コナギは水田で問題になりやすい一年生の水生(抽水)雑草で、田植え~初期湛水の時期に発芽し、夏に旺盛に生育して秋まで開花・結実を続けます。種子を落として枯死し、落下種子が土壌中の“シードバンク”として翌年以降の発生源になります。コナギが厄介なのは、発生が短期で終わらず、圃場条件によっては「次々に出てくる」ように見える点です。
見分けのポイントは「若い時期の形の変化」です。コナギは発芽直後、沈水状態で細い線形葉が出て、成長に伴って浮水葉、抽水葉へと段階的に葉の形が変わります。最終的には卵形~心臓形(ハート形)に近い葉になり、ここまで来ると多くの人が“コナギっぽい”と気づきやすい一方、幼植物期は他草種と紛れやすいので早期観察が重要です。
「湛水しているのに増える」「代かき後の田面がムラっぽい場所に集中する」など、発生の偏りが見える年は、薬剤選定だけでなく田面の均平・漏水・水深変動の有無も疑ってください。抵抗性の話題は目立ちますが、実際の現場では“効かせる前提条件”が崩れているケースも混ざります。
コナギ対策は、除草剤の銘柄より先に「湛水・代かき・水管理」を整えるほど成功率が上がります。理由はシンプルで、初期剤・一発処理剤は土壌表層に処理層(薬の効く層)をつくって効かせる設計が多く、その層が水の動きで崩れると、効くはずの草が残りやすくなるからです。
押さえるべき水管理の基本は次の通りです。
また、研究報告として「コナギ種子の発芽は湛水下の土壌表層に限られる」といった知見もあり、表層環境が発生を左右しやすい草だと理解できます。つまり、代かきで田面の状態を揃え、処理後に水を安定させること自体が“耕種的防除”になります。
意外に盲点なのが「代かきの“やり方のクセ”が翌年の発生に影響する」ことです。圃場ごとに、同じ人が同じ速度・同じ水深で代かきをしていると、特定の場所に毎年同じ微地形が残り、その場所が“コナギの定位置”になることがあります。毎年同じ場所が濃いなら、薬を強くする前に、均平・漏水・入水後の水深推移を記録して原因を潰すほうが再現性が高いです。
「一発処理剤をきちんと使ったのにコナギだけ残る」現象が続く場合、SU抵抗性(スルホニルウレア系除草剤に効きにくい系統)の可能性が現実的になります。SU抵抗性は外見だけでは判別できず、ほ場で特定草種が大量に残るといった状況から疑う、と行政資料でも整理されています。
SU抵抗性が疑われる場合の考え方は、“次の一手”を準備することです。
ここで重要なのは「抵抗性=もう終わり」ではない点です。公的資料でも、体系処理や有効成分の見直しで対応する方針が示されています。裏を返すと、毎年同じ系統(同じ作用機作)の成分に偏ると、圃場内の“残る個体だけが種を落とす”状況になり、数年で一気に難化します。
さらに実務のコツとしては、「残草を見つけた年に、種子を落とさせない」ことです。コナギは開花・結実を長く続け、土壌に種子を落として翌年以降の発生につながります。残った株は“来年の自分への請求書”だと思って、可能なら手取りも含めて確実に処理してください(面積が小さいほど費用対効果が高いです)。
SU抵抗性対策の参考(判別・体系処理の考え方、成分例の整理)
スルホニルウレア系除草剤(SU剤)抵抗性雑草に対する防除法(判別の考え方、体系処理、連用回避)
直播(湛水直播・乾田直播を含む)では、移植よりも「苗立ちのムラ」と「初期の水管理」が雑草発生と直結しやすく、コナギ対策も“圃場の見え方”が変わります。なぜなら、苗が揃わない場所は光が入り、田面が見え、雑草側に有利な時間が長くなるからです。直播は省力化のメリットが大きい一方、雑草管理は設計がシビアになります。
直播でコナギを増やしやすい典型パターンは次の通りです。
直播では「薬剤の適用(登録)」も移植と異なる場合があるため、必ずラベル・地域指導(JAや普及)に沿って選びます。そのうえで現場で効きを最大化するには、“水を動かさない期間をつくる”“漏水を止める”“均平を詰める”といった基本動作が結局いちばん効きます。
独自視点として、直播のコナギ対策は「播種後~出芽期の観察メモ」が効きます。日付ごとの水深、落水の理由(作業都合なのか、漏水なのか)、田面の露出時間、苗立ちの疎密をメモしておくと、翌年の改善が“勘”ではなく再現可能になります。特に「毎年同じコーナーだけコナギが濃い」問題は、薬の強弱ではなく水の動線(入水口・落水口・暗渠・畦の割れ)で説明がつくことが多いです。
コナギ対策を“その年の防除”で終わらせず、2~3年スパンで楽にする鍵は「種子生産を止める」ことです。コナギは秋まで開花・結実を続け、土壌表面に種子を落としてシードバンクを形成します。この“翌年以降の元”を減らせれば、薬剤費も作業時間も下がり、直播・移植どちらでも安定します。
あまり知られていない面白い話として、コナギの花芽形成や開花は、日長(昼の長さ)や水温の影響を受け、産地(地域)によって反応が違うことが報告されています。例えば、一定の長い日長条件では開花までの日数に産地間差が出るが、条件が変わると差が小さくなる、といった知見が示されています。つまり、同じ「コナギ」でも、地域個体群の性質や年の気象で“種を作るタイミング”がずれる可能性があり、残草を放置すると種子供給が長引く年があり得ます。
この視点を現場に落とすと、実務の結論は次の通りです。
開花・日長・水温といった生態の参考(地域差や条件による違いのヒント)
水田雑草コナギの開花・生育への日長と水温の影響(産地間差、花芽形成と水温の関係)
また、コナギは形態が成長段階で変わること、SU抵抗性が日本で問題になってきたこと、古くから人と関わりがあった植物であることなどが、日本雑草学会の解説としてまとまっています。知識の土台を固めると、現場の“あるある”の理由が見えやすくなります。
日本雑草学会の解説「コナギ」(形態変化、生活史、抵抗性の背景)