苦土石灰を畑に入れると、自然薯の収量が全滅レベルで落ちます。
自然薯はもともと、山野に自生する野菜です。地中深く1m以上も垂直に伸びる特性があり、かつては「畑での栽培は不可能」とまで言われていました。それを一変させたのが、1974年に発明されたクレバーパイプです。販売開始以来の累計販売本数は1,500万本を突破しており、現在では多くの農業従事者がこのパイプを活用して自然薯を栽培しています。
クレバーパイプの仕組みはシンプルです。自然薯用のパイプ(長さ135cm)に無肥料・無菌の山土を詰め、土中に10〜15度の角度で斜めに埋設します。種芋の発芽点をパイプの受け皿に合わせて植え付けると、新しく育つ芋がパイプ内へ自然に誘導されます。収穫時にはパイプごと掘り起こすだけなので、芋を傷つけたり折ったりする心配がほとんどありません。これが原則です。
パイプが斜めに埋まることで耕土が浅くて済む点も大きなメリットです。深い耕土を必要とする従来の栽培法では重労働だった土づくりが、クレバーパイプを使えば大幅に軽減されます。まっすぐで形の整った商品価値の高い自然薯が収穫しやすいのも、贈答品需要や直売所販売を考える農業従事者にとって魅力的な点です。
ただし、パイプ内に入れる土は必ず「畑の土以外」を使用してください。畑の土を入れてしまうと、病原菌や肥料分が混入し、芋の分岐や腐敗の原因になります。山土(真砂土または赤土)を選ぶのが基本です。
なお、長芋用のクレバーパイプ(105cm)と自然薯用(135cm)はサイズが異なります。購入前に必ず確認しておきましょう。
クレバーパイプを使ったヤマイモ(自然薯・長芋)の育て方を農家が詳細解説しています。植え付け手順・写真付き。
自然薯栽培における最大のつまずきポイントの一つが、土壌づくりです。多くの農業従事者は「野菜を植える前には苦土石灰を入れる」という習慣が身についています。しかし、自然薯に関してはこの常識が逆効果になります。意外ですね。
自然薯は日本原産の植物であり、日本の山の酸性土壌(pH6.0〜6.5程度)に適応して進化してきました。苦土石灰を投入すると土壌がアルカリ性に傾き、自然薯の生育が大幅に阻害されます。大阪で自然薯の専業農家として活動する岩崎さん(くまとりこもれび菜園)も、「商品として出せるのは、例年全体の3割くらい」と語っており、土壌管理のシビアさを示しています。土壌改良が必要な場合はカニガラを活用するのが一つの方法です。カニガラに含まれるキチン質は、根を傷める線虫を抑制する放線菌の増殖を促す効果があり、肥料と害虫対策を兼ねた一石二鳥の資材として注目されています。
種芋は、むかごから1〜2年育てた「小芋」か、切り分けた切り芋を使います。切り芋を使う場合は100g程度を目安にすると収量が安定します。自然薯を栽培する場合は、種芋1個あたり50〜60g程度が適量です。重量を揃えることで生育のバラつきが少なくなります。これだけ覚えておけばOKです。
また、根腐病などの病害を防ぐために、種芋を植え付け前に消毒することも推奨されています。「ティービック水和剤」の50倍希釈液に約2秒間浸漬してから天日干しするという方法が、プロの農家にも取り入れられています。切り芋を使う場合は、切り口に消石灰を塗布して5日ほど陰干しし、コルク化させてから植え付けると腐敗のリスクが下がります。
畑の水はけも非常に重要な要素です。地下30〜60cmに「耕盤層」(農機具の圧力で固まった層)が形成されているほ場では、根腐れが起きやすくなります。心土破砕は収穫後の秋に行うのが効果的です。
大阪府唯一の自然薯農家の栽培事例。カニガラ・波板農法・水の管理について詳しく紹介されています。
種芋の植え付けは、ソメイヨシノの満開から2週間後が目安とされています。時期でいうと3月下旬から5月上旬が目安です。地温が10℃を下回る時期の植え付けは発芽不良を招くため、気温・地温の確認が欠かせません。
植え付けの手順を確認しましょう。
植え付け後は、種芋の位置から10cm以上離した畝の両側に元肥を施します。チッソ:リン酸:カリ=8:8:8の化成肥料なら、1株あたり40g(元肥)が目安です。芋の直近に肥料が当たると「肥料焼け」が起き、芋が変形したり腐敗したりする原因になります。肥料は芋の近くに置かないが原則です。
支柱は高さ2m程度が適当で、きゅうりネットやエンドウネットをしっかり張ります。自然薯のツルは最大で13m近く伸びることがあるため、ネットはしっかりと張力をかけることが重要です。
マルチ張りはツルの長さが1m前後になった時点で行います。それ以前に張ると、ツルが弱い状態で高温にさらされ「ツル焼け」が起きたり、根が浅く展開してしまったりする原因になります。白黒マルチを畝の両側から張り、頂上部でテープで固定するやり方が一般的です。
定植から2ヶ月後には種芋の養分が尽き、種芋自体がしぼんでしまいます。このタイミングで追肥(1株あたり30g)が必要です。追肥が遅れると芋の肥大が滞り、収量低下につながります。
政田自然農園による初心者向け自然薯栽培ガイド。クレバーパイプ手順11ステップを写真・図解付きで公開しています。
植え付けが終わったあとも、管理作業は続きます。7月〜9月は自然薯栽培において最も目が離せない時期です。この時期の失敗が、収量と品質に直接影響します。
7月の梅雨明け前後は「葉渋病」に注意が必要です。葉が生乾きの状態が続くと発生しやすくなります。また7月〜9月にかけてはヨトウガの幼虫(ヨトウ虫)による葉の食害が発生することがあり、8月〜9月には空気の乾燥でダニの被害も出やすくなります。いずれも早期発見・早期対処が条件です。
台風シーズンとなる8月〜10月には、支柱・ネットが台風の暴風で倒れないよう事前に補強しておくことが重要です。茂ったツルと葉は相当な重量と風圧を受けるため、支柱の固定が不十分だと一度の台風で畑全体がダメージを受けます。
水管理も見落とせない要素の一つです。大阪で波板農法を採用している岩崎さんは、猛暑だった年に水分不足でほとんどが枯れてしまったという経験から、畝に約120cm間隔で溝を設けて左右から水を吸収できるよう改善しています。マルチで表面を覆いつつも根に水が届く設計を考えることが、品質向上のカギになります。
1つの種芋から複数のツルが出た場合、そのままにしておくと芋の肥大が阻害されます。生育の良い1本を残して他のツルは「芽かき」をしておきましょう。これも収量を安定させるための重要な作業です。
11月になるとムカゴが収穫できます。ムカゴは来年の種芋の材料にもなりますし、むかごご飯など食材としても活用できます。指で触れただけでポロッと落ちる状態が完熟の目安です。地面に落ちたムカゴを放置すると翌年あちこちで発芽してしまうため、できるだけ丁寧に拾っておきましょう。
収穫の適期を守ることは、自然薯の品質と保存性に大きく関わります。つまり収穫タイミングが商品価値を左右するということです。
自然薯はツルが完全に枯れてから2週間以上経過した後に収穫します。地域によって差はありますが、12月〜翌年2月が収穫の目安です。ツルが枯れる前に収穫すると、根の養分吸収が完了していないため、アクが強く出やすく保存性も大幅に悪化します。一方で収穫が遅すぎると、気温が15℃以上になった段階で芋が自ら発芽を始め、品質が低下してしまいます。
収穫の手順は次のとおりです。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① | 畝の土を崩しながらクレバーパイプを掘り出す |
| ② | パイプを開いて、芋を傷つけないように取り出す |
| ③ | 収穫した自然薯を流水でよく洗い、水気をきる |
| ④ | ラップまたはビニールで包んで冷蔵庫へ |
| ⑤ | 2週間程度を目安に食べきる(または都度収穫) |
2月頃まで畑に置いたまま保管も可能です。必要な分だけ都度収穫する方法が、新鮮さを保ちながら効率よく出荷・使用できる実践的なやり方です。
クレバーパイプを使った栽培では、パイプ内の土を入れ替えることで連作が可能とも言われています。ただし、自然薯は一般的に3〜4年の連作障害回避が推奨されているため、栽培場所の記録をつけておくと管理しやすくなります。
10aあたりの売上については、適切な栽培・販売経路の確保ができれば300万円以上を見込めるとする試算も存在します。自然薯は1kgあたりの単価が長芋の3〜5倍程度になることもあり、高付加価値作物として農業所得の向上につながる可能性があります。直売所・ふるさと納税・贈答品市場への販路展開を視野に入れると、栽培規模を大きくするインセンティブになります。
タキイネット通販による自然薯の栽培方法ガイド。施肥量・植え付けのポイントをプロ監修で解説。
BASFミノラス農業情報サイトによる山芋・自然薯の栽培解説。ハウス栽培・輸出動向・収穫方法まで網羅。
![]()
【ふるさと納税】自然薯 約1.5kg 錦町産 桑原農園 配送不可:離島 お届け:2025年11月下旬~2026年7月下旬