ナブ乳剤の倍率(何倍希釈か)は、ラベル(登録情報)の基本形である「10a当たりの薬量(mL/10a)」と「10a当たりの希釈水量(L/10a)」から逆算して求めるのが安全です。
なぜ倍率が先に書かれないかというと、除草剤は作物への薬害回避や効果の安定のために、最終的に圃場へ投入された有効成分量=面積当たりの原液量が重要になる設計だからです。
計算はシンプルで、倍率=希釈水量(mL)÷原液量(mL)です。
例えば登録表に多いレンジとして、薬量150~200mL/10a・希釈水量100~150L/10aが示される作物があり、これを倍率に直すと概ね500~1000倍の幅になります(100L=100,000mLとして計算)。
参考)ナブ乳剤
一方で、同じ「ナブ乳剤」でも対象(例:樹木等の周辺地の一年生イネ科雑草、ススキ、チガヤ等)では薬量・希釈水量レンジが変わるため、倍率も別物になります。
現場での手順は、次の順番がミスを減らします。
ここで意外と忘れがちなのが、「倍率を固定」してしまうと、散布水量が変わった瞬間に面積当たりの原液量がズレる点です。
とくに、圃場条件で散布水量を上下させることが多い場合は、倍率より先に“10a当たり何mL入れるか”を固定しておく方が、登録から外れる事故を減らせます。
ナブ乳剤は農林水産省の登録情報上、農薬の種類は「セトキシジム乳剤」で、用途は除草剤として登録されています。
登録情報には、作物名ごとに「適用雑草名」「使用時期」「薬量」「希釈水量」「本剤の使用回数」「使用方法」などが表形式で整理されており、ここが実務の“正本”になります。
例えば、だいずでは「一年生イネ科雑草(スズメノカタビラを除く)」に対し、3~5葉期、6~8葉期、9~10葉期といった雑草の進み具合(葉齢)で薬量が変わる区分があります。
同じ作物でも、葉齢が進むと薬量レンジが上がる区分があるため、「同じ倍率でいいだろう」という運用はズレやすいポイントです。
また、希釈水量にも「通常散布」「少量散布」のような選択肢が併記される作物があり、散布機材(ブーム、動噴、少量散布対応)で運用が変わる前提になっています。
さらに、作物によっては「無人航空機による散布」のように散布水量自体が桁違い(L/10aが極端に少ない)で登録されるケースがあり、地上散布と同じ倍率感覚で考えると混乱します。
使用回数の上限(本剤の使用回数、セトキシジムを含む農薬の総使用回数)も登録表に明記されているため、輪作・防除体系の中で“同成分の積み上げ”になっていないかまで確認が必要です。
倍率の話に見えて、実際は「登録の適用条件を守れているか」が最優先で、倍率はその条件の一部として扱うのが安全です。
登録表の使用時期には、「雑草生育期 イネ科雑草3~5葉期」のように、雑草側の生育ステージが明確に書かれています。
これは、ナブ乳剤がイネ科雑草の茎葉に散布して効かせるタイプ(茎葉散布・全面散布など)として運用される前提があるためで、土壌処理剤のように“先に撒いて待つ”設計ではありません。
現場感覚としては「草が小さいほど効く」はよく言われますが、登録表が葉齢で区切るのは、草丈よりも処理適期の再現性が高いからです。
上位情報でも、イネ科雑草3~5葉期での散布が効果的という説明があり、雑草が大きくなると効きが落ちる点が強調されています。
参考)畑に使える除草剤 ナブ乳剤の特徴や使い方
ここで押さえたいのは、倍率を濃くしても“散布適期を過ぎた弱点”を完全に取り返せるわけではない、という現実です。
登録には葉齢別に薬量が上がる枠がある作物もありますが、だからといって無制限に濃くしてよいのではなく、あくまで登録表の範囲内で、適期に当てるのが前提になります。
意外と知られていない注意点として、ナブ乳剤は「広葉雑草及びカヤツリグサ科には効果が劣る」旨がメーカー情報に明記されており、草種の見立て違いで“倍率のせい”に見える失敗が起きやすいです。
参考)https://www.nippon-soda.co.jp/nougyo/product/3929
つまり、倍率調整より先に「相手がイネ科かどうか」「抵抗性が疑われるか」「混生状況はどうか」を確認しないと、散布後の評価がブレます。
参考)北関東におけるグリホサート抵抗性雑草の発生と対策~ナブ乳剤を…
参考:登録表(適用作物・使用時期・薬量・希釈水量・使用回数)が確認できる(この記事の根拠の中心)
農林水産省 農薬登録情報提供システム「ナブ乳剤」
倍率を現場のタンク(例:動噴の200L、背負いの15Lなど)に合わせるときは、「10a当たりの薬量」を先に面積換算し、それをタンク水量に割り当てるのが確実です。
計算の型(どの作物でも共通で使える)を、絵文字付きで整理します。
例として、10aに薬量150mL、希釈水量150Lを採用する場合、倍率は1000倍相当になります(150L=150,000mL、150,000÷150=1000)。
同じ薬量150mLでも、希釈水量を100Lにすると約666倍相当になり、倍率が変わっても面積当たりの薬量は同じなので、登録上の狙いは維持されます。
逆に、倍率だけを固定して「いつも1000倍で」と決めてしまうと、散布水量を増減したときに面積当たりの原液量が変わり、登録表の薬量レンジから外れるリスクが出ます。
このミスは、圃場の草丈や葉面積に合わせて“水を増やしたい日”ほど起きやすいので、タンク調製の手順書を「面積→原液→水」の順にしておくと現場が安定します。
さらに、散布ムラ対策としては「雑草茎葉にかかるよう、均一に散布」というメーカーの注意があり、倍率以前に“当て方”が効果の差として出やすい点も重要です。
検索上位では「倍率の計算」や「3~5葉期」が中心になりやすい一方で、現場の失敗要因として多いのが「倍率は合っているのに、付着が足りない」ケースです(特に草が株元で込み合うとき)。
登録情報にも使用方法として「雑草茎葉散布又は全面散布」とあり、言い換えると“葉に当てて成立する薬”なので、ノズル角度や歩行速度で付着量がブレると体感効果が揺れます。
このとき、単純に倍率を濃くするよりも、登録希釈水量の範囲内で散布水量側を適正化し、均一散布を優先する方が、結果としてコスパが良いことがあります。
特に少量散布が登録されている作物では、「少ない水で当てる」前提のノズル・霧化条件が揃っていないと、葉裏や株元への回り込みが落ちて“効かない”評価になりやすいので注意が必要です。
もう一つの独自チェックポイントは、「草種の混生」を先に疑うことです。
メーカー情報として、ナブ乳剤は広葉雑草やカヤツリグサ科には効果が劣る旨が明示されているため、イネ科が枯れて広葉が残ると「倍率が薄かった」と誤解されやすいです。
散布前に、圃場の優占草種がイネ科かどうかをざっと確認し(オヒシバ、メヒシバ、エノコログサ等の疑い)、混生なら別系統剤や体系を検討する、という発想が“倍率迷子”を減らします。
最後に、登録情報には適用場所が「樹木等(公園、庭園、駐車場、道路等)」のように農地外も含まれる枠があり、同じナブ乳剤でも薬量レンジが広い区分があるため、ネットの「〇〇倍」を鵜呑みにせず必ず自分の用途の行を見に行くのが鉄則です。
参考:メーカーの使用上の注意(均一散布、効果の範囲=広葉・カヤツリグサ科に弱い等)が確認できる(散布のコツの根拠)
日本曹達 ナブ乳剤 製品情報