セルリー斑点病を市販の万能殺菌剤だけで乗り切ろうとすると、気づかないうちに防除コストが倍増します。
セルリー斑点病は、主に葉と葉柄に現れるカビ病で、初期を見逃すと収穫期まで長く引きずるのが特徴です。
最初は直径2〜3ミリの水浸状の黄緑色斑点として出て、はがきの角にインクがにじんだような、ぼやっとした小さな丸い病斑に見えます。
進行すると病斑は1センチ前後まで広がり、灰褐色〜暗褐色の円形になり、周辺部が黄色く抜けた「輪」を作るのが典型的な姿です。
重症になると葉全体が褐変・枯死し、10アール当たり数百株単位で外葉を廃棄せざるを得ず、可販部位が目に見えて減ってしまいます。
つまり、初期の小斑点を拾えるかどうかで収量の明暗が分かれる病気ということですね。
同じ「斑点」が出る病害は、セルリーでは葉枯病や細菌性病害などもあり、見分けを誤ると防除が後手になります。sanchoku-prime+1
セルリー斑点病では、古い病斑に白っぽいカビが出ることがあり、乾いた紙に白い粉をふいたような見た目になるのが一つの手がかりです。hro+1
また、葉だけでなく葉柄や茎にも病斑が広がるため、畝を横から見たときに「節目が黒っぽく汚れたように見えるか」を確認すると判断が早まります。daco-club+1
葉の黄化だけで判断すると萎黄病や肥料不足と混同しやすいので、必ず病斑の色、輪郭、位置の3点をセットで観察する習慣が重要です。sanchoku-prime+1
観察ポイントを絞ることが基本です。
セルリー斑点病の病原はCercospora apiiという糸状菌で、いわゆるカビの仲間です。
この菌は葉や葉柄の病斑部で胞子を作り、風や雨のはね、潅水による飛沫で近くの株へ次々と広がっていきます。
とくに、ハウス内での頭上からのスプリンクラー潅水は、葉面を長時間ぬらすうえに飛沫を飛ばしやすいので、1回の潅水で畝全体に感染が進むこともあります。
病原菌は被害残さや土壌中で一定期間生きるため、同じハウスにセルリーを連作すると、前年の葉くずや土から次の作に伝染するリスクが高まります。
つまり、ハウス単位での連作と残さ処理が感染源管理のキーポイントということですね。
セルリー斑点病で意外と見落とされるのが種子伝染です。
参考)https://sanchoku-prime.com/articles/celery-disease
この病気は種子表面や内部に病原菌が付着していることが知られており、消毒していない種子を使うと、播種の時点で病気を持ち込むことになります。
ポット苗の段階で数株に小斑点が出ている場合、そのトレー全体がすでに感染源になっているケースもあり、定植後にハウス全体へ広がる起点になります。hro+1
安心して使える苗を確保するには、消毒済み種子の選択や、育苗中の衛生管理(トレーやかん水道具の洗浄)が現場レベルで重要な投資といえます。hro+1
苗段階の管理が原則です。
セルリー斑点病で特に問題になっているのが、同じ薬剤を繰り返し使うことで発生する薬剤耐性菌です。
例えば、北海道のセルリー産地ではチオファネートメチル水和剤(ベンズイミダゾール系)を使った試験で、2000マイクログラム毎ミリリットルという高濃度でも全く生育が止まらない高度耐性菌が176菌株すべてで確認されています。
これは、実際のほ場濃度よりはるかに高い薬量を使っても効かないレベルであり、「ラベルどおりに散布しているのに全然止まらない」という現場の感覚そのものです。
耐性菌が優占すると、10アール当たり数回分の薬剤費と散布労力がそのまま「効かないコスト」として積み上がり、シーズン全体で数万円規模の無駄になることも珍しくありません。
痛いですね。
ベンズイミダゾール系を長年セルリー斑点病に使い続けてきたハウスほど、耐性菌の頻度が高いことが報告されており、「昔はよく効いたのに最近は…」という声の背景には、こうした耐性菌の増加があります。
このため、公的機関からはセルリー斑点病に対してチオファネートメチル水和剤の使用を避け、他系統薬剤を組み合わせた防除体系に切り替えることが推奨されています。
系統の異なる薬剤をローテーションする、散布回数を制限する、発生初期に集中的に散布して「追いかけ散布」を減らすといった工夫が、耐性菌の増加ペースを抑える現実的な手段です。takii.co+1
薬剤選定が条件です。
もし既にほ場で「効きにくい感触」が出ている場合は、同じ系統を増量・多回散布するのではなく、防除指導機関やJAの病害虫診断などを通じて、原因の切り分けを一度しておくと安心です。takii.co+1
最近では、農薬メーカーや普及センターが作成した病害防除の資料や動画も増えており、使用薬剤の系統や作用機作を一覧でチェックできるコンテンツもあります。
参考)https://www.takii.co.jp/tsk/saizensen_web/zadankai/bojyo/
オンラインで確認してから防除計画を立てるだけでも、「なんとなく手元にある薬を散布する」状態から一歩抜け出せます。tetramedia.co+1
結論は、薬剤は「効き目」ではなく「系統」で見る癖をつけることです。
セルリー斑点病の薬剤耐性に関する詳細なデータは、耐性菌の発生事例をまとめた農業試験場の報告が参考になります。
セルリーの斑点病(耐性菌の発生)に関する試験結果の詳細はこちら
セルリー斑点病は定植前後から収穫期まで長期間発生し、特に多湿・高温気味の環境で広がりやすい病気です。
ハウスで日中の換気が不十分だと、葉面の結露が長く残り、6〜8時間以上ぬれた状態が続くだけで感染リスクが一気に高まります。
例えば、外気温20度前後の日にビニールを少しだけ開けていると、ハウス内は25度以上・湿度90%超が数時間続き、まるで浴室のような環境になってしまいます。
こうした日が週に2〜3回続くだけでも、ほ場全体で病斑が一気に増えるトリガーになります。
多湿環境の放置は避けるべきです。
潅水も重要な要素で、株元潅水や畝間潅水に切り替えるだけで葉面のぬれ時間を短縮でき、発生を抑えやすくなります。sanchoku-prime+1
1回あたりの潅水量を減らし、回数を分ける「少量多回」方式にすると、土壌水分を保ちつつ葉が乾きやすい時間帯(午前中)に水を動かすことができます。sanchoku-prime+1
さらに、株間を数センチだけ広げる、風の通り道になる通路を1本増やすといったレイアウトの工夫でも、葉の乾き方は体感できるほど変わります。takii.co+1
こうした小さな変更の積み重ねが、薬剤だけに頼らない防除コスト削減につながります。tetramedia.co+2
環境調整が原則です。
病斑が出てしまった葉は、収穫時だけでなく発病初期からこまめに取り除いて畝外に集め、可能であれば埋設または持ち出し処分とするのが望ましい対応です。daco-club+2
ハウス内に残さを山積みにしておくと、そこから再び胞子が飛散し、同じ年の遅い作にも再感染する「二次的な種子源」になります。sanchoku-prime+1
片付け作業は手間に感じますが、10アール当たり1〜2時間の追加作業で、その後の防除回数を1回減らせれば、結果的に薬剤費・労務費の両方を圧縮できます。tetramedia.co+1
つまり、残さ処理は「見た目の整理」ではなく「次の発生を断つ投資」として考えるべき作業です。sanchoku-prime+1
残さ管理に注意すれば大丈夫です。
セルリー斑点病は「出たら薬で抑える」という発想に偏りがちですが、実際には種子・育苗・土づくり・排水・換気を含めた長期戦略の中で考えた方が、総コストは下がります。
例えば、連作を避けて3〜4年はセルリーを同じほ場で作らない、あるいは同じセリ科野菜(ミツバ、パセリなど)も含めて輪作体系を組むだけで、土壌中の病原菌密度は着実に下がっていきます。
このとき、排水の悪い低地や水がたまりやすい場所では、あえてセルリー以外の作物を優先するなど「ほ場の適材適所」を考える発想も有効です。
10アール単位で見れば配置換えが難しくても、ハウス内の畝単位の配置を変えるだけでも、実は水のたまり方や風の通り方は変えられます。
結論は、病気対策を「ハウス全体の設計」とセットで考えることです。
もう一つの独自の視点として、セルリー斑点病を「情報発信のネタ」にしてしまう方法があります。dorin-farm+1
病気の経過や対策を写真や数字と共に整理し、自身のブログやSNSで公開すると、同じ悩みを持つ生産者や取引先に対して専門性をアピールできます。matsuweb+1
実際、農家が自分の病害対策や試行錯誤を記事にすることで、販路拡大やブランド化につなげている事例も出てきています。
セルリー斑点病で苦労した経験を、単なる損失ではなく「知識資産」に変えていく発想は、規模に関わらず取り入れやすい戦略です。matsuweb+2
これは使えそうです。
セルリー斑点病を長期的に抑えるには、薬剤ローテーションや環境管理に加えて、「どの年にどの薬を何回使い、どんな天候でどの程度発生したか」を簡単に記録しておくことも重要です。tetramedia.co+2
紙のノートでも構いませんが、スマホのメモアプリや農業日誌アプリを使えば、写真付きで病斑の状態を残せるため、翌年以降の判断材料として非常に役立ちます。matsuweb+1
こうした記録が蓄積すると、「このハウスは9月の長雨の年に斑点病が出やすい」「この薬は3回目から効きが鈍る」といった、自分のほ場に特有のパターンが見えてきます。matsuweb+1
セルリー斑点病は完全にゼロにはできなくても、「出ても慌てない」「無駄に散布しない」状態に近づけることは可能です。sanchoku-prime+2
つまり記録と振り返りだけ覚えておけばOKです。