天敵昆虫を1度でも農薬で殺してしまうと、その後のハダニ再爆発リスクが通常の3倍以上になります。
ハダニ類の天敵として農業現場で広く使われているのは、主にカブリダニ科に属する捕食性ダニです。代表的な種類には、チリカブリダニ(学名:Phytoseiulus persimilis)、ミヤコカブリダニ(学名:Neoseiulus californicus)、スパイカルEX(学名:Neoseiulus californicusの商業製剤)などがあります。
それぞれ活動できる温湿度の範囲が異なります。チリカブリダニは20〜30℃・湿度60%以上の環境を好み、施設栽培のイチゴやトマトに適しています。一方、ミヤコカブリダニは乾燥に比較的強く、25〜35℃の高温でも活動でき、夏場のキュウリやナスにも対応できます。
つまり作物と季節によって使う種類が変わります。
また、昆虫類ではケシハネカクシやタネコバチの仲間もハダニを捕食しますが、商業的に利用されているのは主にカブリダニ類です。捕食性ダニは1日あたり約5〜10頭のハダニを食べます。はがきの横幅(約14.8cm)程度の面積にいるハダニを、1週間で概ね制圧できる計算になります。
使い分けの目安をまとめると次のとおりです。
これが基本です。導入前に自分の栽培環境の温湿度データを1週間分記録しておくだけで、種類選びの精度が大きく上がります。
天敵導入で失敗する最大の原因は「放飼が遅すぎること」です。ハダニ密度が葉1枚あたり10頭を超えてから天敵を入れても、増殖スピードが追いつかず防除効果が出ません。
放飼の目安は、ハダニが葉1枚あたり1〜3頭の段階です。早期に感じるかもしれませんが、この時期に入れることで天敵がハダニと同じペースで増え、密度を一定水準以下に抑え込めます。
目安が早期の段階で対処することが原則です。
放飼量については、以下を参考にしてください。
商業製剤はボトル1本あたり2,000〜10,000頭入りの製品が多く、価格は1本3,000〜8,000円前後です。1回の導入コストは面積や密度にもよりますが、施設500㎡規模で初回に1〜3万円程度を想定しておくとよいでしょう。
放飼するときは、朝か夕方の涼しい時間帯に葉の上に直接振りかけます。日中の高温時に放飼すると、移動前に熱死するリスクがあります。
これは使えそうです。
製品の保管温度(通常5〜10℃)も守ることが必須です。
農薬を散布した直後に天敵を放飼しても意味がありません。多くの殺虫・殺ダニ剤は天敵にも致死的で、特に有機リン系・ピレスロイド系・カーバメート系農薬は天敵ダニの死亡率が90%を超えます。
厳しいところですね。
農林水産省が公開している「農薬の天敵影響評価一覧」では、農薬ごとに天敵への影響が「A(ほぼ無害)〜E(ほぼ全滅)」で評価されています。天敵を導入するなら、この一覧でEランクの農薬は天敵放飼の2週間前から使用を中止する必要があります。
天敵に比較的安全とされる農薬の例は以下のとおりです。
農薬の安全性を確認するための具体的なアクション手順をまとめます。
天敵を活用する農家が農薬選択を誤ると、再発生したハダニが農薬抵抗性を持ったままになります。抵抗性ハダニが出現すると、効く農薬が年々減り、防除コストが2〜3倍に膨らむ事例も報告されています。
農薬選択には期限があります。
農林水産省 農薬に関する情報(農薬登録情報・天敵への影響評価関連)
天敵製剤を買って放飼するだけでは、定着率が30%未満にとどまることがあります。
意外ですね。
天敵が自然に居着き、増える「環境インフラ」を整えることが、長期的なコスト削減につながります。
まず重要なのは「バンカープランツ(飼料植物)」の設置です。バンカープランツとは、ハダニとは別の無害な小型節足動物(例:ニセカベアカダニ)を事前に発生させておく植物のことです。天敵は餌がないと農場を離れてしまうため、主作物のハダニが少ない時期でも天敵が食べられる餌を確保しておきます。
具体的には、イネ科のソルゴー(高粱)をハウス内の端に1〜2列植え、そこにニセカベアカダニを接種しておく方法が普及しています。主作物のハダニが増え始めると、天敵が自動的に移動して防除します。結論はバンカープランツで定着率が上がります。
次に、ハウス内湿度の管理も見逃せません。チリカブリダニは湿度50%を下回ると産卵数が約40%減少するというデータがあります。点滴かん水や細霧冷房設備を活用して、湿度60〜80%を維持する工夫が必要です。
また、過剰な施肥もハダニ密度を高める要因です。窒素過多になった葉はアミノ酸濃度が上がり、ハダニの増殖速度が通常の1.5倍になることが確認されています。天敵を入れる前に土壌分析と施肥設計を見直すだけで、防除の難易度がかなり下がります。
これらを組み合わせれば、天敵の定着率が大幅に改善します。
農研機構 技術普及パンフレット(天敵利用・バンカープランツ関連)
天敵製剤は「高い」というイメージを持つ農業従事者が多いです。しかし農薬防除との長期比較では、3年以上のスパンで見ると天敵導入のほうがコストを下回るケースが少なくありません。
農薬防除のコスト例(施設500㎡・年間)を見てみましょう。
一方、天敵導入のコスト例(同条件)は次のとおりです。
初年度は農薬防除より高くなることもありますが、2年目以降は天敵が自然定着するため追加コストが大幅に減ります。農薬抵抗性ハダニが発生している農場では特に効果が大きく、防除費用が5割以上削減できた事例も国内で報告されています。
これは使えそうです。導入を検討するなら、まず地域の農業改良普及センターや農協の営農指導員に相談するのが最短ルートです。補助制度を活用できる都道府県もあり、初期費用を3〜5割軽減できるケースがあります。
大阪府農業技術センター 病害虫防除情報(天敵活用事例・農薬登録情報)
農研機構 天敵利用による害虫防除コスト削減の研究成果(ハダニ類関連)

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