クサカゲロウ類の成虫はアブラムシを食べないため、畑で見かけても益虫と気づかずに駆除してしまう農家が少なくありません。
クサカゲロウ類はアミメカゲロウ目クサカゲロウ科に分類される昆虫です。 名前に「カゲロウ」とありますが、水辺に生息するカゲロウ目とは遠縁で、完全変態する全く異なるグループです。 日本には複数の種が生息しており、代表的なものとしてヤマトクサカゲロウ・ヒメクサカゲロウ・アミメクサカゲロウなどが挙げられます。wikipedia+2
成虫の翅を広げた開張サイズは種によって異なり、アミメクサカゲロウでは44〜52mm、ヤマトクサカゲロウでは22〜29mmほどです。 成熟した幼虫の体長は10〜12mm程度で、ちょうど爪楊枝1本くらいの長さになります。 成虫は4月から10月頃を中心に発生し、夜行性で灯火に集まる習性があります。ikifure+1
卵は細長い糸状の「卵柄(らんぺい)」の先端に産み付けられ、1カ所に10〜60個まとめて産卵されます。 この卵の形状は、仏教の「優曇華(うどんげ)」になぞらえて「ウドンゲの花」とも呼ばれます。 卵の期間は約3日と短く、孵化した幼虫はすぐにアブラムシを食べ始めます。nokabegin+1
成虫は年に2〜3回世代交代し、数か月生存する間に数千個の卵を産みます。
秋に生まれた成虫は成虫のまま越冬します。
これが基本的な生活サイクルです。boujo+1
クサカゲロウ類の幼虫が「農業の最強助っ人」と呼ばれる理由は、その圧倒的な食欲にあります。 幼虫1匹が成虫になるまでの約15日間で、最大600匹ものアブラムシを食べると言われています。 1日あたりに換算すると10〜20頭を捕食する計算です。vegeluna+1
これは実感しにくい数字ですが、イメージしやすく言えば、500mlペットボトル1本分の体積に相当するアブラムシの群れをたった1匹の幼虫が2週間で壊滅させるイメージです。アブラムシ以外にも、ハダニ類・アザミウマ類・コナジラミ・カイガラムシ類など幅広い害虫を捕食します。 対応害虫の多さが、天敵としての汎用性を高めています。gaityuu+1
幼虫は「塵載せ型」と呼ばれる種もあり、捕食した害虫の残骸などを背中に積み重ねてカモフラージュする独特の行動をとります。 見た目はやや不気味ですが、これは外敵から身を守るための巧みな戦術です。
これは使えそうです。
参考)クサカゲロウ類
成虫になると主食が花蜜やアブラムシの甘露に切り替わります。 つまり「幼虫だけが益虫として機能する」という点が重要です。幼虫と成虫を見分ける知識を持っておくことが、天敵農法を活用するうえで最初の一歩です。
参考)【益虫】クサカゲロウは害虫を駆除する天敵!その生態とは?|家…
クサカゲロウ類を「いてくれるだけでOK」と思っている農家は要注意です。農薬、とくに殺虫剤を散布すると、クサカゲロウ類の幼虫も一緒に死滅するリスクがあります。 せっかく自然定着した天敵を自分の手で駆除してしまうことになります。
参考)https://9byochu.sakura.ne.jp/PDF43/43ronbun26.pdf
ヤマトクサカゲロウ幼虫への農薬影響を調べた研究では、市販の有機リン系殺虫剤や合成ピレスロイド系農薬が幼虫に対して高い致死率を示すことが確認されています。 施設栽培などでアブラムシ対策として農薬を散布した直後に、クサカゲロウ類の個体数が激減した事例も報告されています。
では、天敵を残しながら防除するにはどうすればいいのでしょう? 対策として有効なのは、天敵への影響が少ない「選択的農薬」や「IPM(総合的病害虫管理)」の考え方を採り入れることです。農薬を使う場合は、クサカゲロウ類への影響が小さいとされるBT剤(微生物農薬)や植物性殺虫剤から検討するのが原則です。 散布タイミングも重要で、夜行性のクサカゲロウ類が活動する夜間を避け、日中の涼しい時間帯に散布するだけでもリスクを減らせます。
天敵を残すか農薬を使うか、は二択ではありません。両立できる設計が、持続可能な農業への近道です。
農水省が推進するIPMに関する詳細な情報はこちらが参考になります。
クサカゲロウ類の幼虫は、農薬(天敵資材)として正式に登録されており、施設栽培などで購入して散布できます。 具体的には「ニッポンクサカゲロウ」の幼虫が生物農薬として販売されており、ハウス内のアブラムシ防除に活用されています。jppa+1
施設栽培でアブラムシが大発生した場合、化学農薬を大量散布するよりも天敵資材を導入するほうが、残留農薬リスクや薬剤耐性の発達を防ぐ観点から有利なケースがあります。 とくにトマト・ナス・ピーマン・イチゴなどのハウス栽培では、閉鎖空間であるため天敵の定着率が上がりやすい点も活用しやすい理由のひとつです。chibanian+2
実際に活用する際の手順は、以下の通りです。
天敵農法が世界中で注目されているのは、農薬耐性の問題や環境負荷への懸念が高まっているからです。 国内でも有機JAS規格や特別栽培農産物の需要拡大とともに、クサカゲロウ類を活用した防除への関心が増えています。
天敵資材の購入・選び方については、農薬登録情報データベースも確認しておきましょう。
農林水産省:農薬登録情報提供システム(天敵農薬の登録確認に使用)
天敵資材を購入するよりも低コストで始められる方法として、「ハビタットマネジメント(生息環境管理)」があります。これは畑の周辺環境を整えることで、クサカゲロウ類などの天敵昆虫を自然に引き寄せる考え方です。 日本の農業現場ではまだ普及が遅れている独自視点のアプローチです。
具体的な方法としては、以下のような取り組みが有効です。
成虫は花蜜や甘露を食べながら卵の栄養を蓄えます。 つまり、花が少ない畑では成虫が産卵できず、幼虫も発生しないということです。畑のまわりを「天敵が住みやすい環境」にデザインすることが、薬剤コストを下げる最短ルートになります。
ソルゴーなどのバンカープランツの利用については、農研機構の情報が参考になります。