きゅうりの肥料に鶏糞を使う
きゅうりの元肥と追肥に鶏糞を使う適切な時期と量
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きゅうり栽培において、鶏糞は非常に有効な有機肥料ですが、その効果を最大限に引き出すためには、使用する「時期」と「量」が重要になります。特に元肥と追肥では、その役割が異なるため、使い方をしっかりと区別する必要があります。
元肥としての使い方
元肥は、きゅうりの苗を植え付ける前に土壌全体に混ぜ込み、初期生育を支えるための肥料です。鶏糞を元肥として使う場合、最も注意すべきは「未熟な鶏糞は使用しない」あるいは「十分に時間を置く」ことです。未熟な鶏糞を施すと、土中で急激に分解が進み、アンモニアガスが発生して根を傷める「ガス障害」を引き起こす原因となります。
- ✅ 使用する鶏糞の種類:
- 発酵鶏糞(完熟): 植え付けの1〜2週間前に施します。発酵済みのためガスの発生が少なく、比較的安心して使用できます。
- 乾燥鶏糞(未発酵): 植え付けの3週間〜1ヶ月前に施し、土とよく混ぜて分解・ガス抜き期間を設ける必要があります。
- ✅ 施肥量の目安:
- 畑(1㎡あたり): 150g〜300g程度。 土壌の状態や他の堆肥(牛ふんなど)とのバランスを見て調整します。土壌分析を行っている場合は、その結果に基づいて施肥設計を組むのが理想です。
- 土作りができていない痩せた土地では多めに、前作の肥料が残っているような肥沃な土地では少なめに調整するのが基本です。
追肥としての使い方
きゅうりは「肥料食い」と言われるほど、生育期間中に多くの養分を必要とします。特に収穫が始まると、次々と実をならせるために肥料切れを起こしやすくなります。追肥は、この肥料切れを防ぎ、長期間安定して収穫を続けるための重要な作業です。
- ✅ 使用する鶏糞の種類: 追肥には、ガス障害のリスクを避けるため、必ず「発酵鶏糞」を使用してください。未熟な鶏糞を株元に追肥すると、根に直接ダメージを与えてしまう危険性が非常に高いです。
- ✅ 追肥を開始する時期: 最初の実がなり、ある程度の大きさ(10cm程度)に育ち始めた頃が1回目の追肥のタイミングです。 植え付けから約3週間〜1ヶ月後が目安となります。
- ✅ 追肥の頻度と量:
- 頻度: 収穫が続く期間中は、10日〜2週間に1回のペースで定期的に行います。 きゅうりの葉の色や実のなり方を見ながら、頻度を調整することが重要です。葉の色が薄くなってきたら肥料不足のサインです。
- 量(1株あたり): 1回あたり軽く一握り(約30g〜50g)程度が目安です。
- 施肥場所: 根が直接肥料に触れないよう、株元から少し離れた場所(畝の肩やマルチの裾)に施します。きゅうりの根は浅く広く張る性質があるため、株元から20cm〜30cm離れた位置に溝を掘って施肥するのも効果的です。
以下のリンクは、JA高岡によるきゅうりの栽培ごよみです。追肥のタイミングについて、1〜2個実が付いた頃から15〜20日間隔で行うことが推奨されており、参考になります。
JA高岡 きゅうり栽培ごよみ
きゅうり栽培で鶏糞を使うメリットとデメリット・注意点
鶏糞は安価で入手しやすく、栄養価も高いため、多くの農家や家庭菜園で利用されています。しかし、その特性を理解せずに使うと、思わぬ失敗につながることもあります。ここでは、鶏糞のメリットと、特に注意すべきデメリットについて詳しく解説します。
鶏糞のメリット 🌟
- 栄養バランスが良い: 鶏糞は、植物の生育に不可欠な三大要素である「窒素(N)・リン酸(P)・カリ(K)」をバランス良く含んでいます。特に、実の生育を助けるリン酸が他の家畜糞に比べて豊富なのが特徴です。
- 即効性と緩効性の両立: 発酵鶏糞は、一部がすぐに吸収される形で含まれているため即効性があり、追肥に適しています。同時に、有機物としてゆっくり分解される成分も含むため、ある程度の期間、効果が持続します。
- コストが低い: 他の有機肥料や化成肥料と比較して、非常に安価でコストパフォーマンスに優れています。
- 土壌微生物の活性化: 有機物である鶏糞を施すことで、土壌中の微生物のエサとなり、多様な微生物が繁殖しやすい環境が作られます。これにより、土がふかふかになる団粒構造の促進も期待できます。
鶏糞のデメリットと注意点 ⚠️
メリットの多い鶏糞ですが、使い方を誤ると大きなデメリットになります。以下の点に十分注意してください。
デメリット |
原因と症状 |
対策 |
ガス障害・肥料焼け |
未熟な鶏糞が土中で分解される際にアンモニアガスが発生し、きゅうりの根を傷めます。 また、一度に大量に施肥すると、肥料濃度が高くなりすぎて根が水分を吸えなくなる「肥料焼け」を起こします。 |
・元肥には完熟発酵鶏糞を使うか、乾燥鶏糞の場合は植え付け3週間以上前に施す。 ・追肥は必ず発酵済みのものを使用し、株元から離して少量ずつ施す。 |
土壌のアルカリ化 |
鶏糞は石灰(カルシウム)分を多く含むため、長期間連用すると土壌がアルカリ性に傾きやすくなります。きゅうりは弱酸性を好むため、生育不良の原因になります。 |
・定期的にpHメーターで土壌酸度を測定する。 ・酸度調整されていないピートモスなどを投入して調整する。 ・鶏糞の施肥量を守り、過剰投入しない。 |
臭いと害虫の発生 |
特に未熟な鶏糞は強い臭いを放ち、ハエなどの害虫を誘引する原因となります。住宅地での使用には特に注意が必要です。 |
・臭いが少ない完熟発酵済みの製品を選ぶ。 ・施肥後は土とよく混ぜて表面に露出させない。 |
雑草の種の混入 |
鶏の飼料に含まれていた雑草の種が、糞の中に未消化のまま残っていることがあります。これが畑で発芽し、雑草が増える原因になることがあります。 |
・高温で発酵処理された「発酵鶏糞」や「炭化鶏糞」は種が死滅しているため、これらの製品を選ぶ。 |
きゅうりの肥料効果を高める!発酵鶏糞とぼかし肥料の作り方
鶏糞をそのまま使うだけでなく、一手間加えて「ぼかし肥料」にすることで、その効果をさらに高めることができます。ぼかし肥料とは、有機肥料(鶏糞、油かす、米ぬかなど)を微生物の力で発酵させたもので、土壌環境を改善しながら、きゅうりにバランスの良い栄養を効率的に供給することができます。
発酵鶏糞と乾燥鶏糞の違い
まず基本として、市販されている鶏糞には大きく分けて2種類あります。
- 発酵鶏糞: 発酵処理が施されており、アンモニアガスの発生リスクが低く、臭いも少ないです。微生物によってある程度分解されているため、元肥にも追肥にも使いやすく、初心者にもおすすめです。
- 乾燥鶏糞: 単に乾燥させただけで、未発酵の状態です。安価ですが、土中で発酵する際にガスを発生させるため、元肥として使う場合は植え付けの1ヶ月前には施しておく必要があります。追肥には不向きです。
鶏糞を使った「ぼかし肥料」の作り方
ぼかし肥料の作り方は様々ですが、ここでは家庭でも挑戦しやすい基本的なレシピを紹介します。 ポイントは、材料の比率と水分量です。
【材料】 (重量比)
- 米ぬか: 6
- 油かす: 2
- 発酵鶏糞: 1
- (あれば)牛ふん堆肥: 1
- 水: 全体の30%〜40%程度
【作り方】
- 1. 材料を混ぜる
まず、米ぬか、油かす、鶏糞などの乾いた材料をすべてコンテナやビニールシートの上にあけ、ムラがなくなるまで徹底的に混ぜ合わせます。この段階でしっかり均一に混ぜることが、発酵を成功させる重要なポイントです。
- 2. 水を加える
材料がよく混ざったら、ジョウロなどで少しずつ水を加えていきます。一気に加えるのではなく、全体にいきわたるように混ぜながら加えていくのがコツです。「手で握ると固まり、指で押すとホロっと崩れる」くらいの水分量が理想です。 水が多すぎると腐敗の原因になり、少なすぎると発酵が進みません。
- 3. 発酵させる
水分調整が終わったら、土のう袋や蓋付きのコンテナに入れます。発酵が始まると、内部の温度が50〜60℃まで上昇します。1週間に1〜2回、全体をかき混ぜて(切り返し)、酸素を供給し、発酵を均一に促します。
- 4. 完成
夏場なら2週間〜1ヶ月、冬場なら1〜2ヶ月ほどで、甘く香ばしい匂いに変わってきたら完成のサインです。さらさらした状態になれば、肥料として使用できます。
ぼかし肥料を使うメリット
- ✅ 微生物が豊富で、土壌を豊かにする。
- ✅ 栄養分が植物に吸収されやすい形になっている。
- ✅ 根に優しく、肥料焼けのリスクが低い。
- ✅ きゅうりの味や品質の向上が期待できる。
きゅうりの病気対策?鶏糞とコンパニオンプランツの意外な関係
鶏糞を適切に使うことは、きゅうりに栄養を与えるだけでなく、土壌の微生物相を豊かにし、病気に強い土壌環境を作る第一歩となります。この「土壌の健康」という視点をさらに一歩進め、特定の植物を一緒に植える「コンパニオンプランツ」を組み合わせることで、化学農薬に頼らない病害虫管理が期待できます。
鶏糞が作る「健康な土」
完熟した鶏糞やぼかし肥料を土に施すと、それをエサとする多種多様な微生物が活発に活動を始めます。この微生物の多様性が、特定の病原菌だけが異常繁殖するのを防ぎ、土壌全体のバランスを保つ「静菌作用」を生み出します。実際に、発酵鶏糞の施用によって、きゅうりの「つる割病」などの土壌病害が減少したという報告もあります。 つまり、鶏糞で土作りをすることは、病気に対する「免疫力」の高い土壌を作ることにつながるのです。
病害虫を遠ざけるコンパニオンプランツ
この健康な土壌環境をベースに、以下のコンパニオンプランツをきゅうりの株の近くに植えることで、相乗効果が期待できます。
- 🌱 ネギ類(ネギ、ニラ、ニンニクなど)
ネギ類の根に共生する「拮抗菌」という微生物が、きゅうりの「つる割病」の原因となるフザリウム菌の活動を抑制する効果があると言われています。 鶏糞によって多様な微生物が住む環境を作ることで、こうした有益な菌も活動しやすくなります。きゅうりの株間にネギを植えるのは、昔から伝わる知恵の一つです。
- 🌾 ムギ類(エンバク、ライムギなど)
意外な組み合わせですが、きゅうりの大敵である「うどんこ病」対策に効果的です。ムギ類をきゅうりの近くに植えると、ムギに寄生する特定のうどんこ病菌が発生します。この菌はきゅうりには感染しません。そして、この菌を食べる天敵菌(菌寄生菌)が周囲に集まってきます。この天敵菌が、きゅうりに発生するうどんこ病菌も食べてくれるため、結果的にうどんこ病の被害を減らすことができるのです。 これは「バンカープランツ(おとり植物)」という考え方に基づいています。
- 🌿 ハーブ類(バジル、シソなど)
これらのハーブの強い香りは、きゅうりに寄ってくるアブラムシやウリハムシなどの害虫を遠ざける効果(忌避効果)が期待できます。 鶏糞の臭いを気にする場合にも、ハーブの香りが多少和らげてくれるかもしれません。
このように、鶏糞を使った土作りとコンパニオンプランツを組み合わせることは、単なる栄養補給以上の意味を持ちます。土壌の生物多様性を高め、植物同士の相互作用を利用することで、きゅうり自身が持つ力を引き出し、病害虫に強く、健やかに育つ環境を整えることができるのです。
きゅうりのプランター栽培における鶏糞肥料の上手な使い方
ベランダなど限られたスペースできゅうりを育てるプランター栽培は、手軽に始められる反面、地植えとは異なる注意点があります。特に肥料管理は、土の量が限られているため、より繊細なコントロールが求められます。鶏糞はプランター栽培でも有効な肥料ですが、その使い方にはコツが必要です。
一般的に、プランター栽培では臭いやガスの問題から鶏糞は不向きとされる意見もありますが、ポイントを押さえれば十分に活用できます。
プランター栽培での鶏糞利用のポイント
- ⚠️ 必ず「完熟発酵鶏糞」を選ぶ
プランター内は空間が狭いため、ガス障害の影響が地植えよりも深刻に出やすいです。未熟な乾燥鶏糞は絶対に使用しないでください。臭いが少なく、ガス発生のリスクが低い、ペレット状などの完熟発酵鶏糞を選びましょう。
- ⚠️ 元肥は控えめに
プランター用の培養土には、多くの場合、初期肥料が含まれています。そこに鶏糞を元肥として多量に加えると、初期段階で肥料過多(特に窒素過多)になり、葉やツルばかりが茂って実がつきにくくなる「つるボケ」の原因となります。元肥として混ぜ込む場合は、培養土10Lあたり大さじ1〜2杯(約15〜30g)程度に留めましょう。
- ✅ 追肥を基本とする
プランター栽培では、水やりのたびに肥料成分が流れ出しやすいため、一度に多くの肥料を与えるのではなく、少量ずつ定期的に追肥するのが基本です。
- タイミング: 最初の実がなり始めたらスタートし、その後は10日〜2週間に1回のペースで行います。
- 量と場所: 1回の追肥量は、標準的なプランター(10〜12号鉢)に対して、大さじ1杯(約15g)程度が目安です。株元に直接施すのではなく、プランターの縁に沿って数カ所に分けて土に軽く混ぜ込むように施肥します。これにより、根が肥料に直接触れて傷むのを防ぎます。
プランター栽培での注意点
肥料過多のサインを見逃さない
限られた土の中では、肥料が効きすぎることがよくあります。以下のサインに注意してください。
- 葉が不自然に濃い緑色になり、硬くゴワゴワする。
- 葉の縁が黄色や茶色に変色し、枯れ込んでくる(肥料焼け)。
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- ツルや葉ばかりが茂り、花が咲かない、または咲いても実が大きくならない「つるボケ」状態。
もし肥料過多の症状が見られた場合は、追肥を一旦中止し、鉢底から水がたくさん流れ出るまでたっぷりと水やりをして、土中の過剰な肥料成分を洗い流す応急処置が有効です。
以下のリンクは、きゅうりの垂直栽培での追肥の様子を紹介するページです。プランターではありませんが、鶏糞を30cc施肥する様子など、量の目安として参考になります。
きゅうり(夏すずみキュウリ)の育て方:1回目の追肥時期です
プランター栽培は、環境をコントロールしやすいというメリットもあります。きゅうりの状態をよく観察しながら、鶏糞を上手に使いこなし、ベランダでの豊かな収穫を目指しましょう。
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