殺菌剤を毎年まいても、つる割病が止まらない畑では土壌pH6.5超えが原因のケースが約7割あります。
メロンつる割病は、子嚢菌類に属するFusarium oxysporum f. sp. melonis(フザリウム・オキシスポラム メロン系統)が引き起こす土壌伝染性の病害です。病原菌は土壌中に厚膜胞子として長期間生存し、根の傷口や根毛から植物体内へ侵入します。
侵入した菌は導管(水や養分を運ぶ管)の中で増殖し、物理的に水の通り道を塞ぎます。根の断面を切ると、導管部分が茶色〜黒褐色に変色しているのが確認できます。
これがつる割病の最大の特徴です。
地上部では、まず日中だけ株全体がしおれ、朝晩は回復するという症状が出始めます。この「昼しおれ・朝回復」のサイクルが3〜5日ほど続いたあと、回復しなくなり最終的には枯死します。発病から枯死まで、気温25〜30℃の条件では1〜2週間と早いことが多く、発見が遅れると一枚の圃場で大きな被害につながります。
主な発症時期は定植後2〜4週間目が最も多く報告されています。苗が活着して地上部が旺盛に成長し始めるタイミングと重なるため、「元気だと思っていたら急にしおれた」という経験をされた方も多いはずです。
病原菌にはレース0・1・1,2・2の4種類があり、レースによって抵抗性品種の効果が変わります。
これは意外と見落とされやすいポイントです。
耐病性品種を使っているのに発病する場合、レース判定ができていない可能性があります。
参考:フザリウム病の詳細と系統分類については農研機構の病害情報をご確認ください。
農研機構(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)公式サイト
つる割病の最大のリスク要因は連作です。同じ圃場でウリ科作物を続けると、土壌中のフザリウム菌密度が年々上昇します。1作目ではほぼ発病しなかった圃場でも、3〜4作目以降になると発病率が急増するケースが多く報告されています。
土壌pHも非常に重要です。つる割病菌はpH5.5〜7.0の範囲で活発に増殖しますが、特にpH6.5を超えると発病リスクが高まるとされています。「石灰をしっかり入れたのになぜ?」と感じる方もいますが、過剰な石灰投入でpHが上がりすぎることが逆効果になる場合があります。
pHが上がりすぎるのも問題なのです。
また、排水不良や過灌水による土壌過湿も感染を促進します。水分が多い土壌では根が酸欠状態になりやすく、傷口から菌が入りやすくなります。逆に、乾燥ストレスも根を傷め、侵入の糸口を作ってしまいます。
| 発病リスク要因 | リスクの高い条件 | 目安・数値 |
|---|---|---|
| 連作年数 | 同一圃場でのウリ科連作 | 3年以上で急増 |
| 土壌pH | 石灰過剰によるpH上昇 | pH6.5超えで注意 |
| 地温 | 高温期の定植 | 地温28℃以上 |
| 土壌水分 | 排水不良・過灌水 | 長時間の湛水状態 |
| 有機物量 | 未熟有機物の投入 | 未熟堆肥の多量施用 |
未熟な有機物を大量に投入することも、菌の増殖に間接的につながります。未熟堆肥は土壌中で分解される際に嫌気状態をつくりやすく、病原菌が増えやすい環境になるためです。
完熟した堆肥を使うことが原則です。
土壌の菌密度を把握したい場合は、農業改良普及センターや都道府県の農業試験場を通じて土壌病害診断サービスを利用できることがあります。費用は圃場あたり数千円〜1万円程度が目安で、早期に診断できると対策の優先度が明確になります。
防除の基本は「菌密度を下げる」「感染させない」「発病しても被害を最小化する」の3段階で考えることです。
結論は複合対策が効果的ということです。
① 土壌消毒(定植前)
太陽熱消毒は、薬剤に頼らず菌密度を下げられる方法です。具体的には夏季(7〜8月)に圃場全面を透明マルチで覆い、灌水して地温を上げます。地表下20cmで地温が45〜50℃を1〜2週間維持できると、フザリウム菌の密度を大幅に低下させられます。費用はマルチ代のみで済むため、コストパフォーマンスが高い対策です。
クロルピクリン剤やダゾメット粉粒剤などの土壌燻蒸剤は効果が高く即効性があります。ただし、使用後は十分なガス抜き期間(1〜2週間)が必要で、近隣農地への影響も考慮が必要です。使用は必ず農薬登録を確認してから行いましょう。
② 定植時の薬剤処理
ベノミル水和剤やチオファネートメチル水和剤などの土壌灌注処理が一般的です。定植時に植穴灌注することで根圏の菌密度を下げます。薬剤は毎年同じものを使い続けると耐性菌が生まれやすいため、系統の異なる薬剤をローテーションするのが基本です。
③ 輪作
ウリ科以外の作物(イネ科・マメ科など)と3〜4年以上の輪作を行うことで、土壌中のフザリウム菌密度を自然に低下させられます。これは無農薬に近い形で菌密度を管理できる、中長期的に見て最もコストのかからない方法です。
参考:農薬登録情報は農林水産省の農薬登録情報提供システムで確認できます。
接ぎ木栽培はつる割病対策として最も効果的な手段の一つです。台木の種類を選ぶだけで、フザリウム菌への抵抗性が劇的に変わります。
これは使えそうです。
最もよく使われる台木はカボチャ(ユウガオ台・カボチャ台)で、フザリウム菌に対する抵抗性が高く、接ぎ木後の生育も安定しています。ただし、カボチャ台木はメロンの果実品質(特に糖度・香り)に影響する場合があるため、品種の組み合わせには注意が必要です。
台木品種を選ぶ際は、対応するフザリウムのレースを確認することが重要です。市販の台木品種のカタログには「レース0・1対応」「レース1,2対応」などの表記があります。圃場で流行しているレースと台木の対応レースが一致していないと、接ぎ木をしても発病するケースがあります。
| 台木の種類 | フザリウム抵抗性 | 果実品質への影響 |
|---|---|---|
| カボチャ台木(一般) | レース0・1対応が多い | やや影響あり(品種依存) |
| ユウガオ台木 | 中程度 | 影響少ない |
| 専用メロン台木 | 高レース対応品種あり | ほぼ影響なし |
接ぎ木の方法は割り接ぎ・呼び接ぎ・挿し接ぎの3種類が一般的です。農家レベルでは割り接ぎが管理しやすく普及していますが、活着率を高めるには接ぎ木後の温湿度管理(温度25℃前後・湿度90%以上を3〜5日維持)が不可欠です。
接ぎ木後に発根した不定根(穂木から出た根)は必ず除去してください。穂木の根がそのまま土に触れると、接ぎ木の意味がなくなってしまいます。不定根の除去は手間ですが、これが抜け落ちると台木の抵抗性がゼロになります。
不定根除去は必須です。
参考:接ぎ木栽培の詳しい手順は各都道府県の農業試験場技術情報を参照してください。
多くの農家が薬剤や台木に注目する一方で、日常の圃場管理で防げるリスクが意外と多くあります。この視点は検索上位の記事ではあまり取り上げられていません。
まず、農機具や作業靴を介した菌の持ち込みです。フザリウム菌は汚染圃場の土壌とともに他の圃場に移動します。隣の農家の圃場に入ったあとに自分の圃場で作業する、あるいは中古農機を購入してそのまま使うという行動が、感染源の持ち込みにつながっている可能性があります。農機具の洗浄・消毒を習慣化するだけで、リスクを大きく下げられます。
次に、定植時の根の傷です。定植作業中に根をちぎったり折ったりすると、そこが感染の入り口になります。ポット苗をほぐす際に強く引っ張る、穴が小さすぎて根を押し込むといった行動が意外と多くの現場で見られます。丁寧な定植は、薬剤コストゼロで感染リスクを下げる最も手軽な対策です。
早期発見のためのチェックポイントを整理すると以下のとおりです。
発病株を圃場内に放置すると、胞子が土壌全体に広がり翌年以降の菌密度が上がります。発見したらすぐ抜き取りと圃場外処分が原則です。
また、施設栽培(ハウス)では換気・通気管理も重要です。気温が上がりやすいハウス内では地温も上昇しやすく、フザリウム菌の増殖が促進されます。換気によってハウス内温度を下げることが、間接的なつる割病対策にもなります。
早期発見と素早い対応が、圃場全体への被害拡大を防ぐ最後の砦です。
毎朝の確認を習慣にすれば大丈夫です。
参考:都道府県別の病害虫発生予察情報は病害虫防除所の情報をご活用ください。