チャノキイロアザミウマいちご被害特徴と効果的防除対策

チャノキイロアザミウマによるいちご栽培の被害は、葉脈の黒変から株枯死まで深刻です。育苗期の発生時期や薬剤抵抗性、天敵利用など効果的な防除対策を知っていますか?

チャノキイロアザミウマいちご被害特徴と防除

育苗期の薬剤散布だけでは株枯死を防げない


この記事の3つのポイント
🔍
チャノキイロアザミウマの特徴

いちごの葉脈を黒変させ、体長0.8mm程度の微小害虫。育苗期の7月から本圃まで長期間発生し、株枯死のリスクもあります

⚠️
被害の実態と経済的損失

果実表面の褐変で商品価値が著しく低下。ピレスロイド系やネオニコチノイド系農薬への抵抗性獲得で防除が困難化しています

効果的な防除方法

育苗期は本圃で使えない農薬を優先使用。天敵カブリダニの導入と薬剤ローテーションで薬剤抵抗性を回避する総合防除が重要です


チャノキイロアザミウマいちご被害症状の見分け方

チャノキイロアザミウマによるいちごの被害は、他の病害虫とは異なる特徴的な症状を示します。最も分かりやすい初期症状は、葉の葉脈に沿って黒褐色に変色する現象です。この症状は新しい葉に現れることが多く、老化による自然な変色とは明確に区別できます。


葉柄部分も茶褐色に変色し、被害が進行すると葉全体が萎縮していきます。体長わずか0.8mm前後という微細な害虫のため、肉眼での確認は困難ですが、葉の裏側に水を強めに吹きかけたり、白い紙の上で花を軽く叩いたりすることで、淡黄色の細長い虫体を確認できる場合があります。


果実への被害も深刻です。果実表面を加害されると、茶褐色の汚れのような症状が現れ、果皮がバリバリとした質感になります。これは成虫と幼虫が果実表面の細胞を吸汁することで、表皮細胞が壊死するためです。被害果実は見た目が著しく悪化し、商品価値が大きく低下します。


奈良県の研究では、チャノキイロアザミウマはいちごの株全体に寄生し、果実の褐変症状だけでなく株の枯死を引き起こすことが報告されています。


株枯死が起こるということですね。


この点が他のアザミウマ類との大きな違いで、ヒラズハナアザミウマが主に花や果実を加害するのに対し、チャノキイロアザミウマは株全体にダメージを与える点で、いちご栽培における脅威度が高いといえます。


森林に近い立地の育苗圃では、夏期に特に被害が発生しやすい傾向があります。葉脈の黒変症状を見つけたら、すぐに葉裏を確認する習慣をつけることが早期発見につながります。


奈良県農業技術センター「促成イチゴ栽培における難防除害虫防除マニュアル」では、チャノキイロアザミウマの被害症状と他種との見分け方について詳しく解説されています


チャノキイロアザミウマいちご発生時期と育苗期対策

チャノキイロアザミウマのいちご栽培における発生パターンを理解することが、効果的な防除の第一歩です。育苗期間では7月から9月にかけて発生のピークを迎えます。この時期は高温多湿という条件が重なり、アザミウマ類の増殖に最適な環境となるためです。


特に注目すべきは、育苗期の防除が本圃での発生量を大きく左右するという事実です。福岡県の発生予察情報では、成虫発生後の若齢幼虫発生期である7月中旬から下旬が防除適期とされており、成虫が最も多い時期から14日後を目安に防除を行うことが推奨されています。


このタイミングが重要です。


温度条件によって世代交代の速度が大きく変わる点も見逃せません。25℃では卵から成虫まで約10日、20℃では約20日、15℃では約34日という研究結果があります。つまり、真夏の高温期には1か月で3世代が発生する計算になり、爆発的に個体数が増加するリスクがあります。育苗期に1頭でも見逃すと、短期間で大発生につながる可能性があるということですね。


育苗期の対策としては、本圃で使用できない農薬を優先的に使用する戦略が効果的です。これは本圃での薬剤選択肢を温存し、薬剤抵抗性の発達を遅らせる目的があります。モベントフロアブルなど浸透移行性の高い薬剤は、育苗期に使用することで株全体を保護する効果が期待できます。


さらに、育苗圃の立地選択も重要な要素となります。森林に近い場所では周辺の植生からチャノキイロアザミウマが飛来しやすいため、可能であれば開けた場所での育苗を検討する価値があります。また、育苗ハウスの開口部に赤色防虫ネットを設置することで、侵入を物理的に防ぐ方法も有効とされています。赤色ネットの目合いは0.4mm以下が推奨されており、アザミウマの体サイズより小さい網目で侵入を阻止します。


定期的な観察も欠かせません。週に1~2回は葉の裏側や新芽部分をルーペで確認し、初期発見に努めることが大発生を防ぐ鍵となります。


チャノキイロアザミウマいちご薬剤抵抗性と効果的農薬

チャノキイロアザミウマの防除を困難にしている最大の要因が、薬剤抵抗性の発達です。奈良県のイチゴから採集された個体群を用いた研究では、16種類の殺虫剤について感受性検定が実施されました。その結果、ピレスロイド系とネオニコチノイド系の一部で感受性低下が確認されています。


具体的には、イチゴ本圃で使用される殺虫剤のうち、高い効果を示したのは6剤のみでした。さらに注目すべきは、そのうち4剤はカブリダニ製剤などの天敵との併用が可能な薬剤だったという点です。つまり、天敵を利用した総合的防除体系を構築しながら使える薬剤は限られているということですね。


効果が確認された薬剤系統としては、トルフェンピラド水和剤やクロルフェナピル水和剤などが挙げられます。これらは作用機構が従来の薬剤と異なるため、抵抗性を持つ個体群に対しても効果を発揮する可能性が高いとされています。ただし、同じ系統の薬剤を連続使用すると、新たな抵抗性が発達するリスクがあります。


薬剤ローテーションの実施が不可欠です。IRAC(殺虫剤抵抗性対策委員会)の作用機構分類に基づき、異なるグループの薬剤を順番に使用することで、抵抗性の発達を遅らせることができます。例えば、1回目にグループ6のスピノシン系、2回目にグループ28のジアミド系、3回目にグループ5のスピネトラム系というように、作用点が異なる薬剤を組み合わせます。


散布時期も効果を左右する重要な要素となります。チャノキイロアザミウマは花の中や土の中、葉の裏側など薬剤が届きにくい場所に潜むため、散布時には展着剤を加用し、葉裏まで丁寧に散布することが求められます。早朝や夕方の気温が下がった時間帯に散布すると、アザミウマの活動が活発になり、薬剤との接触機会が増えるという報告もあります。


微生物殺虫剤のボタニガードESは、薬剤抵抗性が発達している場合でも効果を発揮する点で注目されています。有効成分のボーベリア菌が昆虫の体表から侵入して殺虫効果を示すため、既存の化学農薬とは全く異なる作用機序を持ちます。天敵への影響も少ないため、IPM体系に組み込みやすい選択肢です。


育苗期と本圃で使用する薬剤を明確に分けることも、抵抗性管理の観点から重要です。育苗期に本圃で主力となる薬剤を使わないことで、本圃での防除効果を最大限に保つことができます。


農研機構の研究報告「イチゴから採集したチャノキイロアザミウマに対する各種殺虫剤の殺虫効果」では、詳細な薬剤感受性データが公開されています


チャノキイロアザミウマいちご天敵利用とIPM防除

薬剤抵抗性の発達に対抗する手段として、天敵を活用したIPM(総合的病害虫管理)防除が注目を集めています。チャノキイロアザミウマに対して効果が期待できる天敵製剤は複数存在しますが、それぞれの特性を理解した上で導入することが成功の鍵です。


ククメリスカブリダニ(商品名:ククメリス)は、低温条件に強く、いちご栽培の定植直後から導入できる天敵として広く利用されています。体長約0.5mmの捕食性ダニで、アザミウマの卵や1齢幼虫を好んで捕食します。ただし、2齢幼虫以降や成虫に対する捕食効果は限定的なため、発生初期の密度抑制を目的とした予防的放飼が基本となります。


放飼のタイミングが重要です。


スワルスキーカブリダニ(商品名:スワルスキー)は、高温条件下での活動性が高く、夏期の育苗期に適した天敵です。ククメリスと比較して捕食量が多く、アザミウマ類だけでなくコナジラミ類にも効果を示します。しかし冬期には密度が低下しやすいという弱点があるため、促成栽培の本圃では補強的な薬剤散布が必要になる場合があります。


リモニカスカブリダニ(商品名:リモニカ)は、低温条件でも活動できる点で促成いちご栽培に適しています。15℃前後の低温でも捕食活動を続けるため、冬期のハウス内でも安定した防除効果が期待できます。定植後早期に放飼することで、アザミウマの密度上昇を抑える効果が確認されています。


タイリクヒメハナカメムシ(商品名:タイリク)は、アザミウマ類を専門的に捕食する天敵昆虫です。成虫も幼虫も捕食性を持ち、1頭で一生のうちに数百頭のアザミウマを捕食するといわれています。ただし、気温が13℃以下になると活動が停止するため、暖房を入れる時期や地域では効果が限定的になります。


天敵利用を成功させるためには、天敵に影響の少ない薬剤との組み合わせが不可欠です。気門封鎖剤の粘着くんや微生物殺虫剤のボタニガードESは、天敵への悪影響が小さく、併用しやすい選択肢として推奨されています。一方、ネオニコチノイド系やピレスロイド系の一部は天敵を死滅させるリスクが高いため、天敵導入後の使用は避けるべきです。


土着天敵の保護育成も視野に入れるべき戦略です。ハダニアザミウマやタバコカスミカメなど、圃場に自然発生する天敵類を温存することで、長期的な密度抑制効果が得られます。長崎県の事例では、育苗期に土着天敵を保護した結果、本圃でのアザミウマ密度が慣行防除区と比較して有意に低く推移したという報告があります。


これは使えそうです。


天敵導入のコストも考慮すべき点です。天敵製剤は化学農薬と比較して単価が高い傾向にありますが、薬剤散布回数の削減や薬剤抵抗性の回避といった長期的なメリットを考慮すると、経済的にも合理的な選択といえます。


アリスタライフサイエンス「いちごのアザミウマ類:発生状況や防除のポイント」では、天敵製剤の特性と使い分けについて詳細な情報が提供されています


チャノキイロアザミウマいちごC系統と従来系統の違い

チャノキイロアザミウマには、従来から国内に生息していた系統とは遺伝的に異なる「C系統」と呼ばれる外来系統が存在し、いちご栽培において新たな脅威となっています。この系統の違いを理解することが、適切な防除戦略を立てる上で重要な意味を持ちます。


C系統は南方由来の系統と考えられており、トウガラシ属作物に強い寄生性を示す特徴があります。初めて高知県で発見されて以降、四国、九州、関東地方の11県で発生が確認され、現在も分布拡大が懸念されています。遺伝子解析の結果、従来の在来系統とは明確に区別される別系統であることが判明しました。


いちごに対する加害能力を比較した長崎県の研究では、ヒラズハナアザミウマとチャノキイロアザミウマC系統は同程度に高い加害能力を持つことが確認されています。一方、同じアザミウマ類でもネギアザミウマのいちご果実への加害能力は比較的低いという結果が出ています。


つまりC系統は特に警戒が必要です。


C系統と在来系統では寄主植物の範囲が異なります。在来系統はチャ、カキ、ブドウ、カンキツ、ナシなどの果樹類を主な寄主としていましたが、C系統はピーマン、シシトウなどのナス科作物やイチゴへの加害が顕著です。このため、周辺でピーマンやシシトウを栽培している地域では、C系統がいちご圃場に侵入するリスクが高まります。


薬剤感受性にも系統間で違いが見られる可能性があります。鹿児島県のマンゴー栽培における調査では、使用する薬剤の種類によって優占する系統が変化することが報告されています。特定の薬剤に対する感受性の違いにより、防除圧がかかると抵抗性を持つ系統が生き残って増殖するという現象が起きているのです。


系統を正確に判別するためには、遺伝子診断法が確立されています。専門機関に依頼することで、圃場で発生しているアザミウマがC系統か在来系統かを特定できます。系統が分かれば、その系統に効果的な薬剤を選択したり、周辺の寄主植物管理を見直したりといった具体的な対策が可能になります。


C系統の侵入を防ぐためには、苗の導入時の検査が重要です。特に他県から苗を購入する場合、チャノキイロアザミウマが付いていないか入念に確認する必要があります。万が一、C系統が圃場に定着してしまうと、根絶は極めて困難になるため、侵入防止に最大限の注意を払うべきです。


また、圃場周辺の雑草管理も見逃せません。C系統は様々な植物で増殖できるため、ハウス周辺の雑草を放置すると、そこが供給源となってハウス内に侵入し続ける可能性があります。定期的な除草作業を実施し、アザミウマの生息場所を減らすことが長期的な防除につながります。


厳しいところですね。


日本植物防疫協会の報告「チャノキイロアザミウマC系統の特徴と遺伝子診断法」では、系統の見分け方と診断方法について専門的な情報が提供されています