閉鎖型植物工場イチゴは高コストで赤字リスクが4割

閉鎖型植物工場によるイチゴ栽培は、季節を問わない周年生産が可能で注目されていますが、初期投資や電気代が大きな課題となり、国内工場の4割が赤字状態です。栽培技術や収益性、成功事例を知ることで参入リスクを減らせますが、あなたは本当に黒字化できますか?

閉鎖型植物工場イチゴ栽培の現状と課題

閉鎖型植物工場でのイチゴ生産は設備費が1億円超えでも赤字率4割です。


この記事の3つのポイント
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高額な初期投資とランニングコスト

閉鎖型植物工場は小規模でも数千万円、大規模なら十数億円の初期投資が必要で、LED照明とエアコンの電気代が人工光型施設全体の27%を占める高コスト構造です

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周年栽培と無農薬生産のメリット

完全閉鎖環境により12ヶ月連続収穫が可能で、害虫・病原菌の侵入を防ぎ完全無農薬栽培を実現、温度・湿度・CO2・光をAIとセンサーで24時間自動制御できます

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黒字化困難だが海外展開に可能性

国内ハウス栽培イチゴより生産コストが高く黒字化事例はありませんが、米国Oishii Farmが285億円調達し20倍規模の工場を稼働させるなど海外市場で注目されています


閉鎖型植物工場イチゴの初期投資と電気代負担



閉鎖型植物工場によるイチゴ栽培では、初期投資の規模が農業参入の最大のハードルになります。小規模施設でも数千万円、本格的な商業規模であれば十数億円の資金が必要です。これはビニールハウスを使った従来のイチゴ栽培と比較すると、数倍から十数倍のコストがかかる計算になります。


建物そのものに加えて、LED照明システム、空調設備、環境制御装置、多段式栽培棚、養液供給システムなど、多岐にわたる設備投資が求められるためです。既存の空き工場や廃校を活用すれば建物費用は抑えられますが、内部設備の導入コストは避けられません。


電気代の高さも深刻です。


人工光型植物工場では、ランニングコストのうち電気代だけで27%を占めるというデータがあります。これはLED照明による光合成と、エアコンによる温度管理の両方が24時間稼働し続けるためです。イチゴは促成栽培で6ヶ月程度の収穫期間ですが、植物工場では12ヶ月連続で栽培するため、年間を通じて電気を消費し続けます。


ハウス栽培では太陽光という無料エネルギーを活用できますが、植物工場ではすべての光源を人工的に供給しなければなりません。LED技術の進歩で消費電力は減少傾向にあるものの、それでもハウス栽培の数十分の一という水準にまで下げることは現時点では困難です。


初期投資を抑える工夫として、補助金の活用が考えられます。農林水産省の次世代施設園芸関連の補助金や、地方自治体独自の支援制度を組み合わせれば、設備投資の30〜70%程度を助成でカバーできるケースもあります。ただし補助金は採択条件が厳しく、事業計画の精度が求められます。


農林水産省の大規模施設園芸・植物工場実態調査では、施設タイプ別のコスト構造が詳しく解説されています


閉鎖型植物工場イチゴの周年栽培と収穫量

閉鎖型植物工場の最大の強みは、季節や天候に左右されない周年栽培が可能な点です。従来のハウス栽培では、促成栽培で11月下旬から5月下旬までの約6ヶ月間が収穫期間となります。夏から秋にかけては北海道や長野県などの冷涼地で栽培される夏秋イチゴが市場に出回りますが、供給量は限定的で価格も冬春イチゴの1.5倍程度と高価です。


植物工場では温度・湿度・CO2濃度・光の強さと照射時間を完全にコントロールできるため、12ヶ月間連続でイチゴを収穫できます。ケーキ店や菓子メーカーなど業務用需要にとって、年間を通じて安定供給できる点は大きな魅力です。


つまり供給の空白期間を埋められるということですね。


ただし収穫量には注意が必要です。多段式栽培により面積あたりの栽培株数は増やせますが、1株1ヶ月あたりの収穫量はハウス栽培と比べて少なくなる傾向があります。ハウス栽培では10aあたり約6,500株を植え、反収3,000kg程度が平均ですが、植物工場では栽培環境の最適化が難しく、期待したほどの収量が得られないケースも多いのです。


栽培期間が長いことも課題です。イチゴは種まきまたは育苗から収穫終了まで12〜24ヶ月かかるため、その間に病害虫が発生するリスクが高まります。レタスなどの葉物野菜は播種から収穫まで1ヶ月程度なので病害虫管理が比較的容易ですが、イチゴは長期戦になります。


収量を上げるためには、品種選定も重要です。一季成り性品種を選び、温度管理で花芽分化をコントロールする方法が主流です。また「よつぼし」や「ベリーポップはるひ」などの種子繁殖型品種は、種から育てられるため病害虫の持ち込みリスクを減らせます。


栽培技術の習得には時間がかかります。環境制御のノウハウ、養液管理の知識、受粉方法の選択など、多くの技術的課題をクリアしなければ安定生産は実現できません。


閉鎖型植物工場イチゴの栽培技術とLED管理

閉鎖型植物工場でのイチゴ栽培では、LED照明による光管理が生育の鍵を握ります。太陽光が一切入らない環境では、光合成に必要な光をすべて人工的に供給しなければなりません。LED照明は以前は赤色と青色の組み合わせが主流でしたが、現在は白色や黄色の光を使用する施設が増えています。


LED技術の進化により、発光効率が向上し消費電力あたりの光量が増えています。それでも光源からの発熱は無視できず、特に夏季には冷房負荷が増大します。多段式栽培では各段にLED照明を設置するため、照明機器の台数も膨大になり、初期投資とメンテナンスコストの両方が増加します。


温度管理はエアコンで行います。


イチゴの生育適温は15〜30℃程度で、昼夜で温度差をつける変温管理も可能です。ハウス栽培では冬季に灯油や重油を燃料とした加温機を使いますが、植物工場ではエアコンによる冷暖房で年間を通じて温度を維持します。断熱性の高い建物を選ぶことで空調費を抑える工夫も重要です。


CO2供給も欠かせません。閉鎖空間では植物が光合成でCO2を消費するため、補給しないと濃度が下がり生育が停滞します。ハウス栽培では灯油燃焼時に発生するCO2を利用できますが、植物工場では炭酸ガスボンベなどから供給する必要があります。


栽培方法は水耕栽培または養液栽培の固形培地耕が一般的です。水耕栽培は土を使わず、液体肥料だけでイチゴを育てる方法で、養液管理がしやすく病害リスクも低減できます。固形培地耕ではロックウールやヤシガラに苗を植え、液肥を供給します。


受粉はミツバチを導入する方法が主流ですが、閉鎖空間ではハチが飛びにくい場合もあり、手作業や機械による受粉を併用する施設もあります。受粉作業の効率化は労働時間の削減に直結するため、自動化技術の開発が進められています。


環境制御システムの精度が収量と品質を左右するため、センサー技術やAIによるデータ解析を活用した高度な管理が求められます。


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閉鎖型植物工場イチゴの無農薬栽培と病害虫対策

閉鎖型植物工場の大きなメリットの一つが、完全無農薬栽培を実現できる点です。外部環境から完全に遮断された空間では、害虫や病原菌の侵入を物理的に防げるため、農薬を使わずに栽培できる可能性があります。消費者の健康意識が高まる中、無農薬イチゴは高付加価値商品として差別化できます。


ただし無農薬栽培には厳重な予防管理が必要です。


閉鎖空間だから病害虫が発生しないというのは誤解で、実際には一度侵入を許すと密閉環境のため急速に蔓延するリスクがあります。イチゴは播種または育苗から収穫終了まで12〜24ヶ月と栽培期間が長いため、レタスのような短期作物と比べて病害虫発生のリスクが格段に高まります。


予防策の基本は、苗の持ち込み時の徹底した検疫です。種子繁殖型品種の「よつぼし」や「ベリーポップはるひ」などを使えば、種から栽培室内で育苗できるため外部からの病害虫持ち込みを防げます。従来の栄養繁殖型品種では、親株や子苗の段階で病害虫が潜んでいる可能性があるため、導入前の消毒や隔離期間の設定が欠かせません。


施設への出入り管理も重要です。作業者が出入りする際は、専用の作業着への着替え、手洗い、エアシャワーなどで異物の持ち込みを防ぎます。


病気のリスクとしては、炭疽病うどんこ病灰色かび病などがあります。これらは湿度管理や空気循環の不備で発生しやすくなります。環境制御システムで湿度を適切に保ち、送風ファンで空気を循環させることで予防できます。


害虫ではハダニアザミウマコナジラミなどが主な脅威です。一度発生すると駆除が困難なため、早期発見と初期対応が重要です。黄色粘着板などのトラップを設置し、定期的なモニタリングで発生を察知する体制を整えます。


無農薬栽培を実現できれば、有機JAS認証の取得も視野に入ります。認証を取得すれば販売価格を高く設定でき、高級スーパーや百貨店への販路拡大も期待できます。ただし認証取得には厳格な基準クリアと審査費用が必要です。


閉鎖型植物工場イチゴの成功事例と企業動向

閉鎖型植物工場によるイチゴ生産で、実の販売のみで黒字化を達成した事例は世界的に見ても存在しないのが現状です。しかし、だからこそ多くの企業が「世界初の黒字化」を目指して参入を続けており、ベンチャーキャピタルからの資金調達が活発に行われています。


国内の成功事例として注目すべきは、NTT西日本グループです。ICTを活用した閉鎖型植物工場「いちごプラント」でブランドイチゴ「N.BERRY」を2021年から販売しており、温度・光・水などを自動制御する技術を確立しています。通信事業で培ったIoT技術を農業に応用した事例です。


日清紡ホールディングスは国内で初めて完全閉鎖型植物工場での量産栽培に成功し、「あぽろべりー」というブランドで展開しています。気温や天候に左右されない屋内栽培により、安定供給を実現しています。


建設会社が植物工場システムを建物付きで販売するビジネスモデルも増えています。奈良市の中村建設は、閉鎖型植物工場でのイチゴ生産に成功し、施工から生産指導までをパッケージ化して販売しています。既存事業の建設技術と新規事業の農業を組み合わせた戦略です。


海外では米国のOishii Farm(オイシイファーム)が最も注目されています。


2016年創業の日本人起業家による企業で、完全閉鎖型植物工場で日本品種のイチゴを栽培し、ニューヨークの高級スーパーやミシュラン三つ星レストランに供給しています。2024年には約200億円を投じた新工場「メガファーム」を稼働させ、従来の20倍の生産能力を実現しました。累計で285億円もの資金調達に成功しており、植物工場のテスラを目指すと表明しています。


Oishii Farmの成功要因は、米国市場での日本品種イチゴの希少性を活かした高価格戦略と、自動化・ロボット化による人件費削減にあります。2025年には自動収穫ロボット企業を買収し、さらなる効率化を図っています。


障害者雇用と組み合わせたビジネスモデルも存在します。障害者雇用促進法に基づく助成金を活用し、イチゴの実の販売収益だけでなく、雇用創出による補助金収入も得るスキームです。


空き工場や廃校をイチゴ植物工場に転換する事例も増えており、遊休資産の有効活用として自治体からの支援を受けやすいメリットがあります。


黒字化は困難でも、システム販売や技術提供で収益を得る企業は存在します。設備メーカーにとっては、植物工場の普及そのものがビジネスチャンスになっているということですね。


株式会社イチゴテックのサイトでは、日本と海外のイチゴ閉鎖型植物工場の事例17選が詳しく紹介されています




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