有機肥料を使っていても、肥料焼けで作物が全滅することがあります。
肥料焼けとは、過剰施肥によって土壌中の肥料濃度が植物体内の溶液濃度を上回ることで起こる生理障害です。浸透圧の原理により、本来は土壌から根へ入るはずの水分が逆流し、根が脱水症状を起こします。つまり「植物が塩漬け状態になる」現象です。
専門機関の分類によると、肥料焼けの症状は大きく4種類に分けられます。
| タイプ | 主な症状 | 発生しやすい条件 |
|---|---|---|
| 🥀 脱水型 | 施肥数日後に葉が霜にあたったように萎れ、次第に枯れる | 速効性肥料の過剰施用・根に近い施肥・土壌乾燥時 |
| 🍂 葉焼け型 | 葉の縁から淡い黄色→白色に変色し、葉全体には広がらない | 高温期の高濃度窒素施用・不適切な葉面散布・ハウス栽培 |
| 🌿 根焼け型 | 若い根が褐色に変色して枯死する。地上部では脱水症状も同時発生 | 一度に大量施肥・未熟有機肥料・肥料が根に直接接触 |
| 🌱 発芽障害型 | 発芽率が極端に低く、出た芽の根が脱水して枯れる | 石灰窒素・尿素・過りん酸石灰を種肥として直接接触させた場合 |
症状が出やすい部位は主に葉先・葉の縁・新しい根です。特に脱水型では、施肥から2〜3日後に圃場の一部の株だけが急に萎れるのが特徴で、これが病気との重要な違いになります。
病気が原因の場合は徐々に広がっていきますが、肥料焼けは施肥直後に一部の株が集中して萎れるケースが多いです。この「発症のタイミングと場所」を記録しておくことが、正確な判断につながります。
圃場全体ではなく一部だけに萎れが出たら要注意です。
参考:BSI生物科学研究所による肥料焼けの詳細な分類と発生メカニズム
File No. 51 肥料焼け – BSI生物科学研究所
肥料焼けは、病気や養分欠乏症と症状が似ているため、誤診して「農薬を散布した」「逆にさらに肥料を追加した」という失敗事例が少なくありません。間違えると対処が真逆になるので、区別の仕方を正確に覚えておくことが重要です。
以下のチェックポイントを順番に確認してください。
養分欠乏症との見分け方にも注意が必要です。窒素欠乏は「下葉から」黄化が起きやすく、肥料焼けでは「成長点(新芽)に近い上位葉」から症状が出る傾向があります。これはかなり重要な違いです。
また、カリウム欠乏でも葉の縁が黄化することがあります。ただし、カリウム欠乏の場合は施肥後の急激な悪化ではなく、徐々に症状が進むのが特徴です。施肥後すぐに葉の縁が変色した場合は肥料焼けが有力です。
迷った場合は「施肥したか、していないか」が判断の起点です。
参考:JAあいちが提供する農作物の生理障害診断フロー
作物の生理障害図鑑 – JAあいち経済連
「適量のつもりだったのに肥料焼けが起きた」というケースには、施肥量以外の見落としやすい条件が絡んでいることが多いです。肥料の量だけに目が向きがちですが、実は環境条件や肥料の種類によって同じ量でもリスクが大きく変わります。
発生条件が複合的に重なると、症状は急速に進みます。特に「夏場+乾燥+高窒素肥料」の三重苦になった場合、数日で株が枯死することも珍しくありません。
施肥後は必ず灌水するのが原則です。
肥料焼けを発見したら、まず「土壌中の肥料濃度を下げること」を最優先に行動します。時間が経過するほど根へのダメージが広がり、回復が難しくなるため、早期対応が収量への影響を最小化するカギです。
ステップ1:固形肥料の除去
表面に残っている固形肥料を移植ゴテやスコップで取り除きます。まだ溶けていない肥料が残っている場合は、そのまま放置するとさらに濃度が上昇し続けるため、速やかに除去してください。
ステップ2:大量灌水で濃度を希釈する
通常の水やり量の2〜3倍を目安に、たっぷりと灌水します。水を大量に与えることで土壌中の肥料成分が薄まり、浸透圧の差を縮めることができます。これは応急処置として最もすぐ実行できる方法です。土壌をかき混ぜながら肥料分の少ない赤玉土などを混ぜ込むと、さらに効果的です。
ステップ3:症状が深刻な場合は植え替え
灌水後も萎れや葉先の枯れが進行している場合、または根焼けが広範囲にわたる場合は、新しい土への植え替えを検討します。発芽障害型で被害が広範囲に出た場合は、速やかに再播種や他作物への転換も選択肢に入れてください。
ステップ4:回復後の葉面散布で栄養補給
根が回復し始めたら、根からの養水分吸収機能を補う目的で葉面散布による栄養補給を行います。尿素0.1〜0.3%液やりん酸一加里の薄液を葉に散布すると、回復を後押しできます。ただしこの段階でも濃度が高いと再び葉焼けを起こすため、必ず規定濃度の下限で使用するのが安全です。
ハウス栽培で葉焼け型が発生した場合は、換気回数を大幅に増やし、表土を掘り起こしてアンモニアガスを発散させることも並行して行います。これが条件です。
根が動き始めると、新葉の色が回復してきます。改善の兆候を丁寧に観察しながら対応することが大切です。
参考:肥料焼けの発生メカニズムと予防・応急措置についての専門資料
File No. 51 肥料焼け – BSI生物科学研究所
肥料焼けの予防策として一般的に言われるのは「適量を守る」「緩効性肥料を使う」「元肥を植え付け1〜2週間前に施す」といった基本事項です。これらはどれも重要です。しかし実は、施肥「前」の土壌EC(電気伝導度)を確認する習慣が、最も直接的かつ確実な予防策になります。
ECとは土壌中の塩類(肥料成分)の濃度を示す指標で、値が高いほど肥料焼けのリスクが高くなります。一般的に野菜の適正EC値は0.3〜0.8 mS/cm程度とされており、これを超えて追肥すると一気に肥料焼けが起きやすくなります。
EC計(電気伝導度計)は農業用で1万〜2万円程度から入手可能で、スマートフォン連動型も登場しています。測定は圃場の土を少量採取して水と1:1で混ぜるだけで簡単にできます。
土を採取して測定する、たったこれだけです。
施肥方法の基本として、以下を改めて整理しておくと実践しやすくなります。
窒素含有率が高い肥料(14%以上)を使う場合は、通常よりも少量ずつ複数回に分けて施用し、植物の反応を観察しながら次の施肥量を決めるのが理想です。特に苗の植え付け直後や種まき直後は根が未熟で感受性が高いため、この時期の過剰施肥が最も深刻な被害につながりやすいです。
作物の成長段階に合わせた施肥計画が基本です。
施肥量に迷った場合は、農林水産省が提供している地域ごとの「農作物施肥指導基準」が参考になります。品目別の施肥量の目安が示されており、過剰施肥を防ぐ指針として活用できます。
参考:地域別・品目別の施肥基準を確認する
農作物施肥指導基準 – 農林水産省(関東農政局)

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