広葉雑草の防除で最初に押さえるべきは、その除草剤が「選択性除草剤」か「非選択性除草剤」か、そして選択性の場合に「広葉選択性」なのか(広葉に効いてイネ科に効きにくいのか)を整理することです。
選択性は、作物と雑草の根や葉の形・大きさ、薬剤の吸収・移行、土壌への吸着性、さらに作物側が代謝・分解して不活性化できるかなど複数要因で決まります。
つまり同じ圃場でも「作物の生育ステージ」「雑草の種類」「土壌条件」が変わると、選択性の幅(薬害リスクと効きの両立)が一気に狭くなることがあります。
実務での見分け方は、ラベルの適用作物・適用雑草・使用時期を読み、広葉雑草が適用草種として明確に入っているかを確認することが最短ルートです。
参考)https://www.mdpi.com/2073-4395/10/11/1687/pdf
「広葉雑草に効かせたいのに効かない」ケースの多くは、そもそも薬剤の得意分野が広葉ではなくイネ科だった、あるいは雑草ステージが適期から外れていた、という設計ミスが原因になりがちです。
また、非選択性除草剤は作物も枯らし得るため、畝間や作物のない時期・場所で使うなど散布場所の設計が前提になります。
現場で便利な判断軸を挙げます(迷ったらこの順で確認すると事故が減ります)。
除草剤の大枠は、雑草が出る前に効かせる「土壌処理剤」と、雑草が出た後に効かせる「茎葉処理剤」に分けて考えると、判断がブレません。
土壌処理剤は、雑草がまだ生えていない土の表面に散布(または混和)し、土壌表面に「処理層」を作って、発芽直後の芽や根から吸収させて枯らすタイプです。
このタイプは、雑草が生育する前に枯れるため見た目の劇的変化は出にくい一方で、発生を「予防」できるのが強みです。
茎葉処理剤は、葉や茎の表面から吸収させて枯らすため、「すでに生えている広葉雑草」を処理したい場面で主役になります。
茎葉処理剤には、散布後数時間で症状が出る即効型から、効果がはっきり出るのに一週間以上かかる遅効型まで幅があるため、評価は“散布翌日”で決めつけないのがコツです。
季節要因も実務では大きく、夏場は比較的早く効果が出やすい一方、冬場は効果発現に2週間ほどかかる場合がある、という説明が公的資料にもあります。
土壌処理と茎葉処理の「組み方」も重要です。
意外と見落とされがちなのは、土壌処理剤は微生物や光などで分解され、やがて効果が失われる点です。
「去年は効いたのに今年は後半で広葉雑草が増えた」という現象は、抵抗性だけでなく、処理層の劣化や発生時期のズレで説明できる場合もあります。
参考:除草剤の「選択性」「土壌処理」「茎葉処理」「剤型」など、基本分類と使用法の公的整理(基礎の裏取り)
https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/243581.pdf
同じ成分・同じ作用機構に頼り続けると、抵抗性雑草が増えるリスクが高まるため、広葉雑草対策でも「ローテーション(作用機構を替える)」は中長期の安定化に直結します。
抵抗性獲得のメカニズムには、標的部位の変異、標的遺伝子の増幅/過剰発現、代謝の促進(P450やGSTなど)、吸収・移行の抑制、薬剤の隔離といった複数のタイプが整理されています。
特に代謝の促進は、作用機構の異なる薬剤を同時に代謝できる可能性があり、標的部位変異よりリスク管理が難しい、という指摘があります。
ここが現場で効くポイントで、抵抗性の進化速度に最も影響する要因として「選択圧(除草剤使用頻度)」が挙げられ、選択圧を下げることが抵抗性管理の基本戦略だと説明されています。
つまり「強い剤を足す」より先に、「同じ仕組みの連用をやめる」「体系処理で取りこぼしを減らす」「必要な場面だけ散布する」という運用設計が、結果的に効きの寿命を延ばします。
また、薬量不足や残効切れなどで雑草が弱った状態が続くと、抵抗性バイオタイプが顕在化・出現しやすい可能性がある、という考察も紹介されており、雑な散布の積み重ねが将来コストを押し上げ得ます。
ローテーションは「商品名」ではなく「作用機構」を軸に考えるのが安全です。
参考:抵抗性の仕組み(標的部位変異、代謝、隔離など)と、選択圧を下げる重要性の解説(専門的だが実務の判断軸になる)
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030928715.pdf
除草剤は極微量で植物に作用するため、使用法を誤ると作物への薬害が出る、という大前提をまず共有しておきます。
薬害は、散布量、作物の生育状況、土質、温度などが深く関与し、さらに他ほ場へ飛散して被害を与えることもあるとされています。
広葉雑草を狙って散布したつもりが、近接作物へ飛散して「広葉作物に薬害」という事故は、経営面のダメージが大きいので最優先で潰すべきリスクです。
ドリフト対策としては、霧状になり過ぎる散布液が薬害を強める場合があるため、除草剤用のドリフト低減ノズルの使用が推奨されている資料があります。
参考)https://www.mbc-g.co.jp/cms/wp-content/uploads/2022/07/ID177_03-1.pdf
また、処理後6時間以内の降雨が効果を減ずることがあるので天候判断が重要、という注意も同資料にあります。
さらに、土壌処理効果がないタイプでは発生前には効かないため、雑草の発生が揃ってから処理する、といった“剤の性格に合わせたタイミング設計”も薬害回避と効果安定に効きます。
ここで、上位記事にはあまり出にくいけれど現場で効く「器具・粒径」の話を少し深掘りします。
散布を霧状にし過ぎると飛散距離が伸び、隣接圃場の広葉作物に付きやすくなります。
逆に、ドリフト低減ノズルで粒を適度に大きくし、風の穏やかな時間帯を選ぶだけでも、同じ薬量でも“狙った広葉雑草に届く割合”が上がり、結果として追加散布の回数が減ることがあります。
「効きが甘いから濃くする」の前に、「飛ばしていないか」「濡らし方が適正か」を点検すると、コストも事故も減らせます。
参考:ドリフト低減ノズル、散布後の降雨、処理タイミングなど、散布設計の注意点(実務の落とし穴がまとまっている)
https://www.mbc-g.co.jp/cms/wp-content/uploads/2022/07/ID177_03-1.pdf
広葉雑草の防除を“圃場内の作業”だけに閉じると、毎年同じ苦労を繰り返しやすいので、地域の種子供給源まで視野を広げると一段ラクになります。
公的資料でも、外来性雑草が近年急激に増加していること、堆肥・鶏糞散布などが持ち込み原因といわれること、さらに耕作放棄地が雑草種子の生産・供給源になり地域での対策が必要な事例があることが挙げられています。
この視点は検索上位の「おすすめ除草剤」記事には出にくい一方、広葉雑草の“再侵入”を説明できるため、上司チェックでも説得力が出やすいポイントです。
例えば、圃場で土壌処理と茎葉処理をきれいに回しても、周辺の畦畔・用水路・耕作放棄地から種が飛び込めば、翌年に同じ広葉雑草が復活します。
その場合、除草剤だけで完結させようとすると散布回数が増え、選択圧も上がって抵抗性リスクを自分で高める循環に入りやすくなります。
対策はシンプルで、「種を作らせない」「持ち込まない」「供給源を減らす」を軸に、地域・圃場周りも含めた雑草管理へ拡張することです。
具体策(入れ子にせず、現場で実行しやすい形にします)。
この独自視点を記事に入れておくと、「広葉雑草に効く薬剤名」だけの情報より、なぜ毎年苦戦するのか、なぜ体系が崩れるのかを説明でき、再現性のある提案になります。