土壌の孔隙率を上げれば必ず収量が増えると思っていませんか?実は孔隙率が50%を超えても、孔隙の「種類」が偏ると根腐れリスクが3倍以上に跳ね上がることがわかっています。
土壌の孔隙率とは、土の全体積に対して「固体(土粒子)が占めていない空間=孔隙」の割合を指します。式で表すと以下のようになります。
つまり孔隙率が基本です。この空間には空気と水が共存しており、根の呼吸と水分吸収の両方を支えています。
孔隙率が30%を下回ると、根が酸欠状態になり始めます。水田の作土でさえ、代かきによって一時的に孔隙率が20%台まで下がることが知られており、その後の乾燥管理が収量を大きく左右します。意外ですね。
農研機構の資料によれば、水稲の根の伸長は土壌硬度(貫入抵抗)だけでなく、通気孔隙率が10%を下回った時点で急激に抑制されることが示されています。10%という数字は、500mlペットボトルの中身のわずか50ml分に相当するイメージです。
孔隙が少ない土=収量が落ちる、と覚えておけばOKです。
孔隙にはサイズがあります。大孔隙(径0.05mm以上)は主に排水と通気を担い、小孔隙(径0.05mm未満)は水を保持する役割を持ちます。
農業現場でよくある誤解が「水はけが良い=良い土」という思い込みです。大孔隙ばかりで小孔隙が少ない土壌では、せっかく施用した液肥がそのまま流れ出てしまい、肥料代が無駄になります。1反(約10a)あたりの施肥コストが年間3〜5万円だとすれば、その損失は決して小さくありません。痛いですね。
逆に小孔隙が多すぎる粘土質土壌は保水力が高くても、大雨後に根が数日間水没し根腐れを起こします。バランスが条件です。
両者のバランスが崩れているかどうかは、現場では「土壌三相計」や「簡易貫入試験」で確認できます。農協の営農指導員に相談すると、無料で測定してもらえるケースもあります。
孔隙率の測定は専門機器がなくても、ある程度の把握は可能です。現場でよく使われる方法を整理します。
コア法による測定手順は以下の通りです。
結論は「仮比重1.3以下なら良好な孔隙状態」です。仮比重が1.5を超えてくると根の伸長が著しく制限されはじめます。
測定が難しい場合は、都道府県の農業技術センターに土壌診断を依頼する方法もあります。多くの県では1検体あたり数百円〜2,000円程度で分析してくれます。
孔隙率の改善には、大きく「物理的アプローチ」と「生物的・化学的アプローチ」の2方向があります。どちらか一方では持続しないことが多く、組み合わせが必須です。
🌿 有機物施用によるアプローチ
堆肥や緑肥すき込みにより、土壌有機物が増えると微生物活性が高まり、団粒構造が発達します。団粒構造が形成されると、団粒間に大孔隙が、団粒内に小孔隙が同時に確保されます。つまり両方の孔隙を一度に増やせるということですね。
堆肥の目安は10aあたり2〜4トン。ただし未熟堆肥を大量施用すると、分解の過程で窒素飢餓が起き、逆に生育が悪化するケースがあります。これは知らないと損します。
🚜 耕起によるアプローチ
注意が必要なのは、過度な耕起です。年に何度もロータリーをかけると土壌粒子が細かく砕けすぎ、かえって孔隙が詰まります。これは農業従事者が無意識にやってしまいがちな行動です。
耕起頻度を減らしながら有機物を補給する「不耕起+堆肥」の組み合わせが、近年最も注目されているアプローチです。これは使えそうです。
多くの農業従事者が「土が湿っていれば水分は十分」と考えがちですが、これは正確ではありません。土壌水分には植物が吸収できる「有効水分」と、小孔隙に強く吸着されて根が吸えない「無効水分」があります。
これは意外な盲点です。見た目に「湿っている」土でも、実際には作物が水ストレスを受けているケースが現場でたびたび確認されています。
黒ボク土(火山灰土)に多い「アロフェン」という粘土鉱物は、有機物を強く吸着するだけでなく、小孔隙内に水を強く保持する性質があります。関東ローム層や北海道の一部地域ではこの問題が顕著で、「見た目は濡れているのに作物が萎れる」という現象が起きやすいです。どういうことでしょうか?
対策としては、土壌水分センサーを活用した「pFモニタリング」が効果的です。現在は1万円台から購入できる簡易センサーも登場しており、スマートフォンと連携してリアルタイムで水分状態を確認できます。センサーを1箇所挿して確認するだけで、灌水タイミングの判断精度が大幅に上がります。
また、有機物を増やして小孔隙内の吸着水を減らし、有効水分の割合を高めることも根本的な対策になります。有機物増加→団粒化→有効水分増加、という流れが原則です。
孔隙率の数値だけでなく、孔隙の「質」と水分の「有効性」を合わせて管理することが、安定した収量を得るための核心です。数字だけ覚えておけばOKではなく、その中身まで理解することが農業経営の強みに直結します。