梅の木で「まず相談が多い害虫」はアブラムシ類です。吸汁で樹勢を落とすだけでなく、排泄物(甘露)が葉や枝に付くと、すす状のカビが増えたり光合成が妨げられたりして、見た目と生育の両方が悪化します。さらにアブラムシは口針で植物を探り刺しするため、ウイルスを媒介して感染が広がる点も厄介です(モザイク病など)。
おすすめの考え方は「効き目」だけでなく、抵抗性リスクを減らすためにIRACコード(作用機作)を意識してローテーションすることです。梅のアブラムシ類に使える薬剤群として、農家向けの整理では有機リン系(1B:マラソン、スミチオン)、ネオニコチノイド系(4A:モスピラン、アドマイヤー、ダントツ、スタークル、アルバリン、アクタラ)、テトラミン酸誘導体(23:モベント)、フロニカミド(29:ウララDF)などが挙げられています。現場目線では「今いる成虫を落とす」のか「増殖を止めたい(次の世代を抑える)」のかで体感が変わるため、発生密度と生育ステージを見て選ぶのが失敗しにくいです。
参考)https://www.mdpi.com/1422-0067/25/14/7818
散布時期の例として、地域の防除基準では落花直後〜展葉初期の体系の中で、アブラムシ類も同時対象として組まれています。つまり、単発でアブラムシだけを見るより、病害(黒星病など)と同時に守る設計に乗せた方が、回数・労力・コストがまとまりやすいということです。
参考)https://www.mdpi.com/2223-7747/11/22/3046/pdf?version=1668766315
カイガラムシ類は、発生してから慌てると厳しい害虫です。吸汁で果実や枝にダメージを出すだけでなく、甘露が「すす病」を招いて葉や枝が黒く汚れたり、排泄物や遺体が栄養源になって「こうやく病」の発生源になる、と整理されています。見た目の問題で済まず、細い枝が覆われて枯死の恐れまで出るため、早期の封じ込めが重要です。
カイガラムシ対策は、梅の防除基準でも「発生園では必ず散布」と明記される運用になりやすいのが特徴です。たとえば休眠期の項目で(カイガラムシ類)を括弧付きで想定しつつ、さらに12月の「カイガラムシ発生園」の枠を設け、スプレーオイルを発芽前に散布する体系が示されています。この“発芽前”が実務上の分かれ道で、葉が茂ってからの散布より、樹体に薬液を当てやすく狙いが定まりやすいからです。
ここでのおすすめは「カイガラムシに強い薬」を探すより、まず“休眠期〜発芽前の窓”を逃さない管理です。加えて、防除基準では「石灰硫黄合剤と混用しない」など混用注意がはっきり書かれているため、機械洗浄やタンクの扱いも含めて事故を避けられます。薬剤選定の前に、こうした運用条件を必ず確認するのが安全策です。
梅の殺虫剤選びで一番の落とし穴は、「おすすめ銘柄」だけを追って散布時期がズレることです。防除基準の文章には、たとえば黒星病について「防除が遅れると感染が始まるので防除時期を厳守」「重要防除時期なので前回との散布間隔を開かない」といった注意が具体的に書かれています。この考え方は殺虫剤にも共通で、害虫が増えてからの後追いより、発生前〜初期で“間隔管理”を優先した方が結果的に被害を小さくできます。
また、防除基準は「病害虫」だけでなく「散布量」も前提条件として提示します。例として、落花直後(80%落花期)では散布量が400L以上、展葉初期〜5月上旬では500L以上といった形で、必要水量の目安が体系に組み込まれています。効かない原因が成分ではなく、単純に“濡れていない・届いていない”ケースは少なくないため、散布量の概念まで含めておすすめを組み立てるのが現実的です。
さらに、同じ防除基準の中で「コスカシバ対策として、スカシバコンLを設置」といった、薬剤散布以外の防除手段(フェロモン等)の併用も提示されています。殺虫剤一本で全部解決しようとすると回数が増えがちなので、体系全体で工数を抑える発想が重要です。
梅で地味に差がつくのがコスカシバです。葉や果実に薬をかける感覚のままだと効きが鈍くなりやすく、防除基準では「産卵部位である地上1m以下の主幹、主枝を丁寧に散布」と、狙う場所がはっきり指定されています。つまり、薬剤名以前に“当て方(ターゲット)”が成否を左右します。
時期面でも、9月中旬〜下旬の枠でコスカシバの項目があり、そこでフェニックスフロアブル等の散布が組まれています。さらに「フェニックスフロアブルに替えてスミチオン乳剤1,000倍(14日前まで)を使用しても良い」といった代替案まで書かれており、現場の在庫や運用に合わせて選択肢を持てます。この“代替可能”の情報は、ネットのランキング記事では抜けがちなので、基準表を一度読む価値があります。
加えて、5月上旬までにスカシバコンLを設置する、といった設置型の対策も同じ基準内で示されています。散布だけでなく、発生を抑える仕組みを入れることで、後半に薬剤を増やさずに済む可能性が上がります。
検索上位では「毛虫に何が効く」「散布時期はいつ」が中心になりがちですが、現場でロスが大きいのは“見た目品質が落ちて売りにくくなる連鎖”です。そこで独自視点として、すす病の見え方を入口にして、害虫対策を逆算する方法を提案します。農家向け整理でも、アブラムシの排泄物がすす状のカビを増殖させること、カイガラムシ類の甘露がすす病の原因になることが明確に書かれています。
つまり、葉や枝が黒く汚れ始めた段階で「病気だ」と決め打ちせず、甘露を出す吸汁害虫(アブラムシ類・カイガラムシ類)を疑うだけで初動が早まります。この“入口”が変わると、殺虫剤選定も「吸汁害虫に強い系統を優先し、発生源を断つ」方向に整理しやすくなり、散布回数の増加を防ぎやすいです。さらに、同じすす病でも園地の風通し・樹勢・剪定後の徒長枝の出方で再発しやすさが変わるため、薬剤だけでなく樹体管理と合わせて対策の精度が上がります(ここは園ごとの再現性が高い“改善ポイント”になります)。
なお、薬剤選びと同じくらい重要なのが「収穫前日数」や「使用時期」を守ることです。防除基準では各薬剤の“前日まで”“7日前まで”“14日前まで”などが散布体系の中で明示され、誤散布を避ける設計になっています。おすすめを探すほど作業が増える時期こそ、基準表のルールに立ち返るのが結局いちばん安全です。
防除の体系(散布時期・散布量・注意事項)がまとまっている参考(長野県JAの梅病害虫防除基準)。
令和7年度 梅病害虫防除基準(ながのブロック)
梅の病害虫別に、アブラムシ類などのおすすめ農薬(IRACコード別の整理)が載っている参考。
梅に使えるおすすめの農薬(農家web)