アブラムシさえ駆除すれば、あなたのレタスはモザイクウイルスから守れると思っていませんか。
レタスモザイクウイルス(LMV:Lettuce mosaic virus)に感染すると、葉に濃淡のモザイク模様が現れ、葉脈が透けて見える「葉脈透化」という特徴的な症状が出ます。 進行すると株全体の生育が著しく不良になり、結球しない・葉が萎縮するなどの被害に発展します。
参考)https://www.takii.co.jp/tsk/bugs/ale/disease/
見分けにくいのは初期段階です。
症状は以下のように段階的に進みます。
似た症状を示す病気として、キュウリモザイクウイルス(CMV)があります。 CMVとLMVは単独だけでなく複合感染することもあり、外部の病徴だけで病原ウイルスを正確に診断するのは難しい場合も多いです。 確実に区別したい場合は、農業普及センターや専門機関によるELISA法などの検査を活用することをおすすめします。takii.co+1
外見だけで断定するのは禁物です。
LMVの伝染経路は、農業従事者が思う以上に多岐にわたります。
主な経路は次の3つです。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6640324/
参考)モザイク病の症状・原因は? 効果的な防除方法を農家が解説!|…
参考)https://www.takii.co.jp/tsk/bugs/ale/disease/mozaiku/
特に種子伝染は見落とされがちです。
農林水産省の試験データでは、LMVの感染種子率は約0.1%という極めて低い数値ですが、問題はその後にあります。 1粒の感染種子から発芽した株が圃場内でアブラムシを通じた二次伝染を引き起こすため、たった1粒が数十株〜数百株への連鎖感染の引き金になり得ます。
参考)https://www.maff.go.jp/j/kanbo/tizai/brand/b_syokubut/attach/pdf/index-42.pdf
つまり「感染率0.1%だから安心」は間違いです。
種子の安全性を確保するには、ISF(国際種子連盟)のプロトコルに基づくLMV検査済みの認定種子を使うことが世界標準になっています。 日本でも種苗会社による検査体制が整備されており、「LMV抵抗性(LMV耐病性)」の表記がある品種カタログを選ぶことが最初のリスク管理になります。takadaseed+1
LMVの最大の媒介者はアブラムシです。しかも「非永続型伝染」といって、アブラムシが病株を数秒〜数分吸汁しただけでウイルスを取り込み、次の健全株にすぐ伝染させます。 殺虫剤を散布してアブラムシが死ぬ「前」に刺し口からウイルスを移してしまうので、殺虫剤だけに頼るのは危険です。
物理的防除が基本です。
有効な物理的バリアは以下の通りです。
| 対策 | 特徴 | 効果 |
|---|---|---|
| 🪞 銀色防虫ネット(0.6mm目合い) | アブラムシが光の反射を嫌う性質を利用 |
侵入抑止効果が高い |
| 🌾 障壁作物(陸稲・キビ) | 畝間に植えてアブラムシの侵入経路を遮断 | ウイルスを運ぶアブラムシが畑に入りにくくなる |
| 🕸️ 防虫トンネル | 定植直後から被覆し物理的に遮断 | 施設・露地ともに有効 |
ただし、0.6mm目合いの防虫ネットでもアブラムシを完全には阻止できないという農研機構のデータがあります。 飛んで侵入する有翅アブラムシはネットの隙間や開口部から入るため、ネットの設置・管理精度が防除効果を左右します。
参考)0.6mm目合いネットによるアブラナ科野菜害虫の侵入阻止効果…
設置は定植直後が絶対条件です。
窒素肥料の与えすぎもアブラムシの大量発生を招くため、施肥管理も防除の一環と考えてください。 「アブラムシが増えてから対処する」のではなく、「増やさない環境を作る」という土台の発想が重要です。
農薬でウイルスそのものを「殺す」ことはできません。
これは大原則です。
LMVに対して唯一、種子段階で取れる予防策が乾熱消毒です。愛知県の防除指針でも「乾熱による種子消毒」がLMVへの有効手段として明記されています。vegepalette.unirita.co+1
これは使えそうです。
乾熱消毒の基本的な手順は以下の通りです。
乾熱消毒に加えて、LMV抵抗性品種の導入が最も確実なロングタームの対策です。主要な種苗会社のカタログでは「LMV」と耐病性表記がある品種を確認できます。 例えばタキイ種苗ではレタスの各品種に「LMV耐病性」表記が設けられており、品種選択の際の重要な指標になっています。takii.co+1
耐病性品種一択が原則です。
ただし、耐病性品種でも「抵抗性打破株(レース変異)」が発生する可能性はゼロではありません。他の防除手段と組み合わせて使うことで、リスクをより確実に下げられます。
発病株を見つけたら、迷わず抜き取り焼却処分します。 「もう少し様子を見よう」という判断がアブラムシを通じた二次拡大につながるため、早期発見・即時除去が鉄則です。
参考)https://www.pref.miyagi.jp/documents/38680/5-2-20-0lettuce.pdf
痛いですが、躊躇は厳禁です。
発病後の作業で見落とされがちなのが「作業用具の汚染管理」です。病株を抜いたハサミや手袋は、次の株に触れる前に必ず消毒してください。 次亜塩素酸ナトリウム水溶液(200倍希釈程度)による刃物の消毒が有効で、作業ごとに行うことが望ましいです。
参考)トマトのモザイク病対策:原因、症状、効果的な防除・予防法 │…
以下の点は多くの農家が見落としやすい「圃場管理の盲点」です。
参考)https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/594415.pdf
「発病してから動く」農家と「発病させない圃場設計をする」農家では、長期的な収量に明確な差が出ます。
収穫残さゼロが合言葉です。
なお、LMVの診断に迷った場合は農業技術センターや都道府県の病害虫防除所への相談が確実です。ELISA法や遺伝子診断(RT-PCR)による病原特定ができるため、CMVとの複合感染なども含めた正確な診断が可能です。
参考:LMV種子検査手法の実用化について(農林水産省・委託事業報告書)
農林水産省 平成28年度輸出種苗病害検査手法実用化促進委託事業報告書(LMV種子検査)
参考:レタスのモザイク病・防除手順(愛知県農業普及課)
愛知県 レタス病害虫防除指針(モザイク病の乾熱消毒・発病株除去など)
参考:農研機構 防虫ネット目合いとアブラムシの侵入阻止限界
農研機構 0.6mm目合いネットによる害虫侵入阻止効果と限界