菌核形成の仕組みと農家が知るべき防除対策

菌核形成とは何か、なぜ農作物に深刻な被害をもたらすのかを徹底解説。土壌中での生存年数や伝染経路、効果的な防除タイミングまで、農業従事者が知っておくべき情報をまとめました。あなたの畑は正しい対策が取れていますか?

菌核形成の仕組みと農家が知るべき防除対策

実は、発病株を抜き取る「タイミング」を1日でも誤ると、次作から3年以上にわたって畑が汚染されたままになります。


菌核形成と防除のポイント
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菌核とは何か

菌核は病原菌が形成する硬い塊。土壌中で2〜6年間生存し、春・秋に発芽して胞子を飛散させます。

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発生しやすい条件

気温15〜20℃・高湿度の春と秋が危険期。花弁が落ちる開花後に感染が広がりやすくなります。

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防除の鉄則

菌核が形成される前に発病株を抜き取る。農薬は予防散布が基本で、発病後の散布では効果が大幅に低下します。

菌核形成とは何か——病原菌が「生存装置」を作るメカニズム


菌核とは、糸状菌(カビの一種)が植物組織の中で菌糸を密集させて形成する、黒く硬い塊のことです。 スクレロティニア・スクレロティオラムやリゾクトニア菌などが代表的な菌核形成菌で、キャベツレタストマト・イチゴ・大豆など30科100種以上の作物に感染する多犯性の病原菌です。boujo+1
菌核の最大の特徴は、その圧倒的な「生存力」にあります。土壌中では乾燥にも高温にも耐えながら、種類によっては4〜6年もの間生き延びることができます。 これはちょうど、農家が輪作で「3年で土が変わった」と感じる年数よりも長い。


参考)菌核病


菌核が形成される流れは次のとおりです。


  • 病原菌が宿主の植物組織内で増殖し、菌糸が密集して黒い塊(菌核)を形成する
  • 罹病部位や落下した残渣とともに土壌中に混入する
  • 気温が15〜20℃になる春・秋に発芽し、きのこ状の「子のう盤」を形成する
  • 子のう盤から胞子を飛散させ、風に乗って近隣の作物に感染を広げる

菌核が「土中に落ちた後」が本当の始まりです。 発病株を取り除いても、すでに菌核が地面に落下していれば翌年・翌々年の伝染源として残ります。


これが原則です。



参考)菌核病の発生原因や条件は?


菌核形成の恐ろしさは、見えないところで何年もの間「次の感染」を準備し続ける点にあります。 発病が起きてから対処しようとすると、すでに土壌汚染が始まっている状態です。早期発見・早期除去が唯一の正攻法だと覚えておけばOKです。


参考)https://www.shuminoengei.jp/?m=pcamp;a=page_s_sickbug_detail22


参考:菌核病の症状・発生原因・防除方法(YMMファーム)
https://ymmfarm.com/cultivation/pest/sclerotium/

菌核形成が起こる発生条件——気温・湿度・作物の状態を理解する

菌核病の発生には、はっきりとした「好条件」があります。気温15〜20℃、かつ多湿という低温多湿の環境が揃ったとき、最も感染リスクが高まります。 これは日本の春(3〜5月)と秋(10〜12月)の気候にほぼ一致します。ja-aichi.or+1
三重県の調査では、秋冬の巡回調査でキャベツほ場の50%に菌核病の発生が確認されており、イチゴほ場では36%という結果が出ています。


この数字をどう見るか。


約2圃場に1つは感染している計算になります。


参考)https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000758762.pdf


意外と知られていないのが「花弁」の役割です。開花後に茎葉に落下した花弁がカビの足がかりになり、そこから周辺組織へ感染が広がる経路が確認されています。 花弁が落ちるたびに感染リスクが上がるということですね。


参考)【植物の病害あれこれ】菌核病について。菌核病の原因や菌核病に…


発生しやすい条件を整理すると。

  • 気温15〜20℃の春・秋(低温多湿)
  • 密植による風通しの悪い圃場
  • 害虫の食害跡や作業時についた傷口がある作物
  • 窒素肥料の過多で軟弱に育った茎葉
  • 前作で菌核病が発生した連作圃場

傷口からの侵入は特に注意が必要です。 農薬散布や摘芯などの作業中に傷がつくと、そこが感染の入り口になります。


作業後の圃場管理が条件です。



参考:菌核病の発生原因・条件(yuime.jp)
菌核病の発生原因や条件は?

菌核形成を防ぐ耕種的防除——農薬に頼らない土づくりの視点

化学農薬だけに頼った防除は限界があります。菌核形成が土壌中で長期間継続することを考えると、土壌環境そのものを変える耕種的防除が長期的なコスト削減につながります。


参考)菌核病(きんかくびょう)


最も効果が高い方法の一つが「湛水処理」です。夏場に土に水を張って土壌中の酸素を遮断することで、嫌気状態を作り出して菌核を死滅させられます。 大豆圃場の菌核病対策として、水田との輪作が有効とされているのも同じ原理です。pref.saga+1
耕種的防除の具体的な手順をまとめると。

  • 発病株の早期除去:菌核が形成される前・または落下する前に株を抜き取り、圃場外で処分する
  • 湛水処理:夏の休閑期に湛水して土壌中の菌核を死滅させる
  • 天地返し土壌を深耕して菌核を地中深くに埋め、発芽・胞子飛散を抑える
  • 輪作体系の確立:菌核の生存期間(2〜3年)以上の輪作が望ましい
  • マルチと高畝:排水を良くして多湿環境を防ぐ

天地返しは手間がかかるように感じますが、農薬コストを抑えつつ翌年以降の発生を減らす効果があります。


これは使えそうです。


なお、土壌消毒を計画する際は、クロルピクリン剤のような土壌くん蒸剤を作付け前に使う方法も有効です。


参考)キクの病害虫対策【菌核病】


参考:菌核病の対策・耕種的防除(菜園ラボ)
https://saienlabo.com/cultivation/kinnkaku/

菌核形成を抑える農薬散布——タイミングと薬剤選択の重要ポイント

農薬防除で最も重要なのは「タイミング」です。菌核病は発病後の薬剤散布では効果が大幅に低下します。


予防散布が基本原則です。



三重県病害虫防除所のデータでは、発病後散布の効果は低いと明記されており、感染前の散布が推奨されています。 つまり、「菌が来る前に待ち構える」発想が必要です。


主な登録農薬と特徴。

農薬名 特徴 適用
GFベンレート水和剤 予防・治療効果を兼ね備え、広範囲のカビ性病害に対応 多数の作物
トップジンM水和剤 速攻性と残効性を持つベンゾイミダゾール系殺菌剤。定期予防・激発時のまん延防止に有効 広範囲の作物
シグナムWDG 作用機作の異なる2成分配合。炭疽病うどんこ病にも対応 野菜類
カンタスドライフロアブル 植物体への浸達性が高く、既感染菌への治療効果も持つ。収穫前日まで使用可能 多数の作物

農薬を使う上での注意点があります。同じ薬剤を連続使用すると耐性菌が出現するリスクがあるため、作用機作(FRAC番号)の異なる薬剤をローテーション散布することが必須です。 耐性ができると、それまで効いていた薬が突然効かなくなります。


厳しいところですね。



薬剤ローテーションの管理が煩雑に感じる場合は、JAや農薬メーカーが提供する「防除体系表」を参考にすると、散布タイミングと薬剤の組み合わせを一覧で確認できます。たとえばJA京都市が公開している営農タイムリーには菌核病の防除体系例が具体的に記載されています。


参考)https://ja-kyotocity.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/03/2025_einou_timely_1.pdf


参考:菌核病の農薬と防除(農家web)
https://www.noukaweb.com/kinkaku-pesticide/

菌核形成を知る農家だけが得する——連作被害の実態と輪作設計の独自視点

ここからは、一般的な防除ガイドではあまり触れられない視点を紹介します。菌核の「生存期間」を正確に知っているかどうかで、輪作設計の精度が大きく変わります。


菌核の土壌内生存期間は作物・菌の種類によって異なります。


参考)菌核病について|植物を腐敗・枯死させる菌核の生態と防除方法


  • スクレロティニア菌(菌核病の主要病原):2〜3年
  • リゾクトニア菌(紋枯病・立枯病など):2〜3年
  • ホモプシス菌など:4〜6年に達するケースもある

「3年輪作すれば安全」という農家の常識は、菌核が2〜3年生存するという前提に基づいています。しかし4〜6年生存するタイプの菌核形成菌が土壌に混在していた場合、3年輪作は十分ではない可能性があります。


意外ですね。



実際には前作の病害記録を残し、「どの病原菌が出たか」を特定して輪作年数を設定するのが理想的です。土壌診断サービス(農協や農業試験場が提供)を活用すれば、土壌中の病原菌密度を数値で把握できます。


土壌診断の活用が条件です。


また、水稲との輪作は最強の菌核対策のひとつです。湛水環境は嫌気状態を作り、菌核の酸欠死滅を促します。 野菜単作から水稲を組み込んだ複合輪作体系に切り替えることで、農薬使用量を削減しながら土壌を健全に保てる可能性があります。


コスト面でも中長期的には有利です。


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菌核形成の仕組みを理解し、発生条件を圃場レベルで制御できる農家とそうでない農家では、中長期的な収量・品質に大きな差が生まれます。 菌核を「出てから対処する問題」ではなく「出ないように設計する問題」として捉えることが、現代の農業経営において重要な視点です。


参考:農業害虫・病害防除ハンドブック(boujo.net)
https://boujo.net/handbook/newhandbook14/