ホウレンソウ萎凋病の原因と対策・耐病性品種の選び方

ホウレンソウ萎凋病はフザリウム菌による土壌伝染性の病害で、連作圃場では壊滅的な被害をもたらすことも。症状・発生原因・防除方法・耐病性品種まで農家が知っておくべき対策を徹底解説。あなたの圃場は大丈夫ですか?

ホウレンソウ萎凋病の原因と対策・耐病性品種の選び方

連作2年目以降の圃場では、ほぼ全株が発病枯死し栽培放棄に追い込まれた事例もあります。


この記事でわかること
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原因菌と発生メカニズム

フザリウム菌が土壌中に潜み、連作や水分変動で爆発的に増殖するしくみを解説します。

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症状の見分け方と診断ポイント

下葉の黄化から根の褐変まで、圃場で即使える症状チェックの方法を紹介します。

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防除・品種選びの実践ポイント

土壌消毒・pH管理・耐病性品種の活用など、被害を最小化する具体的な手順を紹介します。

ホウレンソウ萎凋病の原因菌フザリウムとは何か


石灰をまいてpHを上げれば病気は出ない、と思い込んでいませんか?実はpH矯正だけでは萎凋病は防げません。


ホウレンソウ萎凋病の原因は、糸状菌(カビの一種)である Fusarium oxysporum f. sp. spinaciae(フザリウム・オキシスポラム・分化型・スピナシアエ)です。


このフザリウム菌はホウレンソウ専用の分化型で、厚壁胞子という硬い殻を持った胞子を形成します。厚壁胞子は土壌中で10年以上生存できるとされており、一度圃場に定着すると根絶がきわめて困難です。つまり「発生してからなんとかする」では遅いということです。


菌は根から侵入し、道管(維管束)内で増殖して水分・養分の移動を阻害します。植物が枯れるのは「菌に食われるから」ではなく、水分の通り道を塞がれるからです。


  • 宿主範囲はホウレンソウに特化しており、他の野菜への感染はほぼ起こらない
  • ただしアカザ・シロザなどの雑草が保菌している場合があるため、除草管理が不可欠
  • 種子伝染の可能性もあり、自家採種した種子の使い回しにはリスクが伴う

感染源は土壌が主体です。機械・長靴に付着した土から他の圃場へ菌が持ち込まれる「持ち込み感染」も現場では報告されています。


参考:フザリウム菌の特性と種類についての詳細情報(武蔵種苗 病害データベース)
http://www.musaseed.co.jp/disease/フザリウム属菌/

ホウレンソウ萎凋病の症状と圃場での診断方法

病気は見えないところから始まります。


地上部の症状が出る前に、根の褐変がすでに進行しているケースが多く、「葉が少し黄色くなってきた」と気づいた時点では根はかなりダメージを受けています。早期発見こそが被害を最小化する唯一の手段です。


発生時期は本葉展開期の幼苗期ころから収穫間近まで続きます。


  • 🌿 幼苗期(本葉4枚未満)子葉がしおれ、そのまま枯死する。立枯れ状態になりやすい
  • 🍂 生育中期(本葉4〜6枚ころ):下葉から黄化・萎凋が始まり、徐々に上位葉へ進展する
  • 🔴 根の症状:主根・側根の先端部または側根の基部から黒褐変。道管部(断面を切ると茶色い筋が見える)が褐変している
  • ⚠️ 収穫期近くの症状:株全体が生育不良となり、商品にならないまま枯死に至る

圃場診断のポイントは「根を掘って断面を確認する」ことです。地上部だけ見ていると萎凋病と他の病害(株腐病など)を混同しやすいため注意が必要です。


株腐病との違いも覚えておくと診断精度が上がります。


病名 主な症状の違い
萎凋病 下葉から黄化→根全体の黒褐変→道管褐変
株腐病 主根の地際部がくびれて褐変・根腐れが主体

参考:ホウレンソウ萎凋病・株腐病の症状と診断(島根県農林技術センター)
https://www.pref.shimane.lg.jp/industry/norin/gijutsu/nougyo_tech/byougaityuu/byougaityuu-index/hourennsou/ho110.html

ホウレンソウ萎凋病が発生しやすい圃場の条件

「水はけのいい圃場は安全」は思い込みです。


発病を助長する条件は複数あります。中でも現場で見落とされがちなのが「土壌水分の乾湿の繰り返し」です。水はけが悪い圃場だけでなく、かん水管理が不安定な圃場でも発病リスクは高まります。


以下の条件が重なるほど発病リスクが上がります。


  • ⚠️ 連作年数:連作2年目以降から発生リスクが急増。多発圃場ではほぼ全株が枯死した事例もある(徳島県農業試験場の調査)
  • 🌡️ 高温期の栽培:夏どり(高温期)のホウレンソウは特に発病しやすく、被害が大きくなる傾向がある
  • 💧 土壌水分の変動:乾燥→過湿→乾燥を繰り返すと菌の活性が高まる
  • 🌍 土壌タイプ:黄褐色軽埴土、水田跡地より畑地土壌で発病が助長されやすい
  • 🌾 残渣の鋤き込み:収穫後の残根をほ場内に放置すると菌の密度が高まる

連作は最大のリスク要因です。


参考:夏どりホウレンソウの萎凋病発生実態と薬剤防除(徳島県農業試験場)
https://www.pref.tokushima.lg.jp/file/attachment/432396.pdf

ホウレンソウ萎凋病の防除と土壌消毒の実践手順

発病してから農薬を散布しても、道管を詰まらせた菌は除去できません。


萎凋病の防除は「発病前の予防」が原則です。発病後の治療的な防除効果は極めて限定的であることを前提に、以下の手順を圃場管理に組み込むことが重要です。


① 残渣の適切な処理
収穫後の残根はほ場外に持ち出して処分します。残渣を鋤き込むと菌の密度が土壌内で上がるため、分解を期待した鋤き込みは逆効果になります。


絶対に畑に残さないことが原則です。


② 土壌pHの矯正
石灰を施用して土壌pHを中性(pH6.5〜7.0)近くに矯正することで発病を抑制できます。菌は酸性土壌で活性が高まる傾向があるためです。ただしpH矯正だけでは完全な防除にはなりません。


③ 土壌消毒
連作圃場や過去に発生歴のある圃場では、播種前の土壌消毒が有効です。クロルピクリン剤やダゾメット粉粒剤(バスアミド微粒剤)などの土壌くん蒸剤が使用されています。消毒後は水封処理を行い、ガスが十分に抜けてから播種します。


④ 発病株の早期除去
発病株を発見したら、根ごと抜き取ってほ場外へ持ち出して処分します。土中に放置すると周囲への感染源となるため、速やかな対応が大切です。


⑤ 農機具・長靴の洗浄
他の圃場から菌を持ち込まないよう、圃場間移動時には農機具や長靴に付着した土をよく落とします。これは手間に見えますが、菌の拡散防止に直結する重要な作業です。


参考:ホウレンソウ萎凋病の具体的な防除対策(山口県農業技術センター)
https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/uploaded/attachment/61956.pdf

ホウレンソウ萎凋病に強い耐病性品種の選び方と活用法

耐病性品種を植えれば防除は不要」は危険な誤解です。


耐病性品種はあくまで「発病リスクを下げる」ものであり、「ゼロにする」ものではありません。土壌の菌密度が非常に高い圃場では、耐病性品種でも発病するケースがあります。耐病性品種+土壌管理の組み合わせが基本です。


現在、国内の種苗メーカー各社から萎凋病耐性(またはレース対応)をうたったホウレンソウ品種が複数リリースされています。品種選定の際に確認すべきポイントは以下の通りです。


  • 🧬 対応レースの確認:フザリウム菌にはレース0・レース1など複数の系統があり、品種によって耐性を持つレースが異なる。圃場に存在するレースを把握した上で品種を選ぶことが理想的
  • 📋 適作期との適合:耐病性が高くても、作型(夏どり・冬どり・ハウス栽培など)に適さない品種では収量・品質が落ちる。耐病性と作型の両面で選ぶ
  • 🏷️ 公的試験結果の参照:都道府県農業試験場が発行する品種比較試験の結果を参考にすると、地域に合った品種を選びやすい

タキイ種苗などの主要種苗メーカーは品種ごとの病害抵抗性情報をウェブ上で公開しています。購入前に品種データベースで萎凋病への抵抗性を確認する習慣をつけると、品種選びのミスを大幅に減らせます。


参考:ホウレンソウの病害虫・萎凋病に関する品種情報(タキイ種苗 病害虫データベース)
https://www.takii.co.jp/tsk/bugs/asp/disease/ichou/




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