固相率が40%を超えた土壌では、根が酸素不足で1割以上収量が落ちることがあります。
土壌は「固相・液相・気相」の3つの相で構成される三相系物質です。 固相は土壌粒子(鉱物+有機物)、液相は土壌水分、気相は土壌空気のことを指します。この3つの容積割合が「土壌三相分布」であり、固相率はそのうちの固相が占める割合(%)を示します。
参考)https://www.daiki.co.jp/support/knowledge/knowledge01/
作物の生育には、固相・液相・気相のバランスが直結します。固相が根を支えてミネラルを供給し、液相が水分と養分を運び、気相が根に酸素を届ける役割を担います。 つまり、固相率の把握は「土を診断する第一歩」です。
普通の農耕土では固相率が約40%、液相率と気相率はそれぞれ約30%というバランスが標準的とされています。 降雨直後を除き、気相率は少なくとも20%以上が必要です。 固相率が高すぎると気相が押し出され、根が酸素不足になります。
参考)https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/nourin/noen/files/kaitei_gijyutumanyuaru02.pdf
固相率を自分で求める方法は、意外とシンプルです。 必要なのは100mLの金属製円筒缶(フライパンなどで代用可)、はかり、そして乾燥できる環境だけです。道具が揃えば、圃場でもすぐ測定を始められます。
参考)自分でできる簡易土壌診断 スコップ1杯分の穴からわかること|…
現場での手順(採取器100mL使用の場合)
計算式(100mL円筒の場合)aic.pref+1
真比重(d)の値は土性によって異なりますが、有機質土壌や腐植に富む土以外は便宜的に2.65前後を使用してかまいません。 黒ボク土(火山灰土)の場合は真比重が2.4〜2.5程度と低めになるため、注意が必要です。agri.mynavi+1
計算例(実際の数値で確認する)
参考)土壌三相分布を計ってみたんだけど… - 家庭菜園
気相率が42%というのは固相が少なすぎるケースです。 この状態は土がふかふかすぎて根の支持力が不足することを示します。
固相率が適正かどうかは、「45〜50%が理想」という基準で判断できます。 この範囲に収まっているとき、液相と気相がそれぞれ20〜30%を確保でき、根の張りと養分吸収が安定します。
参考)https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/pdf/ktuti6.pdf
固相率が高すぎる(50%超え)場合の問題点は以下の通りです。
逆に固相率が低すぎる(30%以下)場合も問題です。土が過度にふかふかな状態では根の固定力が弱まり、作物が倒伏しやすくなります。また、有機物分解が速すぎて養分が流れやすくなる傾向があります。固相率が低すぎるのも問題です。
一般的に作物が正常に生育するには気相率が少なくとも20%以上必要とされており、 これは固相率が60%を超えると危険水域に入ることを意味します。固相率60%超えには要注意です。
固相率が高い圃場では、粗大有機物の施用が最も基本的な改善策です。 バーク堆肥や稲わら堆肥を定期的に投入することで、孔隙量(気相・液相の空間)を増やし、固相率を適正範囲に近づけることができます。
バーク堆肥は1トン施用すると土壌中の有機物量が0.1〜0.3%程度増加するとされており、継続的な施用が効果を持続させます。これは長期的な取り組みです。堆肥の即効性を期待するより、3〜5年の計画で土をつくる視点が大切です。
また、物理的な改良として深耕やサブソイラー耕(深さ40〜50cm程度の心土破砕)が有効です。固まった硬盤層を壊すことで、下層土の気相率が改善されます。
土壌三相計(例:大起理化工業のDIK-1130など)があると、三相分布を正確かつ短時間で測定できます。 現場で毎年記録をとることで、改良効果を数値で追跡できます。これは使えそうです。
多くの農業従事者は、固相率の測定を「年に1回だけ」か「問題が出てから」行いがちです。しかし、土壌の三相分布は降雨・耕起・作物残渣のすき込みなどで季節ごとに変動します。測定タイミングが重要です。
農業試験場や県の指導では、通常3反復(3か所)で採取して平均値を出すことが推奨されています。 1か所だけでは圃場内のばらつきを正確に反映できないためです。特に転換畑(水田を畑として使う圃場)は、固相分布のムラが出やすいため注意が必要です。
参考)https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/525952.pdf
適切な測定タイミングの目安
群馬県の農業試験場のガイドラインでは、土壌三相計が手元になくても100mL円筒と乾燥装置があれば固相率・孔隙率が算出できると説明されています。 特別な機材がなくても、フライパンで土を炒って乾燥させる方法でも十分実用的です。
土壌三相の測定記録を圃場ごとに数年分蓄積すると、「この圃場は毎年梅雨明けに固相率が上がる」というような傾向が見えてきます。この傾向の把握が条件です。固相率のデータを積み上げることが、長期的な収量安定の土台になります。
農業試験場のPDFや県の指導資料を活用することで、地域の土性(砂質・埴土など)に合わせた真比重の目安値も調べられます。
固相率の測定は難しそうに見えて、実は缶・はかり・フライパンの3つがあれば今日から始められます。数値で土を見る習慣が、作物の収量と品質を安定させる最短ルートです。
参考:土壌三相分布の測定方法と計算式について(藤原商会)
土壌三相分布を調べる方法(藤原商会)
参考:固相率・孔隙率の計算式と真比重の扱いについて(群馬県農業試験場)
土壌の物理性の測定(群馬県農業試験場)
参考:作物生育に必要な気相率20%以上の根拠・三相バランスの基準値(青森県農業普及振興室)
土壌診断と対策(青森県)
参考:三相分布の自分でできる簡易測定の具体手順(マイナビ農業)
自分でできる簡易土壌診断(マイナビ農業)