窒素を減らしても、排水を整えなければ褐色腐敗病は防げません。
スイカ褐色腐敗病は、Phytophthora属菌(糸状菌)が引き起こす病害で、葉・茎・果実のいずれにも発生します。 苗では地際部の茎が細くくびれて軟化し、そのまま倒伏するケースが多く見られます。 葉では暗緑色水浸状の病斑が現れ、まるで熱湯をかけたように軟腐します。takii+1
果実への症状が最も深刻です。感染初期は円形で暗緑色・水浸状の病斑が小さく現れますが、その後急速に拡大し、表面に汚白色ビロード状の菌そう(カビ)を密生させながら軟化腐敗へと進みます。 発病果実は感染からわずか2〜3日で軟化が始まり、約1週間で全体が腐敗します。 これはA4用紙1枚分ほどの病斑が1週間以内にスイカ全体を覆うほどの進行速度です。boujo+1
茎では紡錘形の水浸状病斑が生じ、病変部より上の部分が萎凋します。 多湿条件では白色のカビが発生し、乾燥時には暗褐色の乾枯病斑となるため、天気によって見た目が変わります。 「カビが見えないから大丈夫」という判断は禁物です。agrin+1
発病果実の見分けのポイントとして、表面の病斑が「へこんでいる」かどうかが重要です。 へこみが確認できた時点では、すでに内部腐敗が進行していることがほとんど。
これが遅れた対処につながる要因の一つです。
参考)すいか 褐色腐敗病 : こうち農業ネット
病原菌はPhytophthora属菌で、被害残渣とともに土壌中で越年します。 春以降の気温上昇とともに活性化し、降雨や灌水による水媒伝染で圃場全体へ広がります。 つまり、この病気の「感染ルート」は空気ではなく、主に「水と土」です。riss.nobody+1
発病しやすい条件は以下の通りです。boujo+1
特に注目すべき点は「酸性土壌で発病しやすい」という特性です。 pH調整をせずに連作を続けている圃場では、菌密度が年々蓄積されていきます。排水対策だけに注力して土壌pHを見落としているケースが現場では少なくありません。
参考)スイカ褐色腐敗病
また、窒素過多は茎葉を過繁茂にさせ、株内の通気性を下げます。 過繁茂になると株内が蒸れやすくなり、高湿条件が圃場内部で慢性的に作られてしまいます。窒素管理と整枝作業はセットで考えることが基本です。
スイカだけでなく、ナス・トマト・キュウリ・カボチャなど他のウリ科・ナス科作物にも同一の菌が寄生します。 ローテーション計画を立てる際には、これらの作物も「連作」としてカウントする必要があります。
耕種的防除とは、農薬を使わずに栽培環境を整えることで発病を抑える方法です。
これが基本です。
農薬は「補助」であり、耕種的防除をおろそかにした圃場では薬剤効果も十分に発揮されません。
最優先で取り組むべき対策は排水改善です。 畝を高くする(高畝)ことで、根域の過湿を防ぎ、水はねによる土壌菌の果実接触を減らすことができます。目安として、畝高は通常の平畝(5cm程度)より15〜20cm高く設定すると効果的です。
マルチは単に雑草対策や地温確保のためだけでなく、土壌菌の跳ね上がり防止という重要な役割を担っています。 黒マルチを張っている圃場と張っていない圃場では、褐色腐敗病の発生率に明確な差が出ることが現場で確認されています。
ハウス栽培での多発圃場では、作付け前の太陽熱消毒が土壌中の菌密度を効果的に下げます。 透明ポリマルチで覆土し、夏の高温期に3〜4週間密閉するのが一般的な方法です。
費用はほぼかかりません。
これは使えそうです。
参考)https://www.takii.co.jp/tsk/bugs/asu/disease/kassyokufuhai/
薬剤防除は予防散布が原則です。 発病してから散布しても効果は限定的で、すでに進行中の腐敗を止めることはできません。天候や発生リスクを見越して、発病前から散布を始めることが重要です。
登録農薬として実績があるのは以下の製品です。agro+2
| 農薬名 | 希釈倍数 | 使用液量(10a) | 使用回数 | 使用時期 |
|---|---|---|---|---|
| ピシロックフロアブル | 1,000倍 | 100〜300L | 3回以内 | 収穫前日まで |
| ホライズンドライフロアブル | — | 予防散布 |
ピシロックフロアブルの有効成分はピカルブトラゾクス(テトラゾリルオキシム系)で、べと病・疫病・褐色腐敗病に対して高い予防効果を持ちます。 普通物(毒劇物非該当)に分類されており、比較的扱いやすい農薬です。
参考)ピシロックフロアブルの適用表|農薬の検索|農薬インデックス
農薬を選ぶ際は、ラベルの登録作物・登録病害虫を必ず確認してください。農薬取締法では、登録された作物・病害以外への使用は違法となります。「昨年使った農薬だから大丈夫」という判断は法的リスクにつながります。
散布のタイミングは「梅雨入り前」が目安です。 関東以西では5月下旬〜6月が最初の散布適期となります。発病適温(25℃前後・多湿)の条件が重なる前に予防を完了させておくことが理想です。
参考)http://riss.nobody.jp/disease/narc/NF347.htm
農薬の使用回数制限(例:ピシロックフロアブルは3回以内)を守ることで、耐性菌の出現リスクを下げることにもつながります。 回数制限はルールというだけでなく、長期的な防除効果を維持するための重要な指針です。
参考)ピシロックフロアブル
参考:農林水産省 農薬登録情報(ピシロックフロアブル)
農薬登録情報提供システム(農林水産省)|ピシロックフロアブルの登録作物・使用方法の公式確認ができます
2006年7〜8月、山口県内の青果市場に出荷された施設栽培スイカで、果実腐敗の被害が実際に発生し問題となりました。 収穫・出荷後に発症するケースでは、圃場での対処が完全に手遅れとなります。
これは痛いですね。
参考)https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030830413.pdf
市場出荷後に腐敗が発覚した場合のリスクは、収量ロスにとどまりません。返品・廃棄コストの発生、取引先への信用失墜、場合によっては次年度の取引量減少という経営上の損害に発展します。 特に施設栽培で高単価を維持しているスイカ農家にとって、1ロットの出荷失敗は十数万円単位の損失になる可能性があります。
収穫前に病害を見逃さないためのチェックポイントを整理します。
市場出荷後のトラブルを避けるためには、「怪しいと感じたら出荷しない」という判断基準を自分の中に持つことが大切です。わずかな迷いのある果実は、出荷コストを回収できないどころか、翌年の取引条件悪化というより大きなデメリットを招きます。
圃場での早期発見と出荷前の目視確認を組み合わせることで、市場クレームのリスクを大幅に下げられます。発病初期の果実は「とりあえず出してみよう」ではなく、その場で圃場処分が原則です。
参考:農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)掲載論文
市場で発生したスイカの果実腐敗症の実態と防除(山口県)|出荷後発症の事例と現場対策データが記載されています
参考:農業害虫や病害の防除・農薬情報(boujo.net)
スイカ褐色腐敗病の防除・農薬情報|症状・発生生態・耕種的防除・登録農薬の一覧をまとめて確認できます
参考:タキイ種苗 病害虫・生理障害データベース
褐色腐敗病(タキイ種苗)|症状の診断ポイントと薬剤防除の推奨方法が記載されています