 SU抵抗性コナギへの有効成分と製品例


クロメプロップ、ブロモブチド、プレチラクロール、テフリルトリオンなどが有効です。テフリルトリオンは4-HPPD阻害剤として比較的新しく、残効期間が40〜50日と長く、SU抵抗性雑草にも高い効果を示すことから近年多くの一発剤に配合されています。シグナスフロアブル、エリジャン乳剤、ドリフ1キロ粒剤などが対応製品例です。


🌿 SU抵抗性オモダカへの有効成分と製品例


ベンゾフェナップ、ピラゾレート、MCPB、ベンタゾンが有効です。ホクコーユニハーブフロアブル、クミメートSM1キロ粒剤、バサグラン粒剤(ナトリウム塩)などが対応製品です。ベンゾフェナップ・ピラゾレートを含む製品は発生前の初期に、MCPB・ベンタゾン含有製品は中期〜後期の防除に使います。


草種に合った成分を2つ以上含む製品選びが条件です。


農薬の登録内容は毎年変わるため、実際に使用する前には必ず農薬登録情報提供システムで最新の登録状況を確認してください。


農林水産省|農薬登録情報提供システム|除草剤の最新登録情報・使用条件を検索できます


抵抗性雑草の防除に使える除草剤の検索システム:農研機構のツールを活用する

自分の圃場で発生している草種に対して有効な除草剤を調べる手間を大幅に省けるツールが存在します。農研機構が整備した「雑草生物情報データベース(WeBoS)」内の「除草剤抵抗性雑草検索システム」です。


このシステムでは、国内で確認されている除草剤抵抗性雑草の情報と、その防除に有効な除草剤の情報を草種別・都道府県別に検索できます。「この草種はどの地域で抵抗性が確認されているか」「この草種の防除に使える成分は何か」という2つの問いに対して素早く答えが得られるのが特徴です。


これは使えそうです。


また、全国農業協同組合連合会JA全農)や各都道府県の農業試験場・改良普及センターも、地域ごとのSU抵抗性雑草の発生状況と推奨防除体系を毎年公表しています。自分の地域の最新情報は、地元のJAや普及指導員を通じて入手するのが最も確実です。地域単位での発生情報は、圃場間の伝播リスク管理にも直結するため、情報共有を積極的に活用してください。


農研機構|雑草生物情報データベース(WeBoS)のご紹介|除草剤抵抗性雑草の検索システムと外来雑草早期警戒情報


抵抗性雑草を発生させないための予防管理:連用回避と圃場観察の実践

抵抗性雑草への対策で最も費用対効果が高いのは、発生前の予防です。発生してしまってからでは防除コストも労力も大幅に増加します。


予防の核心は「同一成分の連用を3年以上続けない」ことです。日本植物防疫協会などの指針でも、SU系除草剤と異なる作用機構の除草剤を毎年組み合わせるローテーション体系が強く推奨されています。具体的には、毎年使う除草剤の主成分のRACコード(作用機構コード)を確認し、同じコードが続かないように管理することが実践的な方法です。


毎年の圃場観察も予防には欠かせません。除草剤散布後3〜4週間時点で圃場を巡回し、残草がないか、残っているとすればどの草種かを記録しておきましょう。同じ草種が年々増えている傾向があれば、抵抗性獲得の初期段階にある可能性があります。記録を続けることで変化のパターンが見えてきます。


早期発見が原則です。


さらに、刈り取り機やトラクターなどの農機具は圃場間の種子移動の媒体になります。抵抗性雑草が発生している圃場で使用した農機具は、別の圃場に入る前に種子が残らないよう清掃することが、圃場間の拡散防止につながります。特に水稲の直播栽培では種子混入リスクが高いため、より慎重な管理が必要です。


圃場間の種子移動ルートを断つことは、労力に見合った効果があります。


日本農業新聞|総合防除で薬剤抵抗性・耐性発達を抑制|薬剤感受性検定と防除対策の考え方


グリホサート抵抗性雑草という新たな問題:畦畔・農道管理での注意点

水田内のSU抵抗性雑草と並んで、近年注目すべきもう一つの抵抗性雑草問題があります。


それが「グリホサート抵抗性雑草」です。


これは水田内よりも畦畔・農道・農地周辺の管理で問題になっています。


グリホサートはラウンドアップなどの商品名でよく知られる非選択性茎葉処理除草剤で、世界中で広く使用されています。しかし世界的に見ると、グリホサート抵抗性雑草は2022年時点で56種344事例が報告されており(東邦大学・Heap 2022)、特に米国ではグリホサート耐性組換えダイズの普及に伴い問題が深刻化しています。


日本でも2013年に静岡県の水田畦畔でネズミムギのグリホサート抵抗性が初めて確認されました。その後、オヒシバ、ヒメムカシヨモギ、オオアレチノギクでも抵抗性が確認され、2024年にはヒメイヌビエへの抵抗性も報告されています。畦畔管理でグリホサートを毎年使い続けている場合、すでにその圃場周辺に抵抗性個体が広まっている可能性があります。


これは意外ですね。


グリホサート抵抗性雑草への対策としては、茨城県農業総合センターが公表した資料によると、ナブ乳剤(シクロキシジム)を利用したイネ科雑草への選択的防除や、作用機構の異なる除草剤とのローテーションが推奨されています。畦畔除草でも「同じ除草剤を毎年使い続けない」という原則はSU抵抗性と同様です。


茨城県農業総合センター|北関東におけるグリホサート抵抗性雑草の発生と対策~ナブ乳剤を利用した選択防除~


抵抗性雑草と除草剤コストの関係:防除費増加を防ぐための考え方

抵抗性雑草の問題は農学的な話にとどまらず、農業経営に直接影響します。抵抗性雑草が蔓延した圃場では、初期の一発剤だけでは防除しきれず、中期剤・後期剤の追加散布が必要になります。これは除草剤の購入コスト増加だけでなく、散布作業の回数増加(労働時間・燃料費の増加)も意味します。


農林水産省の令和6年産の米生産費データによると、10a当たりの米の生産費は13万6,858円に上ります。この中で農薬費(除草剤含む)の占める割合は少なくなく、防除体系の見直しが全体コストの圧縮につながる余地があります。


農業経営の収益性という観点でも、抵抗性雑草の予防管理に投資することは合理的な選択です。予防的なローテーション体系に切り替えるために使う追加コストより、抵抗性雑草が蔓延してから対処するための追加コスト(追加除草剤・手作業除草・収量減少分)の方がはるかに大きくなります。


予防の方がコストが安くなります。


特にコナギのように水稲と窒素を奪い合う草種が多発した場合は、米の収量・品質の低下という形でも損失が生じます。斑点米を引き起こすイヌホタルイが繁茂すれば検査等級の低下による単価下落も起き得ます。こうした間接損失まで含めると、抵抗性雑草対策の経済的インセンティブは非常に大きいと言えます。


防除コストの見直しには、地元のJAや農業改良普及センターが提供している「防除暦(防除体系の年間スケジュール)」を活用するのがスムーズです。地域の発生状況や推奨農薬が反映されているため、一から検討するより効率よく体系を組み立てられます。


独自視点:抵抗性雑草は「除草剤の使い方」よりも「記録の有無」で差がつく

これまでの解説では除草剤の選び方・体系の組み方を中心に説明してきましたが、実は現場で最も差がつくのは「記録管理」の習慣です。これは検索上位の記事でほとんど語られていない視点です。


SU抵抗性雑草の発生は、多くの場合「気がついたら圃場の半分が覆われていた」という形で表面化します。これは抵抗性個体の増加が最初の数年間は肉眼で識別しにくいためです。感受性個体と抵抗性個体が混在しているうちは、全体的な防除効果が「少し落ちた気がする」程度の変化しか生じません。その曖昧な段階で記録なしに判断しようとすると、前年との比較ができず変化に気づけません。


記録こそが最初の防衛線です。


推奨する記録項目はシンプルです。毎年、①使用した除草剤の製品名・成分・散布日、②散布3〜4週間後の残草状況(草種・密度)、③前年比較(増えているか・減っているか)の3点を記録するだけで、圃場ごとの変化のパターンが蓄積されます。スマートフォンのメモアプリや農業日誌アプリでも十分対応できます。


近年は「アグリノート」「AGRION」など農業記録に特化したスマートフォンアプリも普及しており、写真付きの圃場記録が手軽にできます。記録を習慣化することで、抵抗性雑草の早期発見だけでなく、どのローテーション体系が自分の圃場に最も効果的かという独自の知見も蓄積されます。


除草剤を変えるよりも、記録を始める方が今日すぐできる最初の一歩かもしれません。記録は将来の農薬コスト削減と収量安定に直結する「見えない投資」と考えてください。


抵抗性雑草の最新情報と今後の動向:新成分・新技術の活用も視野に

除草剤抵抗性雑草の問題に対して、農薬メーカーや研究機関も新たな成分・技術の開発を進めています。


水稲用除草剤の分野では、三菱ケミカルが開発した新成分「サイラ™(有効成分:ピカルブトラゾクス)」が注目されています。これはSU剤とは全く異なる新規作用機構を持つ成分で、SU抵抗性雑草にも効果を示すことが期待されています。既存の抵抗性雑草対策成分が効かなくなってきている圃場では、こうした新規作用機構成分の登場は大きな選択肢の拡大を意味します。


また、畦畔・農地周辺のグリホサート抵抗性雑草に対しては、PPO阻害剤の新成分「Rapidicil™」の開発も進んでおり、耐性ヒユ類への効果が報告されています(2024年研究会発表)。


新規成分の動向にも注目です。


一方、農薬に依存しない補完的な技術として、深水管理による雑草抑制(水深10〜20cmの管理で雑草の光合成を阻害)や、水田用チェーン除草機を活用した物理的除草も見直されています。有機農業や特別栽培での取り組みで培われたこれらの技術は、除草剤ローテーションと組み合わせることで抵抗性雑草への依存度を下げる手段になります。


今後の方向性としては、「除草剤単体に頼らない統合的雑草管理(IWM:Integrated Weed Management)」の考え方がより重要になります。農薬・物理的防除耕種的防除を組み合わせることで、どれか一つの手段への過度な依存を避け、抵抗性リスクを分散させるアプローチが世界的にも主流になりつつあります。


三菱ケミカル|新規水稲除草剤「サイラ™」研究開発ストーリー|新規作用機構成分によるSU抵抗性雑草対策への取り組み


まとめ:抵抗性雑草対策に今日から始められること

抵抗性雑草と除草剤の問題は、「効かなくなってから対処する」では手遅れになります。1995年の国内初確認から30年が経過した現在、SU抵抗性雑草はすでに全国の水田に広く分布しており、「自分の圃場は大丈夫」という楽観は通用しない状況です。


今日からできることを3つに絞ると、①今年使った除草剤の成分名とRACコードを書き留める、②散布後3週間後に圃場を巡回して残草状況を記録する、③来シーズンの防除体系を地元JAまたは農業改良普及センターに相談する、この3点です。


動き出すのは早いほど効果的です。


除草剤抵抗性の問題は、農家一人ひとりが意識して管理することでしか根本的には解決しません。新しい成分や技術が登場しても、連用を続ける限り抵抗性はいずれ生まれます。「同じ除草剤を使い続けない」という一つの原則を守り続けることが、長期的な水田管理の安定につながります。


グリーンジャパン|水稲除草剤抵抗性雑草とその対策|草種別チェックポイントと対策成分の実践的な解説


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