ジアミド系薬剤を1作型で2回使うと結球部にコナガ幼虫が残ります。
コナガは世界で95種類もの化合物に対して抵抗性を発達させており、この数値はナミハダニと並んで害虫の中で最多記録です。なぜこれほど抵抗性が発達しやすいのでしょうか。
理由は世代交代の速さにあります。
温暖な地域では年間10世代以上も繰り返すため、薬剤による選抜圧が急速に働きます。25℃の環境下では卵から成虫まで約16日間という驚異的なスピードで成長し、関東地域で年間10世代、九州地域では12世代にも達するとされています。つまり、1シーズンの間に同じ薬剤を使い続けると、抵抗性個体が爆発的に増えるリスクが極めて高いということです。
特に問題となっているのがジアミド剤への抵抗性です。2007年に上市された新しいタイプの殺虫剤でしたが、わずか2年後の2009年にタイとフィリピンで抵抗性が確認されました。日本でも2013年に初めて抵抗性個体群が発見され、現在では全国に分布を拡大しています。
抵抗性の原因は遺伝子変異にあります。リアノジン受容体という薬剤の作用点において、4946番目のアミノ酸がグリシンからグルタミン酸に変異すること(G4946E変異)が主要因とされています。この変異を持つ個体は薬剤に対する感受性が著しく低下し、通常の散布濃度では防除できなくなります。
抵抗性の遺伝様式も重要なポイントです。ジアミド剤抵抗性は常染色体上の単一遺伝子支配で、不完全劣性または完全劣性の遺伝形式を取ります。これはどういうことかと言うと、抵抗性遺伝子を持つ個体が交配すると、その子孫にも抵抗性が受け継がれやすいということです。
コナガ抵抗性を理解する上で、越冬地域と非越冬地域の違いも見逃せません。北日本のような非越冬地域では、冬の寒さでコナガが死滅するため抵抗性遺伝子頻度が低い傾向にあります。一方、西日本などの越冬可能地域では年間を通じて抵抗性遺伝子が維持されるため、リスクレベルが高くなります。農研機構の調査では、非越冬地域でリスクレベル2、越冬地域でリスクレベル3のケースが多いことが明らかになっています。
適切な防除対策を立てるには、まず圃場のコナガがどの程度の抵抗性を持っているかを知る必要があります。
診断方法は大きく分けて2つあります。
一つ目は遺伝子診断法です。フェロモントラップで捕獲した雄成虫16個体以上を用いて、マルチプレックスPCRという手法でG4946E変異の有無を個体ごとに判定します。この方法は迅速で、抵抗性遺伝子の保有率を直接測定できる利点があります。ただし、頻度は低いもののG4946E以外の変異による抵抗性も存在するため、正確に判断できない場合もあることに留意が必要です。
二つ目は生物検定法です。圃場で採集した幼虫に実際にジアミド剤を処理して、死虫率を測定する方法です。遺伝子診断よりも時間はかかりますが、実際の防除効果を直接確認できるため信頼性が高まります。また、代替薬剤を選抜する際にも有効な手段となります。
リスクレベルは3段階に分類されます。レベル1は抵抗性遺伝子頻度が10%未満、補正死虫率が99%以上の状態です。この段階では引き続きジアミド剤を基幹剤として組み入れつつ、同一系統薬剤の連用を避ける防除を行います。
レベル2は抵抗性遺伝子頻度が40%未満、補正死虫率が84%以上の状態です。ここではジアミド剤を基幹剤から外し、コナガに対する剤としての使用を推奨しません。レベル3になると抵抗性遺伝子頻度が40%以上、補正死虫率が84%未満となり、コナガを対象としたジアミド剤の散布を制限または中止する必要があります。
判定のタイミングも重要です。当該年のリスクレベルは前年のコナガ発生終期、あるいは当該年の発生初期に捕獲された個体で判定するのが望ましいとされています。野外個体群におけるG4946E変異の割合は、春から夏にかけて増加し秋に低下する傾向があり、晩秋の割合は次年春先の割合とよく似ているためです。
サンプル数にも注意が必要です。リスクレベル1を判定するには40個体のサンプルが必要です。十分な虫数を集められない場合は、たとえ抵抗性遺伝子頻度が10%未満でもリスクレベル2の可能性を考慮しておく必要があります。すでに抵抗性遺伝子の存在が明らかで、レベル2か3の判断をする場合は16個体の診断で十分です。
抵抗性発達を遅延させる最も効果的な方法は、異なる系統の薬剤をローテーションすることです。しかし、やみくもにローテーションしても意味がありません。IRAC(殺虫剤抵抗性管理委員会)コードという分類に基づいた計画的な散布が求められます。
ジアミド剤抵抗性コナガに対して効果が高い薬剤グループがあります。後発ジアミド剤のシアントラニリプロール、BT剤(アイザワイ系、クルスターキ系)、マクロライド系、スピノシン系がそれです。これらは抵抗性が発達した地域でも防除効果が高いことが示されています。
農研機構の研究によると、2013~2018年の文献データを解析した結果、コナガに対する殺虫効果が最も高いのはスピノシン系で、死虫率は99.8%でした。次いでBT剤が99.5%、ピリダリルが85.8%、マクロライド系が93.4%という結果が出ています。一方、従来のジアミド剤は39.5%、ネオニコチノイド系は27.1%、ピレスロイド系はわずか12.8%と低い効果しか示しませんでした。
つまり効果が高いということですね。
ただし、効果の高い薬剤にも弱点があります。マクロライド系、スピノシン系、ネライストキシン系薬剤は残効性や耐雨性が比較的低く、多用されがちなので注意が必要です。晴天が続く場合はBT剤も有効ですが、摂食毒であるため3齢以前の若齢幼虫に使用するのが基本となります。
実際の防除体系では、散布ごとに異なる系統をローテーションする方法と、1ヶ月ごとに系統を変えるブロックローテーションの方法があります。例えば非越冬地域のキャベツ栽培では、定植14日後にBT剤、24日後にフルベンジアミド水和剤、34日後にスピノサド水和剤、44日後にエマメクチン安息香酸塩・ルフェヌロン混合剤というように系統を変えていきます。
ジアミド系薬剤の使用制限も重要なポイントです。多くの産地では1作型1回以内という使用制限が推奨されています。北海道の指導では、ジアミド系薬剤の使用をコナガの世代あたり1回以下に制限し、7月は25日間隔、8月も25~30日間隔で使用することが推奨されています。
混合剤の活用も効果的です。コナガ以外の害虫防除にジアミド剤を使わざるを得ない場合は、ジュリボフロアブル(クロラントラニリプロール+チアメトキサム)、ガードナーフロアブル(イミダクロプリド+スピノサド)などの混合剤を使用すると被害が軽減でき、抵抗性発達の遅延効果も期待できます。
薬剤散布のタイミングも見逃せません。結球期のジアミド剤連用は絶対に避けるべきです。ジアミド剤がある程度効いたとしても、抵抗性コナガが結球部に残る場合があり、商品価値を損なう原因となります。
薬剤だけに頼らない総合的防除管理(IPM)が、長期的な抵抗性管理には不可欠です。物理的防除と生物的防除を組み合わせることで、薬剤散布回数を大幅に削減できます。
まず物理的防除の代表格が防虫ネットです。施設栽培では1mm目合いの防虫ネットを側窓開口部に展張することで、コナガ成虫の侵入を効果的に防げます。和歌山県の試験では、コマツナ栽培施設に1mm目合いの防虫ネットを設置したところ、コナガの発生および被害を大幅に抑制できたと報告されています。
コナガには意外な弱点があります。実は水に極めて弱く、水滴でも溺死するほどなのです。雨が降るとその衝撃で葉から落ち、水たまりに入ると死んでしまいます。この特性を活かし、1~2齢の若齢幼虫にミスト状の水をかけるという防除方法も報告されています。
薬剤を使いたくない場合の選択肢となります。
水に弱いということですね。
生物的防除では天敵の活用が重要です。コナガの天敵として、ウヅキコモリグモ、オオアトボシアオゴミムシ、キボシアオゴミムシが有用な捕食性天敵として知られています。これらは幼虫の捕食量が多く、植物に登る性質があり、キャベツ圃場での密度も比較的高いという特徴があります。
天敵誘引剤の利用も効果的な手段です。農研機構が開発した天敵誘引技術では、コナガサムライコマユバチという寄生蜂を誘引する資材を5m間隔で吊すことで防除効果が高まります。天敵誘引剤の有効期間は1ヶ月なので、1ヶ月ごとに交換する必要があります。
土着天敵を温存する戦略も重要です。選択性の高い殺虫剤を使用することで、コナガには効果を発揮しつつ、天敵への影響を最小限に抑えることができます。例えばBT剤やスピノシン系薬剤は、天敵に対する影響が比較的小さいとされています。
交信撹乱法も有効な物理的防除手段です。コナガの性フェロモンを利用して雌雄の交尾を阻害することで、次世代の発生を抑制します。和歌山県の施設栽培コマツナでは、交信撹乱法と防虫ネットを組み合わせることで、コナガ成虫の発生量を減らし、薬剤散布間隔を長くすることに成功しています。
紫外線除去フィルムの活用も注目されています。施設のビニールを紫外線カットフィルムに変えることで、害虫の飛来を抑制できる効果があります。東京都の試験では、防虫ネット、紫外線除去フィルム、太陽熱消毒を組み合わせることで高い防除効果が確認されました。
これらの物理的・生物的防除を化学的防除と組み合わせることで、薬剤使用量を削減しながら効果的にコナガを管理できます。抵抗性発達リスクを下げるだけでなく、環境負荷の低減にもつながります。
コナガ抵抗性管理は地域の気候条件によって戦略が大きく異なります。越冬可能性、栽培時期、発生パターンを考慮した地域別の対策が必要です。
西南暖地のキャベツ栽培では、標高と時期によって問題となる害虫が変わります。標高500m以上の高原地域では4~8月定植で6~11月収穫、平坦地域では8~12月定植で10月~翌年5月収穫という作型があります。コナガは5~10月、ハイマダラノメイガは8~10月、大型チョウ目害虫(ハスモンヨトウ、オオタバコガ等)は9~11月に発生が多くなります。
時期別に問題となる害虫に応じた薬剤選定が重要です。作型前半はジアミド系混合剤やスピノサド、シアントラニリプロール混合剤で低密度を維持します。
梅雨時は耐雨性の高いピリダリルが有効です。
スペクトラムが狭いため、適宜アブラムシ防除を追加する必要があります。
高冷地キャベツ栽培の特徴は、アブラナ科植物が途切れることなく栽培され続けることです。長野県では標高によって寒地(900m以上)、寒冷地(500~900m)、温暖地(500m以下)に分かれており、コナガの発生時期が異なります。標高900m以下では6月下旬~7月にピーク、900m以上では8月下旬~9月上旬にピークを迎えます。
地域の発生に合わせた防除が必要です。
高冷地では定植前の早春にアブラムシ防除に重点を置き、潅注処理剤を活用します。定植14~21日後には梅雨対策として耐雨性の高いピリダリルを適用し、晴天が続けばBT剤も有効です。定植35~45日後には発生が増える後半に効果の高いマクロライド剤を投入します。
非越冬地域では独自の戦略が可能です。根雪60日以上(日本海側豪雪地域)、または冬期3ヶ月平均気温0℃以下(宮城県山間部以北の太平洋側)の地域では、春から初夏にかけて暖地から飛来するコナガに対してジアミド剤がある程度有効です。しかし、結球期のジアミド剤連用は避けるべきです。抵抗性コナガが結球部に残る場合があるためです。
非越冬地域特有の課題として、ウワバ類の問題があります。抵抗性コナガ防除体系では、外葉部に大きな食害痕が目立つ場合、葉裏に隠れているウワバ対策に残効性が高いジアミド剤(フルベンジアミド水和剤など)やIGR剤を用いる必要があります。
ブロックローテーションも有効な手段です。効果の高い系統の薬剤を基幹として1ヶ月ごとに系統を変える方法で、ウワバ類対策の補完剤としてジアミド系やベンゾイル尿素系を組み入れます。例えば5月下旬定植では、定植14日後にスピノサド、24日後にシアントラニリプロール、34日後にスピノサド、44~54日後にエマメクチン安息香酸塩・ルフェヌロン混合剤という体系です。
薬剤の残効期間を理解することも重要です。フルベンジアミドやクロラントラニリプロールは残効が長く大型チョウ目防除に有効ですが、コナガへの効果が劣る場合があります。マクロライド系やスピノシン系は効果発現が速いものの、残効は短めです。セミカルバゾン系やオキサジアジン系は効果発現が遅いですが、残効は中程度あります。
地域の気候、作型、発生する害虫の種類を総合的に判断し、最適な防除体系を構築することが、コナガ抵抗性管理の成功につながります。画一的な対策ではなく、各地域の特性に合わせた柔軟な対応が求められています。

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