同じ殺ダニ剤を2回使うと抵抗性が発達します。
ニセナミハダニはかつて独立した種とされてきましたが、1990年代に海外の研究を基にナミハダニの赤色型として同一種とみなされる時期がありました。しかし、農研機構による1994年の交配実験で、ナミハダニ黄緑型とニセナミハダニを交配するとF1雌は中間色で出現するものの、F2では雌が1個体も出現しないことが明らかになりました。つまり交雑個体群は存続できず、現在では再び別種として扱われています。
体長は雌で約0.5~0.6mm、雄で約0.4mmと非常に小さく、肉眼での確認は困難です。体色は常時赤色で、脚の先端が淡橙色に着色している点が特徴です。一方、ナミハダニ黄緑型は淡黄緑色で背中に1対の黒斑があるため、色で区別できます。カンザワハダニも赤色ですが、体側に暗色斑部を持ち脚が白い点で見分けられます。
発生初期には主に葉裏に寄生して吸汁するため、葉表にかすり状の白い斑点が現れます。多発すると葉裏が褐色になり、株全体がクモの巣状の糸で覆われて光合成が阻害されます。どういうことでしょうか?これは株の生育停滞や収量減少に直結する深刻な被害です。イチゴでは2月中旬以降にこの状態になると、新芽も花房も発生しなくなり大幅な収量減となります。
農研機構の研究成果では、ナミハダニとニセナミハダニの交配実験の詳細が報告されており、両者を別種として扱うべき科学的根拠が示されています。
ニセナミハダニは25~28℃の高温乾燥条件下で急速に増殖します。卵期間は2~3日、若虫期間は6~7日で成虫になり、年に10世代以上を経過する驚異的な繁殖力を持ちます。1雌あたりの生涯産卵数は100~180個程度で、温度条件が良ければ10日程度で世代交代が完了します。
特筆すべき点は、ニセナミハダニの低温耐性の弱さです。研究によれば、3ヶ月後にはカンザワハダニやニセナミハダニはすべて死亡し、その中でもニセナミハダニの減少が最も早いことが確認されています。
低温に弱いということですね。
施設栽培では休眠しないため、冬季でも加温している環境では継続して発生します。降雨が少なく乾燥条件が続くと発生が増加するため、露地栽培よりもハウス栽培での被害が深刻です。発生は最初下葉の縁や葉脈部分に現れ、徐々に上葉へと広がっていきます。
イチゴ栽培では、育苗期に持ち込まれたハダニが本圃で爆発的に増殖するケースが多く見られます。半促成栽培イチゴにおける研究では、ハダニ密度が高い区では後期収穫期に収量減少が確認されており、前期は影響が少なくても後期に被害が顕在化する特徴があります。
これは使えそうです。
防除のタイミングを誤ると、気づいたときには手遅れという事態になりかねません。
ニセナミハダニ防除における最大の課題は、薬剤抵抗性の発達の速さです。1958年にメチルジメトン(メタシストックス)が初めて使用された当時は極めて高い効果を示しましたが、わずか数年で効果が低下しました。この歴史が示すように、ハダニ類は同一系統の薬剤に対して急速に抵抗性を獲得します。
そのため、多くの殺ダニ剤は使用回数が年1回から2回に制限されています。薬剤抵抗性管理(IRM)の観点から、同一系統の薬剤は年1回の使用に留め、作用性の異なる他の薬剤とローテーション(輪番)で使用することが必須です。
つまりローテーションが基本です。
特にナミハダニ黄緑型は果樹のハダニ類の中でも最も薬剤抵抗性が発達しやすい種であり、ニセナミハダニも同様の性質を持ちます。連続散布は抵抗性発達のリスクを大幅に高めるため、絶対に避けなければなりません。殺ダニ剤による防除では、発生初期の低密度時に行うことが効果的で、多発後の高密度時では薬剤防除の効果が著しく低下します。
抵抗性発達を回避するためには、作用機作(RACコード)の異なる薬剤を選択することが重要です。例えば、電子伝達系複合体Ⅱを阻害するシエノピラフェン、気門封鎖作用を持つ機械油乳剤など、異なる作用点を持つ薬剤を組み合わせることで、同一系統への依存を避けられます。気門封鎖系の農薬は薬剤抵抗性がつきにくい利点があります。
日本曹達の技術資料では、ハダニ類防除における薬剤抵抗性管理の詳細な考え方が解説されており、実践的な防除計画の参考になります。
ニセナミハダニの防除は、化学的防除だけでなく耕種的防除と生物的防除を組み合わせたIPM(総合的病害虫管理)が有効です。化学的防除では、発生初期の低密度時に殺卵性が高く残効性の長い薬剤(コロマイト乳剤、カネマイトフロアブルなど)を使用し、大量発生時には成虫に効果の高い即効性のある薬剤(アグリメックフロアブル、ダブルフェースフロアブルなど)を使い分けます。
耕種的防除としては、定期的な葉水による湿度管理が効果的です。ハダニは水に弱く、葉裏に水をかけることで密度を減らせます。
厳しいところですね。
ただし室内や雨の当たらない軒下の植物では被害の進行が速いため、意識的な散水が必要です。また、雑草管理も重要で、ナシ園などでは下草に寄生したハダニが樹に移動して被害を引き起こすため、園内の雑草を適切に管理することで発生源を減らせます。
生物的防除では、天敵カブリダニ類の利用が注目されています。ミヤコカブリダニやチリカブリダニなどの天敵製剤を放飼することで、ハダニ密度を抑制できます。イチゴ栽培では、ミヤコカブリダニ製剤(スパイカル)の導入により、ハダニ密度指数40%強で頭打ちとなり、この密度レベルではイチゴの収量・品質に影響を及ぼさないことが確認されています。
天敵利用を成功させるポイントは、天敵に影響の少ない選択性殺虫剤を使用することです。天敵導入前2~3週間は土着天敵に影響の大きい薬剤の使用を避け、導入後も天敵に配慮した薬剤選択を行います。カブリダニ類は餌がなくても耐飢餓性があるため、予防的な放飼も可能です。ハダニが発生していない状態でも春先の多発期前に天敵を導入することで、発生初期からの抑制効果が期待できます。
ニセナミハダニ防除で見落とされがちなのが、育苗期からの徹底管理です。イチゴ栽培では育苗期にハダニが持ち込まれ、本圃で爆発的に増殖するパターンが非常に多く見られます。育苗期には化学合成農薬が主に使用されますが、薬剤抵抗性の発達により防除効果が低下し、多回数散布や残存したハダニの本圃持ち込みが問題化しています。
無料ではありません。
育苗施設の衛生管理と定期的な観察が、本圃での被害を最小限に抑える鍵となります。
もう一つの独自視点は、高濃度炭酸ガス処理との組み合わせです。炭酸ガス施用はイチゴの収量増加に効果がありますが、同時にハダニ類の密度抑制効果も確認されています。炭酸ガス処理と天敵利用を組み合わせることで、殺ダニ剤の使用回数を削減しながらハダニ密度をコントロールできる可能性があります。
炭酸ガスが基本です。
また、見回り時の観察ポイントを絞ることも重要です。発生初期は下葉の裏のくぼんだ部分や葉脈の隅にかたまっているため、上位葉だけでなく下葉の裏を注意深く観察する必要があります。隣接株への移動は比較的遅いため、初期発生はスポット的に見られることが多く、この段階で局所的に対処すれば被害拡大を防げます。
ニセナミハダニの低温耐性の弱さを活用した冬季管理も有効です。施設栽培では加温により休眠せず継続発生しますが、加温を控えめにする期間を設けることで越冬密度を下げられる可能性があります。ただし作物の生育とのバランスを考慮する必要があり、品目や作型に応じた温度管理が求められます。
防除記録の蓄積も見落とせません。どの薬剤をいつ使用したか、その後のハダニ密度の変化はどうだったかを記録することで、自農場におけるハダニの薬剤感受性を把握できます。これは次シーズンの防除計画に活かせる貴重な情報です。
記録が条件です。
デジタルツールやアプリを活用すれば、記録の手間を減らしながら分析も容易になります。
農研機構のIPMマニュアルでは、施設栽培イチゴにおけるカブリダニを利用したハダニ類防除の具体的な実践方法が詳しく解説されており、防除体系構築の参考資料として有用です。
Please continue.