サンジョヴェーゼ特徴と栽培や土壌への適応力とクローン

農業従事者向けにサンジョヴェーゼの特徴を深掘りします。栽培管理や土壌への適応力、適切なクローン選択、そして病気対策まで網羅的に解説。高収量と高品質を両立させるための秘訣とは?
サンジョヴェーゼの特徴:記事のポイント
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栽培と土壌の適応力

晩熟で温暖な気候を好み、石灰質や粘土質土壌で高品質なブドウに育ちます。

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キャノピー管理の重要性

樹勢が強く病気に弱いため、適切な剪定と除葉で通気性を確保する必要があります。

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多様なクローンの選択

80種類以上のクローンから、土地の特性に合った系統を選ぶことが成功の鍵です。

サンジョヴェーゼの特徴

サンジョヴェーゼはイタリア全土で最も広く栽培されている赤ワイン用品種であり、その高い適応力生産性が最大の特徴です。農業従事者の視点から見ると、この品種は環境への順応性が高い反面、高品質な果実を得るためには緻密な管理が求められる「気難しい」一面も持っています。


参考)https://www.enoteca.co.jp/article/archives/6666/

基本的に晩熟であり、完熟には長い生育期間と温暖な気候が必要です。早春に芽吹くため遅霜のリスクがあり、収穫期が遅いため秋雨による腐敗のリスクも抱えています。しかし、適切な条件下で管理されたサンジョヴェーゼは、酸とタンニンのバランスが取れた、長期熟成に耐えうる偉大なワインを生み出すポテンシャルを持っています。


参考)サンジョヴェーゼ|ブドウ品種辞典|ワイン|日欧商事(JET)

特筆すべきは、その樹勢の強さです。放任すれば過剰に実をつけ、品質が低下する傾向があります。そのため、農業現場では収量制限(グリーンハーベスト)やキャノピーマネジメント(新梢管理)が不可欠となります。単に植えれば育つというものではなく、テロワール(生育環境)ごとの微調整が求められる、作り手の技量が試される品種と言えるでしょう。


参考)サンジョヴェーゼとは|ブドウ品種の特徴とワインの香りや味は?…

サンジョヴェーゼの栽培に適した土壌と気候

サンジョヴェーゼは多様な土壌に適応しますが、最高品質のブドウを得るためには特定の土壌条件が推奨されます。特に石灰質(アルベレーゼ)粘土質、そしてトスカーナ地方特有の泥灰土であるガレストロ土壌との相性が抜群です。


参考)素朴な魅力にあふれるイタリアの象徴的品種サンジョヴェーゼセミ…

気候に関しては、晩熟品種であるため、生育期間中に十分な日照と暖かさが確保できる環境が必須です。


参考)サンジョヴェーゼ - Wikipedia

標高も重要な要素です。標高150m〜550mの丘陵地帯、特に南向きまたは南西向きの斜面が理想的とされています。

標高が高い地域では昼夜の寒暖差(日較差)が大きくなり、サンジョヴェーゼの特徴である美しい酸味とアロマが形成されやすくなります。一方で、標高が低すぎる平地では、酸がぼやけた大味なワインになりがちで、高すぎる場所では完熟しきらないリスクがあります。

農業従事者が新規に植栽を検討する場合、排水性の良い斜面を選定し、土壌分析を行ってpHやミネラルバランスを確認することが、成功への第一歩となります。


参考)トスカニー イタリアワイン専門店 / コッレルチェート

参考リンク:サンジョヴェーゼの土壌適性と栽培の難しさについての専門的な解説(アカデミー・デュ・ヴァン)

サンジョヴェーゼの晩熟な特性と収穫の管理

サンジョヴェーゼの栽培において、晩熟という特性はスケジュール管理上の大きな課題です。一般的に9月下旬から10月中旬にかけて収穫されますが、この時期は秋雨前線の影響を受けやすく、収穫直前の雨による品質劣化が懸念されます。

果実が水分を吸収して水っぽくなることを防ぐため、収穫のタイミングを見極める高度な判断力が求められます。また、完熟を待つあまり収穫を遅らせすぎると、酸味が低下し、過熟によるジャムのような重たい味わいになってしまうリスクもあります。


参考)イタリアの情熱がギュッと詰まる『サンジョヴェーゼ』の解説|ワ…

収量制限(グリーンハーベスト)は、サンジョヴェーゼ栽培における最重要作業の一つです。


この品種は非常に多産であり、自然のままでは過剰な房をつけてしまいます。


参考)https://alcotrade.com/download-pdf/ati-catalogue-a4-2025-02.pdf

  • ヴェレゾン(色付き期)前後の摘房: 着色不良や成熟の遅れている房を間引くことで、残った房に栄養を集中させます。
  • 房の先端のカット: 大きすぎる房の下部を切り落とすことで、房全体の成熟を均一化させる手法も有効です。

研究によると、ヴェレゾン後の適切な剪定や摘房は、果実品質(糖度やpH)を大きく損なうことなく、房の密着度を下げて病気のリスクを減らす効果があることが示唆されています。高品質なワイン用ブドウとして出荷するためには、ヘクタールあたりの収量を厳格にコントロールする勇気が必要です。


参考)Volume 67, No.2 (2016)

サンジョヴェーゼの多様なクローンと適応力

サンジョヴェーゼは遺伝的に不安定で突然変異を起こしやすい品種であり、現在公式に登録されているだけでも80種類以上のクローンが存在します。これは、長い歴史の中で各地の微気候や土壌に適応して分化した結果です。農業従事者にとって、自分の畑に最適なクローンを選定することは、栽培の成否を分ける極めて重要な決定となります。


参考)https://www.suntory.co.jp/wine/series/knowledge/recommend/sangiovese.html

大きく分けて、以下の2つの系統が知られています。


参考)イタリアを代表する黒ブドウ品種「サンジョヴェーゼ」の特徴とは…

系統名 特徴 主な用途
サンジョヴェーゼ・グロッソ 粒が大きく果皮が厚い。タンニンが豊富で長期熟成向き。 ブルネッロ・ディ・モンタルチーノなど高級ワイン
サンジョヴェーゼ・ピッコロ 粒が小さく多産。フルーティーで酸味が際立つ。 キャンティなどの早飲みタイプやブレンド用

近年では、より細分化されたクローン選抜が進んでいます。


例えば、病害耐性が強いクローン、糖度が上がりやすいクローン、特定の土壌でアロマが引き立つクローンなどが開発されています。


参考)伝統と革新 サンジョヴェーゼ三大D.O.C.G. ~厳格で偉…

新しい畑を開墾する場合や改植を行う場合は、単一のクローンだけでなく、特性の異なる複数のクローンを混植(マサル・セレクション的なアプローチや、複数の優良クローンのブレンド)することで、ヴィンテージごとの気候変動リスクを分散させ、ワインに複雑味を持たせることが推奨されます。苗木業者と相談し、地域の気候データと土壌分析に基づいた最適な組み合わせを見つけることが肝要です。


参考)サンジョヴェーゼ - 品種の特徴・産地・合う料理など徹底解説…

サンジョヴェーゼの病気リスクとキャノピー管理

サンジョヴェーゼの果皮は薄くデリケートであるため、病気、特に灰色かび病(ボトリティス・シネレア)べと病に対する感受性が高いのが弱点です。


参考)暮らしが豊かになるソムリエハッチのワイン講座|暮らしとワイン

農業現場において、この病害リスクをいかに低減させるかが、安定した収穫量確保の鍵となります。ここで重要になるのが、徹底した
キャノピーマネジメント(樹冠管理)です。


参考)https://www.fwines.co.jp/news/catalog/pdf/2023_fwines_selection.pdf

サンジョヴェーゼは樹勢が強く、放っておくと枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなります。湿気がこもると病原菌の温床となるため、以下の対策が必須です。


  1. 除葉(リーフリムーバル):

    果房周りの葉を適切に取り除くことで、通気性を良くし、日光を当てて果皮を丈夫にします。特に朝露が残りやすい東側の除葉は効果的ですが、強い西日が当たる側の除葉は日焼け(サンバーン)のリスクがあるため慎重に行う必要があります。

  2. 新梢の誘引整枝:

    枝が重ならないようにワイヤーへ誘引し、キャノピー(葉の壁)を薄く均一に保ちます。VSP(Vertical Shoot Positioning)などの仕立て方が一般的ですが、樹勢に合わせてコルドンやギヨーを選択します。


    参考)https://www.wsetglobal.com/media/4724/wset_l3wines_specification_jp_aug2017.pdf

  3. 窒素肥料の抑制:

    窒素過多は枝葉の徒長を招き、果皮を薄くして病気への抵抗力を下げます。樹勢が強い場合は、窒素施肥を控えるか、カバークロップ(草生栽培)を導入して土壌中の過剰な水分と窒素を競合させることが推奨されます。


    参考)灰色かび病の原因や症状とは? 予防法や対策について農家が解説…

また、予防的な防除として、開花直後や房の形成期における薬剤散布も重要ですが、近年では重曹製剤や生物農薬バチルス菌など)を用いた減農薬栽培も注目されています。


参考)【被害が広がる前に対処しよう!】灰色かび病の症状と対策につい…

サンジョヴェーゼの栽培は「葉の管理」がすべてと言っても過言ではありません。適切な通風と日照の確保こそが、最大の病気対策となります。


参考リンク:ヴェレゾン後の剪定がサンジョヴェーゼの房の密着性と品質に与える影響(日本ブドウ・ワイン学会)