土壌診断は、数値を測って終わる作業ではありません。畑の状態を聞き取り、観察し、必要な分析を行い、肥料や管理を変えるところまでつなげます。まず目的を決め、代表的な土と不調部分の土を混同しないことが重要です。
診断票は、作物別の基準と測定条件→pH・EC→成分別の過不足→根や排水→施肥変更の順で読みます。たとえば本文のトマト事例は、苦土が不足する一方でカリは過剰です。「生育が悪いから肥料を一式増やす」では、足りない成分と多すぎる成分を同時に足してしまいます。


化学性はpHや養分、物理性は土の硬さや排水、根の伸びる環境、生物性は土の生物活動などを見る分類です。一回申し込めば、すべて分析されるわけではありません。
肥料の過不足を知りたいなら化学分析が中心になります。雨後に水が残るなら、排水や硬い層の観察も必要です。病原菌を疑う場合は、その対象に合った別の検査が必要になることがあります。
JAならけんの説明でも、通常の肥料診断と、農薬、ダイオキシン、カドミウムなどの検査は区別されています。申し込み前に、「肥料を減らしたい」「一部だけ育たない」など目的を伝え、分析項目を確認してください。
参照:診断と検査範囲の確認
平均的な施肥を決める土と、不調の原因を比べる土では、採り方が違います。均一な区画の代表試料を作る場合は混合しますが、良好部分と不良部分を比較するなら、別々に採って最後まで分けます。
JA堺の2026年10月8日の案内は、五地点で表層1~2cmを除き、その下15cmの土を採り、混合して400gを用意する例です。採土深さや必要量は依頼先の指示を優先します。
同じ畑でも、水がたまる場所だけ生育不良なら、健全部と別袋にします。全部を一袋へ混ぜると、不良部分の特徴が薄まり、比較できません。採土位置も記録しておくと、対策後に同じ区画で確かめやすくなります。
参照:JA堺の採土手順
pHは酸性・アルカリ性の程度、ECは土の溶液中にある塩類の状態を見る指標です。どちらも単独で肥料の必要量を決める数値ではありません。ECが高ければ、すべての養分が不足しているとは考えられませんが、必要成分が全部足りているとも限りません。
JAあつぎの半促成トマト、腐植質黒ボク土の診断例では、pHは5.3で基準6~6.5より低く、ECは0.62mS/cmで上限値0.35mS/cmより高い結果です。「酸性だから一式の肥料を追加する」という判断では、塩類の多さを見落とします。
比較には測定方法と単位をそろえます。道総研の資料では、pHの土と液の比は1対2.5、ECは1対5です。土へ直接挿すセンサーの値を、この条件で分析した診断票の値と同じものとして比較しないでください。診断票のEC単位も必ず確認します。
参照:測定条件の確認
養分は一括して「多い・少ない」とせず、成分ごとに読みます。JAあつぎの同じ診断例では、苦土不足、カリ過剰、リン酸は範囲内という状態が同時に成立しています。
| 項目 | 測定値 | その事例の基準 |
|---|---|---|
| 苦土・MgO | 13 | 60~81 |
| カリ・K2O | 98 | 28~57 |
| リン酸・P2O5 | 59 | 40~80 |
表の単位はmg/土100gです。この作物と土の事例であり、全作物共通の適正値ではありません。苦土を補いたい場合でも、カリ入りの複合肥料を同じ割合で増やせば、過剰なカリも追加します。不足成分を分けて補えるか検討します。
石灰、苦土、カリの塩基バランスも、比率だけでは判断しません。比が近くても、全部が少ない場合や全部が多い場合があります。各成分の絶対量とpHを確認して、資材を選ぶ必要があります。
参照:トマトの診断票と改善例
引き算の施肥は、すべての肥料を半量やゼロにする方法ではありません。蓄積している成分を減らし、不足成分は必要に応じて別に補う考え方です。
先の事例なら、リン酸とカリを含む肥料を従来どおり重ねる必要があるか見直し、不足する苦土は別に検討します。ただし、基準内のリン酸を今後ずっと無施用にできるとまでは、この一回の結果で決められません。作物が使う量と、次回の診断結果も確認します。
BB肥料の成分別処方も、こうした過不足に合わせて組み立てるものです。購入価格だけでなく、必要成分を何g供給するか、堆肥から入る分があるかを整理してください。削減率を先に目標にせず、処方変更後の生育と再診断で適否を確かめます。
参照:診断に基づく成分別処方

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養分が適正でも、根が伸びられなければ十分に利用できません。スコップで土を掘り、根の深さと向き、途中の硬い層、湿り方の違いを観察します。良好部分と不良部分を比べると、違いを捉えやすくなります。
根が同じ深さで横へ曲がるなら、その下に硬い層がないか確認します。雨後も一部だけ湿り続けるなら、肥料追加より排水経路や締まりを見直す手掛かりになります。ただし、観察だけで原因を確定せず、必要なら追加測定を行います。
スコップで、土の固体・水・空気の割合を示す三相分布まで定量できるわけではありません。農林水産省の資料が示すように、聞き取り、観察、分析を処方へつなげ、根や排水の問題と養分不足を分けて直すことが、診断結果を生かす要点です。
参照:観察から処方につなげる土壌診断
あわせて読む:電気伝導度 / 圃場 / 交換性カリウム / 施肥設計 / 保水性 / 耕盤層 / 土壌微生物 / 菌根菌 / 収穫 / 耕起 / 移植ゴテ / キュウリ / 窒素 / 北海道 / 農研機構 / マグネシウム欠乏症 / 精密農業 / 踏圧 / 根腐れ / 固相 / 液相 / 気相率 / もみ殻 / 砕土 / 計量器