営農型太陽光発電では、太陽光パネルが作物の上に屋根のようにかかるため、最初に押さえておきたいのが「日射量の減少」と収量の関係です。
一般的に、パネルによって地表面に届く日射量が20〜30%程度カットされる設計が多く、これは作物の種類によってプラスにもマイナスにも働きます。
日射を好む水稲や小麦などの穀物は、日射低下の影響を受けやすく、営農型太陽光発電水田では水稲収量が平均で約23%減少したという長期試験結果が報告されています。
参考)営農型太陽光発電、減収と品質低下の克服に壁あり|環境展望台:…
一方で、葉物野菜や一部の果菜類では、夏場の強い直射日光が和らぐことで過度な高温ストレスが減り、品質が向上したり、葉焼け・しおれのリスクが下がるといった報告もあります。
参考)https://www.maff.go.jp/j/study/attach/pdf/250609-1.pdf
作物別にみると、農林水産省の資料では、営農型太陽光の下でも単収(10aあたり収量)が概ね確保できている割合が高い作物として、米・大豆・そばなどが挙げられています。
ただし、同じ「米」でも地域の気象条件や品種、パネルの配置によって結果が変わるため、「何割まで日射を切れるか」は個別設計が重要になります。
参考)【飯田哲也さんコラム】営農型太陽光発電の現状と課題。ルールを…
また、日射量だけでなく、パネルによる「微気象」の変化も収量に影響します。
参考)東京大学、営農型太陽光で国内初の長期試験を実施 総収益が5倍…
例えば、水田ではパネルが日除けになることで水面温度が下がり、生育の遅れや穂数・稔実歩合の低下を通じて収量減少につながることが明らかになっています。
参考)https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20250401-1.html
営農型太陽光を検討する際は、単に「影の割合」だけでなく、作物の生育ステージごとに必要な光・温度条件を整理し、パネル角度や列間隔、架台の高さを調整して「必要な光はきちんと確保する」設計が欠かせません。
参考)ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)とは?メリットや導入…
収量を守りたいなら、先行事例で同じ作物・同じ地域条件のデータをできるだけ多く集めることが、最大のリスク低減策になります。
参考)ソーラーシェアリングで失敗を避けるためのポイントとは? 事例…
参考:営農型太陽光発電の収量への影響を詳細に解析した東京大学の研究概要(微気象・収量・品質の変化がわかる)
東京大学大学院農学生命科学研究科「ソーラーシェアリングが水稲の収量と品質に与える影響」
収量低下以外にも、現場の農業者が強く意識しているデメリットが「作業性の悪化」と「コスト増」です。
営農型太陽光発電では、支柱の高さを2m以上にすることが一般的ですが、それでもトラクターやコンバインなど大型機械の転回がしづらくなり、支柱や架台を避けながらの作業でストレスを感じる声が多く聞かれます。
支柱が畝の間隔と合わない場合、作業通路を細かく区切らざるを得ず、耕起・施肥・収穫のたびに機械の出し入れや切り返しに余分な時間がかかります。
参考)営農型太陽光発電の可能性と課題|国立大学法人 山形大学
結果として、作業時間の増加や燃料費の増加につながり、「収量はそこまで落ちていないが、労力が増えて結果的にもうからない」というケースもあります。
参考)ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)を導入するメリットと…
コスト面では、通常の地上設置型太陽光(野立て)に比べて20〜30%ほど設備コストが高くなる傾向があり、支柱を高くする、農地の地盤改良が必要になる、施工期間が農繁期を避けざるを得ないといった要因が積み重なります。
参考)太陽光
さらに、営農型は一時転用許可や毎年の収量報告などの手続き負担もあり、この「書類コスト」が見落とされがちなデメリットです。
参考)営農型太陽光発電って何?特徴や条件・メリットやデメリットを解…
金融機関の評価もポイントで、営農型太陽光は「農業と発電の両方が長期的に続くこと」が前提になるため、収量低下リスクや政策変更リスクがある案件は融資がつきにくい傾向があると指摘されています。
参考)太陽光発電で営農型と農地転用型の違いとは?それぞれの特徴を比…
導入前に、事業計画の段階でパネル下の営農計画や技術サポート体制を組み込んでおくことで、「机上の計算では黒字でも、現場で回らない」という事態を防ぎやすくなります。
こうした作業性・コストのデメリットを和らげるために、最近は「農業ファースト」を掲げ、支柱配置を作業機械の通行に合わせる、架台の足を極力減らす、可動式パネルで農作業時に開放できるようにするなどの工夫が進みつつあります。
参考)https://www.jpea.gr.jp/wp-content/uploads/sw2025_seminar5_doc10_r1.pdf
収量だけでなく、現場の手間や長期的な維持管理のしやすさを織り込んだ設計が、営農型太陽光を「続けられる事業」にする鍵といえます。
参考)地域の未来を支える農業と再エネの共創モデル──営農型太陽光発…
参考:営農型太陽光発電のメリット・デメリットや作業性への影響を整理した解説記事
「営農型太陽光発電を導入するメリットとデメリット」(サンエーHD)
営農型太陽光発電では「収量減=即失敗」とは限らず、収量が一定程度落ちても、発電収入によってトータルの収益が大きく増える場合があります。
東京大学などの長期試験では、営農型太陽光発電水田で水稲の収量が23%減少した一方、発電収入を含めた総収益は従来の稲作単作の5倍以上になる可能性があると推計されています。
この結果は、「収量を100%維持できなくても、一定の減収を許容しつつ、安定した売電収入を組み合わせれば、経営としてはむしろ安定・向上する」という考え方を示しています。
ただし、これは発電単価(FITや自家消費の電力単価)、設備コスト、融資条件などを前提にした試算であり、電力価格や制度が変わればバランスも変わります。
営農型太陽光でよくある失敗パターンとして、「農業の収益が落ちすぎて、太陽光の返済もまかなえず共倒れになる」ケースが挙げられます。
参考)「営農型」という名の「農業潰し型」太陽光発電はいけない【鈴木…
特に、もともと日当たりが悪い農地や、排水条件がよくない田畑にパネルを追加すると、日射量がさらに減って収量が下がり、結果として発電分を含めても経営全体がマイナスに傾きやすくなります。
参考)農地で太陽光発電を行うには? デメリットや補助金について解説…
収量減と収益のバランスを検討する際は、最低でも以下の点を試算しておくと実態が見えやすくなります。
また、営農型太陽光の評価では、「一筆ごとの収支」だけでなく、農家全体の経営(複数の田畑、複数作物、家族労働力)としてどう最適化できるかが重要です。
作業ピークを分散させる作付け組み合わせや、発電収入を利用した機械更新・ハウス整備への再投資など、収量減をカバーする『経営の組み立て』がうまくいっている事例ほど、長期的に安定して続いています。
参考:営農型太陽光発電のメリット・収益性とリスクについて詳しく整理した解説
「ソーラーシェアリングを導入するメリットとデメリット」(OFFSEL)
収量減のリスクを抑えるためには、「パネルの設計」と「栽培管理」の両面からの工夫が有効です。
設計面では、パネル列間隔の確保、架台の高さの設定、透過率の高いモジュールの採用、パネルの配置方向(南北・東西)などを組み合わせて、作物が必要とする日射量を維持することが重要になります。
例えば、水稲のように日射を多く必要とする作物では、パネルの設置割合を抑えつつ列間を広く取る、穂揃期など高い光要求期にできるだけ影がかかりにくい配置を工夫することで、収量減を抑えられる可能性が示唆されています。
葉物野菜やイチゴのように高温ストレスを受けやすい作物では、夏季に一定の遮光がむしろ品質向上や規格内割合の増加につながる場合もあり、作物ごとの適正な遮光率を見極めることが鍵になります。
栽培管理面では、パネル下での温度・湿度・風の動きが変わることを前提に、肥培管理や病害虫防除のタイミングを調整する必要があります。
例えば、水田ではパネルによる水温低下を補うために、用水の取り入れ時期や水深の管理を変える、畑作では風通しが悪くなりやすい列の病害多発に備えた防除計画を組む、といった細かな調整が求められます。
意外なポイントとして、営農型太陽光では「下草管理」が収量にも関わってきます。
パネルの直下は雑草が伸びやすい環境になりがちで、雑草が過度に繁茂すると作物と光や水分を競合し、結果として収量低下や収穫作業の遅れを招きます。
草刈り機や乗用モアが支柱で入りにくい場合、家畜による放牧や被覆資材の活用など、通常とは異なる下草対策が必要になることもあります。
この「雑草とどう付き合うか」を設計段階から織り込んでおくと、結果的に作物の生育が安定し、収量維持にもつながりやすくなります。
参考:営農型太陽光の設計条件や収量報告の考え方が整理された農林水産省資料
農林水産省「営農型太陽光発電設備の設置に関する資料」
営農型太陽光発電のデメリットは、単に1枚の田畑の収量だけでなく、地域の農業構造にもじわじわと影響していきます。
一部で指摘されているのが、「営農型」という名目でパネル設置が先行し、実際には農業が縮小・形骸化してしまう結果として、地域の生産量が落ち、集落営農やJA出荷体制の維持が難しくなるリスクです。
収量基準(例えば「従来の8割以上の収量を維持する」など)は、本来は農業生産を守るための仕組みですが、現場では「最低ラインだけを守る方向の営農」が増えることで、作物の品質や地元ブランド力がじわじわ低下する可能性もあります。
ブランド米や特産野菜の産地では、わずかな品質低下でも販売単価に響きやすく、単純な「収量」だけでは測れない損失が出る点に注意が必要です。
一方で、営農型太陽光発電をうまく活用している地域では、発電収入を活かして共同乾燥調製施設の更新や選果場の省エネ化を進めたり、新規就農者向けの研修や実証圃場の整備に投資するといった動きも見られます。
このように、収量減というデメリットを「どう埋め合わせるか」を個々の農家だけでなく、集落単位・地域単位で議論し、合意形成していくことが、長期的な地域農業の持続性を左右します。
また、気候変動が進むなかで、猛暑や異常気象による減収リスクが高まっていることを考えると、営農型太陽光のパネルが「日よけ」として作物を守る機能を持つ可能性も見過ごせません。
極端な高温年に、通常圃場では大きな減収が出た一方、パネル下では収量・品質の落ち込みが小さかったという報告も出始めており、デメリットとメリットのバランスは今後の気象条件の変化とも連動して変わっていくと考えられます。
営農型太陽光発電の導入を検討する際には、「今年の収量が何俵になるか」だけでなく、10年単位で地域の農地利用や担い手、販路、気候リスクを見据えた上で、どの程度の収量減を許容し、どのように発電収入を地域に循環させるかを考えていくことが求められます。
そのうえで、地域で共有できる「営農型太陽光のルール(農業ファーストの原則や収量報告の透明性など)」を作っておくことが、後々のトラブルや「農業潰し型」への不信感を避けるうえでも重要になってきます。