土壌消毒をしっかりやっても、低温期の秋冬ハウスでは根腐萎凋病が再発するケースが少なくありません。
根腐萎凋病は、学名 Fusarium oxysporum f. sp. radicis-lycopersici というカビ(糸状菌)が引き起こす土壌病害です。 病名に「根腐れ」と「萎凋」が両方入っているように、根が激しく腐敗しながら地上部も枯れていくのが特徴です。
症状は段階的に進行します。
地上部の初期サインは「晴れた日中だけしおれ、夜間には戻る」という状態の繰り返しです。 これを見落として「水切れかな?」と灌水を増やすと逆効果になりかねません。
これは危険なサインです。
参考)https://www.takii.co.jp/tsk/bugs/atm/disease/konpuichou/
萎凋病との決定的な違いは3点あります。
参考)トマト根腐萎凋病
| 比較項目 | 根腐萎凋病 | 萎凋病 |
|---|---|---|
| 導管の褐変範囲 | 地上15〜20cmまで | 発病した葉の高さまで全体に及ぶ |
| 根腐れの程度 | 非常に激しい | 比較的軽い |
| 主な発生時期 | 低温期(晩秋〜早春) | 高温期(25〜28℃) |
根腐れが激しいかどうか。
これが見分けのポイントです。
株を引き抜いて根の状態を必ず確認してください。
農薬の登録情報や最新の症状識別については、農林水産省や都道府県の病害虫防除所の情報が参考になります。
高知県農業ネット「トマト 根腐萎ちょう病」症状・対策の詳細ページ
病原菌は土壌中で数年から数十年生存し続けます。 つまり、一度発病したほ場は長期間にわたってリスクを抱えることになります。
主な助長要因は以下のとおりです。nogyo.tosa.pref.kochi+1
特に注意が必要なのが「低温」です。 本病は晩秋から早春の低温・寡日照条件で発生が集中します。夏季のトマトをイメージしている農家ほど、秋冬ハウスでの初期症状を見落としやすい傾向があります。
施肥面では、窒素肥料を多用すると発病を明確に助長することが確認されています。 肥料が多ければ元気に育つという考えは、この病気には逆効果になります。
適正施肥が原則です。
参考)トマト 根腐萎ちょう病 : こうち農業ネ…
防除ネット「トマト根腐萎凋病」発病助長要因と農薬登録情報のまとめ
最も確実な予防策は、抵抗性品種の選定または抵抗性台木への接ぎ木です。 土壌消毒だけに頼るのではなく、品種・台木の選択を組み合わせることが防除の基本となります。
群馬県農業技術センターの試験では、台木品種「マイティ」「ティーエムワン」は「デュエットO」と比較して根腐萎凋病に対する抵抗性が高いことが確認されています。 台木品種によって抵抗性に差があるため、地域の農業改良普及センターや種苗会社で最新の推奨品種を確認することが重要です。
参考)https://www.pref.gunma.jp/uploaded/attachment/45939.pdf
品種を選ぶ際のポイントは以下の通りです。
参考)2024秋冬総合カタログ
参考)https://www.k-agri.rd.pref.gifu.lg.jp/houkoku/No.11(2016.3)/houkoku-tadantugiti.pdf
接ぎ木後の中耕・土寄せ作業では根を傷つけないよう丁寧に行うことが必須です。 作業時の小さな根傷みが感染の入り口になるからです。
これは見落としがちなポイントですね。
群馬県農業技術センター「根腐萎凋病に対する抵抗性台木品種の選定」試験報告PDF
発病リスクを下げる根本的な手段は土壌消毒です。登録されている土壌消毒剤としては、ガスタード・ダブルストッパー・ディ・トラペックス油剤・バスアミド微粒剤などがあります。 農薬を使用する際はラベルを必ず確認し、地域の防除暦や病害虫防除所の指導に従ってください。yuime+1
農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)の研究では、95℃の熱水を土壌表面から200L/㎡注入すると、地下30cmの地点でも50℃以上が8時間持続し、フザリウム菌が死滅することが確認されています。 化学農薬を使いたくない場合や有機農業への転換を検討している農家にとって、熱水土壌消毒は有力な選択肢となります。
また、種子からの感染リスクに備えて種子を乾熱処理(70℃・3日間)することも有効です。
意外と見落とされがちな対策です。
栽培管理面での対策をまとめます。
土壌水分管理は感覚だけに頼らないことが条件です。灌水量の目安として、点滴灌水チューブによる少量多灌水は根域の安定管理に適しています。
発病株を確認したら、すぐに抜き取って圃場外で処分することが最初の行動です。 病株を放置すると土壌中の菌密度がさらに上がり、周辺株や翌作への被害が拡大します。
これが基本です。
発病確認後の対応フローとして、以下を押さえておくと翌作の被害を最小限に抑えられます。
発病率が高い場合、ほ場全体の土壌消毒だけでは追いつかないケースもあります。その際は土壌還元消毒(稲わらなどの有機物を土壌にすき込んで湛水する方法)と接ぎ木栽培の組み合わせが推奨されています。 化学農薬に頼りすぎない体系的な防除が、長期的なほ場管理には効果的です。dojokairyo-media+1
発病リスクの把握には、各都道府県の農業試験場や農業改良普及センターが公開している病害虫防除暦の活用がおすすめです。地域ごとの気候特性に応じた防除時期と農薬情報が確認できます。
愛知県「知ってとくとくトマト土壌病害の見分け方」根腐萎凋病を含む複数病害の識別と対策PDF