3月から4月にバンカー上で二次寄生蜂の割合が高いと防除失敗する確率が有意に高まります
アブラムシ寄生蜂とは、アブラムシ類に卵を産み付けて寄生し、その体内で幼虫が成長することでアブラムシを死滅させる天敵昆虫のことです。体長は約2ミリメートルほどと非常に小さく、施設栽培において化学合成農薬の使用量を削減できる生物農薬として注目されています。
寄生蜂がアブラムシに卵を産み付けると、アブラムシの体内で幼虫が成長します。約2週間後(20℃の環境下)、アブラムシの外皮は膨張して硬化し、黄金色や褐色の「マミー」と呼ばれるミイラ状態になります。このマミーに丸い穴をあけて成虫が羽化し、再び他のアブラムシを探索して寄生を繰り返すのです。
つまり寄生のサイクルですね。
この防除メカニズムの優れた点は、アブラムシの密度が低い初期段階から効果を発揮することです。1頭のコレマンアブラバチの雌は、20℃で約300個、25℃で約380個もの卵を産むとされており、高い増殖力でアブラムシの発生を長期間抑制できます。
施設栽培における実用化が進んでいる理由は、環境への影響が少なく、残留農薬の心配がないためです。特にナス、ピーマン、イチゴなどの促成栽培では、定植時期から収穫終了まで継続的に天敵を維持することで、アブラムシ類の被害を最小限に抑えられます。
ただし、寄生蜂には活動適温があります。発育適温は20〜25℃で、5℃が発育零点とされています。気温が低すぎる時期や高すぎる時期には活動が鈍るため、導入時期の見極めが重要です。
施設栽培で利用されるアブラムシ寄生蜂には、主にコレマンアブラバチ、ギフアブラバチ、ダイコンアブラバチ、ナケルクロアブラバチなどの種類があります。それぞれ寄生できるアブラムシの種類が異なるため、発生している害虫を正確に見分けることが防除成功の鍵となります。
コレマンアブラバチは最も普及している天敵で、ワタアブラムシやモモアカアブラムシなど4種類のアブラムシに寄生可能です。1998年に農薬登録された「アフィパール」という製剤に含有されており、施設栽培で広く活用されています。成虫の寿命は20℃で約6日、25℃で約4日と短いため、入手後は速やかに放飼する必要があります。
これは短い期間ですね。
ギフアブラバチは、コレマンアブラバチが寄生できないジャガイモヒゲナガアブラムシやムギヒゲナガアブラムシなど2種類のアブラムシに効果を発揮します。体長や形態はコレマンアブラバチと似ていますが、対象とする害虫が異なるため、両種を併用することで幅広いアブラムシ類の防除が可能になります。
ダイコンアブラバチは3種類、ナケルクロアブラバチは8種類の害虫アブラムシ類に寄生可能とされており、バンカー法の構築において選択肢が広がっています。特にナケルクロアブラバチは寄主範囲が広く、複数種類のアブラムシが混在する圃場での活用が期待されています。
重要なのは、寄生蜂を導入する前に圃場で発生しているアブラムシの種類を特定することです。体長と触角の長さの比率、体色、寄生している植物の部位などから識別します。ヒゲナガアブラムシ類のように体が大きく触角が長い種類には、コレマンアブラバチは寄生できません。
この場合は、ギフアブラバチの利用や、ピメトロジン剤・フロニカミド剤など天敵に影響の小さい農薬での部分散布が必要になります。アブラムシの種類に応じた寄生蜂の選択が、防除効果を最大化するポイントといえます。
農研機構による4種天敵アブラバチの寄主リストでは、各寄生蜂が対応できるアブラムシの詳細が確認できます
バンカー法とは、圃場内に作物を加害しない代替餌(ムギクビレアブラムシなど)をバンカー植物(ムギ類)で維持し、天敵の個体数を常に確保しておく技術です。これによりアブラムシが侵入しても、待ち伏せしている寄生蜂がすぐに攻撃できるため、被害を最小限に抑えられます。
導入の第一段階は、バンカー植物の準備です。10アール(約1000平方メートル)あたり4〜6カ所、プランター1個分(20センチメートル×65センチメートル)ほどの規模でムギ類の種子を播種します。
種子量は1カ所あたり約5グラムが目安です。
天窓下など日当たりが良く、アブラムシの侵入口付近への設置が推奨されています。
播種から約2週間後、ムギの草丈が10センチメートル程度に成長した段階で、ムギクビレアブラムシを接種します。市販品として「アフィバンク」などが入手可能です。接種後5日程度で、0.6ミリメートル目合い以下の防虫ネットでプランターを被覆し、土着天敵のテントウムシなどによる捕食を防ぎます。
基本は保護することです。
さらに2週間後、ムギクビレアブラムシがムギの株元でコロニーを形成し始めたタイミングで、コレマンアブラバチを放飼します。放飼量は10アールあたり500頭を標準とし、7〜10日間隔で3〜4回の放飼を行うことで、安定した防除効果が得られます。
放飼から約20日後(20℃環境下)には、バンカー植物上でマミーが確認できるようになります。ただし気温が低い11月下旬以降に放飼した場合、マミーの確認まで1カ月以上かかることもあるため、導入時期は慎重に判断します。
バンカー植物の維持管理も重要です。マミーが増えてムギクビレアブラムシが減少してきたら、1カ月に1回程度ムギクビレアブラムシを追加接種します。また、播種から2〜3カ月経過するとムギの葉が硬化し、アブラムシの増殖が緩慢になるため、新しいバンカー植物への更新が必要です。
更新時には、前のバンカーの隣に新しいムギを播種し、ネット掛けでムギクビレアブラムシを保護しながら移行させます。こうして収穫終了時期まで天敵を維持することで、農薬散布回数を大幅に削減できるのです。
生産部会などで共同でムギクビレアブラムシを増殖しておくと、いつでも追加接種できて便利です。初期投資として10アールあたりの天敵資材費は数万円程度ですが、農薬散布の労力とコスト削減効果を考慮すると、経済的メリットは大きいといえます。
農研機構のバンカー法技術マニュアルには、導入から管理までの詳細な手順が記載されています
バンカー法を実施する上で最大の障害となるのが、二次寄生蜂の存在です。二次寄生蜂とは、アブラムシに直接寄生するのではなく、アブラムシの体内で成長している一次寄生蜂(コレマンアブラバチなど)の幼虫や蛹に寄生する蜂のことです。二次寄生蜂が増えると一次寄生蜂の成虫が減少し、結果的にアブラムシが増加してしまいます。
農研機構の研究によると、3月から4月にバンカー上で二次寄生蜂の割合が50パーセントを超えると、アブラムシ防除に失敗する確率が有意に高まることが明らかになっています。特に夏場は野外から二次寄生蜂が侵入しやすく、防除効果が低下しやすい時期です。
防除失敗は避けたいですね。
見分け方のポイントは、マミーの脱出孔の形状です。コレマンアブラバチなど一次寄生蜂が羽化する際には、マミーに大きめの丸い穴をあけ、切り口がギザギザになります。一方、二次寄生蜂のオオモンクロバチやヒメタマバチは、きれいな円形の切り口を残し、ふたのような蓋が付いていることが多いのです。
また、成虫の体型でも識別できます。コレマンアブラバチは体長約2ミリメートルで腹部がずんぐりとしているのに対し、オオモンクロバチは腹部がずんぐり、ヒメタマバチは腹部がスマートで細長い特徴があります。ルーペや拡大鏡を使って定期的に観察することが重要です。
二次寄生蜂の割合が高まってきた場合の対策として、まず捕食性天敵のショクガタマバエをバンカーに放飼する方法があります。ショクガタマバエはアブラムシを捕食するため、二次寄生蜂の影響を受けずにアブラムシ密度を抑制できます。
ただし、2014年3月時点でショクガタマバエ剤「アフィデント」は販売中止となっているため、代替策として飛ばないナミテントウなど他の捕食性天敵との併用が検討されています。また、作物上でアブラムシのコロニーを確認したら、早めに農薬の部分散布を行うことも有効です。
二次寄生蜂による被害が疑われる場合は、バンカー植物をすべて撤去し、2週間程度経過してから再度バンカーとコレマンアブラバチを設置し直します。施設内の環境をリセットすることで、二次寄生蜂の密度を下げられるのです。
バンカー上で定期的にマミーの脱出孔を確認し、二次寄生蜂の割合を把握しておくことが、防除失敗を未然に防ぐカギといえます。
アブラムシ寄生蜂を活用する場合、化学合成農薬との併用は避けられない場面があります。しかし、すべての農薬が天敵に悪影響を与えるわけではなく、適切な薬剤選択と散布タイミングによって、天敵を保護しながら害虫防除を実現できます。
コレマンアブラバチなどの寄生蜂に影響の小さい薬剤として、ピメトロジン剤(商品名:チェス)やフロニカミド剤(商品名:ウララ)が推奨されています。これらは選択性が高く、アブラムシ類には効果的でありながら、寄生蜂の成虫や蛹への影響が比較的軽微とされています。
ヒゲナガアブラムシ類のようにコレマンアブラバチが寄生できない大型アブラムシが発生した場合、これらの薬剤による部分散布が有効です。アブラムシのコロニーが小規模なうちに、発生箇所だけをスポット散布することで、バンカー上の寄生蜂への影響を最小限に抑えられます。
影響は最小限にできます。
一方、有機リン系やネオニコチノイド系の一部薬剤は、寄生蜂に対して高い毒性を示すことが研究で明らかになっています。栃木県の試験では、18種類の殺虫剤のうち4剤がナケルクロアブラバチの雌成虫に影響を与えたとの報告があります。定植前のアブラムシ防除には使用できても、寄生蜂放飼後は避けるべき薬剤です。
薬剤の影響は寄生蜂の発育段階によっても異なります。最も薬剤感受性が高いのは、寄生蜂が羽化してから寄主を脱出するまでの時期です。この時期に農薬散布を行うと、マミー内で成長中の寄生蜂が死滅し、次世代の密度が大幅に低下します。
施設栽培でIPM(総合的病害虫管理)を実践する場合、アブラムシ対策の寄生蜂と、アザミウマ対策のタイリクヒメハナカメムシ、ハダニ対策のチリカブリダニなど、複数の天敵を併用するケースが増えています。この場合、すべての天敵に影響が少ない薬剤を選択するか、散布区域を限定する必要があります。
農薬散布を行う際には、バンカー植物上での寄生蜂の活動状況を確認してから判断します。マミーが多数形成されている時期であれば、マミー内の蛹は比較的農薬の影響を受けにくいため、散布のタイミングとして適しています。
天敵製剤の製造元や農業改良普及センターでは、天敵に影響が少ない農薬のリストを公開しています。導入前にこれらの情報を入手し、防除体系を事前に計画しておくことで、天敵と農薬の相乗効果を最大化できるのです。
アリスタライフサイエンスのIPM通信では、バンカー法実用化における農薬選択の具体例が紹介されています

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