灌水チューブを自作する方法と畑の塩ビ管で安く散水

灌水チューブを自作して、畑の散水コストを抑える方法を知りたいですか?塩ビ管や安価な材料を使った作り方や、水圧調整のコツ、そして自作ならではの失敗しないためのポイントを詳しく解説します。あなたも挑戦してみませんか?

灌水チューブの自作

灌水チューブ自作のポイント
💧
低コストで導入可能

塩ビ管や専用チューブを活用し、市販品より安価にシステムを構築できます。

🛠️
カスタマイズの自由度

畑の形状や作物の間隔に合わせて、穴の位置や長さを自由に調整可能です。

⚠️
水圧管理が重要

自作ならではの水圧ムラを防ぐための工夫や、適切な穴あけ加工が必要です。

灌水チューブの自作に必要な材料と塩ビ管の選び方

 

農業において日々の水やり作業は重労働であり、自動化や効率化は多くの農家にとって喫緊の課題です。市販の灌水チューブは便利ですが、広い面積をカバーしようとするとコストが嵩むのが難点です。そこで注目されているのが「灌水チューブの自作」です。自作することで、導入コストを大幅に削減できるだけでなく、自分の畑のウネ幅や作物の配置に完全にフィットした散水システムを構築することが可能になります 。

 

自作灌水システムの核となる材料として、最も推奨されるのが塩ビ管(VP管・VU管)です。塩ビ管は耐久性が高く、加工が容易で、ホームセンターで安価に入手できるため、自作資材として非常に優秀です。特にVP管は肉厚で圧力に強く、本管(メインライン)として使用するのに適しています。一方、VU管は肉薄で軽量なため、取り回しが楽ですが、強度はVP管に劣ります。予算と耐久性のバランスを考えて選定しましょう。

 

必要な材料リストは以下の通りです。

  • 塩ビ管(VP13またはVP16など): メインの送水ラインとして使用します。
  • 灌水チューブ(点滴チューブや散水チューブ): スミサンスイなどの市販チューブを切り売りで購入するか、あるいはマルチシートやビニールホースを加工して代用する場合もあります。
  • 継手(エルボ、チーズ、ソケット): 管同士を接続したり、分岐させたりするために必要です。
  • バルブ(ボールバルブ): 水流のオン・オフや水圧調整を行うために、各ラインの入り口に設置します。
  • 専用接着剤: 塩ビ管を確実に接合し、水漏れを防ぐために必須です。
  • 穴あけ工具(ドリルや千枚通し): チューブやパイプに散水用の穴を開けるために使用します。

塩ビ管を選ぶ際のポイントとして、「耐候性」を考慮することが挙げられます。通常のグレーの塩ビ管は紫外線に弱く、長期間屋外に放置すると劣化して割れやすくなります。長期使用を前提とする場合は、耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管(HIVP管、濃い紺色)を選ぶと、寒冷地での凍結割れや衝撃に対して強くなります。ただしコストは若干上がりますので、埋設配管にするか、露出配管にするかで使い分けるのが賢い方法です 。

 

また、自作のメリットとして、「部分的な補修のしやすさ」があります。市販のセット品は専用部品が必要になることが多いですが、汎用的な塩ビ管やホース規格で統一しておけば、破損した箇所だけを切り取って新しいパイプや継手で繋ぎ直すことが容易です。これは長期的なランニングコストの低減にも大きく寄与します。

 

塩ビ管を用いた自作灌水システムの設計図と施工例について、以下のリンクが参考になります。

 

畑の自動水やりシステム(自動灌水装置)を自作する方法|マイナビ農業

灌水チューブを自作する際の水圧調整と穴あけの方法

灌水チューブを自作する上で最も技術的なハードルとなるのが、「水圧の均一化」と「適切な穴あけ」です。単にホースに穴を開けただけでは、水源に近い穴からは勢いよく水が出て、末端の穴からはチョロチョロとしか出ないという現象が必ず起きます。これは配管内の摩擦損失による圧力低下が原因です。

 

均一な散水を実現するための穴あけ加工には、いくつかのコツがあります。

 

  • 穴のサイズを変える: 水源に近い側は小さめの穴(例えば1.0mm)、末端に行くにつれて少し大きめの穴(例えば1.5mm)を開けることで、水出量のバランスを取ることができます。しかし、これは微調整が難しく、試行錯誤が必要です。
  • 穴の間隔を調整する: 穴のサイズを変えるのが難しい場合、水源側は穴の間隔を広く、末端側は狭くすることで、単位長さあたりの水量を調整する方法もあります。
  • 点滴灌水方式の採用: 穴から直接水を噴出させるのではなく、点滴(ドリップ)方式を目指すのが自作では失敗が少ないです。微細な穴を開けるか、あるいは穴にネジや釘を緩く刺しておき、その隙間から水が滲み出るようにすると、低い水圧でも全体に行き渡りやすくなります。

水圧調整に関しては、「末端処理」も重要です。チューブの末端を折り返して止めるだけでなく、時々開閉できるコック(ドレインバルブ)を付けておくと、メンテナンス時に泥やゴミを排出(フラッシング)でき、目詰まりによる水圧変動を防げます。

 

さらに、ポンプを使用する場合は、ポンプの能力とチューブの総延長のバランス計算が必須です。家庭用の水道圧を利用する場合は圧力が限られているため、一度に散水する範囲を区切る(バルブで系統を分ける)必要があります。一度に広範囲に水を送ろうとすると、どうしても末端の水圧が不足します。

 

意外と知られていないテクニックとして、「二重管構造」があります。太い塩ビ管の中に細いチューブを通し、内側のチューブから外側の管へ、そして外側の管から外へ水を出すという複雑な構造ですが、これにより圧力が一度緩衝され、長距離でも均一に水が出やすくなるというDIY上級者の技です。ここまでせずとも、本管(メインパイプ)を太くし、分岐管(ラテラルパイプ)を細くする「口径差」をつけるだけで、均一性は格段に向上します 。

 

レーザー加工機などを使わず、手作業で正確な微細穴を開ける方法としては、「熱した針」を使うのが有効です。ドリルだと削りカスが内部に残り、それが詰まりの原因になることがありますが、熱で溶かして開けた穴は縁が滑らかで詰まりにくく、長持ちします。

 

水圧と流量の関係、および配管径の選定に関する基礎知識は以下のサイトが参考になります。

 

潅水(かんすい)資材・散水(さんすい)|サンエー

灌水チューブの自作で作物ごとの散水ムラをなくす設置

作物の種類によって必要な水分量や水やりの頻度は異なります。自作灌水チューブの最大の利点は、この「作物ごとの個別対応」が可能になる点です。市販の灌水チューブはピッチ(穴の間隔)が10cm、20cmなど固定されていますが、自作なら「株元だけにピンポイントで水が落ちる」ように設計できます。

 

散水ムラをなくすための設置テクニックとして、以下の方法が挙げられます。

 

  • 株間ピッチに合わせた穴あけ: 作物の植え付け間隔(株間)を測り、正確にその位置にだけ穴を開けます。これにより、通路や雑草が生えるスペースへの無駄な散水を防ぎ、節水効果と共に除草の手間も減らせます。
  • マルチ下への設置: 黒マルチなどの被覆資材の下に自作チューブを通すことで、蒸発を防ぎながら土壌水分を保持できます。この場合、チューブの穴が土で詰まらないよう、穴の位置を上向き、あるいは横向きにする工夫が必要です。下向きにすると泥を吸い込みやすくなります。
  • 高低差の考慮: 畑に傾斜がある場合、低い方に水が溜まりやすくなります。自作の場合、傾斜の上側は穴を多くまたは大きくし、下側は絞るという調整が可能です。あるいは、圧力補正機能付きのドリップボタン(後付けできるポタポタ部品)をチューブに刺すことで、傾斜地でも均一な点滴灌水が可能になります 。

また、「スミサンスイ」などの薄いフィルム状の散水チューブを自作の塩ビ配管システムに組み込むハイブリッドな方法も一般的です。塩ビ管で各ウネの入り口まで配管し、そこから安価なフィルムチューブを伸ばす形です。この際、接続部分からの水漏れが多発するため、専用の「スタート」と呼ばれる継手部品だけはケチらずに購入することをお勧めします。無理にホースバンドだけで止めようとすると、水圧がかかった瞬間に抜ける事故が多発します 。

 

意外な盲点として、「配管の固定」があります。水が流れると水圧でチューブが暴れたり、蛇行したりして、狙った位置からずれてしまうことがあります。これを防ぐため、U字ピンや自作のワイヤー留め具で、1〜2メートルおきに確実に地面に固定することが、ムラのない散水には不可欠です。特に夏場、塩ビ管やチューブは熱で伸び縮みするため、多少のたるみを持たせつつ固定するのがプロのコツです。

 

作物による水分要求の違いに対応するため、配管を分岐させるチーズ部分にコックを設け、「エリア分け」をするのも効果的です。乾燥を好む作物と水を好む作物のラインを分け、バルブ操作一つで水やりエリアを切り替えられるようにしておくと、管理が劇的に楽になります。

 

灌水設備の設置例や、作物別の水管理の重要性については以下の情報が役立ちます。

 

灌水チューブ スミサンスイM|住化農業資材

灌水チューブの自作とタイマーを使った自動化の導入

灌水チューブを自作したら、次のステップとして目指すべきは「自動化」です。手動でバルブを開け閉めするだけでも労力は減りますが、安価な自動灌水タイマー(散水タイマー)を組み合わせることで、決まった時間に決まった時間だけ水やりを行う完全自動化システムが完成します。

 

自動化に必要な機材は以下の通りです。

 

  • 自動灌水タイマー(電池式が一般的): 水道蛇口やタンクの出口に取り付けます。数千円〜1万円程度で購入可能です。
  • 電磁弁(規模が大きい場合): タイマーからの電気信号で開閉する弁です。広い畑で複数の系統を制御する場合に必要になります。
  • フィルター(ディスクフィルターなど): 自作システム、特に川水や雨水タンクを利用する場合は必須です。微細なゴミがチューブの穴を塞ぐのを防ぎます。

タイマー導入の際に注意すべき点は、「流量不足による動作不良」です。一部の簡易タイマーは、水圧がかかっていないと弁が開かない構造になっています。雨水タンクからの自然落下圧(高低差による水圧)だけで散水しようとする場合、圧力が足りずにタイマーが作動しない、あるいは水が出ないことがあります。この場合、「ゼロ圧力作動」に対応したボールバルブ式のタイマーを選ぶ必要があります。これは内部でモーターが物理的に弁を回すタイプで、水圧がほぼゼロでも水を通すことができます 。

 

また、自作チューブとタイマーを組み合わせる際、「水撃作用(ウォーターハンマー)」への対策も考慮すべきです。タイマーで急に水が止まった際、配管内で「ドン!」という衝撃音と共に圧力がかかり、接続部が外れたりパイプが割れたりすることがあります。これを防ぐには、タイマーの設定で「ゆっくり閉まる」機能があるものを選ぶか、配管の末端に空気室(エアチャンバー)を設けるなどの工夫が有効です。簡単なエアチャンバーは、立ち上がりの塩ビ管にキャップをして空気を閉じ込めておくだけでも機能します。

 

さらに、IoT技術を取り入れた自作派も増えています。市販のタイマーの代わりに、「スマートプラグ」と「電磁弁」を組み合わせ、Wi-Fi経由でスマホから遠隔操作できるようにするシステムです。これにより、急な雨が降った日は外出先から水やりをキャンセルする、といった高度な管理が可能になります。電源確保が課題ですが、ソーラーパネルとバッテリーを組み合わせた独立電源システムを自作する強者もいます。

 

自動化システムの構築において、フィルターの重要性は強調してもしきれません。特に自作の微細穴は詰まりやすいため、120メッシュ以上の細かなフィルターを一次側に設置しましょう。フィルターが詰まると全ラインの水圧が落ちるため、フィルター自体も掃除しやすい位置、構造にしておくことが、長く安定して稼働させる秘訣です。

 

自動灌水タイマーの選び方や設置の注意点については、以下のメーカーサイトが参考になります。

 

自動水やり|株式会社タカギ

灌水チューブを自作せずに廃材利用でコストゼロを実現

検索上位にはあまり出てこない独自視点として、「完全な廃材利用によるコストゼロ灌水」を提案します。新品の塩ビ管や専用チューブを買わずとも、身の回りにある廃材を活用して機能的な灌水システムを作ることが可能です。

 

最も使える廃材は、「使い古した消防ホース」です。地元の消防団や消防署では、定期的にホースの更新が行われ、古いホースは廃棄されます。これらは非常に頑丈で、かつ大水量を送ることができます。消防ホースに直接釘で穴を開けるのは大変ですが、適度な間隔で千枚通しで穴を開ければ、広範囲に一気に散水できる強力な灌水チューブになります。ただし、家庭用水道圧では膨らまない可能性があるため、エンジンポンプなどを使用する現場向けです。

 

次に、「ペットボトルの連結」です。500mlや2Lのペットボトルの底を切り取り、飲み口部分を次のボトルの底に差し込んで繋げていく方法です。接着剤や防水テープで固定し、キャップ部分に小さな穴を開ければ、簡易的な点滴灌水ラインになります。見た目は不格好ですが、家庭菜園レベルであれば十分に機能しますし、材料費は実質ゼロです。

 

また、「古い点滴チューブの再生」も有効です。農家では目詰まりした点滴チューブを廃棄することが多いですが、これを回収し、詰まった穴の部分を避けて新しい穴を開け直したり、あるいは切断して使える部分だけをジョイントで繋ぎ合わせたりすることで、新品同様とはいかずとも、サブの散水ラインとして復活させることができます。

 

さらに究極のコストダウンとして、「毛細管現象を利用した紐(ひも)灌水」があります。チューブすら使いません。バケツなどの水源から、太めの綿ロープやアクリル紐を垂らし、その先を作物の根元に埋めます。すると、毛細管現象によって水がじわじわと紐を伝って土に移動します。これは厳密には「灌水チューブ」ではありませんが、動力を一切使わず、過湿にもなりにくい、植物に最も優しい自動給水システムと言えます。プランター栽培や小規模な家庭菜園では、この方法が最も失敗がなく、コストもかかりません。

 

これらの方法は、見た目の美しさや耐久性では新品の塩ビ管システムに劣りますが、「あるものを工夫して使う」というDIYの精神を体現しており、何より環境負荷が低いという点で現代の農業トレンドにも合致します。まずは身近な廃材で実験的にシステムを組み、効果を確認してから本格的な資材を購入するというステップを踏むのも、賢い自作のアプローチです。

 

 


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